前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン㊱』/『開戦2週間前の『申報』の報道ー『『東三省(満州)を放棄し.境界線を設けて中立とするは良策にあらざるを諭す』

      2017/01/21

 『日本戦争外交史の研究』/

『世界史の中の日露戦争カウントダウン㊱』/『開戦2週間前

   1904(明治38)年120日、光緒29124

        『申報』

『東三省(満州)を放棄し.境界線を設けて中立とするは良策にあらざるを諭す』

 ああ,近ごろの政府諸臣の言論を観察すると.彼らはすでに東三省をもうわが国の領土とは考えていないことが分かった。何によって分かるかと言えば,慶親王の局外中立厳守という考え方からだ。慶親王のこの考え方については,すでに本紙上で紹介した。

このニュースは,本紙が日本の東京にいる友人から入手したもので,彼の手紙の概要は次のような内容だった。「日本政府は日本暦110日に,中国北京からの電報を受け取った。その内容は,次のようなものだった。

ロシアと日本との戦争の危機はますます深まっている。

外務部の責任者である慶親王は,局外中立厳守を表明した。

今のところロシアを満州から撤兵させられないので,遼河の右岸.直隷の境界線の南を局外の地として,戦争とは無関係にしようとしている。すでに直隷総督の蓑世凱に,兵を用意し.ロシアと日本の軍隊が境界線を越えて戦争をすることのないようにせよと命じた」。

そのほか上諭を受け.電文で各省の総督,巡撫に周知させた」。

以上の内容は,日本から伝えられたものであり,必ずしも証拠があり信頼できるとは言えないかもしれない。しかし,目下の情勢を論じれば,政府諸臣はすでに東三省を放棄していることになりはしないか。

ロシア1国が東三省を侵略したときにも,これを追い払えなかったのに,ロシアと日本が戦争を始めた後.わが国はこの両国を撤兵させ,東三省を取り戻せるわけもない。こんな夢のようなことが実現しないことは,周知の事実だ。

ロシアが勝利すれば,「この東三省は,わがロシアが戦い取ったものだ。昔は中国の領土ではあったが,わがロシアにとっても利益があるのだから,なんで中国に返還したりするか」と主張するだろう。

一方日本が勝っても,「この東三省の地は,中国がすでに放棄し,ロシアに占領されていた。わが日本はロシアから奪い取ったのだから,中国とはなんの関係もないはずだ。わが国と遠く離れていて不適当だと言われるが,現在の世界で,各大国の所有している属地がすべて近接しているだろうか。

日本は戦勝すれば,軍も国もいっそう強くなり,この東三省を守る力は十分にある。中国に返還できるわけがない」と主張するだろう。こう考えてみると,露日両国の戦争は,ロシアが勝っても,日本が勝っても,わが東三省が返ってくる見込みは全くない。

強いて交渉に当たっても,巨額な陪償金を支払わなければ返してくれはしない。今のわが国の財力で,彼らのふくれ上がった欲望を満足させられるだろうか。こんなことは絶対にできないだろう。

それにつけても理解できないのは,慶親王が遼河の右岸と,直藷の南に線引きし,局外の地として,ロシアと日本の戦争と関係ないとしていることだ。目下の情勢を見れば,これ以外によい策はないかのようだ。

しかし,各国が虎視眈々と中国を狙い,その野望は東三省にとどまらないことを考えてみると,ロシアと日本のうちどちらかが戦勝してから,遼河の右岸,直隷以南に侵入するかもしれないとロシアや日本がそういう行動に出ないと予見できるだろうか。

東三省をロシアと日本両国が戦場にすることを.わが国は阻止できなかったのに,どうして両国が戦争の後に直隷に侵入するのに対して抵抗ができようか。直隷には要害があるので守りやすく,東三省には要害がないので守れないと言うのか。

直隷は首都の安全のために重要な地区なので武力で守るべきだが.東三省は重要な地区ではないので,武力で守る必要はないと言うのか。

この策は,人を欺くためか、はたまた自らを欺くためか。これから以後,わが国はまず東三省を失い,その後まもなく直隷をも失い,他の各省も次々と外国に奪われ,もはや救いようもない状態になりはしないかと私は心配している。西洋人の言う「中国分割」の主張は.このときから現実のものとなって.われわれの目前に展開するだろう。

中国の滅亡は.なんと哀れで,なんと恐るべきものだろうか。これも皆,慶親王の地域を区別して局外中立を厳守するという政策の責任だ。それでは今,いったいどうすればいいのだろうか。

ロシアと日本が戦争を開始していない今のうちに.特使を日本に派遣し,次のように伝えることだ。

「東三省は中国の領土である。露日両国が当該地を戦場とすることは許さない。ロシアが駐留を強引に続け占領するのに対しては,わが国が撤兵をさせるよう,必ず最大限の力を投じて努力する。貴国の手出しは無用だ。もしロシアがどうしても撤兵をしないときには,必ず貴国と協力してロシアと戦い,決して傍観はしない」。

一方ロシアに対しても特使を派遣してこう言うべきだ。

「日本は,わが東三省のために,貴国と戦争をしようとしている。もし貴国が柔軟な態度を見せ,わが国が受け入れられないようなことを押しつけなければ,わが国は別に利益を提供する。

中国とロシアの200余年にわたる国交を考え,貴国を失望させるようなことはしない。もしわが国の要求を聞き入れないのなら,日本と協力して必ず貴国と一戦交える。どちらが勝利するかは予見できない。

どちらが得で,どちらが損か,それが分かる賢い人間が必ずいるだろう」。

 

もし幸いにもロシアが同意すれば,平和は守られる。不幸にもロシアが同意をしなければ,一か八か決戦に出るしかない。

 

東三省を守るために戦っても,これを失い,他の地方の安全も得られないであろうとは分かっている。しかし東三省を守る戦いもせずこれを放棄しても,他の地方の安全は確保できないのだ。軍隊も軍糧もないから直隷だけを守るというなら,むしろ,あるだけの軍隊と軍桂で東三省を守った方がよい。

 

そうすれば東三省の軍隊と軍糧を増加するぐらいのことはできる。中国が戦いに敗れて滅亡することはとても恐ろしい。しかし,中国の滅亡は,東三省を放棄した時点から始まっており,敗戦の日を待つまでもない。だからこそ,慶親王の境界を引いての局外中立厳守政策は,一時の気休めにはよいかもしれないが,決し

て国の将来を深く考えた政策ではないのだ。

 - 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(150)再録★<『英タイムズ』(1906(明治39)年12月28日付記事)が報道したよくわかる日本史『海洋民族/海洋国家日本の900年の歴史★蒙古襲来から日露戦争までの海の道>―今こそ、第3の鎖国を解き、アジア太平洋海洋国家へ飛躍しようせよー

    2011/11/28 &nbsp …

百歳学入門(239)<ネット・SNS・youtubeで健康長寿、ライフワークを完成する法>★『湘南海山ぶらぶら自由勝手にビデオ散歩して、youtubeにアップ、楽しく長生き創造生活する』

百歳学入門(239)   2012/02/16  …

no image
日本リーダーパワー史(390) 日中韓150年対立・戦争史をしっかり 踏まえて日本外交はどう対処すべきか①

  日本リーダーパワー史(390)    …

no image
日本メルトダウン・カウントダウンへ(900)『安倍首相の退陣すべきを論じる①」「消費増税再延期」<君、国をつぶすことなかれ、子供たちに借金を残すことなかれ>

   日本メルトダウン・カウントダウンへ(900) 『安倍首相の退陣す …

no image
<F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(215)>『共謀罪法案、森友、加計、防衛メモ問題などなど、底流で共通しているのは、権力者が、今の日本が置かれている複雑な諸問題を、誠実な言葉遣いで国民と向き合い率直に語ることを避けて来たこと。隠し事が多過ぎる。』★『日本も極右や極左、国際テロリストの標的になる事は時間の問題、 欧米やイスラエルなどの総合的なテロ対策技術を詳細開陳しながら、国民の理解を深めることが必要』★『ポスト安倍を語り始めた海外 ふさわしいのは自民・民進議員ではなく?』

<F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(215)>   都 …

no image
速報(233)『ソ二―はよみがえることができるか』『自動車産業は「農業化」したー輸出は半減、国は補助金頼み』ほか

  速報(233)『日本のメルトダウン』   ●『ソ二―はよ …

no image
日本リーダーパワー史(656)「大宰相・吉田茂の見た『明治』と『昭和前期』のトップリーダーの違い」日本は、昭和に入ってなぜ破滅の道を歩んだのか。 『栄光の明治』と、『坂の上から転落した昭和の悲惨』

  日本リーダーパワー史(656) 「大宰相・吉田茂の見た『明治』と『昭和前期』 …

『鎌倉カヤック釣りバカ日記・動画回想録ー2015年元旦、めでたくもあり、めでたくもなし>★『古希超・独歩独語』「一日一生」「一瞬永遠」「生き急ぎ、死に急げ」★『正月おせち料理』★『KAMAKURA和賀江島ー透明のブルーシーをカヤックから海底散歩、富士山すげーよ』

  2015/01/06   ★<201 …

no image
百歳終末学入門(175)『2025年問題とは団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という、人類史上初の『超・超高齢社会』、つまり2025年は日本終末物語<日本の死>は8年後に迫っている。それなのに『この恐ろしい現実』を 見て見ぬふりの先延ばし』

  2017年7月27日の厚労省の発表では二〇一六年の日本人の平均寿命 …

『リーダーシップの日本近現代興亡史』(225)/★『明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破の交渉力」➃『『軍事、外交は、嘘(ウソ)と法螺(ほら)との吐きくらべで、吐き負けた方が大損をする。国家の命脈は1にかかって嘘と法螺にある。『 今こそ杉山の再来の<21世紀新アジア主義者 が必要な時」』

 2014/08/09 /日本リーダーパワー史(520)記事再録 &n …