日本リーダーパワー史(120) 明治の2大国家参謀とは誰でしょうか!?・驚くなかれ、杉山茂丸と秋山定輔だね
明治37(1904)年に秋山がロシアのスパイだという「露探事件」がおこった。当時の桂内閣系による陰謀といわれるが、これを機に部数が下降線をたどった、杉山と並んで明治の政治黒幕的な存在だった。
『杉山茂丸と秋山定輔』
<『雄弁』1932年(昭和7)九月号>
下村 海南著
![](http://www.maesaka-toshiyuki.com/wp-content/uploads/2015/01/112609349454a5e828aa9fd6.79622392308250657.jpg)
しかし、文五郎なり、栄三の一年づっ年をとって行く事だけは間違いがない。文五郎、栄三のあとをつぐ人が出るかどうか、それもわからない。また、人形作人として後世後嗣ぐべき人なしといわれ、人形道の神様にたとえられている文三郎のような人、今後見られないといわれるが、果して、然るかそれもわからない。
維新の元勲として、伊藤博文あり、山県有朋あり、次いで新日本興隆の舞台に立役者として活躍せる者に、桂太郎あり、児玉源太郎,寺内正毅あり,後藤新平あり、田中義一あり、これらの人形を躍らした文五郎、栄三にたとへんは言葉が過ぎるかも知れぬ。
しかし、少くとも絶えず、政界の裏面に活躍し、殊に日清、日露の二大戦役の前後を通じ、奇策縦横、彼の春秋の蘇秦、張儀にも比すべく、かうした立役者の帷幄に活躍せる者に杉山其日庵がある。
↑ (この写真は日露戦争当時の杉山(写真左)と児玉源太郎(右)。2人は盟友で、杉山が児玉の参謀、フトコロ刀であった。これを見れば杉山のすごさがわかる。)人形とならず人形つかひになってる、それも黒衣を着た人形遣いであるというのである。本人はそういはなくとも、筆者はそういってるのである。しかもその手馴れた人形は、ぽっりぽっりと無くなつてゆく。おのれの命の影もまた一日一日と薄らいで行く。
ソロバン片手の細かい細かい数字を、大日本の百年の国策に取り交ぜ、談論風発相手を煙幕に巻き込んでしまうのである。
筆者が庵主の座談を耳にしたのは、大正四年、台湾赴任以来の事で、爾来すでに幾十回たるを算し切れない。
或る時はアパートの一室で、夜蔭に至るまで6 時間近くも、さしで話し合ったというよりは、庵主の立続けの快弁にみせられた事もある。
庵主の座談には、例の政界や軍服の立役者が軒並に出て来る、先方から云へば、杉山をかったとも、彼を利用したともいうであらう。
庵主からいへば芻僥の言を述べたに過ぎないというか、それともおれはただの人形の足使いであったーイヤ左使いであったとりふか、
イヤ人形使い(シテ)として人形を躍らしたというか、それは分らぬ。
とにかく、その話題にのぼる役者の顔ぶれれといい、劇場の大きさといい、舞台の装置といい、一筋書が日清、日露の戦役に織り込まれて
いるのだから、聞いていると、とても面白い。
しかし、一度新橋あたりの会席で主人となり、朝に野に文に武に名の売れた一流どこの客種をずらりとならべる、それだけでもかなり壮観
であり奇観である。
後藤伯爵などは、いつも床の間正面か、その附近に鼻目がねをギョロつかせている。その前へノソリノソリと乗り出して
『おい後藤,一杯もらおうか』とばかりに、ドッコイショとエンコして、四本半になった指先をぐつとさし出すところなどは、我党の士をして快
哉を叫ばしめ、気の弱い芸者をしてはらはらさせる。
それなれば「おい下村一杯もらおうか」とくるのかと思うと、中々以て左にあらず、『下村さん、下村さん』とさんづけにする、
こまい人形はつかいにくいと見える。
つまり威勢隆々飛ぶ鳥も落すやうな大物にぐわんと一本当身を喰はしておくだけで、他は眼中に置かぬといふ形である。
このほど、台華社の楼上に見舞った時、『明石も死ぬ、寺内も死ぬ、田中も死ぬ、団まで死んだ。
貴様もいい加減に一緒に来いと、眞黒闇の中から野郎共おれの足を引張りよる。
しかし、此の時局を前にして、これを見すてて行けますかい、見物するだけけでも生きてをらにやならぬと、寝台にしがみついてがん張る
ところだよ』と寝台の上で哄笑する庵主を見た。
近頃は工場の機械で大仕掛に規則と先例で、堅めた千人一色の人形が大量生産で吐き出されてる。型外れの人形は
段々影をひそめて行く、時は次第に流れて使いなれた人形はいつの間となく亡くなってゆけば、人形使いも一年づっ年をとってゆく。
さびしいと思うのは攝津越路去って後の、老いたる文五郎を見る文楽ばかりで無い。
どうもソブラノ式の声は男子には割が悪い、言いづらそうであり又聞きづらい。大口喜六、小川郷太郎諸士の声などはソプラノ式に似て
非なるものである、きつく、鋭く響く、やわらかみが少い、どう声の調子は濁った方が耳当たりが好い、キイキイ声の達弁は、却ってドス調の訥弁がよい。
![](http://www.maesaka-toshiyuki.com/wp-content/uploads/2015/01/92724059354a5e828ddba14.99023914366651361.jpg)
訥弁はそこに何等かの真面目さを示している、あまりにしゃべる立てるのは人間の柄が簿っべらであるような感じを与える。
言葉のどもる人は重厚といふやうな感じを与える。
僕の知る限りでは、その昔、逓信省で古市公威男を上官に仰いだ事がある。男のどもる調子が、我われにとても懐しい暖かい
真面目な感じを喚び起した。
翁は訥弁である。然しそれが雄弁以上に開く者の心を捉へる。
二六新報社が悲境に終った時、手当り次第七とこ借りをした高利貸や、あらゆる債
権者方面に毎日、自転車で軒並みにことわりに回る。それが1ヵ月30回とつゞけられ
ると、債推者の方が根負けして、いやもう言い訳だけに毎日押かけられてはたまらぬと悲鳴をあげさした秋山君。 自転車で富士登山を強行した秋山君。肺患重くして外遊の途中から須磨まで帰り、快癒に赴くとその地から、そのまま外遊に登った秋山君、
医者から見放された病と四つに組んで逐に病魔をくみ伏せ、角力をとる、自転車にのる、サンダーの鉄亜鈴を振り回はす、硬式テニスをやる。
ていたが、毎日の様に君の訥弁に魅せられていた。数限りない君の思い出話し、離婚話しはまた別に筆にする時もあろう。
ただその時分、僕が風邪など引いて床につくと、定まった様に名士の伝記とか言行録、さては体育に関する書籍類を枕許へ置いて行く。
忘れもせぬ、ある時に枕元でポッリボツリと得意の訥弁で『君は大臣にもなるだらう、なってもそれは不思議でない。僕は頭を下げない。
しかし、君が自分の健康を考へて、目方が十六貫になつたら、君の前に頭を下げて平伏する』
骨が折れるといって、保健をすゝめるのである。おもしろいじゃないか、しかしさうまで心遣いをして貰っても、時は日露戦役の直後で
あつたが、常時目方が約十四貫目今日に到るも、十四貫目を上下してをる。
十六貫目はおろか十五貫目にもなりさうにない、爾来折々体重を計る時毎に、よく秋山君の言葉を連想する。
関連記事
-
-
世界/日本リーダーパワー史(897)『米朝会談は5月に迫る、トランプの仕掛ける貿易戦争では日本もターゲットにされた。 トランプ大統領と蜜月の安倍首相は、寝耳に水の窮地に立たされている。
世界/日本リーダーパワー史(897)- 安倍首相が森友学園をめぐる財務省の公文 …
-
-
日本リーダーパワー史(207)大空襲(放射能汚染)を警告、日米戦争(原発推進国策)の敗北を予言した海軍大佐・水野広徳(下)
日本リーダーパワー史(207) ―政治家、リーダーの …
-
-
日本の最先端技術「見える化」動画ー『よくわかるIoT/スマート工場』-『第3回スマート工場EXPO(1/19)ー蔵田 武志・産業技術総合研究所/筑波大学大学院(教授)の「現場のラボ化とラボの現場化」のプレゼン
日本の最先端技術『見える化』チャンネル 第3回スマート工場EXPO …
-
-
知的巨人の百歳学(163 )記事再録/『京都清水寺の貫主・大西良慶(107歳)』★『人生は諸行無常や。いつまでも若いと思うてると大まちがい。年寄りとは意見が合わんというてる間に、自分自身がその年寄りになるのじゃ』
2018/01/28   …
-
-
人気リクエスト記事再録『百歳学入門』(221)荻原井泉水(92歳)の『天寿・長寿10ヵ条』「随」の精神で「天」に感謝し「天」に随い「天」を楽しめば【天寿】となる
2015/01/01の百歳学入門(47) 荻原井泉水(92歳)の『 …
-
-
日本リーダーパワー史(261)『山県有朋―『日本陸軍の父』は九つもの庭園を作ったガーデニアン!』
日本リーダーパワー史(261) 『山県有朋―『日本陸軍の父』は九つ …
-
-
世界、日本メルトダウン(1016)「地球規模の破壊力示したトランプ」とガチンコ対決!★『この「仁義なき戦い」「場外乱闘」はプロレスで見る分には面白いが、地球の運命が核ボタンを持ったトランプの口先介入、指先クリックできまるとなると、「恐怖のトランプ・スリラー劇場」
世界、日本メルトダウン(1016)- 「地球規模の破壊力示したト …
-
-
<裁判員研修ノート⑩>冤罪を生み続ける構造は変わったのか―裁判官・検察官・警察官の冤罪天国の実態は?
<裁判員研修ノート⑩> 冤罪を生み続ける構造は変わったのか― 裁判官・検察官・警 …
-
-
「Z世代のための日本リーダーパワー史(1233)』★『三苫薫選手と岸田首相を比較する-プロとアマ、実力と人気稼業』★『憲政、議会政治の神様・尾崎行雄は「売家と唐様で描く三代目」を唱え、「三代目が日本をつぶす」と警告していた。今やその「日本沈没」の極限に』
日本リーダーパワー史(1233) 三苫選手と岸田首相を比較する-プロとアマ、実力 …
-
-
歴史秘話「上野の西郷さんの銅像はこうして作った」「西郷さんと愛犬」の真相ー彫刻家・高村光雲が語る。
「上野の西郷さんの銅像はこうして作った」-彫刻家・高村光雲が語る。 銅像「西郷 …