『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉗『来年は太平洋戦争敗戦70周年―『東條英機開戦内閣の嶋田繁太郎海相の敗戦の弁と教訓』
2017/08/15
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』㉗
『来年は太平洋戦争敗戦から70年目―
今、日本は<第2の経済敗戦>の瀬戸際にある①』
『東條開戦内閣の嶋田繁太郎海相の敗戦の弁』
<戦争の原因、過誤の教訓①>
前坂 俊之(ジャーナリスト)
太平洋戦争敗戦から70周年を前に、『日米中』の戦争歴史観、戦争認識が試される季節がこれから始まる。全く戦争を知らない世代が中心の『安倍内閣』は大義なき解散を宣言したが、歴史は返す。第2次大戦の亡霊がいまだにこの「三国関係」の節目に顔を出すが、『安倍首相』だけではなく、政治家の大半がこの複雑怪奇な国際外交の駆け引き、戦争に至った日中関係のネジレ、対立、軍部の暴走、政治家の無能、メディアの誤報道、歴史の経過、外交知識に欠けており、インテリジェンスが皆無なのである。国の経済政策の失敗、債務超過の危機の根底にも、インテリジェンス決定的な欠如がある。こに日本病が克服されないので日本は2度でも3度でも亡ぶのだ。
、戦争の当事者がどのような認識で戦争に踏み切り、負けて後は反省なり、教訓を後世に残していたのか、学ぶ必要がある。これは日本人だけではなく、どこの民族、国家もその性格、思想、行動パターンはそう簡単には変わらないからであり、のど元過ぎれば熱さ忘れ、同じ過ちを繰り返すからである。
以下は昭和22年4月に書かれた東條開戦内閣時の嶋田繁太郎海軍大臣の
手記の一部である。(『帝国海軍 提督達の遺稿』(小柳資料)水交会、平成22年)
嶋田繁太郎は東條開戦内閣の海軍大臣としてA級戦犯として東京裁判で訴追されて、終身禁固刑判決を受けた。昭和30年に仮釈放され、1976年死去。この間に、手記も書き、水交会関係者の聞き書きにも応じたものである。
嶋田繁太郎はわが国の主要な禍根、過誤として、次の点を上げている
① 日本陸軍の下克上、政治関与の悪弊が大なる禍根であった。
② 陸海軍大臣の定員を現役の陸海軍大中将と改正した。
③ 昭和3年の張作霖の爆死事件も在満陸軍の謀略であり、満州事変の発端の柳条溝事件は日本陸軍の謀略であった。
④ 関東軍が満州の一段落後に北支への侵略行動、並に満州国における英米の利害を無視した狭量政策が大局を誤る原因となった。
⑤ ともかく日本人は狭量で、何も彼も利権を根こそぎ握らないと気がすまず、ために元も子も失う大損をした。
⑥ これが政治を知らず世界的知識を欠いた少壮陸軍将校が政治に関与して国策を誤った。
⑦ 関東軍が熱河から北京に入城せんとした時、昭和天皇は陸軍大臣及び参謀総長を叱責北京入城を禁止した。井の中の蛙的な小功名心が国軍を悪用して我国を世界の憎まれ者、侵略者とした。
⑧ 日独軍事同盟の締結は英米の敵意を深くし、対日戦争決意を促進した。
⑨ 南部仏印へのわが陸軍進駐は英米をして開戦決意をなさしめ、最後の強硬手段を採らせた。
日本対米中の戦争の原因を当時の嶋田海軍大臣はここまではっきりと書いていることを、よく知らねばならない。
(大東亜戦争の教訓)
日本は大東亜戦争を計画企図したものではなく、極力これを避けんと努めたが、英米の圧迫に依って遂に戦争に追ひ込まれた。しかし、この事態に至った原因には日本も大に責任がある。将来の教訓としてわが国の主要な禍根、過誤を省慮考察すれば次ぎの通り。
①日本陸軍の下克上、政治関与の悪弊が大なる禍根であった。
(イ) 厳正な軍紀は軍隊の生命であり、上官の命令に対し、下がこれに従うべきことは軍人に賜った勅諭に懇ろに示されてあったが、陸軍将校の一部には昭和の御代にはいるって下克上の悪風を生じた。
即ち人気取りに青年将校に迎合し、下級者の進言を鵜呑みに容れることを将器と誤解して、下級将校の言動を指導、匡正する気力ない人が要路に立ったので、下克上の悪風が漸次発生増加し、殊に満州事変において、短時日に満州が平定したのに慢心した関東軍幕僚は、陸軍省、参謀本部を軽視し、政府の国策を無視してこれに服従せず、畏れ多くも陛下の公明正大な仁義の大御心にも副ひ奉らないこともあり、この悪弊は漸次蔓延し、時に消長はあったが我国の大禍根となった。
(ロ) 又軍人が政治に関与する害毒は我国、封建時代の史実が厳に教えるところであり、軍人勅諭にも深く誡められてあるに拘らず、満州国で政治に関与した陸軍将校は共に興味を覚え、甚だしき者は満州において模範政治を試行すると称し、それを本国の政治に実現するの欲望を起こして、軍人の本分を忘れ、わが政党政治家の腐敗を口実として国政に軍人関与の気運を助長した。
(ハ)昭和11年2,26事件以後にこの悪弊は甚だしさを加え、同年、陸海軍大臣の定員を現役の陸海軍大中将と改正した(昭和の初、山本内閣の時に予後備の大中将でも差し支ないことに改めたのを再び現役の者に限定した)がために、内閣に対して陸軍に不平ある時には大臣が辞職して、後任の大臣を受くる人なしと称して内閣を窮地に陥れ、陸軍の主張の貫徹を計った。
(ニ)宇垣内閣は陸軍大臣を受ける人なきために流産となり、米内内閣は畑陸軍大臣辞任して後任を受くる者ないとて総辞職の止むなきに立至ったし、第三次近衛内閣は東僚陸相と首相との意見相違に困り、情勢を見越した近衛氏が総辞職を行った。
(ホ)又其の後継内閣に東候氏を推薦した重臣は、彼の重大時局を収拾するには陸軍を掌握する人ならざる可らずとの考慮が主となって、東條氏に対する対手の米国の思惑を考える余裕なかったものと思はれる。かくして遂に陸軍を背景とする現役軍人が内閣の首班となり、政治を掌握することになった。
つづく
関連記事
-
-
日本リーダーパワー史(180)<国難突破力ナンバーワン・出光佐三を見習う②>『石油メジャーに逆転勝利』
日本リーダーパワー史(180) <国難突破力ナンバーワン・出光佐 …
-
-
百歳学入門(160)★『100歳以上の高齢者、過去最多の6万5692人、国内最高齢は116歳の女性』★『「老人に押し潰される」日本の医療に迫る危機4人に1人が75歳以上の時代はそう遠くない』★『2030年、遂に「ピンピンコロリ」が普遍化!? AIが迫る介護業界の抜本的なモデルチェンジ』★『「万引き老人」悲しく切なすぎる貧困の実態――食うに困っていてもいなくても』★『「世界未病の日」をつくるべきだと思う。そしてその声を日本が上げていかなきゃ – 第10回片山さつき氏』
百歳学入門<160> 100歳以上の高齢者、過去最多の6万569 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(328 )★今から約20年前のレポート再録『1998年/香港返還1年・香港メディアはどうなったかー言論の自由は漸次、消滅』★『深刻なセルフ・センサーシップ(自己検閲)』★『香港経済に暗雲、メディアへのテロが続発』
2009/02/10 <『マスコミ市民』1998年9月号N …
-
-
『オンライン百歳学講座/天才老人になる方法②』★『長崎の平和記念像を制作した彫刻家・北村声望(102歳)の秘訣』ー『たゆまざる 歩み恐ろし カタツムリ』(座右銘)★『日々継続、毎日毎日創造し続ける』★『カタツムリのゆっくりズムでも、10年、20年、30年で膨大な作品ができる』★『私の師はカタツムリ』
2018/01/17百歳学入門(187)記事 …
-
-
『F国際ビジネスマンのニュース・ウオッチ②』3・11から1年ー「ニューヨーク・タイムズ」が日本の戦後民主主義に落第点をつけた
『F国際ビジネスマンのワールドニュース・ウオッチ②』 <3・11福島原発事 …
-
-
[60,70歳のためのための加齢創造学講座』★『ロケットの父・糸川英夫(86)の『加齢創造学』ー人間の能力は6,70歳がピークだよ
2012/04/11 百歳学入門(37)―『百歳長寿名言』再録 &n …
-
-
産業経理協会月例講演会>2018年「日本の死」を避ける道は あるのか-日本興亡150年史を振り返る⑤
<産業経理協会月例講演会> 2013年6月12日 201 …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史]』(24)-記事再録/日中韓/異文化理解の歴史学(1)(まとめ記事再録)『日中韓150年戦争史の原因を読み解く(連載70回中1ー20回まで)★『申報、英タイムズ、ルー・タン、ノース・チャイナ・ヘラルドなどの外国新聞の報道から読み解く』●『朝鮮半島をめぐる150年間続く紛争のルーツがここにある』
日中韓異文化理解の歴史学(1)(まとめ記事再録)『日中韓150年戦争史の原因を読 …
-
-
「パリ・ぶらぶら散歩/ピカソ美術館編」(5/3日)②「ピカソはオルガ・コクローヴァーの完璧な無表情と平静さを湛えた美しさを数多く肖像画に描いている」
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ (108)』 パブロ …
-
-
終戦70年・日本敗戦史(117)日本開国の父・福沢諭吉の『脱亜論』の真相、儒教鎖国中華思想に惰眠を貪る清国との戦争を唱える④
終戦70年・日本敗戦史(117) …
