『リーダーシップの日本近現代史』(133)/記事再録★『大宰相・吉田茂首相と戦後憲法』ーマッカーサーは 憲法は自由に変えてくださいといっている。 それを70年たった現在まで延々と「米国が新憲法を 押しっけた」「いや日本が押しっけられた」と非難、 論争するほど無意味なことはない』★『1週間で戦後憲法を作った米国の超スピード主義』『憲法改正を70年間議論している超スローモーな日本沈没政治』
日本リーダーパワー史(685)記事再録
『1週間で戦後憲法を作った米国の超スピード主義』『その戦後憲法の改正を70年間議論している日本沈没政治』
前坂俊之(静岡県立大学国際関係学部名誉教授)
新憲法が作られたいきさつは1945年(昭和20)10月、GHQは憲法改正を日本側に指示、幣原内閣の松本烝治(憲法改正国務大臣)が中心となって憲法草案(松本試案)を作成した。
しかし、その内容が明治憲法と同じ保守的にすぎるとして翌年2月3日マッカーサーの緊急指令で、GHQが極秘裏に1週間で改正草案がまとめ上げた。この英文草案は13日に吉田外相、松本国務相、白洲次郎終戦連絡事務局次長らが出席した外相官邸での憲法問題の協議会で、突然GHQ案が提示され、民生局(GS)局長のホイットニーは「マッカーサーは天皇を支持する者であって、この案は天皇personを守る唯一の方法である」と説明した。
英文案を見た日本側は「天皇の象徴化」「戦争放棄」など改革案の多くに驚愕し、特に松本国相は猛反対しGHOと激しくやり合った。その後、GHQの矢の催促を受けて幣原首相、吉田外相は天皇の意向を拝聴したが、昭和天皇は賛成を示したので、26日の閣議でGHQ草案を基に日本案を作り、松本国務相、佐藤達夫法制局第一部長、入江俊郎法制局次長らが案文を作成することになった。
当時、天皇の戦争責任追及の国際世論が強く、吉田はマッカーサーの言う如く天皇さえ助かれば、その他の項目はあまり重要でないと判断したのである。
吉田は「わが国の当面の急務は講和条約を締結し、独立・主権を回復すること。1日も早く、民主国家、平和国家の実を内外に表明し、信頼を獲得する必要があった。憲法改正は大事だが、立法技術的な面などにいつまでもこだわるのは得策ではない」と「回想10年」(中公文庫、2014年)と語っている。
第9条の戦争放棄については、吉田自身が戦争中に東條英機内閣に抵抗した反軍容疑で憲兵隊に逮捕、2か月も拘留された英米派の自由主義者であり、9条には反対ではなかった。
鈴木貫太郎前首相の『負けっぷりを良くせよ』「まな板の鯉となれ」を胸に、「戦争に負けても、外交でかつ」との決意で68歳で首相となった吉田は外交力とジョークを発揮して、マッカーサーと強い信頼関係を結び、一刻もはやい独立、国権回復を目指したリアリスティックな政治家だった。
GHQと吉田も協力して作ったこの憲法はどれだけ民主的な条文が盛り込まれるかに連合国は重大な関心をもった点で、国際条約的な性格があったが、一部の議員や国民はその点が理解できなかった。
このために「押し付け憲法」という批判が吉田内閣退陣後(昭和29年12月)後、鳩山内閣の下で憲法改正論議として高まってきた。
吉田は「押しっけ憲法論」について昭和32年(1957)12月に開かれた第八回憲法改正総会で書簡を送り反論した。
「この憲法については、それが占領軍の強権によって日本国民に押しっけられたものだとする批評が近頃、強くなっている。
しかし私はその制定当時の責任者としての経験から、押しっけられたという点に、必ずしも全幅的に同意しがたいものを覚えるのである。
なるほど、最初の原案作成の際に当っては、終戦直後の特殊な事情もあって、かなり、せきたててきたこと、内容に関する注文のあったことなどはあるが、さればといって、その後の交渉経過中、徹頭徹尾〃一方的″もしくは〃強制的〟というのではなかった。わが方の専門家・担当官の意見に十分耳を傾け、わが言い分、主張に聴従した場合も少くなかった。
われわれの議論がなかなか決しない際などには、先方としてよくいったことは『とにかく実施して成績を見ることにしてはどうか、日本側諸君は、旧憲法の頭で考えるから、とかく異存があるのかもしれぬが実施してみれば、案外うまくゆくということもある、やってみて、どうしても不都合だというならば、適当の時機に再検討し、必要ならば改めればよいではたいか』ということであった・そういう次第で、時の経過とともに彼我の応酬は次第に円熟して、協議相談的となってきたことは偽りなき事実である』と否定した。(回想10年)
この吉田の証言を裏付けるマッカーサーの手紙がある。
マッカーサーは1947年(昭和22)1月3日、吉田首相への手紙で次のような重要なことを書いているのだ。新憲法施行の2ヵ月前のことである。
「もし必要ならば、憲法改正する自由な機会を完全かつ継続的に日本国民に保証するため、憲法施行の第1年と第2年との間に新憲法はふたたび連合国と国会とによって公式に再検討せられるべきであると連合国は決定した。
もし連合国がその際必要と考えるならば、この憲法に関する日本人の意見を直接たしかめるため、国民投票か、他の適当な手続きを要求するかも知れない。
憲法をたえず再検討することは、いうまでもなく国民に固有の権利であるが、貴下が事態を十分に承知しておられるよう、連合国の立場を特に御報らせする次第である。 敬具」
つまり、結論はでている。
マッカーサーは憲法は自由に変えてくださいといっている。それを70年たった現在まで延々と先延ばしで、小田原評定を続けて「米国が新憲法を押しっけた」「いや日本が押しっけられた」と非難、論争している。永田町政治は決定能力のない政党、政治家、口舌の徒、政党という名の烏合の衆団の「永田町田舎芝居」といわれても仕方あるまい。
関連記事
-
-
「第45回 東京モーターショー2017」―『トヨタの展示ブースの「TOYOTA CONCEPT-愛i』★「TOYOTA CONCEPT-愛i RIDE」
日本最先端技術『見える化』チャンネル 「第45回 東京モーターショー2017」 …
-
-
高杉晋吾レポート⑦日本の原発建設は住民の命を「いけにえ」に、企業の利益を守る立場で出発②
高杉晋吾レポート⑦ 日本の原発建設は住民の命を「いけにえ」に、 企業の利益を守る …
-
-
速報(139)☆『第一原発からの撤退認めていたら東北は全滅していたー菅内閣の元側近が明かす』ほか
速報(139)『日本のメルトダウン』 ☆『第一原発からの撤退認めて …
-
-
『東京裁判のその後』ー裁かれなかったA級戦犯 釈放後、再び日本の指導者に復活した!
裁かれなかったA級戦犯 釈放後、再び日本の指導者に復活! …
-
-
『日中歴史張本人の 「目からウロコの<日中歴史認識><中国戦狼外交>の研究②』★「袁世凱の政治・軍事顧問となった坂西利八郎(在中国25年)が「日中親善・衝突・対立・戦争の歴史ネジレ」について語る②』
2014/11/25 記事再録 …
-
-
速報(183)『日本のメルトダウン』☆『3/11福島原発の半年後の真実-リアリズムと文明論の複眼を持て(上)』
速報(183)『日本のメルトダウン』 ☆『3/11福島原発の半年後 …
-
-
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1053)> 『パリ協定を離脱した米国の孤立化』★ 『トランプの連続オウンゴールで中国が『漁夫の利』を占めた』●『PM2.5などの大気汚染、水質汚染、土壌汚染、汚染食物など史上最悪の 『超汚染環境破壊巨大国家」中国に明日はない。』
★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1053)> …
-
-
日本リーダーパワー史(757 )―『トランプの政策顧問で対中強硬派のピーター・ナヴァロ氏「米中もし戦わば」(戦争の地政学、文芸春秋社刊)を読む」●「米中対話は不可能である」の結論は「日中韓朝対話も不可能であった」に通じる。」★「明治以降の日中韓朝150年戦争史は『エスノセントイズム」「パーセプション」「コミュニケーション」『歴史認識」のギャップから生まれ、『話せばわかるが、話してもわからないことが わかった!」、ならばどうするのか、難問を解かねばならない。
日本リーダーパワー史(757 ) トランプの政策顧問で対中強硬派の …
-
-
『リーダーシップの世界日本近現代史』(282)★近藤康男(106歳)の「七十歳は一生の節目」「活到老 学到老」(年をとっても活発に生きよ 老齢になるまで学べ)』★『簡単な健康法を続ける。簡単で効果のあるものでなくては続けられない。大切な点は継続すること。★『驚異の106歳を達成した毎晩、全身を10分間「ぐっすり熟睡できる指圧法」を一挙大公開!』
2018/07/21百歳学入門(237)記事再録 近藤康男(106) …
-
-
日本メルトダウン脱出法(840)『ディープニュース座談会ー迫りくる『一億総下流衝撃社会』の『年金老人残酷物語』の衝撃①②(動画45分)
日本メルトダウン脱出法(840) 『ディープニュース座談会ー迫りくる『一億総下 …
- PREV
- 『リーダーシップの日本近現代史』(132)/記事再録★『昭和天皇による「敗戦の原因分析」①★『敗戦の結果とはいえ、わが憲法改正もできた今日において考え て見れば、国民にとって勝利の結果、極端なる軍国主義 となるよりもかえって幸福ではないだろうか。』
- NEXT
- 『リーダーシップの日本近現代史』(134)/記事再録★『山県有朋から廃藩置県の相談された西郷隆盛は 一言で了承し、即実行したその日本史上最強のリーダーシップ②』( 下中弥三郎『大西郷正伝第2巻』(平凡社、昭和15年))★『行財政改革を毎回唱えながら、中央省庁再編、道州制、都道府県市町村再合併、財政削減はなぜ進まないか、リーダーシップ不在が続く』
