前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑮』『開戦4ヵ月前の「英ノース・チャイナ・ヘラルド」の報道』ー『 朝鮮の危機ー日本民衆の感情ーもし朝鮮政府がロシアに対して,竜岩浦の利権を与えるようなことがあれば,日本の民衆感情は激化し,日本政府は戦争以外に選択がない』●『ロシアに朝鮮を取らせるようなことがあれば,日本の隆盛にある歩みは不面目な結末を迎えるだろう。世界史上最も驚嘆すべき進歩を遂げ,絶対の自信を持って偉大な未来を夢見ている日本国民は.このように認議している』

   

 『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』⑮

1903(明治36)年9月4日『英ノース・チャイナ・ヘラルド』

 『朝鮮の危機ー日本民衆の感情』

 

満州における情勢の進展については,新聞などで多くのことが語られてきた。そのため,今すぐにしろ近い将来にしろ,ロシアと日本の間の平和に危機が勃発すると予見されるのは,朝鮮においてであるということを,人々は忘れがちだ。

全く反対の意見もあるが,情勢が現在のまま推移すれば戦争が起こりそうだというわけではない。この記事を書いている時点で,満州問題の方は,日本が受け入れられるような決着がつく見通しが立っているが,朝鮮の方は,両国とも次の動きに出る前に,活動休止期間が必要な段階に来ている。

 

もし朝鮮政府がロシアに対して,鴨緑江河口の竜岩浦の貸借権のような利権を,もう1つ与えるようなことがあれば,日本の民衆感情は激化し,日本政府は戦争以外に選択がないところまで追い込まれるだろう。

 

満州における事態の経緯に注目し,世界中の耳目を集めている外交戦争の場は,満州だけだといまだに考えているような人々には,上述の意見は誇張だととられるかもしれない。しかし日本を代表する人々が.これと同じ意見を持っていることは間違いない。

 

ロシアが満州だけに関心を限定していた間は,いくら激しく日本が抗議しようとも.戦争の危険は少なかった。戦争になった場合.世界中がどのような態度を見せるか,両国とも不安だったのだ。このことは満州問題に関連して両国間の平和を維持するのに,少なからず役立ってきたし.今後も役立つだろう。

満州問題のために戦争すべきかを.日本で国民投票を行ったら,平和を支持する者がかなり多いのではなかろうか。しかし,朝鮮に関して同じような投票を行えば,話は全く違うことになるだろう。

ロシアが最近朝鮮でとった行動は,日本人を憤慨させているが,この怒りはももフランスがイギリス海峡諸島で似たようなことを行ったら,イギリスにおいて巻き起こるのと同じたぐいの怒りだ。

日本の国益は,朝鮮の過去,現在,未来と密接に関係している。朝鮮における日本の利益がロシアによって著しく侵害された場合.日本が武力に訴えるのは,必然の帰結だ。

ロシアが満州で行ったゲームを,あらゆる面で自国ときわめて密接に結びついている国で再び行うことは,絶対に許してはならない,というのが現在の日本の国民感情にはかならない。

東京,横浜,神戸,京都という主要都市で指導的市民の集会が開かれ満員の盛況を呈しているが,その状況は現地新聞に逐語的に報道されている。大会における発言は,愛国的なものばかりではなく,日々の事態の推移や,朝鮮における日本の通商利益の重要性とロシアのそれとの比較が,明瞭かつ正確に説明されている。

 

現在探究中の問題に対して,聴衆の関心を増大させるようなあらゆる問題が討議されている。日本で最も著名な名家の人々も,これらの大会に出席し応援して,大会に箔をつけている。

そして,断固たる態度をとることを政府に要求する決議が採択され,関係当局に提出されている。このほか,新聞にも載らないような無数の民衆大会がいたるところで開かれている。人が2,3人集まれば,必ずこの問題の議論が始まる。日本国中すべての階級を通じて意見が一致じている。

もしここでロシアに朝鮮を取らせるようなことがあれば,日本の隆盛にある歩みは不面目な結末を迎えるだろうというのだ。世界史上最も驚嘆すべき進歩を遂げ,絶対の自信を持って偉大な未来を夢見ている日本国民は.このように認議している。

したがって,もしロシアが朝鮮侵略を続ければ.日本が武力で抵抗するのは避けられない。このことをペテルプルグが十分理解することを切に願うものだ。

 

 - 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

★『Z世代のための日本政治史講座㉒』★『歴代”宰相の器”とな何か!』★『日本の近代化の基礎は誰が作ったのか』★『わしは総理の器ではないとナンバー2に徹した西郷従道』★『なんでもござれと歴代内閣に重宝されて内務大臣三回、海軍大臣七回、陸軍大臣(兼務)一回、農商務大臣などを歴任、縁の下の力持ちに徹し、有能人材を抜擢した』

     2012/09/09 &nbs …

no image
●「従軍慰安婦問題」「村山談話」「河野談話」などについて村山富一・元首相が記者会見(日本記者クラブで、90分)

  「従軍慰安婦問題」「村山談話」「河野談話」など について村山富一・ …

no image
日本敗戦史(52)A級戦犯指定の徳富蘇峰が語る 『なぜ日本は敗れたのか』④「東亜民族指導の資格欠如」(大東亜共栄圏盟主のお粗末)

 日本敗戦史(52) マスコミ人のA級戦犯指定の徳富蘇峰が語る 『なぜ日本は敗れ …

no image
[ オンライン講座/清水寺貫主・大西良慶(107歳)の『生死一如』12訓★『 人生は諸行無常や。いつまでも若いと思うてると大まちがい。年寄りとは意見が合わんというてる間に、自分自身がその年寄りになるのじゃ』

    2018/11/18 &nbsp …

no image
★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」-「日英同盟の影響」⑭ 1902(明治35)年11月8日『米ニューヨーク・タイムズ』 ●日露戦争開戦2ゕ月前『満州を条約をうまく利用して占領、開発したロシア』★『嫉妬深い日本ですら,ロシアの領土支配に武力で立ち向かおうとはしないだろう。ロシアの支配権はそれほど確立しているのだ。』

     ★「日本の歴史をかえた『同盟』の研究」- 「日英同盟の影響」⑭ 190 …

no image
速報(247)◎『日米原子力委員会のリスク管理の天地の落差』『情報隠し、公文書の不保存は国民への重大犯罪である」

速報(247)『日本のメルトダウン』 <日本が民主国家ではないことの証拠> &n …

no image
クイズ>国難の研究―誰が日本を潰したのか・東郷平八郎が日米戦争反対の海軍軍令部長をどなりつけた開戦のトラウマ

      &nbs …

no image
速報(448)『日本のメルトダウン』●『竹中平蔵「アベノミクスは100%正しい」●『中国バブル崩壊後、大相場がやってくる』

  速報(448)『日本のメルトダウン』   ●『竹中平蔵「 …

『Z世代のための<日本政治がなぜダメになったのか>の講義』②<日本議会政治の父・尾崎咢堂が政治家を叱るー『売り家と唐模様で書く三代目』②『自民党の裏金問題の無責任・C級コメディーの末期症状!』●『80年前の1942年(昭和17)の尾崎の証言は『現在を予言している』★『『 浮誇驕慢(ふこきようまん、うぬぼれて、傲慢になること)で大国難を招いた昭和前期の三代目』』

     2012/02/24&nbsp …

『Z世代のための日本風狂人列伝③』★『 日本一の天才バカボン・宮武外骨伝々③』★『百年前にアナログメディアの創造力を最大限駆使して<封建日本>と正面から対峙した戦うジャーナリス、パロディストだよ』

(2009/07/12/日本風狂人伝⑰記事再録編集  「滑稽新聞」(明治三十六年 …