池田龍夫のマスコミ時評ー(13)普天間基地グアム移転騒動・「日米合意」の問題点を検証せよ
この問題は一九九六年(橋本龍太郎政権)以来、もめ続けてきた〝沖縄のトゲ〟とも言われる難題中の難題。政権補足から四カ月にも満たない鳩山政権が苦悩するのは当たり前で、「急いては事を仕損じる」…慎重に対処してほしいと願うばかりだ。
「敵失(自民の失政)に助けられただけ」と冷笑する向きもあるが、民主国家における「民意の重さ」を正面から受け止め、従来の政治姿勢を徹底的に検証し、平和で住みやすい社会の構築を目指す民主党の理念が支持されたと受け取るのは当然なこと。鳩山首相の所信表明演説(10・26)にも共感できる点が多く、要は大胆な政策を早期に国民に提示し、実行に移すことだ。新政権約四カ月の流れを見て、紆余曲折の混乱が見受けられるものの、果断な政策実行を期待しているのが、大多数の「民意」と考えられる。
九六年以来十三年もの歳月が流れ、「世界一危険な普天間飛行場」の地元・宜野湾市民の恐怖はいまなお続いている。東西冷戦終結(1989年)から二十年、国際情勢の変貌は著しい。徐々にではあるが、軍事優先の時代から脱皮し、軍縮へ向かうウネリが高まってきている。米軍再編と普天間問題もまた、時代の流れに沿って検証作業を推進し、「基地・沖縄」の負担軽減に全力を尽くすことこそ日米両政府の政治責任である。
移転する部隊は、第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部を含む。……沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される」と明記されていることを確認しておく。
米国側が国際環境の変化に即応するため、沖縄駐留米海兵隊の実戦部隊をグアムに移す新軍事再編計画にギアチェンジしたことは明らかだ。米軍側からすれば、軍事戦略上の変更に過ぎず、「沖縄基地を維持し続ける必要性が薄れた」と、ドライに判断した結果に違いない。
沖縄県紙を除いては、大多数の新聞が取り上げなかった(報じた新聞もベタ扱い)のは、メディア側の問題意識の欠如を物語るものだ。そこで、この文書が指摘していた一部をピックアップして、普天間移設のもつれた原因の一端を探ってみたい。伊波文書によると、グアム移転問題は〇五年十月の日米安保協議委員会(2プラス2)で提起され、翌〇六年五月の「再編実施のための日米ロードマップ」で合意したもので、概要は先に示した通りである。
その中で『海兵隊航空部隊と伴に移転してくる最大67機の回転翼機と9機の特別作戦機CⅤ―22航空機用格納庫の建設、ヘリコプターのランプスペースと離着陸用パッドの建設』の記述。すなわち普天間飛行場の海兵隊ヘリ部隊はグアムに移転するとされた」と明記されていたことを初めて知った。
ところが、沖縄県紙を除く本土の新聞・テレビは「伊波文書」どころか、十年余の交渉経過をきちんと総括せず、「辺野古移転を推進しないと、日米関係が悪化する」との大報道に走ったのは、さながら〝鳩山政権バッシング〟の様相だった。さらに、米紙の厳しい論調や知日派米国人のコメントに傾斜した報道も異常過ぎる。
米国の一部の意見や国内保守派論客の見方を引用して「国益か、日米同盟か」と二者択一を迫り、「普天間問題にいらだつ米国……〝鳩山首相の先送り発言〟は無責任」など、一方的・感情的と思える報道は納得できない。前段で指摘したように、沖縄・米軍基地の今後について検討・見直し作業を日米両新政権が協議することは大事なはずなのに、目先の案件処理の不手際を追及するだけで、激動する国際情勢を分析して新聞社独自の主張を展開しないようでは、権力を監視するジャーナリズムの資格はなく、単なるリポーターと批判されても仕方あるまい。
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