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日本リーダーパワー史(93)尾崎行雄の遺言・日本の派閥政治を叱る、『元老は去れ,政権を返上すべし』

      2015/01/02

日本リーダーパワー史(93)
尾崎行雄の遺言・日本の派閥政治を叱る、元老は去れ
元老はすべからく政権を返上すべし
前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
9月14日、民主党の代表選挙という茶番劇は終わった。今の永田町政治のガン細胞(元老)の小沢一郎にふりまわされて、沈没船日本丸は余命数年のうち2ヵ月という貴重な時間を空費、「死に至る病」はますます重病になってきている。
ここに紹介するのは今から約100年前の1912年(大正元)十二月十六日、政友会大演説会(明治座)における尾崎行雄の『憲政擁護、閥族打破』の演説である。
尾崎は今の官僚制度、派閥制度につながったその元凶である薩長の藩閥政治、軍閥、閥族の打破を叫び、その封建政治を鋭く批判している。尾崎が見事に語るこの百年前の遅れた政治、官僚(軍人)体制、政治家の低レベルが、今回の民主党の内紛、ゴタゴタ劇をみていて少しも進歩していないことがよくわかる。
 
民主党にはいまだに理念もなく、派閥、閥族のあつまりであり、その大ボスが小沢一郎なのである。これまた低レベルのマスコミの剛腕と言うミスリードに躍る政治家、国民が沈没船の甲板でバカ騒ぎの祭りであり、終わってみると秋風が身にしむ寒々とした政治季節がやってくる。
 
 
元老はすべからく政権を返上すべし
   
薩長閥の陸海軍
 
諸君はすでに演説に食傷したであらうと思いますから、私は出来るだけ短く行います。今よりよほど前に死なれた人であるが、諸君は定めて御承知の事と思ふ。
長州に山田顕義と云う元気者がありまして、これは内閣にも直々出入した人で、長州人中では一流の下位の人であったが、一夕端無く私と会飲した時に、酒の勢に乗じてから傲然として肩を怒らして「れわわれは馬上剣を振って天下奪ったのだ、君等は何を以て天下を取らというのだ」と云うことを尋ねました。
私はその一言を聴いて驚きましたが、その時私は答えて言うのに、「君等を攻めるのは君等を憎むためではない、全体閥族の処置が悪いから、改めようというというのである。君等の方においても考へて行いを改めないと、われわれは剣を振って君らを殺そうとも考へないが、道義の力と国民背後の応援を以て、その位置より放逐する決心である」と答えたことがあります。
 
以来、世の中は余程変わりまして、また、藩閥の勢力も漸次に衰へて来ましたが、今、顧みて考へますと、慄然として肌に栗の生ずるを禁じ得ない状態であります。
 
 今日の藩閥はわずかに余命を保って居るにすぎませぬけれども、その昔時においては政界の主立つたる位置は、皆な彼等が占めておりました。陸海軍、内閣等いづれの所を見ても、たいてい藩閥が占めておった。しかるのみならず、民間においては日本銀行の如き、勧業銀行の如き、共同運輸の如き、郵船会社の如き、みな薩長の人を戴いておったのであります。
 
およそ民間にありとあらゆる勢力は、皆な藩閥の徒が占めておったと云ふ状態でありました。しかるに世の中の進歩は恐るべきものであって、斯くまで全盛を極めて居った藩閥の力も、優勝劣敗の作用に淘汰せられて、民間の実業社会からは、殆んど今日は一掃せられた如き状態になりました。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)しかのみならず、政治社会からも一掃せられて、人員大いに減少し、わずかに陸海軍に立籠って、ここに余命を保つていると云ふに過ぎない。(「ビヤヒヤ」と呼ぶ者あり)
 
 かくの如く全盛を極めたものが、漸次退却してその末路、長州は陸軍に立籠り、薩は海軍に立籠って、この両城を守っておる今日の状態であります。その内にも薩摩の如きは、漸次、時世を改良致し、今日陸軍と海軍とを比較しますると、従来、海軍の方が寧ろ横暴を極めたる如き状態であったものが、全く一変して、漸次、悪習慣を改めて、国民的歩調を執らむとし、漸次に進歩したる歩調を取ってきたのであります。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)
 
これに反して長閥の立籠って居る陸軍は、ややもすれば国民及び、社会全体と歩調を異にして「国家に害を与えるという状態にありまするのは、まことに痛嘆にたえぬ次第である。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり。拍手大喝采)
 
 又彼等は末路、段々勢力を失墜すると共に、己のみの力を以てその勢力を維持することが出来ないことをー認むるが故に、他県の中より帰化人を募集するに至ったのである。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)
 
即ち彼の先達ても内閣組織のお鉢を回された平田東助と云う人は、東北米沢あたりの人でありますざれが,帰化して純然たる長州人になった。又、大浦兼武は薩摩の人であると云うが、これまた長州人の手先になって今日は働いておる。(大笑)又、上原勇作と云う人の如きも、鹿児島県人であるのに、長州の手先に使われて、その帰化手続中に敗北した。(大笑)
 
かくの如く己の力のみに依って勢力を維持することの出来ないことを悟って、各方面から帰化人を雇いきて、一方に政治社会に勢力を占め、一方に立籠ったるところの陸軍を根拠として、さらにその余焔を遅うせんするのは、今日の状態であります。立籠る横着は云うに及ばずとして、立籠られたる軍人全体はまことに気の毒に考へられます。
 
(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)これ等は日本全国の人々から成り立っておるのでありまして一朝事あって命を捨てるのは、日本全国の人々であるに拘らず、わずか少数の長州人が、あそこに立籠ったがために、ややもすれば陸軍全体が国民の敵となりたるが如く誤解せられ、陸軍と国民と歩調を一にして往くことの出来ないのは、彼の長州敗残の末路、ここに龍城せられたからに外ならぬので御座います。(拍手)
 
陸海軍の対立抗争
 
 ここにおいて真誠に陸軍を愛する者は考へなければならぬ。公平無私の考へを起こし国民の声を聞き、実地にこれに呼応して往くやうに致さなければならぬ。(柏手大喝采)
 
およそ陸軍と申しましても、海軍と申しましても、共に国を守る道具である。相敵視するもので無くて、相提携すべきものである。然るに不孝にして、薩摩の残党が海軍に立籠り、長州の残党が陸軍に立こもり、たちまち陸海軍対立の傾向を生じ、日本国内に半独立国の如きものを生ずるに至ったのである。この半独立国の如きものが互に軋轢、競争して、海軍を拡張するならば、陸軍も拡張しなければならぬ、陸軍を拡張するならば、海軍も拡張しなければならぬというやうに、道理にも事実にも適わざる議論を主張するようになった。
 
凡そ世界のいづれの所を見ても、かくの如き所が他にありますか。海軍、陸軍は、共に国を守り敵を防ぐ道具である以上は、そのいづれにか重きを置き、その一方を充実すれば、国防は安全であるから、他の一方は寧ろこれを減らしても差支ないと云ふのが道理であります。
 
各その国の状勢によって、四方海に囲まれたところの国としては、英国の如きは、海軍を主とし、陸軍を従とする。海軍は一日もゆるがせに出来ない、これを充実すると云うことは、いわゆる英国国防の主とする所である。即ち国家各々その位置状勢に応じて、あるいは陸軍を主とし、あるいは海軍を従とするにも拘らず、我が国の如きは、海軍も大いに充実しなければならぬ、その海軍を拡張すれば同時に又、陸軍も拡張しなければならぬということは、世界列国にかつて先例を見ない所であります。(「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)
 
 その結果として国民は、国を守る費用、即ち国防費を二重に払わなければならぬと云ふことになる。陸軍、海軍は車の両輪、鳥の両翼の如きものである。1も偏廃することは出来ないと云ふのであるから、人民は共にこれ等の費用を払う。即ち二重の軍費を払わなければならぬ状況に陥っております。さなきだに経済の点においては、極めて薄弱なるわが国民、イギリス若くはアメリカに較ぶれば、五分の一、十分の一にも足りぬ程しか持たない人民が、二重に租税を払って、どうして国が盛んに栄えて往くことが出来ましょうか。
 
軍用金がなければどうして戦争が出きましょうか。弁慶の七つ道具が如何にいかめしくありましても、腹が減って歩くことが出来なければ、誰も怖がりは致しません。(拍手大喝采)
 
 誠に世界第一に富めるところのイギリスは、世界いたる所に属領を持っております。本国は島国でありまするが、世界到る所に散布して居る領土を守るには、海軍が要ると同時に、よほど陸軍も要るのであります。そのイギリスでも陸海軍共に拡張しては、英国の富力を以てしても足りない。

それ故に主として海軍に重きを置きまするけれども、陸軍は実にみる影も無いあり様にしておいて漸足しておる。殊に東洋の領土、アジアのインドにおいて三億万のインド人があって、やゝもすれば叛旗を翻えそうとする気味が随分見えるのでありまして、まことに日露の戦争において、東洋人が欧洲人に勝ったと云うより後はインド人の独立の気性がよほど強くなって、ややもすれば独立しようと云ふ考を持って居る者が、日に日に増加しておる。

 
三億人のインド人、わずか朝鮮の1500万や2000万と同一には語られません。朝鮮に対しては、ロシアが満洲の境上に臨んでおりますが、インドに対してもまたロシャがアフガンから南に下って、インドを圧しており、内には三億の独立思想を包蔵する土民あり、外には大兵を擁してロシャがインドを襲わんとしておるのは、最早敷十年にわたって居るところの形勢であります。

その大属領にイギリスがどれだけの兵隊を送っておりますか、本国兵は七万五千より外にはない。……それに対して我が国は十九師国の兵を有し、その兵は内地を空うして、これを満韓の野に送ることが出来る。戦時においては100万の兵を輸送して戦わしめることが出来る。然るにイギリスはたった7万五千の兵で、とにかくインドを守っておる。

 
日本はいざといえば百有余万の者を送るところの、兵隊があるにも拘わらず、なほ二箇師団を増さなければ、1日も枕を高くすることができないというのは、何たる臆病者であるか。(拍手大喝采)
 
我が国、軍人がかかるごとく臆病者よりなつてをると云うことは、吾々は今まで予想しなかった。長州軍人が臆廟論を主張するに至っては実に驚くべき極である。(拍手)
 
アメリカの常備軍はわずか九万人
 
又、アメリカは1国として随分広大なる土地を有する大国である。人民の数も多い。その領土はわが国の如く一の人種をもって国を組織しておる有様とは、全く違っております。而して大陸に国を立ておりながら、その能事は常備兵員わずか八万何千人・九万に足りないのである。アメリカの富を以ってして、アメリカの大を以てして九万に足らざる常備軍を有しておるに過ぎない。
 
しかるに我が国の小を以てしてなを十九師団で満足することが出来ないというのは、単に軍人中の長州派が…いままで政界にも経済界にも、その他あらゆる民間会社にも、大勢力を有して手を広げておった藩閥中の長州派…:漸次優勝劣敗の作用によって、淘汰せられた残党が……ここに立てこもって、ここで最後の足場を作りたいというために、己の乾児を養い己の勢力を扶植するためにこの様なことを唱えるのであります。(拍手)
 
 
 
その証拠は幾許もありまするが、今日の形勢は桂公爵が出でて、内閣を組織しょぅとしておる。若し桂公が内閣を組織するなれは、あるいは陸軍拡張を抑ふると同時に・海軍拡張をも抑ふるかも知れない。真に軍人の職務が国を守るにあるならば、いづれか一方の拡張が抑へられた時は、他の一方は是非共をこれを拡張せねばならぬはずである。

けれども、前段申述べた如く・長州の残党が陸軍の内に割きょしておるのであるかち、若し海軍の拡張を申しを並べまするならば、陸軍側は師団増設の延期にも両手をあげて賛成するに相違ない。ここで師団増設の主張が国家的でなくして、単に私利私情のために軍備拡張を叫ぶものであるいうことが分る。(「ヒヤヒヤ」と・呼ぶ者あり)

 
 
 

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