日本リーダーパワー史(432)政治家はすべて私心を捨てよ,高橋是清は「小さな 政治の知恵はないが、絶対にものを恐れない人」
政治家はすべて私心を捨てよ
★「明治のリーダー・高橋是清(蔵相5回、首相)は「小さな
政治の知恵はないが、国家大局を考え、絶対にものを恐れない人」
(賀屋興宣の評)
前坂俊之(ジャーナリスト)
今から5年後の2018年は明治維新(1868年)からちょうど150年目に当たる。明治維新によって日本は封建国家から近代国家に生まれ変わり、有色人種の国ではじめて百年前に西欧列強と肩を並べる先進国になった。明治は「坂の上の雲」の躍進の時代であり、その原動力となった明治人の進取の気性とリーダーパワーを今こそ学ぶ必要がある。
以下で紹介するのは賀屋興宣(1889-1977)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B3%80%E5%B1%8B%E8%88%88%E5%AE%A3
の身近に知る明治のトップリーダー・高橋是清の印象記である「明治の評価と明治人の感触」(動向社編集部、動向社、1967年刊 395-399P)から参照する。
賀屋は「政治家はすべて私心を捨てよ」と苦言している。
明治の政界はたしかに大物がおりましたね。今、日本の政界について感じることは、政治にたずさわる者はすべて、
私を抜くということですね。自分の地位、自分の権力、自分の名誉、そのために仲間同志が閥を作ったりする。
もう少し、俺たちは日本国民のためにやるんだという、志が大切だと。
小知恵をもたない高橋是清
賀屋 興宣(大蔵大臣、法務大臣)の話
ずっと大正に近い人ですが、高橋是清(1854-1936、蔵相5回、首相)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%A9%8B%E6%98%AF%E6%B8%85
さん。あの人は、大きな子どもというところがあった。しかしものはよく見ている。小さい意味の聡明さはありませんけれど、大きな見地からものを見ている。それに私心のない人です。また絶対にものを恐れない。そういったところが特徴でしょうね。

必ずしも小さな政治の知恵はない人です。小さな権力争いとか、地位の争奪とか、金儲け、そういうことは殆んど眼中にない。大局を考え、国家というものを真剣に考えていました。よく小知恵が働くという人がおるが、それとは全く逆の人なんです。
われわれ下僚からいって非常に困るのは、小さいことはどうでもいいんだから、ちょいちょい困ることを言ったりやったりする。
しかし、大きいことには、あのくらい力があって、頼りになる人は少ないですね。その頃の金で日本の予算が二十何億の時代に、陸海軍にせっつかれて、三千万やろう、といいかげんに分けちまった。たいへんなんですよ。そのときは三千万円でも、他に急を要するものから充当しなければならないでしょう。
その年即ち初年度は三千万円でも、先にずっと、たいそうな金がいるようなことがあったらたいへんでしょう。そのあと金がないんだ。こっちで、ちゃんと大事なことからきめて歩かなければいかんのです。第一、陸軍と海軍が大喧嘩をはじめる。しかし、両方三千万円出すからということですよ。
非常に跡始末に骨が折れる。けれども、これで予算編成上の難関が一気に乗り切れたとい
藤井其信さん、あの人はほんとうに真面目な人で気の毒なんですよ。肺炎をやって肺結核をやって、休んで静養しなければならないところを、無理にやらせちゃったから。
高橋さん、ほかの人は信用しないですからね。あれは立派な人ですからね。高橋さんに信用されちゃったもんでやったけれども、だいたい無理だったんですね。高橋さんが総理のときは骨は折れるし、骨が折れるかわ
りに、大きな柱があるような感じになるんだね。大きな柱に寄りかかっている感じです。
われわれで
は、よく訓練されていないから、撃った弾丸がどこへいくかわからない。強力だけど・・。それで、「鎮遠」をとって、チンエンという名をつけた。高橋さん、ドンと撃ってくるけれども、こっちへというと、オーといってバッと撃っちまう。しかし、あのくらい大きな風格の人はないですね。
常人に卓越した心境をもっていますよ。あの人は十年以上休んでて、大蔵大臣にまたなった。だからだいたい役人の名前なんか覚えてないですよ。しまいには、藤井というのをやっと覚えたかな。
「大蔵省で名前のわかるのが二人いるよ。藤井ともう一人、なんとかという男だよ」。そのなんとかという男がの私のことなんですよ。非常に大まかな人ですね。気にいらんことをこっちが言うもんだから…、大まかだからこっちから言わなければならない。だから、覚えていたんですよ。今後はああいう人は出ませんよ。ものに拘泥しないということの最たるもんでしょうね。
政治家はすべて私心を捨てよ
明治の政界はたしかに大物がおりましたね。今、日本の政界について感じることは、政治にたずさわる者はすべて、私を抜くということですね。自分の地位、自分の権力、自分の名誉、そのために仲間同志が閥を作ったりする。もう少し、俺たちは日本国民のためにやるんだという、もっと大きく、世界のなかの日本をどうするかということでやるんだから、それさえしっかりしておれば、そんなに悪いことなんかできないんですよ。
関連記事
-
-
『Z世代のための米大統領選連続講座⑰』★『あと1ヵ月と迫ってきた米世論調査ではハリス氏がトランプ氏を僅差でリード』★『資金面、若者票では大きくリードしている』
(CNN9月22日配信)では CNNが来月23日に米大統領選のテレビ討論会を計画 …
-
-
百歳学入門(76)日本長寿学の先駆者・本邦医学中興の祖・曲直瀬道三(86歳)の長寿養生俳句5訓を実践せよ
百歳学入門(76) 日本長寿学の先駆者・曲直瀬道三(86歳)の長寿養 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(90)記事再録/★『地球環境破壊、公害と戦った父・田中正造②ー 「辛酸入佳境」、孤立無援の中で、キリスト教に入信 『谷中村滅亡史』(1907年)の最後の日まで戦った。
2016年1月25日/世界が尊敬した日本人(54)記事再録 月刊「歴史読本」(2 …
-
-
『オンライン講座/歴代”宰相の器”とな何か!』★『日本政治リーダーシップの研究』★『日本の近代化の基礎は誰が作ったのか』★『西郷隆盛でも大久保利通でも伊藤博文でもない』★『わしは総理の器ではないとナンバー2に徹した西郷従道』
日本リーダーパワー史(317)再録 「明治維新は西郷隆 …
-
-
★『長寿逆転突破力を磨け/「100周年を迎えたシャープは存亡の危機にたつーシャープの創業者・早川徳次(86歳)の逆境・逆転・成功人生に帰れ「ピンチの後はチャンスが来る」★『逆境、困難で苦労をなめつくしたことが、成功のバネとなる。『難』あり、『有難(ありがた)し』
知的巨人たちの百歳学(171) 2019/09/07 &n …
-
-
クイズ「坂の上の雲」ーー極秘「明石工作」は日露戦争約1年後に暴露されていた(2)
クイズ「坂の上の雲」 極秘「明石工作」は日露戦争約1年後に暴露され …
-
-
日本敗戦史(48)日本兵残酷物語「内務班」,召集令状「赤紙」1枚(約100円)で消耗品として戦場で大量死。映画「二等兵物語」を見て戦争の実態を勉強しよう
日本敗戦史、終戦70年(48) 「終戦」という名の『無条件降伏(全面敗戦)』 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(160)記事再録/『世界史の中の日露戦争』㉝『開戦2週間前の「英タイムズ」の報道/★『ロシアが極東全体の侵略を狙っており、一方、日本はロシアの熊をアムール川の向こうの自分のすみかに送り返して,極東の平和と安全を,中国人、朝鮮人,日本人のために望んでいるだけだ』★『1904年1月8日付『ノース・チャイナ・ヘラルド』 『われわれは朝鮮をどうすべきか?日本人からの寄稿』』
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉝2017/01 …
-
-
『オンライン講座/ガラパゴス・ジャパン・シンドローム(日本敗戦病)の研究』★『国家統治中枢部の総無責任欠陥体制ー太平洋戦争下の『大本営』『大本営・政府連絡会議』『最高戦争指導会議』 『御前会議』の驚くべき内幕』★『今も続く『オウンゴール官僚国家の悲劇』
2015/03 …
-
-
日本リーダーパワー史(234)★『徳富蘆花の『謀反論』再読のすすめー(上)“反原発謀反人”となって日本、世界を救え』
日本リーダーパワー史(234) <日本の国難突破論を読み直す …
