池田龍夫のマスコミ時評(44)●『地震・原発関連「公式議事録」を作らない大失態』『世田谷区が電力〝入札〟に踏み出す』
池田龍夫のマスコミ時評(44)
●『地震・原発関連「公式議事録」を作らない大失態』
★『世田谷区が電力〝入札〟に踏み出す』
★『世田谷区が電力〝入札〟に踏み出す』
池田龍夫(ジャーナリスト)
地震・原発関連「公式議事録」を作らなかった大失態
東京電力福島第一原発事故対応に関係する政府・東電関係の議事録がほとんど残されていないことが判明、ズサンな文書管理への非難が高まっている。大災害の原因究明のため、重要な公式議事録を作らなかったとは前代未聞で、国際的にもまことに恥ずかしいことである。
15分野の会議記録がほとんど未作成とは…
原発事故対策の要となる「原子力災害対策本部」が議事録を作成していなかったことが明るみに出たのは、1月23日。NHKが昨年暮れ、議事録公開を求めたのが端緒のようだが、年が明けてその真相が判明し、27日になって岡田克也副総理が記者会見で地震・原発関連の議事録作成・保存の実態を公式に発表した。
それによると、「3・11事故」発生以来、15分野に及ぶ公的会議が開かれたが、「原子力災害対策本部」や「官邸緊急参集チーム」「各府省連絡会議」など10会議で議事録を作成しなかったという。原子力災害対策本部では、「議事概要」を記した文書すら作成・保存していなかったというから、その無責任さに呆れ果てる。中でも指令塔役の「原子力災害対策本部」が議事録を全く作成していなかったのは、恐るべきことであり、〝危機管理〟上の責任は重大だ。
岡田副総理は「2月中をメドに議事概要を作成するよう指示した」と釈明しているが、過去に遡って、正確な議事録を作ることは望めまい。
「公文書管理法」違反だ
毎日新聞1月29日付社説は「昨年4月に公文書管理法が施行された。
同法では重要会議の決定やその経緯について文書作成を義務づけている。各省庁には公文書の管理担当者も置かれていたはずだ。内部でこっそり保管していたのではないか、そう勘繰られても仕方ない。……公文書管理法第1条は『歴史的事実の記録である公文書、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源』と位置づけている。
同法では重要会議の決定やその経緯について文書作成を義務づけている。各省庁には公文書の管理担当者も置かれていたはずだ。内部でこっそり保管していたのではないか、そう勘繰られても仕方ない。……公文書管理法第1条は『歴史的事実の記録である公文書、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源』と位置づけている。
また、国はそれを現在及び将来の国民に説明する義務があるとする。公文書の管理は、情報公開と併せ、国民の『知る権利』を実質的に担保するものだ。府省全体の公文書管理の司令塔は内閣府である。一連の議事録未作成について、内閣府は経緯の調査と併せ、研修などを通じて法の趣旨の徹底を図ってもらいたい」と指摘していたが、政府の責任を徹底追及すべきである。
「意図的に残さなかった」との疑いも
読売新聞が27日付社説で、「意図的に記録を残さなかったと疑われても仕方あるまい。……重要会議の議事録を作成しないのは、誤った『政治主導』と『官僚性悪説』に起因する民主党政権の体質の問題でもある。特に菅前首相は、官僚を敵視する傾向が強かった。議事録を作る人的、時間的余裕がないのなら、録音で発言記録を残すだけでもいい。早急に改善策を講じるべきだ」と分析、民主党の政治手法の欠陥を指摘していたことに共感する。
世田谷区が電力〝入札〟に踏み出す
東京都世田谷区は1月23日、新年度から区役所庁舎や区立小中学校など111施設で使用する電力について、競争入札を実施すると発表した。「脱原発」を掲げて昨年春初当選した保阪展人区長が決断したもので、〝東電離れ〟を加速するものと注目されている。
区役所や区立小中学など111施設で実施へ
世田谷区に登録している特定規模電気事業者(PPS)は約50社あり、競争入札を2月下旬に行い、落札業者の電力供給は4月1日を見込んでいる。今回の対象は、区の施設全体の1割強だが、特に電気使用量が多い施設に絞った。これによって、年間6億7000万円の電気料金の3%に当たる2000万円の削減ができると試算。さらに東電が電気料金を値上げした場合、値上げ分を含めて1億1000万円の節約効果になるという。
自治体による電力競争入札は広がっており、東京都でも立川市・国立市などが導入しているが、23区での導入は世田谷区が初めて。人口約88万人のマンモス世田谷区が、〝東電独占〟を見直す方針を鮮明にした影響は大きい。朝日新聞は1月23日付夕刊第2社会面で特報、24日付朝刊東京版で詳報した。また、東京新聞が24日付朝刊1面に4段見出しを掲げて報じた姿勢に比べ、「読売」「毎日」両紙の東京版扱いは腑に落ちない。人口密集地23区の新たな動きは、全国ニュースとの価値判断をすべきケースと思う。
クリーンエネルギー開発・促進を目指す
保阪区長は「3・11原発事故から現在まで問われたことへの
一つの総括。より安全な、再生可能エネルギーへ変えていく大きな流れだ。(東電以外の)選択肢があることを自治体が示して実行し、国全体の議論を後押ししたい」と語っており、今後は再生可能エネルギーで発電された電力を導入する方針を進める意向と思われる。先の「脱原発・世界会議」にも保阪区長は参加、「少々高くても自然エネルギーを買いたいという声を、電力消費地で高めていく必要がある」と分科会で発言していた。
電力調達をめぐる〝知恵比べ〟
「発電コストで劣る風力・太陽光の事業者入札参加はできるだろうが、コストを競う以上、クリーンエネルギー業者が落札する可能性は少ない」と常識的に推測されるものの、世界谷区が投じた〝一石〟は、脱原発・新エネルギー開発促進への道を示しているのではないか。
井熊均・日本総研創発戦略センター所長も「自治体が主体的に電源を選ぶようになったのは良い傾向だ。住民の生活を守る立場から、今後、自治体はPPSの活用が必須になるのではないか。世田谷区などが成果を広げれば、やっていない自治体は住民の目に『怠慢』と映るだろう」(24日付朝日新聞東京版)と指摘していた。
自治体以外では、城南信用金庫(本店・品川区)が、今年から大半の店舗で東電からの電気購入を止め、PPSへの変更に踏み切っており、電力調達をめぐる〝知恵比べ〟が拡大する雲行きである。
(いけだ・たつお)1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを
歴任。著書に『新聞の虚報と誤報』『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保』。
歴任。著書に『新聞の虚報と誤報』『崖っぷちの新聞』、共著に『沖縄と日米安保』。
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