前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

<名リーダーの名言・金言・格言・苦言・千言集②>「発明は技術者の命である」日立製作所創業者 小平浪平ほか10本

   

 
 
<名リーダーの名言・金言・格言・苦言・千言集②>
         前坂 俊之選
 
 
 
 
◎●「世の中は勘定と感情のバランス」
電力の鬼 松永安左衛門
 人生には敵も味方も半々である。敵ばかりでは過ごしていけぬが、味方ばかりというわけにもいかぬ。敵のあることを、恐れてもならぬし、味方のあることに、頼り切ってもいけない。松永は言う。
 
「要は、自主独立の気概をいつも失わぬことだ。世の中、常に利害の錯綜である。フトコロのカンジョウ(勘定)と、心のカンジョウ(感情)との、二つが入り交じって、よけいに複雑になる」
 
 しかし、複雑は複雑でも、お互いにじっくり話し合えば、わかり合える。一つの仕事をめぐって、敵といい、味方といっても、実はチョットとした、勘定と感情の行き違いで、たまたまそういう分かれ方になり、肩をはりヒジをはりあっているに過ぎない。
 
 あまりつまらぬケンカはやらず、できるだけお互いに話し合って、譲り合えばよい。要は両方の〝カンジョウ″のバランスであり、つまらぬ意地の張り合いはせぬことだ。

 

 
★☆☆「経営者は時間軸と空間軸を持て」

日本電気社長 小林宏治
 これは時間の流れの中に身を置き、存在している地域、会社の組織内、産業界の中での位置を自ら確認して、五年後、十年後、二十年後に世界はどうなっているか、会社や自分はどうあるべきか、〝羅針盤″を持てということである。
 
小林はトップになった時から1C&C(コンピューターとコミュニケーションの融合)」こそが将来、時代の中心となると戦略を組み、コンピュータービジネスに参入した。
二十年後に、世界的企業に発展させるという時間軸での見通しを立て、一歩一歩具体的に取り組んだ。空間軸は、発展に付随してどこに工場をつくり、販売網を広げるかという、スペースの点から線へ、線から面へという戦略である。この両方がキッチリかみ合わないと発展は難しい。
 
 時間軸に沿って、社長も課長、部長、重役と昇進していくが、社会や立場の変化を先取りして考え、積極的に取り組まねばならない、と。
 
 
◎●「『利は外にあり』こそ経営の本道である」
TDK社長 素野福次郎
 不景気になると、どの企業も経費を切りつめ、人件費削減など社内合理化にやっきとなる。経費のカット、ケチケチ作戦、さらには人員整理に手をつけるなど、内ばかりに目を向けていると、社員の志気は急速に低下する。素野はこうしたやり方に反対する。
「社内合理化はやるにしても、あくまで〝利は外にある″という大原則を忘れてはならない」
 
 社内のコストを徹底して切りつめても、そこにはおのずと限度がある。逆に、外の利益は無限なのである。苦しい中で、いかに外の利益を獲得していくか。新規事業の芽を伸ばしていくか。事業展開していくか。外への目を大きく見開いてチャンスを機敏にとらえていく、積極策こそ経営には不可欠のものである。
 
ケチケチ作戦だけでは、いずれジリ貧に陥る縮小再生産となり、未来への展望はない。
 TDKは社内預金が豊富にあり、余裕資金の運用に経理は熱を上げていたが、素野は「ウチは金貸しではない」と反対し、研究開発費や投資に積極的に回していった。
 
 
◎●「勝負に臨むまでが、勝負である」
リコー創業者 市村清
 経営者やトップにとって、重要な取引で決断しなければならない場合には、その場に臨んでの心の持ち方、呼吸が大切であることはいうまでもない。
 
 しかし、それ以上に大切なのは日頃の心構えであり、修養であり、実績である。市村は
 
「勝負に臨むまでが勝負である」と強調する。「一日一日、否、一瞬一刻が勝負の連続であり、日々の小さな積み重ねが、毎日の心構えが、重大な取引やいざ勝負という場面にハッキリあらわれてくる」経営者は経営者として、サラリーマンはサラリーマンとして、今、与えられた仕事に全力を尽くす。
 
 市村は「利己ではなく利他。儲けるのではなく、儲かるようにせよ」とも言う。これも逆説的な言い回しだが、「利己ではなく、利他なのだ。自分が売ってくるのはタカが知れている。多くのお得意さんがセールスマンになってくれなければ、どうして他人以上の売上げができようか。そうすれば、儲けようとしなくても、自然と儲かるようになる」と。
 
 
◎「会社に借りをつくるな、貸しをつくれ」
経団連初代会長 石川一郎
 例えば、自分が一生懸命にやっているのに、上役が理解してくれない場合、一部の人は会社や上役に不満を持つ。これはサラリーマンの普通の感情である。
 
 石川はこれは自分の損得からみて損である-と言う。
 
「自分が百のことをして、七十しか認めてくれなければ、三十は会社に貸したと思えばよい。人間はまじめにやれば、十年に一度くらいは必ず会社なり、上役なりの目につく時がある」 と。
 
 会社が自分を認めないからといって、途中でやめてしまえば、それっきりの人間になる。
 逆に、一生懸命やっていて、ある時、上役が自分の間違いに気がつき、「あいつには気の毒なことをした。何とかつぐなってやらねば…」
 
 ということで、三十のところを、五十も六十にもして返してくれる。だから、会社に貸しをつくった時は「しめたと思え」というのが石川の処世訓であった。
 
 
「経営者は思索し、企画し、実行し、そして確認するもの」
関西電力会長 芦原義重
 経営者たるもの、企業の長期方針を立て、その布石を常に怠ってはならない。
 
 長期構想のための情報の人手、分析、判断から企業の前途を思索し、自信を持って方向を決める。この前向きの思索と、もう一つは後ろ向きの思索である。過去の実績の検討、分析を通じて、考え、学びとり、将来へ生かす思索である。
 
 企画し実行するというのは、「意思決定」にはかならない。企業の将来を賭ける重大な企画、判断、決定をするのは、一人で行う孤独な作業である。
 
 重大な意思決定のギリギリの境地において、経営者が最後に頼るものは、自ら集積し、体得した思索以外にはない。
 実行は多くの人々の承認と信頼を得て、整然となされなければならない。
 
 確認はアフター・ケアである。目標が本当に達成されたのか、その結果のチェックとそのための実行の貫徹が、仕上げとして必要である。
 
 
◎●〇「会議とは〝麻薬″である」
積水化成品工業社長 福本正雄
 
 会議の理想的な形とは、いろいろディスカッションしている間に、問題が煮詰まってきて、一つの案が出来る。案が出来上がったら全員協力して、その案を成功させるためにはどうしたらよいかを、協議するところにある。
 
 ところが、案を決めるまでの討論と、決まった案をものにするための協議と、頭の切り換えがうまくいかず、混乱することが多い。
 福本は、「会議とは、いながらにして仕事をしたと錯覚する〝麻薬″であり、相手と対面して勝負しない〝怠け者会″である」と言い切る。
 
 だから、福本はたいていの問題は、職場の関係者同士が対面して話し合えば、解決してしまう、と言う。
 
 同社では、昼食時に幹部がワイワイしゃべりながら食事しているが、この中でコミュニケーションが図られているため、定例の会議を廃した、という。
 
 
☆☆☆「発明は技術者の命である」
日立製作所創業者 小平浪平
 小平は日立を創業して以来、発明の奨励に力を入れ、一九一九年(大正八)には特許係をおき、特許出願の原稿に目を通し、出願書類の作成も指導した。
 
 技術の国産化、自前主義の旗を高く掲げたのである。
 
「私はあえて、欧米一流の製造家と提携することを企画しなかった。他人の力に依存することなく、もっぱら自らの力によって、最も優秀な機械の生産を図るべきだと考えた」
 
「なるほど、外国一流の製造家と提携する時は、ある程度の進歩を見ることができるだろう。しかし、毎年多大のロイヤルティを、支払わねばならぬことを考えると、同じ費用を投じて一意専心研究を重ねて進めば、他人の力に依存せずとも、十分に成績を上げることは、不可能ではないと信じたから、同業者と違う道を選んだ」
 
一九三七年、当時米一キロが約三十銭の時代に、特許登録一件三十円、実用新案一件十五円を出して、発明・特許に最大限の力を入れた。
 
 
〇〇◎「断じて往く」
三菱グループ創業者 岩崎弥太郎
一八七七年(明治十)に西南戦争が起きたが、三菱は一般航路を停止してまで、全汽船を軍用に転用し、巨利を得た。この時、弥太郎は三十六時間経過すると、無効になる重大な商用が起きた。当時、汽車が大阪まで開通しておらず、汽船は軍用にすべて引き揚げられており、空でも飛ばない限り大阪に着く望みはなかった。
 
 川田小一邸、豊川良平ら三菱の幹部は額を集めて相談したが

、あせるばかりで策の施しようがなかった。しかし、弥太郎は諦めず、語気鋭く言った。
 

「往く。断じて往く。人力車に前びきと後押しを付け、三十六時間走り続ければ、往きつけないこともあるまい。若い時、土佐から江戸まで走り続けて十三日間で着いた」
 
 弥太郎は有り金をフトコロにねじ込んで、東海道を下った。人夫の頬を札束で張りながら、韋駄天のように駆け抜け、浜名湖の渡しは強風で渡船がストップしていたが、金で動かし、とうとう三十六時間以内に大阪に着いて商用は成功した。
 
 
〇◎●「いい頭より、強い頭になれ」
東北大学学長 西沢潤一
 あの人は「頭がいい」とか「いい頭」とはよく言われるが、「強い頭」とは滅多に言わない。しかし、日本で一番ノーベル賞に近い科学者の西沢はあえて〝強い頭″になれと言う。
 
〝いい頭〟と〝強い頭″はどう違うのだろうか。日本では、普通、いい頭というと、頭の回転が早いという意味に使われているが、頭の良さには強い頭が肝心なのである。
 
 強い頭、頭が強いということは、トコトン考え抜くこと、回転や切れが早いというのではなく、考え抜くことを徹底して持続することなのである。
 西沢は頭の回転も早い方だが、それ以上に頭の強いタイプであった。科学者にとって、疑問に思ったこと、何かおかしいと思うと、トコトン、その疑問を突きつめていく。考え抜いていくことが、特に大切である、と言う。普通の人は何か疑問があっても、すぐ忘れてしまう。これではダメで、ギブアップしない頭こそ、本当に良い頭というわけだ。
 
 単にいい頭、回転のいいだけの頭は、どこかで論理の飛躍がある、という。

 - 人物研究 , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための日中関係/復習講座』★『現代中国の発端となった辛亥革命(1911)で国父・孫文を全面的に支援した犬養毅、宮崎滔天、秋山定輔、梅屋庄吉』★『東京で中国革命同盟会が発足』

    2010/06/25 &nbsp …

no image
世界、日本メルトダウン(1018)-『トランプの政策顧問で対中強硬派と言われるピーター・ナヴァロ氏の「米中もし戦わば」(副題「戦争の地政学」を読む」●「米中戦争が起きる確率は「非常に高い」*「中華思想」のエスノセントイズム(自民族優先主義)、日中パーセプションギャップ(認識ギャップ)、コミュニケーションギャップ、歴史認識ギャップから対立がエスカレート、戦争が始まる」

世界、日本メルトダウン(1018)   トランプの政策顧問で対中強硬派 …

no image
  日本リーダーパワー史(751)ー歴史の復習問題『世界史の視点から見ないと日本人、日本史はわからない』●『 真田丸で人気の真田幸村や徳川家康よりも、世界史で最高に評価された 空前絶後の名将は「児玉源太郎」なのである。』『世界史の中の『日露戦争』ー <まとめ>日露戦争勝利の立役者―児玉源太郎伝(8回連載)

  日本リーダーパワー史(751) 『歴史の復習問題『世界史の視点から見ないと日 …

『Z世代のための日本興亡史研究講座』★『「オウンゴール国家・日本の悲劇」ー「2011年の民主党政権崩壊と太平洋戦争開戦のリーダーシップの検証」(2011年3月11日福島原発事故の4日前の予言的な記事★『30年ぶりに自公与党大敗、日本丸難破の危機に!』

2011-03-07 21:05:49/「3/11の福島原発事故の4日前の記事再 …

no image
『日本占領・戦後70年』「1946年(昭和21)元旦の天皇の『人間宣言』はなぜ出されたのか、『地方巡幸』はその結果始まった。

 『日本占領・戦後70年』 「1946年(昭和21)元旦の天皇の『人間 …

「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース⑦」★『『開戦2週間前の『ロシア・ノーヴォエ・プレーミャ』の報道」-『英米に支援された日本とわが国の戦争が迫っている。日本はその過剰な人口を移住させるために朝鮮を必要としている。英米は商品を売るために満州と朝鮮の門戸開放を必要としている』

    2017/01/13 &nbsp …

『Z世代のための<日本安全保障史>講座①」★『1888年(明治21)の末広鉄腸の『安全保障論①』★『1888年(明治21)、優勝劣敗の世界に立って、日本は独立を 遂げることが出来るか』★『各国の興亡は第1は金力の競争、第2は兵力の競争、 第3は勉強力の競争、第4は智識(インテリジェンス)の競争である①』★『トランプ1国孤立主義で世界秩序は大変革期(大軍拡時代)に突入した』

2021/06/17 オンライン講座/日本興亡史の研究』 2015/11/23& …

no image
世界リーダーパワー史(933)ー『ウォーターゲート事件をすっぱ抜いてニクソン大統領を辞任に追い込んだ著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏が 今月11日に発売するの最新作「Fear;Trump in the White House」(恐怖─ホワイトハウスの中のトランプ)」の抜粋』★「トランプ大統領の無知な暴君、裸の王様の実態を完膚なきまでに暴露』

世界リーダーパワー史(933)  著名米記者の「トランプ本」が暴露 「 …

no image
<まとめ>『国難の日本史』『日本の決定的な瞬間にリーダーはどう決断、行動したのか』(ピンチはチャンスなり)

  <まとめ>『国難の日本史』    『 …

no image
『オンライン講座/現在のミサイル防衛・抑止力論議の先駆的事例の研究』★『 日中韓150年史の真実(7)<ロシアの侵略防止のために、山県有朋首相は『国家独立の道は、一つは主権線(日本領土)を守ること、もう一つは利益線(朝鮮半島)を防護すること」と第一回議会で演説した』

●『敵基地攻撃能力が抑止力にならないこれだけの理由』 https://busin