前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(919)記事再録『憲政の神様/日本議会政治の父・尾崎咢堂が<安倍自民党世襲政治と全国会議員>を叱るー『売り家と唐模様で書く三代目』②『総理大臣8割、各大臣は4割が世襲、自民党は3,4代目議員だらけの日本封建政治が国をつぶす』②

      2018/07/03

日本リーダーパワー史(919)

『売り家と唐模様で書く三代目』②

前坂俊之(ジャーナリスト)

浮誇驕慢(ふこきようまん)で大国難を招いた昭和前期の三代目

<今回の3/11福島原発事故と同じ。クリーンエネルギーという原発神話、技術大国日本では原発事故はありえないという技術過信と驕り。事故、地震、津波を想定外とする油断、怠慢こそ浮誇驕慢(ふこきようまん)そのもの>

② 第三代目(昭和戦前)ころの社会、国民感情はどうなったのか

 

全国民は、右の如き精神状態を以て、1930年(昭和5)、満州事変勃発前年のころより、第三代目の時期に入ったのだから、世の中、国民性は、いよいよ浮誇驕慢(ふこきようまん=浮かれるて、慢心しておごり高ぶること)におもむき、あるいは暗殺団体の結成となり、あるいは共産主義者の激増となった。

また、軍隊の暴動(5・15事件。2・26事件)やテロが激増し軽挙盲動の事件が次々に起こり、いずれの方面においてか、国家の運命にも関すべき大爆発、まかりまちがえば、川柳のいうごとく『売家と唐様でかく3代目』と書かねばならぬ運命にも到着すべき大事件を巻き起こさなければ、止みそうもない形勢となった。

私は憂慮に耐えず、何とかしてこの大爆発を未然に防止したいと思って、八方苦心したが、文化の進歩や交通機関の発達によって世界が縮小し、列国の利害関係が複雑に絡んだ世界では、国家の大事は、列国とともに協定しなければ、安定を得ることは不可能と思った。

よって列国の現状を視察すると同時に、その有力者とも会見し、世界人類の平和と安定を保証する政策を協議したいと考えて、第4回目の欧米漫遊の旅に出た。

ところが米国滞在中、満州事件突発の電報に接して、愕然自失(がくぜんじしっ)した。

この時、私は『これは明白なる国際連盟条約違反の行為にして、加盟者五十余ヵ国の反対を招く事態になる。日本1ヵ国の力を以て、五十余ヵ国を敵に回すほど危険な事はない』と危惧した。

果たせるかな、その後、開かれた国際連盟の会議において、我国に賛成したものは、一国もなく、ただタイ国が、賛否いずれにも参加せず、棄権しただけであった。

このころまでは、我国の国際的信用は、すこぶる高く、われに対して、悪い感情を抱く国は中国以外には絶無といってもよいほどの状況であって、名義さえ立てば、わが国を援(たすけ)けたく思っていた国は、多かったように思えたが、何分、国際連盟規約や不戦条約の明文上、日本に賛成するわけにいかなかったらしい。

連盟には加入していない所の米国すら、不戦条約その他の関係で、わが満州事件に反対し、英国に協議したが、英政府はリットン委員(会)設置などの方法によって、平穏にこの事件を解決しょぅと考えていたため、米国に賛成しなかった。

また米国は、国際連盟の主要国たる英国すら、条約擁護のために起たないのに、不加入国たる米国だけが、これを主張する必要もないと考えなおしたらしい。

終戦70年・日本敗戦史(135) なぜ国際連盟を脱退し「世界の孤児」と化したのかー「満蒙の特殊権益」を死守するためで、  新聞は一致して脱退を支持した。(2)  http://www.maesaka-toshiyuki.com/war/9288.html 

 

終戦70年・日本敗戦史(135の続)「国を焦土と化すとも」と国際連盟を脱退する外交大失敗を冒した荒木陸相、森恪、松岡洋右のコンビと新聞の不見識
http://www.maesaka-toshiyuki.com/longlife/9519.html

 

日本敗戦史(136)新渡戸稲造が事務局次長を務めたことのある名誉ある国際連盟理事国を棒に振ってまで死守した「ニセ満州国の実態」とはー東京裁判での溥儀の証言
 http://www.maesaka-toshiyuki.com/war/9412.html 

 

私は王政維新(明治維新)後の二代目、三代目における世態民情の推移を見て、一方には、国運の隆昌を慶賀すると同時に、他方においては、浮誇驕慢(ふこきようまん)に流れ、ついに大国難を招致するに至らんことを恐れた。

故に1927年(昭和3)、すなわち維新後三代目の初期において、思想的、政治的、および経済的にわたる三大国難決議案を提出し、衆議院は、満場一致の勢いを以て、これを可決した。

満州事変に関して上奏文を宮相に密送す

上述の如く、かねてより国難の到来せんことを憂慮していた私なれば、満州事件の突発とその経過を見ては、一瞬も安堵するあたわず、煩悶懊悩の末、ついに、天皇陛下に上奏することに決し、一文を草し官相(内大臣)に密送して、天皇の書見に供たせられんことを懇請した。

満州事件を視て、大国難の種子が蒔かれたと思ったためである。ムッソリーニや、ヒトラーの如きも、武力行使を決意する前には、列国を怖れて、躊躇していたようだが、わが満州事件に対する列国の動静を視て安心し、ついに武力行使の決意を起こせるものと思ったのであろう。

ところが、支那事件(日中戦争)が起こり、英米と開戦するに至りても、国民はなお国家の前途を憂慮せず、局部局部の勝利に酔舞して、結末の付け方をば考えずに、今日に至った。

そのために生活の困難は、日に日に増加するばかりで、前途の見透しは誰にも付かない。

どこで、どうして、英米、支那を降参させる見込みかと問わるれば、何人もこれに確答することは出来ないのみならず、かえって徴音ながら、ところどころに,やっと『国難来る』の声を聞くようになった。

全国民の大多数は、国難の種子は、満州に蒔かれ、その後、幾多の軽挙盲動によりて、発育、生長して、ついに今日に至ったことを、全く感じていないようだ。

衆議院が満場一致で可決した三大国難決要の如きも、今日は記憶する人すらないように見える。

明治維新後三代目に当たる現代人(昭和戦前人)は
『売家と唐様で書く』ことの代わりに『国難とドイツ語で書いて』いるようだ……」

現在、不敬問題となっているのは、この意味の一端中、議会政治に関するものを略述して、一般公衆、特に選挙人の反省を促せるものに過ぎない。この事実がどうして不敬罪に該当するかほ、何人もこれを理解しかねるだらう。以上

昭和十九年四月十四日

大審院第3刑事部

裁判長 三宅正太郎殿

被告 尾崎行雄

おわり

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
世界リーダーパワー史(935)ー『迷走中のトランプ大統領のエアフォースワン』★『米中間選挙の予備選挙は事実上、9月12日に終わったが、情勢はこれまでとは一変して民主党が上、下院を奪還する勢い!(世論調査の結果)』

世界リーダーパワー史(935)ー 中間選挙の情勢はこれまでとは一変して民主党が奪 …

no image
速報(122)『日本のメルトダウン』<日中百年の難題?『放射能 福島原発は廃炉にできない』『中国は「乱世」突入の前兆か』

  速報(122)『日本のメルトダウン』   <日中百年の難 …

no image
日本リーダーパワー史(133)空前絶後の名将・川上操六(22)その急死とインテリジェンス網の崩壊

 日本リーダーパワー史(133) 空前絶後の名将・川上操六(22)その急死とイン …

no image
歴史張本人の<日中歴史認識>講義⑨袁世凱の顧問・坂西利八郎が「100年前の支那(中国)財政の混乱」を語る⑨

     日中両国民の必読の歴史の張本人が語る 「 …

no image
『オンライン講座/日本は新型コロナパンデミックを克服できるのか(下)』★『欧米紙はIOCを「ぼったくり男爵」と大批判』★『「無観客大会」へ 会議は踊る、されど決せず』★『「ホテルに缶詰め、食事はカップ麺と欧州選手団から非難殺到」』★『スペイン風邪の苦い教訓』★『「大谷選手の100年ぶりの快挙」』

『オンライン講座/日本は新型コロナパンデミックを克服できるのか(下)』      …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(118)/記事再録☆『日本の歴代宰相で最強の総理大臣、外交家は一体誰でしょうか ?!』★『 (答え)英語の達人だった初代総理大臣・伊藤博文です』★『●明治4年12月、岩倉使節団が米国・サンフランシスコを訪問した際、レセプションで31歳の伊藤博文(同団副使)が英語でスピーチを行なった。これが日本人による公式の場での初英語スピーチ。「日の丸演説」と絶賛された』★『「数百年来の封建制度は、一個の弾丸も放たれず、一滴の血も流されず、一年で撤廃されました。このような大改革を、世界の歴史で、いずれの国が戦争なくして成し遂げたでしょうか。』

  前坂 俊之(ジャーナリスト) 伊藤博文 (天保十二年~明治四二年) …

世界一人気の世界文化遺産『マチュピチュ』旅行記(2015 /10/10-18>「朝霧の中から神秘に包まれた『マチュピチュ』がこつ然と現れてきた水野国男(カメラマン)⓶

  ★<世界一人気の世界文化遺産『マチュピチュ』旅行記 (201 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(160)』ー『発行部数を「水増し」してきた朝日新聞、激震! 業界「最大のタブー」についに公取のメス』●『米大統領、5月サミット後の広島訪問を検討 』●『李首相も反旗?習主席がおびえるシナリオ「経済政変」 (金子秀敏) 』●『コラム:円高で懸念される外国人訪日客数、3兆円消費に影響も」

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(160)』   発 …

no image
<まとめ>頭山満について-『玄洋社』(頭山満)を研究することなくして、明治・大正裏面史を解くことはできないよ

 <まとめ>頭山満について  『明治維新から昭和敗戦史』 ま …

no image
日本リーダーパワー史(385)児玉源太郎伝(7)「インテリジェンスから見た日露戦争ー膨張・南進・侵略国家ロシア」

 日本リーダーパワー史(385) 児玉源太郎伝(7) ①  5年後に明治維新(1 …