森田実氏が書評で絶賛した新刊紹介『8・15戦災と3・11震災―なぜ悲劇は繰り返されるのか』(片野勧著、第三文明社刊)
2015/01/01
『8・15戦災と3・11震災―なぜ悲劇は繰り返されるのか』 片野 勧著 第三文明社刊 2,200円(税別)
人間をかえせ! ふるさとをかえせ! ――戦災と震災を体験した壮絶な人生に迫る渾身
のドキュメント!

[目次]
はじめに
第一章 ヒロシマ・ナガサキからフクシマへ
Ⅰ 二つの国策に翻弄されて
Ⅱ 原発は人類と共存できない
Ⅲ 長崎で被爆した
第二章 3・10東京大空襲から3・11東日本大震災へ
Ⅰ 東京の空は真っ赤だった
Ⅱ 戦災孤児と震災孤児
第三章 仙台空襲と津波
Ⅰ 山河破れて国有り
Ⅱ 地方中小都市は「無防備都市」だった
第四章 艦砲射撃・釜石と津波
Ⅰ 曖昧なまま放置される戦争責任
Ⅱ 徹底した防災教育
第五章 郡山空襲と福島第一原発
Ⅰ 「大本営」の虚偽・誇大報道
Ⅱ 内部被曝の恐ろしさ
第六章 サハリン引き揚げと福島第一原発
ポツダム宣言受諾を拒否
第七章 中国引き揚げと福島第一原発
原発さえなければ
第八章 特攻とフクシマ
生命を賭けた若い航空兵たち
第九章 原町空襲と福島第一原発
Ⅰ わが町わが村の〝私たちの戦争体験〟
Ⅱ 明かりのない〝死の町〟
第十章 第四の震災県青森・八戸空襲と津波
Ⅰ 全国有数の漁業基地
Ⅱ 戦没者慰霊碑(英魂之碑)の前に立って
Ⅲ 地球上で最も美しい場所
おわりに
[著者プロフィール]
片野勧(かたの・すすむ)
1943年、新潟県生まれ。フリージャーナリスト。日本ペンクラブ会員、日本マス・コミュニケーション学会会員。著書に『メディアは日本を救えるか』(蝸牛社)、『マスコミ裁判一戦後編』(幸洋出版)、『日本の空襲』(第二巻、共著、三省堂)、『捏造報道一言論の犯罪』(音羽出版)、『戦後マスコミ裁判と名誉殿損』(論創社)、『明治お雇い外国人とその弟子たち』(新人物往来社)ほか。
森田実の言わねばならぬ 2014.7.2(その6)
平和・自立・調和の日本をつくるために【732】
《本を読む》片野勧著『8.15戦災と3.11震災』(第三文明社、2014年7月3日刊、2200円+税)/人間をかえせ!ふるさとをかえせ!戦災と震災を体験した壮絶な人生に迫る渾身のドキュメント!
「人生は大(おおい)なる戦場である。作者は則ちその従軍記者である」(島崎藤村)
本書の著者の片野勧さんには申し訳ないのですが、「片野勧」とい名は本書で初めて知りま
した。私は新人ノンフィクションライターかと身勝手に思い込み、読み始めました。読了し驚きました。凄まじいほどの取材力、粘り強さ、とくに丹念さに圧倒されました。
これほどの徹底的取材をする高い能力をもつノンフィクションライターの登場によって日本のノンフィクション界に新風を吹き込むことになるのではないか、と感じました。
ところが本書奥付のプロフィールを見ると、すでにかなりの著書を書いておられます。年齢もそれほど若くはありません。片野勧という高い能力をもつノンフィクションライターの存在を知らなかったのは、私自身の不勉強すなわち自分自身の愚かさの結果だと気づきました。片野勧さんは新聞記者、編集者として長年研鑽を積んでこられたベテランのジャーナリストなのです。
[「8.15」と「3.11」]というテーマの設定は、たいへんオーソドックスなものだと思います。「8.15」とは「1945(昭和20)年8月15日」のことです。「3.11」とは「2011年3月11日の東日本大震災」のことです。この2つの大事件(大災害)を歴史の節目としてとらえる視点は、日本の現代史の正しいとらえ方だと思います。
1945年8月15日を境に日本は大きく変わりました。価値観も変わりました。皇国史観に代わって欧米の社会科学が尺度になりました。天皇制に代わって議会制民主主義が国の柱になりました。 1945年を境にして日本はアメリカ型合理主義の価値観によって支配される時代になりました。
このアメリカ合理主義の時代を「3.11」が終わらせました。東日本大震災による大災害により日本人の価値観は「アメリカ型合理主義」から「自然尊重・宗教重視」の価値観に変わったのです。「科学」中心から「宗教」中心時代に変わったのです。私はこのような視点から、著書を書きたいと思いながら、執筆できぬまま、3年以上の歳月が流れてしまいました。
片野勧著『8.15戦災と3.11震災』を読み始めてすぐに、これはすごい著書だと思いました。片野氏は真実をもって語らしめるというノンフィクションライターの本道を進んでいるのです。このために旺盛なエネルギーを発揮して、多くの人に会い、現場に立ち、真実を追いました。50人を超える生きた証言によって「8.15」と「3.11」の連続性と非連続性を見事に描き出したのです。
片野進氏のプロフィールを本書の奥付から引用します。
《1943年、新潟県生まれ。フリージャーナリスト。日本ペンクラブ会員、日本マス・コミュニケーション学会会員。著書に『メディアは日本を救えるか』(蝸牛社)、『マスコミ裁判一戦後編』(幸洋出版)、『日本の空襲』(第二巻、共著、三省堂)、『捏造報道一言論の犯罪』(音羽出版)、『戦後マスコミ裁判と名誉殿損』(論創社)、『明治お雇い外国人とその弟子たち』(新人物往来社)ほか。》
偉大な実力をもったドキュメンタリー作家の登場を、日本のジャーナリズムのために喜びたい気持ちです。多くのこの時代の生き証人が登場します。よく名の知られた人もいます。しかし著名であるか否かは、その人の人生の価値を決めるものではありません。
社会の一隅を照らし続けてきた人々の真実の人生が解き明かされました。全国民の皆さん、本書を読んでください。日本民族の歴史がここに描かれています。
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(498)『アジア太平洋戦争から69年を前に「憲政の父」・尾崎咢堂の『敗戦の反省』(1946年)を読む
日本リーダーパワー史(498) 来年(1 …
-
-
日本リーダーパワー史(787)「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、インテリジェンス④』★『日本史の決定的瞬間』★『撤退期限を無視して満州からさらに北韓に侵攻した傍若無人のロシアに対し東大7博士が早期開戦論を主張(七博士建白書事件)』
日本リーダーパワー史(787) 「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利 …
-
-
『オンライン現代史講座/2・26事件とは何だったのか』②ー『日本最大のクーデター2・26事件(1936年/昭和11年)は東北大凶作(昭和6ー9年と連続、100万人が飢餓に苦しむ)が引き金となった』(谷川健一(民俗学者)
昭和11年に起きた日本最大のクーデター2・26事件の原因には東北大凶 …
-
-
「オンライン外交力講座」日本リーダーパワー史(396)『中国が恫喝・侵略と言い張る台湾出兵外交を絶賛した「ニューヨーク・タイムズ」 (1874(明治7年)12月6日付)」★「日中韓150年対立・戦争史をしっかり踏まえて外交力を再構築せよ⑤
2013/07/20 …
-
-
人気記事再録/<『クイズ『坂の上の雲』>(資料紹介)レーニンは日露戦争で日本を先進的な若い力と高く評価し、旅順陥落を絶賛した。
2010/09/08   …
-
-
『Z世代のための日中韓外交史講座』 ㉗」『現在の米中・米朝・日韓の対立のルーツ』★『よくわかる日中韓150年戦争史ー「約120年前の日清戦争の原因の1つとなった東学党の乱についての現地レポート』(イザベラ・バード著「朝鮮紀行」)★『北朝鮮の人権弾圧腐敗、ならずもの国家はかわらず』
2018/02/05 /記事再編集 まとめ「東学党の乱について」各新 …
-
-
まとめ 『日本最強のリーダーシップー西郷隆盛』 ●『尾崎行雄の傑作人物評― 『西郷隆盛はどこが偉かったのか』 ●『近代日本二百年で最大の英雄・西郷隆盛を 理解する方法論とは・ ●『廃藩置県の大改革ができたのは西郷の一言、 大度量によってのみ』
まとめ 『日本最強のリーダーシップー西郷隆盛』 ●『尾崎行 …
-
-
日本リーダーパワー史(297)原発事故から1年半-④原発報道は『戦争報道の教訓』を活かしー<本質報道>に徹せよ④
日本リーダーパワー史(297) –3.11福島原発事故 …
-
-
『クイズ?Z世代のための日本最強のリーダパワーを発揮した宰相は一体誰か?②』★『原敬首相の「観光立国論」』★『周囲の猛反対を押し切って皇太子(昭和天皇)をヨーロッパ観光に旅立たせた国際的決断力』★『日本帝王学の要諦は ①可愛い子には旅をさせよ ②獅子はわが子を千尋の谷に突き落とす ③昔の武士の子は元服(14、15歳)で武者修行に出した』
「逗子なぎさ橋通信、24/06/16/am720] 2017/09/23 &nb …
-
-
日本敗戦史(46)ガラパゴス日本『死に至る病』―国家統治/無責任欠陥体制『大本営』『大本営・政府連絡会議』『最高戦争指導会議』 『御前会議』の内幕
日本敗戦史(46) 「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』の内幕 <ガラ …
