『中国紙『申報』などからみた『日中韓150年戦争史』㊽『英タイムズ』「(日清戦争2週間前)「朝鮮を占領したら、面倒を背負い込むだけ」
2015/01/01
『中国紙『申報』などからみた『日中韓150年戦争史』
日中韓のパーセプションギャップの研究』㊽
1894(明治27)年7月13日『英国タイムズ』
植民地経営、外交能力トップの英国からの日清戦争2週間前にズバリ忠告―
これは現在の日中韓、北朝鮮との外交戦にも大変参考になる英国流の
外交インテリジェンスである。
「朝鮮を占領したところで、面倒を背負い込むだけのこと。朝鮮政府が劣悪
なのは問題の一部で、本当の問題は,すぐれた政治を行うための
材料が全くないことなのだ。
日本が朝鮮を征服すれば,この国が厄介きわまりない獲物であることを
思い知らされる一方,中国には征服したことによっていつまでも
敵意を抱かれることになるだろう。」
昨日の本紙第2版に掲載された電報から判断すると.朝鮮問題の解決に向けてなんらかの動きが出てきたようだ。朝鮮の条約港を中立化させる撞案が.ソウルの各国代表から出されており,日本公使も済物浦に関しては原則的にこの案を受け入れている。
ただ.釜山.元山の2港に関しては,なお東京からの指示を待っ状況にある。列強が日本軍の撤退を要求する共同覚書を出したことについて.わが国ではこれまでまことしやかに否定されてきたが,確かにその声明文を外交文の正確さをもって解釈するなら,それも無理はない。
共同覚書とうのは,抗議したい共通の事柄を伝えめるきわめて正式かつ厳粛な手段には違いないが,今回のような場合,同じ圧力をかけるのなら,よく知られている別の方法があるのだ。
今回報じられているような撞案が,各国代表の協議の上で発表されるということは.これまで現実の脅威や不都合に対してなんらかの共同抗議をしたことがない以上,まずあり得ないことだ。
ソウルの日本公使は,済物浦に関して中立化の原則を受け入れる際,軍隊の占拠を続け軍事行動をとる権利を保持する権利を,用心深くもその条件とした。これは中立化が完全に
施行されるまで占拠を続ける権利に過ぎないと期待してもよいかもしれない。しかしながら,たとえわずかなものであれ,原則事項に関して譲歩を獲得することは,意味があるのだ。
日本がどのような宗主権を主張しようと,具体的に干渉する権利は中国との条約によって制限されている。また,イギリスをはじめとする列強が,日本同様,生命財産を保護する義務を負う自国民が朝鮮にいる限りは,済物浦や釜山.元山などに入港する権利を有していることも条鰍こ定められている。
この原則さえ了承されれば,実際の適用に関しては友好的な協議にゆだねればよいのであり,その協議を通して,日本も朝鮮における利益を守るには,ヨ一口ッパの列強と協調することが一番効果的だということに気づくのではなかろうか。
そのはかにも,もう1つ原則における小さな進展が見受けられる。日本の圧力に屈した国王が,内政問題を協議する3人の委員を任命したのだ。ヨーロッパ人の目から見て,この政府の行政は実に劣悪なものだと言えるが.現状においてはるかに重要なことは,これが朝鮮人の目からしても暴動が起こるほどひどいものだということであり,現に見る限りでは,朝鮮政府はその暴動に全く対処する能力がない。
現在の朝鮮の腐敗や失政や行政の貧窮さを見せつけられれば,日本のように進歩的な国がもどかしく思うのは容易に納得されるところだ。しかし.他国を改革しようという情熱
をあまりに発揮したために不都合が生じた例はいくらでもある。われわれの豊富な経験から言って,周囲から是認も容認もされないような事柄に干渉するのは慎むのが賢明であることを,われわれは純粋な友情から日本政府に請け合うことができる。
日本が劣悪かつ無能な政府の悪弊を取り除こうと努力する朝鮮の改革者たちのためを思うことには共感するものの,われわれとしては問題が大きく困難なものだということを認めざるを得ない。
朝鮮の秩序を回復するという仕事にもし性急に着手すれば,英知と進歩的思想と,今やヨ一口ッパ人教官の手を必要としないほどに進歩した陸海軍を持つとはいえ,日本にとって荷がかちすぎることが簡単に証明されるかもしれない。朝鮮人の改革者たちが,打倒したがっている現在の政府よりもすぐれた政府を築くのに必要な資質をどの程度備えているか
という点については,残念ながらかなり疑問視せざるを得ない。
おそらく,彼らはすぐれた政治という外来の概念にそれほど関心を持っていないだろう。彼らの要求の1つは「朝鮮人のための朝鮮」であり,日本人に対してはことに辛辣だという程度の差はあれ,すべての外国人を嫌悪していると言われている。
だとすれば,必ずしも欠点ばかりではない従来の路線をとる中国が強く難色を示すようなこうした大改革を,はたして彼らがなしとげ得るものかどうか,われらの友人たる日本は考えてみた方がよさそうだ。
使命を負う仕事はとりわけ競争をあおりやすく.ことにヨーロッパ列強は,ほかからうまく先を越されると焦りがちな
面がある。中国という障害物のことはさておき,日本は他の列強が進み出てくることがもっと不都合に思えなくないか考えてみるのも有意義なことではなかろうか。
かつてはこれほど実際の軍事力が大きくはなかったろうが,中国と日本はこれまでにも朝鮮を舞台に1度ならず今日と同じような対決劇を演じてきた。両国ともそこにはかなりの言い分がある。
年の条約によって.両国は利害上の必要が生じたときにはあらかじめその意思を通告することを条件に,朝鮮に出兵することができるのだ。
今までのところは一戦を交えることもなく,どうにか共同占領を続けてきた。そして,それぞれ一応の体面が保てたと見るや・撤兵していたのだ。
今回の出兵が仮にこれまでとは違った結末を迎える
とすれば,日本にとってはきわめて不運なことと言うべきだろう。朝鮮を占領したところで、せいぜい面倒を背負い込むだけのことにしかならない。朝鮮政府が劣悪なものだということは.問題のごく一部に過ぎず、本当の問題は,すぐれた政治を行うための材料が全くないことなのだ。日本が朝鮮を征服すれば,この国が厄介きわまりない獲物であることを思い知らされる一方,中国には征服したことによっていつまでも敵意を抱かれることになるだろう。
だが,日本がこのように,問題を自国と中国の間でのみ解決し得るものと考えているのだとすれば、それはきわめてばかげたことと言わざるを得ない。好むと好まざるとにかかわらず,他の列強もまたその争いに巻き込まれ結局のところ日本は,自らがだしに使われたにすぎないことを思い知らされるのは火を見るより明らかなのだ。
日本に分別があれば.それほど得にもならない宗主権を中国にゆだね,ヨーロッパ列強に連なって個別の侵害を阻んでいる条約に基づいた権利を共有するはずだ。
そうすれば.日本の国民が保有するすべての実質的な利益は,結果をだれも予想することができないような問題を引き起こすことなく.保証されるだろう。われわれとしてはただ.東京で穏健な考え方が勝利するとともに,その間、現在の朝鮮に駐留する日本の大部隊が,何かのはずみで平和外交を絶望的なまでに紛糾させてしまうことのないよう祈るだけだ。
関連記事
-
-
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉒ 『大日本帝国最後の日 (1945年8月15日) <かくして「聖断」は下った!>
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉒ 『大日本帝国最後の日― (1945年8 …
-
-
グローバルメディアとしてのアラブ衛星放送の影響―アルジャジーラを中心にー
1 グローバルメディアとしてのアラブ衛星放送の影響―アルジャジーラを中心にー 2 …
-
-
日本リーダーパワー史(355)<日本の最も長い決定的1週間>『わずか1週間でGHQが作った憲法草案②』
日本リーダーパワー史(355) <日本の …
-
-
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-「日英同盟はなぜ結ばれたのか」②1902(明治35)年2月12日『ノース・チヤイナ・ヘラルド』 英日間の協約(日英同盟の締結)●同2月13日付「仏ル・タン」『極東で』『
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟はなぜ結ばれたのか」 …
-
-
「今、日本が最も必要とする人物史研究④」★『日本の007は一体だれか』★『日露戦争での戦略情報の開祖」福島安正中佐➄』★『三国干渉』後に川上操六はスパイ大作戦をどう組み立てたか『日英同盟締結に向けての情報収集にエース福島安正大佐 をアジア、中近東、アフリカに1年半に及ぶ秘密偵察旅行に派遣した』
2019/09/29 日本リーダーパワー史(673) 『三国干渉』と …
-
-
日本リーダーパワー史(978)ー「米中貿易5G戦争勃発」★『五四運動から100年目、文化大革命(1989年4月)から30年目の節目の年。その五四運動百周年記念日の数日後に米中関税交渉が決裂したことは、「歴史の偶然なのか、必然なのか」気になる!?』
「米中貿易5G戦争勃発」 米中関税交渉はついに決裂し5月13日、米国は第4弾の追 …
-
-
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか①「英タイムズ」(明治39年1月13日付)「日本と朝鮮』(上)
「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など外国紙が 報道した「日韓併合への道』 …
-
-
『日米戦争の敗北を予言した反軍大佐/水野広徳の思想的大転換➀』-『第1次世界大戦でフランス・連合軍とドイツ軍が対峠,70万人以上の戦死者を出した西部戦線随一の激戦地ベルダンを訪れた』
日米戦争の敗北を予言した反軍大佐、ジャーナリスト・水野広徳 &nbs …
-
-
『戦争と新聞」-日本海軍と新聞記者のインテリジェンスの明暗
日本海軍と新聞記者のインテリジェンスの明暗 前坂俊之(元毎日新聞記 …
-
-
世界/日本リーダーパワー史(909)-米朝首脳会談(6/12日)は「開催されるのか」×「延期になるのか」★『北朝鮮、米朝首脳会談の中止を警告、一方的な核放棄要求に反発』×『 米副大統領、北朝鮮に警告「トランプ氏をなめるな」』
米朝首脳会談(6/12日)は「開催されるのか」「延期になるのか」 …