前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(670) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(52) 「インテリジェンスの父・川上操六参謀総長(50)の急死とその影響ー陸軍での川上の存在がいかに大きかったか

      2021/09/02

 日本リーダーパワー史(670)

日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(52)  

●「インテリジェンスの父・川上操六参謀総長(50)

の急死とその影響ー陸軍での川上の存在感が

いかに大きかったか

          前坂 俊之(ジャーナリスト)

 

(再録)日本リーダーパワー史(51) 名将・川上操六

陸軍のローマ法皇・山県有朋との死闘(7)

陸軍における川上操六の存在感がいかに大きかったかー

ー鵜崎鷺城「薩の海軍・長の陸軍」(政教社 明治44年刊)より

『薩摩の陸軍の最大打撃は川上操六の死』

薩の陸軍に取って最大の打撃は黒田、野津、高島よりも川上操六の死であった。川上は背に薩摩陸軍の重鎮たるのみならず、帝国陸軍の最も大なる立役者なりき。参謀本部の設置に関しては山県の力は確かに大きいものがあったが、これを今日の如く完全なる作戦計画の府にした者は川上にして、日清戦争の如き、その根本計画はほとんど彼の頭脳より出でたものであった。

川上は当時すでに日露戦争の必ず近き将来においてに避く可らざるを予測して、自ら満洲、西シベリアを視察し、病気となって帰れり。

ああ『川上あらしめば』とは天下、彼を知ると知らざるとを問はず、均しく発するところの嘆声にして、天のこの偉材を日露戦争戦前に奪ひ、彼の知能を傾倒することを不可能にしたのは、決してり彼のために不幸なるのみならず、また、実に帝国陸軍のために惜しむべしとなす。

当時さすがの伊藤も嘆声を発していわく、「天下のことほとんど自分の意のままにならぬものはないが、隅田川の水と川上とは自分の自由にはならず」と。
しかして山県及びその一党は川上が薩閥の一後進を以てして陸軍の首脳たる参謀本部により、あたかも長のために隠然一敵国をなすの感あるを見て、これをを喜ばず。

しかし、山県は陸軍大輔だったころより薩の勢力を殺ぎて、陸軍の長の権下に置く意図をもって、その徴兵制実施に際しても、薩摩排除の密計をめぐらせるは蔽ふべからざる事実とす。

川上を憎んだ山県これによって参謀本部をのっとり長の勢力を擁護せんと機会の至るを待ちにき。ちょうど参謀総長小松宮殿下の薨去に際して、山県自ら総長たらんと欲せしも、事成らずして川上は次長より総長に進み、そ後も自ら川上と代わる計画を廻らしたるが如し。

明敏なる川上は山県一派の密謀を観破せしも、来るべき第二の戦争(日露戦争)を自ら計出するの考へなりしを以て、山県の如き老物にこの重要なる椅子を渡すすべきにあらずと頑然としてその位置をを固守しき。

ああ一葉落ちて天下の秋を知る。川上の死は陸軍における地図の彩りを一変したり。

しかし山県一派の畏怖したるは川上一人にして、他は自家薬籠に収むる易々たればなり。薩長互角の勢ひを有する時に方り、大山厳は薩の陸軍を代表して、あたかも山県の長におけるとその位置を同うしたれど、被は過去の陸軍を飾る一骨董品にして現実に活動すべき人物にあらず。

その茫洋として捕捉すべからざる人格、大量にして清濁併せ呑むの概ある、その円満にして福福しき形貌、これらは確かに将に将たるの器を共ふるに似たるも、軍事的才覚は川上の万分の一をも持ち合わせていない。また、山県の如くあくまでを権勢して保持して爪牙を養ふの執着心なく、いわば悪気のなき好々爺のみ。

日露戦事前、一たび参謀総長となり更に山でて満洲軍総司令官の大任を帯びたれど、その実権は山県及び児玉源太郎に在りて、彼は長派の傀儡に過ぎざりしなり。

かれは我軍の如何なる作戦計出によってロシア軍と戦い、またその日の戦争の如何なる地点において開かるゝやを知らず、砲撃の突如として起るを聴くや幕僚を顧みて何のための砲声なるやを問うこと一再ならざりき。かかるはその人物の大なるを示すとせんも、到底、彼の力をもって薩の陸軍を提げて長に対抗する能はず。

山県は元帥府に隠るるも依然として陸軍のローマ法王たるに反して、彼はご相伴的にその列に加はり黙々として長派の驕りをほしいままにするのを傍観するのみ。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
  日本リーダーパワー史(751)ー歴史の復習問題『世界史の視点から見ないと日本人、日本史はわからない』●『 真田丸で人気の真田幸村や徳川家康よりも、世界史で最高に評価された 空前絶後の名将は「児玉源太郎」なのである。』『世界史の中の『日露戦争』ー <まとめ>日露戦争勝利の立役者―児玉源太郎伝(8回連載)

  日本リーダーパワー史(751) 『歴史の復習問題『世界史の視点から見ないと日 …

no image
オンライン講座/日本は新型コロナパンデミックを克服できるのか(上)』★「インド変異株で五輪開催か、中止の瀬戸際に(上)」★『「死に至る日本病」の再来か』★『3度目緊急事態宣言再延長(5月末)』★『死に至る日本病」の再来か』(5月15日までの状況)★『菅首相のリーダーシップとインテリジェンス(見識)』★『SNS上で「玉砕五輪!」「殺人五輪」の非難合戦』

  「インド変異株で五輪開催か、中止の瀬戸際に」   前坂 …

『リモート京都観光動画」外国人観光客が殺到する清水寺へぶらり散歩、五条坂からゆっくり参拝へ』★

  京都観光ー観光客で賑わう清水寺付近の二寧坂(二年坂) 外国人観光客 …

no image
速報(56)(お勧め記事)『原子力の死の灰の恐怖、その太鼓の音は専門家には響かない』(ニューヨーク・タイムズ・5月2日)

速報(56)『日本のメルトダウン』 ●(お勧め記事)『原子力の死の灰の恐怖、その …

no image
日本メルトダウン脱出法(562)「ロシアと西側:友人を失う方法」(英エコノミスト誌)●『朝日新聞「慰安婦報道」は戦後最大のメディア犯罪

    日本メルトダウン脱出法(562) &nbs …

no image
<近藤 健の米国深層レポート②>●『アメリカは金権政治plutocracyかー米国の選挙は“50億ドルビジネス”』―

<近藤 健の米国深層レポート②>   ●『アメリカは金権政治pl …

『リーダーシップの日本近現代史』(64)記事再録/『天才老人NO1<エジソン(84)の秘密>➁落第生 アインシュタイン、エジソン、福沢諭吉からの警告』★『天才、リーダーは学校教育では作れない』★『秀才、優等生よりは、落ちこぼれ、落第生の方が天才になれるのよ』

    2014/07/17 &nbsp …

no image
日本リーダーパワー史(718)★『現代の宮本武蔵・天才イチローの鍛錬/修行』「鍛錬を続けよ<鍛とは千日(3年)、錬とは一万日(30年)の毎日の稽古/修行なり>(五輪書)『一万日(30年)の毎日の稽古/修行なり>(五輪書) 。「常に人に笑われてきた悔しい歴史が、僕の中にはある。 これからもそれをクリアしていきたい」。

  日本リーダーパワー史(718)  『現代の宮本武蔵・天才イチローの鍛錬/修行 …

『ぜひ歩きたい!鎌倉古寺巡礼②』★「鎌倉駅から10分の妙本寺の梅が咲き誇る」★『鎌倉・花と仁王像の妙本寺ーこの深閑とした森に囲まれた古刹はいつきても新たな発見、サプライズがあるよ②』

鎌倉ぶらぶら散歩日記・前坂俊之 Wiki 鎌倉・妙本寺https://ja.wi

no image
『オンライン中国共産党100周年講座/2021/7/1日)』★『 2016/07/25の記事再録)日中関係がギグシャクしている今だからこそ、もう1度 振り返りたいー『中國革命/孫文を熱血支援した 日本人革命家たち①(1回→15回連載)犬養毅、宮崎滔天、平山周、頭山満、梅屋庄吉、秋山定輔ら』

      2016/07/25」/記事再録『 辛 …