『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(43)』★『ロシアと違い日本は宗教が自由の国』★『ルーズベルト大統領は「なぜもっと早く来なかったのか!私は君を首を長くして待っていた」と金子特使を大歓迎』★『ル大統領「日本のために働く」と約束』
ルーズベルト大統領は金子特使を大歓迎 米国到着、米国民はアンダー・ドッグを応援
アメリカ人はご承知のとおり、Under dog=(アンダー・ドッグ)というほうにいつも賛成する。弱い小さい犬と大きな強い犬と途中でかみ合うというと、通行者はその犬の性質や犬の所有者は分からぬが、弱いほうの犬をかばって大きな強い犬をステッキでなぐる。そうしてアンダー・ドッグを保護する。日本がちょうどアンダー・ドッグに当たるから当初は同情を寄せておったが、困りましたことは三月の十日、すなわち私が着く前の目にアメリカ合衆国の大統領が局外中立の布告を出した。
シカゴの富豪はご承知のとおり皆ロシア人と婚姻関係がある。故大統領グラント将軍の一家も又ポックー・パーマーの一族もそうである。彼らの娘が露国の貴族のところに嫁いでいる。又ここかしこの商売人は、旅順・ウラジオストックに商品を売りこみ、商業関係が結ばれている。日本から運動してもとても手を出す余地がないから、早くここを立ってニューヨークに行けと清水領事が言われた。そこでシカゴを立ってニューヨークに参りました。
ところがニューヨークには総領事なり、正金銀行なり、三井物産なり、大倉組なり、高田商会なり、高峰譲吉氏(工学博士、タカジアスターゼ発明者)なり、多数の日本人がおったが、それらの人びとが私の宿屋に来て、
●ニューヨークでロシア大使との対決
そうしてニューヨークヘラルドという新聞が先鋒となってさかんにロシア大使の言うことを受売りして同紙に発表する。のみならずロシア大使は今度の戦争は宗教戦争であってキリスト教と非キリスト教の戦である。ロシアはキリスト教国で日本は非キリスト教国である。
ゆえにヨーロッパ・アメリカのキリスト教国はこぞってこの非キリスト教国の日本を撲滅しなければ、キリスト教が東洋に伝播せぬ。よって欧米のキリスト国は連合してロシアを助けろという。のみならず大使いわく、日本は何だ、ロシアに比べてみるとじつに小っぽけな国である。一“Yellow little monkey”(黄色の小猿)に何ができるか。なぜかというとロシアは世界無比の強国であって、ヨーロッパの強国といえどもロシアに指一本さすことができない。国土も膨大で人口も多い。陸海軍も整っている。それに小っぼけな黄色な小猿が戦をするということはじつにおこがましい。みておれ、二、三ヵ月のうちには日本の国を撲滅させてみせるぞ。気の毒なものであるというてしきりに日本を攻撃した。
◎ロシアと違い日本は宗教は自由の国
「第二に宗教戦争であるといっておだてるとは何事か。これは昔Crusade(十字軍のときキリスト教国が非キリスト国を撲滅せんとしたことがあるが、今日は日本が非キリスト教国か、ロシアが非キリスト国か事実が証明する。かってキシネフ〈モルトバ〉においてロシア政府が人民の虐殺を行ったことがある。
これ果たしてキリスト教国のすることであろうか。現にこのことについて欧米の文明国は非常にロシアを攻撃しているではないか。又ロシアは政治上の罪を犯した者をシベリアに送って極刑を科し、その待遇また甚だ残虐を極めている。この点についてもキリスト教国の人が皆、攻撃しているではないか。これに反して日本は憲法を以て宗教の自由を許している。キリスト教でも仏教や神道と同じように保護している。しかるにロシアはどうであるか。ロシアのギリシャ正教ではカソリック教でもプロテスタント派でも許さないではないか。わが日本国は宗教は自由である。これもロシアよりも日本がはるかに自由である。
第三にロシア大使の言うごとく露国の彪大な国土と、人口の多数なことと、兵備の完備した点では日本は比較にならないほど劣っている。
この事はわれわれも知っている。日本の政府当局も知っている。しからば日本は何がゆえにこの戦をしたのであるか。国土といい、人口といい、兵器の完備の点からいっても、日本は少しもロシアに優るところがなくして、何のために戦をしたか。
これは数年前から日露の関係が険悪になって、我一歩を譲れば彼一歩進み、飽く足らざる利欲をもって、飽く足らざる圧迫をもってわが日本に加え、このまま行けば日本は遠からずロシアのために撲滅される危機に臨んでいるから、座してロシアのために亡ぼされるのを待つよりは、むしろ失敗を度外して、進んで剣を取り国を賭して戦ったほうがよいというのがわが日本人の決心である。
最後の一戦まで、最後の一兵卒まで日本は戦っていくのである。今日は国の存亡を賭しての戦いであるから、このことをどうぞよく考えておいてくれ。けっしてわれわれは勝つ見込みがあってしたことではない。これだけは弁解しておく。」
◎警備の警官を断る
☆★ホワイトハウスでルーズベルト大統領は大歓迎、「なぜもっと早く来なかったのか」
彼らは順ぐりに大統領官房に行って手を握って敬意を表して帰る。私が名札を出すや玄関の奥の官房からルーズベルト氏が早足に走ってきて、玄関に立っている私のところに来て私の手を握って
「君はなぜ早く来なかったか。僕は君をとうから待っていた。なぜ早く来なかったか。」とだしぬけに言った。私も実はびっくりした。そうするとそこに待っている三、四十人の男女の訪問者一同は、一国の大統領が奥から走って来て、
「君を僕はとうから待っている。なぜ早く来なかったか。」というのを聞いて異様に感じたらしい。
ルーズベルトは元来大きい背の高い人でありますが、ちっぽけな黄色な人間に、一国の大統領が、さも親密らしくしているのを見て、これは何者が来たかと怪しんでいるくらいである。そうするとルーズベルト氏は例のごとく親密を示していきなり私の左の手をぐっと巻いて、道すがら、「なぜ早く来なかったか、とうから待っておった。」と言って私を引張って行った。官房に入ってそこにすわると、
「じっはグリスカム公使が東京から電報を打って来たから、君がアメリカに来るということはとうから知っていた。今か今かと待っていたが一向に来ない。一体いままでどこにおったのか。」
「今までニューヨークにおった。」
「なぜ早く来ないか。僕は待っていた。」
「そうか。」
「君は僕の厳正中立の布告を読んだか。」
とこう向うから聞いた。
しかし、かく言うルーズベルトのはらの中は、日本に満腔の同情を寄せている。あれはロシア大使の交渉があったから大統領として外交上やむをえず出したのだ。僕のはらの中とは全然違う。君に早くそういう内情を話そうと思って待っていたのだ。さて今度の戦争が始まるやいなや、僕は参謀本部長に言いつけて、日露の軍隊の実況、又海軍兵学校長に言いつけて、日露の軍艦のトン数及びその実況いかんということを、詳細に調べさせて、ロシアの有様、日本の有様をよく承知しているが、今度の戦さは日本が勝つ。」と言った。
◎ル大統領「日本のために働く」と約束
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