日本リーダーパワー史(724)ー『歴代宰相の器比べ』元老・山県有朋はC級宰相①「日本陸軍のCEO」と同時に派閥を作って老害ボスで君臨、政治指導をそっちのけで、趣味の庭づくりに狂熱を傾け,『椿山荘」,「無隣庵」「古希庵」など生涯、9カ所の大別荘、大庭園を造った。①
日本リーダーパワー史(724)
山県有朋天保9年~大正11年
(1838~1922)84歳。
陸軍のCEOは九つもの名園を作ったガーデ二アン
『政治家としてもたいした人物と思えない』
『戦争でも実績のないのが元帥となり、
陸軍を牛耳るようになったのは不思議である」
と伊藤痴遊は書いている。
日本の不思議なトップリーダーの歴史は
今も延々と繰り返されている。
明治政府の実質上の舵取り役は伊藤博文と山県有朋の二人で、富国強兵路線を突っ走ったが、その軍国路線を敷いたのが山県である。
山県は内務卿、陸相、農商務相を経て明治二十二年に首相となり、総理を2度務めた。この間、地方制度の確立に尽力し、市町村制、府県制など行政、官僚制度を築き全国に浸透させた。
また陸軍育ての親で、徴兵制度を導入し、「軍人勅諭」を定め、統帥権の独立、軍事優先路線を引き、山県閥が陸軍と内政を完全に牛耳った。
伊藤博文の死後は元老として権力を一手に握り、山県閥は「横暴、おごりたかぶって、武断政治の弊はその極に達す」と批判が集中した。
東京目白の「椿山荘」は名園として有名だが、これが山県有朋の別荘だったことはあまり知られていない。山県は八十五歳で亡くなったが、その墓碑に「枢密院議長元帥陸軍大将従一位大勲位功一級公爵」とれいれいしく刻まれているように、明治では最高の出世男だった。
「一介の武弁」が口癖で、絶えずそう口にしながら陸軍をおさえて、伊藤博文と明治の政界を二分して、影で政治をあやつった。国家運営の妙手とはとても言い難いが、その山県の唯一の趣味が庭作りで、造園には高い見識を示した。
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以下で、山県の政治手腕ではなくて、『宰相としての器』を論じるのではなく、趣味の庭づくりに彼がいかに没頭したか、狂熱を持って取り組んだのか、その点を見てみたい。
三十歳で故郷の山口県苫田村に最初の別荘「無隣庵」をつくったが、これ以来病みつきになり四十、五十歳、それぞれの年齢の節目ごとに別荘をつくるという夢を膨らませた。
長州藩の貧乏足軽の出身だけに、小さい頃から、邸宅に対するあこがれや渇望が人一倍強かったのであろう。
陸軍中将、不惑の歳、四十歳で東京目白に「椿山荘」をつくった。政敵・大隈重信の早稲田をちょうど見下し、富士山、皇居の森や筑波山などを遠望する約六万平方メートルという広大な敷地に、回遊式林泉庭園を作った。
三重塔をいただく小高い山の部分と、池や滝など水の流れを中心にした部分からなる見事な庭園で家屋も一緒に建てた。山県は晩年までここを本邸としており、政治の舞台となった。
大茶人・高橋箒庵(三井呉服店の重役だった高橋義雄)は、熊本の水前寺、広島の泉亭、岡山の後楽園、京都の修学院、および桂離宮、仙洞御所、二条城、枳穀殿(きこくでん)、彦根の楽々園、金沢の兼六園、名古屋の竜門、東京の後楽園、水戸の偕楽園など天下の名園と肩をならべる立派さだとほめている。
明治二十年(一八八七)ごろ、五十歳で大磯に十六・五万平方メートルの敷地の「小淘庵」(こゆるぎあん)を作り、
五十四歳の陸軍大将、内閣総理大臣のとき、京都木屋町二条の鴨川近くにあった富豪角倉旧邸を買い入れ、「第二無隣庵」をその別荘名としました。
五十九歳で侯爵になった年、京都南禅寺に第三の「無隣庵」を造営した。明治27年の日清戦争で第一軍司令官として出征中に造営に着手し、醍醐の山中から同市左京区の南禅寺のすぐ西側、琵琶湖疏水のほとりに約三千百平方メートルの「第三無隣庵」をつくるなど、別荘熱は年とともにますます昂じた。
この「第三無燐庵」では、太閤秀吉があまりに大きくてあきらめたという、京都醍醐山中の巨石を牛二十数頭も使って運び出してようやく29年末に完成した。
この巨石を東山の松林をバックにおいて、疎水からも水を引いて庭に自然の流水をつくった大がかりな庭園で、「京都には数々の名園があるが、ここが京都御所に次ぐもの」という評判をとって、山県は晩年までこの庭を自慢していた。
明治天皇に拝謁した際、「京都には古来名家の手になった名園が数多くございますが、御所をのぞいては恐らく私の無隣庵におよぶものはございますまい」と豪語していたといわれる。
またここでは、明治三十六年四月二十一日に、山県、伊藤、桂太郎首相、小村寿太郎外相がひそかに集まって日露戦争の開戦を決定した「無燐庵会議」が行われたことでも歴史的に有名となった。
明治三十五年、六十五歳で東京小石川に小石川別邸の「新々亭」(さらさらてい)をつくった。敷地は五百坪〈1600平方メートル〉と小さいが、神田上水の流れを利用して庭園をつくり、「紅塵紫埃」(こうじんしあい)の中にありながら、閑雅幽水、山中に居るの趣」があったという。
七十歳、公爵の時には小田原板橋の敷地四千六百平方メートルの土地に十五メートルの高低差をいかして箱根の水を引いてきた潤沢な遣り水を邸内いたるところに回し、瀬となし、滝となし、池となして流水を配した自然主義的な庭園「古希庵」(こきあん)を作った。一方には相模湾、一面には箱根連山、山色水光一望のうちに俯瞰できる天下の名園を作った。
この時、山県は病の床の中から設計図を示して、兵の配置、陣地を指揮するように庭師や作業員を陣頭指揮したという。この庭から秀吉が一夜城を築いた石垣山を正面に眺めることができ、山県は自らを秀吉に伍して自慢したかったのだ、という。
これが打ち止めではなかった。
さらに七十六歳、大正三年(一九一四)、七十六歳で側近・子分の清浦杢吾(きようらけいご)(首相)を呼び寄せ、古稀庵の近くに建てた別荘「皆春荘」(敷地6万6000平方m)をもらいうけて、「古稀庵」に編入した。
そして八十歳、東京麹町に「新椿山荘」(2千300㎡)の土地に西洋館と付属日本館を新築したというから。病膏肓(こうこう)に入るというべきか。
老残我執、ここに極まれり、生涯に計九つもの大別荘、大庭園をつくった日本一のガーデニアン(庭園狂老人)であり、「国家ずくり」の真の政治家、果たして「宰相の器」であったのかどうか。
つづく
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