前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(92)広島で祈りを捧げたオリバー・ストーン監督― 原爆、戦争、歴史認識につき激白(9/1)

   

 池田龍夫のマスコミ時評(92)

 

広島で祈りを捧げたオリバー・ストーン監督―
原爆、戦争、歴史認識につき激白
(9/1)

 

 

米国のオリバー・ストーン監督は8月、原爆の惨状を広く取材、伝えるため来日。6日の平和記念式典に参列して献花、黙祷を捧げた。その後原子力禁止世界大会で講演に臨んだが、原爆、戦争、歴史認識などについての語り口が感動的だった。NHKBSやテレビ朝日で一部は放映されたが、印象深い講演内容を紹介し参考に供したいと思う(翻訳は萩原一彦氏、末尾の注1参照)。 

 オリバー・ストーン監督はベトナム戦争の空挺部隊に所属、強烈な戦場体験が、彼の映画作品の出発点だったという。特に『プラトーン』は、ベトナム戦争での体験がベースになっていると言われ、戦争という異常な状況下で人間はいかに醜く残酷になるか、そしていかに戦争が非人道的なものであるかを痛烈に訴えている。NHKが「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史」というタイトルの番組を企画、脚本を担当した歴史学者のピーター・カズニックの対談も反響を呼んでいる。

 

        残虐戦争を反省、平和国家に徹したドイツ

 

                                                                           米国の〝衛星国家〟に甘んじる日本

 

 しかし、第2次世界大戦後私が見た日本は、偉大な文化、映画文化、そして音楽、食文化の日本だった。そして日本について見る事のできなかったものがひとつある。それは、ただ1人の政治家も、1人の首相も、高邁な道徳や平和のために立ち上がった人がいなかった。いや1人いた、それは最近でオバマ大統領の沖縄政策に反対してオバマに辞めさせられた人だ{注2}。

 

皆さんに聞きたいのは、どうして、こんなにひどい経験をしたドイツが今でも平和維持に大きな力を発揮しているのに、日本は、アメリカの衛星国家としてカモにされているのかということだ。あなた方には強い経済もあり、良質な労働力もある。なのに何故立ち上がらないとしない?」

 

        オバマは無慈悲な人間だ

 

「私が1968年に兵士としてベトナムを離れたとき、これで世界は変わると思った。新しい時代が始まると思った。これで米国のアジアに対する執着は終わることになると思った。しかしアフガニスタン、イラクでの壊滅的戦い。それにクウェートなど中東での冒険のあと米国はオバマの陰部とともにアジアに戻ってきた。韓国は済州島に巨大な軍事基地を作っている。

そこは、中国に対しては、沖縄より前線に位置する。その軍港には世界最大であるあらゆる核兵器を搭載する空母ジョージワシントンが停泊できる。米国の本当の目的は中国である。第2次大戦後にソ連を封じ込めた以上に、中国に対する封じ込めこそが目的なのだ。中国はいま発展途上にある。つまり米国の『超大国』の立場を脅かすもう一つの超大国に仕立て上げられようとしている。今は大変危険な状況にある。

オバマは蛇のような人間だ。ソフトに問いかける。しかしオバマハ無慈悲な人間だ。台湾に120億㌦もの武器を売り、日本にステルス戦闘機を売る。日本は世界第4位の軍事大国になっている。日本より軍事費が多いのは米国、ロシア、中国だけだ。日本は米国の武器の最大の顧客だけでなく、中東での戦費の支払いをしてくれた」

 

         米国、アジアで物騒な動き
 

 今年戦争がアジアに戻ってきた。オバマと安倍は相思相愛だ。安倍はオバマが何を欲しがっているかを知っている。中でも尖閣諸島については、私にはコメントしようがない。あんなものを巡って戦う気が知れないが、それなのに戦う価値があるように言われている。問題は、日本のナショナリズムの精神が、安倍やその一派の第2次世界大戦に関する考え方、特に中国での南京虐殺や従軍慰安婦問題などから発するバカげた言説とともに復活しつつあることだ。

 

 今、皆さんは核兵器が大切だとお思いだろう。しかしこの危険なポーカーゲーム(危険な賭け事)はアメリカ主導で進んでおり、アメリカは世界の73%の武器を製造して売りさばいている。それには無人攻撃機、サイバー兵器、宇宙戦争用の武器まで含まれる。米国は世界最大の軍事国家です。これが世界に起こっている事だ。日本は軍事に加担している。

 

 ここで皆さんには、ドイツがヨーロッパでしたように、立ち上がって反対の声を上げて欲しい。日本は広島と長崎その他でひどい目にあった。この悲しみを糧にして強くなり、繰り返し戦争を起こしてきたバカものたちと戦って欲しいのです」

(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。

{注1}講演内容は、萩原一彦のツイートから主要箇所を転載しました。

  {注2}この人は、鳩山由紀夫元首相を指しているようです。

 

 - IT・マスコミ論 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座㉟」★『120年前の日露戦争勝利の立役者は児玉源太郎』★『恐露派の元老会議に出席できなかった児玉源太郎』★『ロシア外交の常套手段の恫喝、時間引き延ばし、プロパガンダ、フェイクニュースの二枚舌、三枚舌外交に、日本側は騙され続けた』

元老会議の内幕   (写真右から、児玉総参謀長、井口総務部長、松川作戦 …

no image
終戦70年・日本敗戦史(149)『15年戦争での新聞各紙の戦争責任論①―朝日新聞の場合>社説『自らを罪するの弁』●「社説『新聞の戦争責任清算』●<社告>『戦争責任明確化―民主主義体制を確立、 社長、会長以下重役総辞職』●<宣言>『国民と共に立たん』

終戦70年・日本敗戦史(149) 『15年戦争での新聞各紙の戦争責任論①―朝日新 …

no image
現代史の復習問題/「延々と続く日中衝突のルーツ➈』/記事再録『中国が侵略と言い張る『琉球処分にみる<対立>や台湾出兵について『日本の外交は中国の二枚舌外交とは全く違い、尊敬に値する寛容な国家である』と絶賛した「ニューヨーク・タイムズ」(1874年(明治7)12月6日付)』

2013年7月20日/日本リーダーパワー史(396)   中国が尖閣諸 …

no image
<F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(210)>『カタールの天然ガス輸出先は第1位が日本で全体の約21%』★『イランシンパのカタールを、テロリスト支援国家の役割から全面的に手を引かせる事が今回の国交断絶の主目』★『コラム:瀬戸際のカタール、事態収拾に元首交代も選択肢』●『国交断絶、小国カタールがここまで目の敵にされる真の理由』★『カタール、LNG契約交渉で日本側に強硬姿勢 権益排除も』●『イラン、日本への液化石油ガス輸出を停止=通信社』

 <F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(210)> 『カタールの天 …

no image
『オンラインクイズ/全米の女性から最高にモテたファースト・イケメン・のサムライは誰でしょうか!?』★『イケメンの〝ファースト・サムライ〟トミー(立石斧次郎)は、全米に一大旋風を巻き起こ、女性からラブレター、ファンレターが殺到し、彼をたたえる「トミーポルカ」という歌までできた』★『ニューヨークではサムライ使節団を一目見ようと約50 万人の市民がマンハッタンを埋め尽し「トミー!こっちを向いて!」「トミー、バンザイ!」の大歓声。ジャパンフィーバー、トミー・コールが続いた(『ニューヨーク・ヘラルド』1860 年6 月17 日付) 』

『今から160年前の1860年(万延元年)2月、日米通商条約を米ホワイトハウスで …

『オンライン/新聞記者の冤罪と誤判・死刑追及の旅②』『山口県内で起きた<冤罪を訴えて60年の加藤翁事件』★「虚心坦懐に当事者と現場を取材する」-加藤新一翁の雪冤(1979年9月)

2010/01/06   1979年9月10日発行  「季刊 証言と記 …

『オンライン/阿部定事件と昭和』★『NHKBSプレミアム(2020年12年22日午後9時-10時)放送の『アナザーストーリー”妖婦”といわれた女「阿部定事件」と昭和』に出演しました』★『日本恋愛史における阿部定事件ー「私は猟奇的な女」ですか「純愛の女」ですか』

  NHKBSプレミアム(2020年12年22日午後9時-10時)放送 …

no image
人気リクエスト記事再録 『百歳学入門(186 )』-百歳長寿社会へのお手本『世界ベストの画家・葛飾北斎(90歳)の創造力、晩年学こそ長寿力』★『北斎こそ世界を席巻した「ジャポニズム」「ジャパンアニメ」「ジャパンクール」の元祖である』

2011年1月15日執筆<超高齢社会のモデル> 世界ベストの画家・葛飾北斎―90 …

no image
『リーダーシップの日本近現代史]』(30)記事再録/大震災とリーダーシップ・日立創業者・小平浪平の決断力 <大震災、福島原発危機を乗り越える先人のリーダーシップに学ぶ>

 日本リーダーパワー史(138)   大震災とリーダーシップ・日立創業 …

no image
世界/日本リーダーパワー史(914)-『米朝首脳会談(6月12日)で「不可逆的な非核化」 は実現するのか(上)

米朝首脳会談(6月12日)で「不可逆的な非核化」 は実現するのか 前坂 俊之(静 …