日本リーダーパワー史(93)尾崎行雄の遺言・日本の派閥政治を叱る、『元老は去れ,政権を返上すべし』
2015/01/02
長州に山田顕義と云う元気者がありまして、これは内閣にも直々出入した人で、長州人中では一流の下位の人であったが、一夕端無く私と会飲した時に、酒の勢に乗じてから傲然として肩を怒らして「れわわれは馬上剣を振って天下奪ったのだ、君等は何を以て天下を取らというのだ」と云うことを尋ねました。
私はその一言を聴いて驚きましたが、その時私は答えて言うのに、「君等を攻めるのは君等を憎むためではない、全体閥族の処置が悪いから、改めようというというのである。君等の方においても考へて行いを改めないと、われわれは剣を振って君らを殺そうとも考へないが、道義の力と国民背後の応援を以て、その位置より放逐する決心である」と答えたことがあります。
それ故に主として海軍に重きを置きまするけれども、陸軍は実にみる影も無いあり様にしておいて漸足しておる。殊に東洋の領土、アジアのインドにおいて三億万のインド人があって、やゝもすれば叛旗を翻えそうとする気味が随分見えるのでありまして、まことに日露の戦争において、東洋人が欧洲人に勝ったと云うより後はインド人の独立の気性がよほど強くなって、ややもすれば独立しようと云ふ考を持って居る者が、日に日に増加しておる。
その大属領にイギリスがどれだけの兵隊を送っておりますか、本国兵は七万五千より外にはない。……それに対して我が国は十九師国の兵を有し、その兵は内地を空うして、これを満韓の野に送ることが出来る。戦時においては100万の兵を輸送して戦わしめることが出来る。然るにイギリスはたった7万五千の兵で、とにかくインドを守っておる。
けれども、前段申述べた如く・長州の残党が陸軍の内に割きょしておるのであるかち、若し海軍の拡張を申しを並べまするならば、陸軍側は師団増設の延期にも両手をあげて賛成するに相違ない。ここで師団増設の主張が国家的でなくして、単に私利私情のために軍備拡張を叫ぶものであるいうことが分る。(「ヒヤヒヤ」と・呼ぶ者あり)
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