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 池田龍夫のマスコミ時評ー(13)普天間基地グアム移転騒動・「日米合意」の問題点を検証せよ

   

 池田龍夫のマスコミ時評(13)
普天間基地グアム移転騒動・「日米合意」の問題点を検証せよ
 池田龍夫 ジャーナリスト・(元毎日新聞記者)
 
 
 日米安全保障条約改定から五十年、沖縄米軍・普天間基地移設と米海兵隊八千人のグアム移転計画の行方が、2010新春早々の外交課題として急浮上してきた。昨年〝チェンジ〟を合言葉に誕生した、日米「民主党政権」の〝手綱さばき〟が注目されているが、年末の日米交渉では解決への糸口も見出せないまま越年、鳩山由紀夫政権の力量が問われる厳しい政治状況である。

この問題は一九九六年(橋本龍太郎政権)以来、もめ続けてきた〝沖縄のトゲ〟とも言われる難題中の難題。政権補足から四カ月にも満たない鳩山政権が苦悩するのは当たり前で、「急いては事を仕損じる」…慎重に対処してほしいと願うばかりだ。
 

「世界一危険な海兵隊基地」を13年も放置
 
 本論に入る前に、鳩山民主党政権誕生の跡を振り返っておきたい。四カ月前の昨年八月三十日に行なわれた第四五回衆議院選挙は、自民党による「五五年体制」を瓦解させる歴史的選挙だった。民主党が三〇八議席(公示前は一一五)で圧勝、自民党は一一九議席(三〇〇)と予想外の大敗北。国民の多くが〝驕れる自民党〟に愛想を尽かし、政治変革を切望した結果である。

「敵失(自民の失政)に助けられただけ」と冷笑する向きもあるが、民主国家における「民意の重さ」を正面から受け止め、従来の政治姿勢を徹底的に検証し、平和で住みやすい社会の構築を目指す民主党の理念が支持されたと受け取るのは当然なこと。鳩山首相の所信表明演説(10・26)にも共感できる点が多く、要は大胆な政策を早期に国民に提示し、実行に移すことだ。新政権約四カ月の流れを見て、紆余曲折の混乱が見受けられるものの、果断な政策実行を期待しているのが、大多数の「民意」と考えられる。
 

 そもそも、普天間飛行場代替地として「辺野古(名護市)への移設」を決めたのは一九九六年だったが、地元との調整が難航して十年間放置されていた。その後、二〇〇六年の「米軍再編協議」によって辺野古沖への移設修正案で決着するかに見えたが、新たな難題が浮上したまま三年間もたなざらし状態。

九六年以来十三年もの歳月が流れ、「世界一危険な普天間飛行場」の地元・宜野湾市民の恐怖はいまなお続いている。東西冷戦終結(1989年)から二十年、国際情勢の変貌は著しい。徐々にではあるが、軍事優先の時代から脱皮し、軍縮へ向かうウネリが高まってきている。米軍再編と普天間問題もまた、時代の流れに沿って検証作業を推進し、「基地・沖縄」の負担軽減に全力を尽くすことこそ日米両政府の政治責任である。
 

 まず「在日米軍再編『最終報告書』」(06・5・1)の「兵力削減とグアムへの移転」の項に「約8000人の第3海兵機動部隊の要員と、その家族約9000人は、部隊の一体性を維持するような形で2014年までに沖縄からグアムに移転する。
移転する部隊は、第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部を含む。……沖縄に残る米海兵隊の兵力は、司令部、陸上、航空、戦闘支援及び基地支援能力といった海兵空地任務部隊の要素から構成される」と明記されていることを確認しておく。

米国側が国際環境の変化に即応するため、沖縄駐留米海兵隊の実戦部隊をグアムに移す新軍事再編計画にギアチェンジしたことは明らかだ。米軍側からすれば、軍事戦略上の変更に過ぎず、「沖縄基地を維持し続ける必要性が薄れた」と、ドライに判断した結果に違いない。

 
  核心を衝いた「伊波・宜野湾市長文書」
 
 伊波洋一・宜野湾市長は十一月二十六日、鳩山首相をはじめ与党国会議員に文書を提出して、基地撤去を訴えた。「普天間基地のグアム移転の可能性について」と題した克明な調査報告であり、実証的で実に優れた文書である。

沖縄県紙を除いては、大多数の新聞が取り上げなかった(報じた新聞もベタ扱い)のは、メディア側の問題意識の欠如を物語るものだ。そこで、この文書が指摘していた一部をピックアップして、普天間移設のもつれた原因の一端を探ってみたい。伊波文書によると、グアム移転問題は〇五年十月の日米安保協議委員会(2プラス2)で提起され、翌〇六年五月の「再編実施のための日米ロードマップ」で合意したもので、概要は先に示した通りである。
 

 伊波市長はグアムなどの現地を見て回って「普天間基地撤去」を訴える傍ら、米公文書などをキメ細かく収集・分析に努めているだけに、説得力があり、実に参考になった。中でも「日米ロードマップ」が公表された直後の〇六年七月「米太平洋軍司令部は『グアム統合軍事開発計画』を策定し、同年九月にホームページに公開した。
その中で『海兵隊航空部隊と伴に移転してくる最大67機の回転翼機と9機の特別作戦機CⅤ―22航空機用格納庫の建設、ヘリコプターのランプスペースと離着陸用パッドの建設』の記述。すなわち普天間飛行場の海兵隊ヘリ部隊はグアムに移転するとされた」と明記されていたことを初めて知った。
 
 「伊波文書」の末尾に衆院外務委員会(09・4・8)での証言も記録されている。「グアム調査(07・7)の際、グアム統合計画室とアンダーセン基地の二カ所の説明で、沖縄からの海兵隊のグアム移転は、米軍のアジアを含む軍事的抑止力の強化につながることも強調していました。……最新のものとしては〇八年九月十五日に、下院軍事委に提出した、国防総省グアム軍事報告書があります」と具体的に証言し、「ロードマップでも、八千名の部隊は一体的にグアムに移転するとされていることから、私は、普天間基地の航空部隊は、KC130部隊関連を除いて、グアムに移転するものと考えてきました」と明快に述べている。
 
 米海兵隊司令官コンウェイ大将は上院軍事委(09・6・4)で「計画の要の一つである普天間代替施設は、完全な能力を備えた代替施設であるべきですが、沖縄では得られそうもありません。グアム移転は即応能力を備えて前方展開態勢を実現し、今後五十年にわたって太平洋における米国の国益に貢献することになる」と明言したと、『週刊朝日』(09・12・11号)が報じていたが、米軍再編のシナリオを率直に示したものだ。
 
  一方的情報で過剰報道に走ったメディア
 
 以上、事実関係を考察した結果、「普天間基地の米海兵隊グアム移転」は米軍再編計画の一環と思えるが、「辺野古への移設ができなければ、日米同盟に重大な支障」と騒ぎ、世論を煽り過ぎた気がする。日米両政府の不手際が混乱を招いた主因だが、メディア側の過剰報道が危機を増幅させてしまった、と指摘せざるを得ない。
 
 十三年間も問題を先送りしてきた日米両政府の責任は重大だ。前政権の〝負の遺産〟を引き継いだ鳩山、オバマ新政権が過去の取り決めを徹底検証し、手直しに努力することこそ、「日米同盟」深化につながる外交姿勢ではないか。

ところが、沖縄県紙を除く本土の新聞・テレビは「伊波文書」どころか、十年余の交渉経過をきちんと総括せず、「辺野古移転を推進しないと、日米関係が悪化する」との大報道に走ったのは、さながら〝鳩山政権バッシング〟の様相だった。さらに、米紙の厳しい論調や知日派米国人のコメントに傾斜した報道も異常過ぎる。

米国の一部の意見や国内保守派論客の見方を引用して「国益か、日米同盟か」と二者択一を迫り、「普天間問題にいらだつ米国……〝鳩山首相の先送り発言〟は無責任」など、一方的・感情的と思える報道は納得できない。前段で指摘したように、沖縄・米軍基地の今後について検討・見直し作業を日米両新政権が協議することは大事なはずなのに、目先の案件処理の不手際を追及するだけで、激動する国際情勢を分析して新聞社独自の主張を展開しないようでは、権力を監視するジャーナリズムの資格はなく、単なるリポーターと批判されても仕方あるまい。
 

 「冷戦思考と対米従属根性を引き摺ったままの日本の外交・防衛官僚は、米軍が削減・撤退すれば日米同盟が弱まるという時代錯誤の危機感に囚われて、むしろ『思いやり予算』や『辺野古に基地を作りますから』と言って、何とかして米軍を引き留めようとしている。……鳩山政権としては、あくまで海兵隊のグアムへの全面撤退を主張し、それが直ちに実現できない場合の『県外』もしくは『県内』移設の方策を見出すべきである」との指摘(高野孟ブログ09・12・4)に共感する。  
 
とにかく、鳩山政権は検証作業を急ぎ、対案を示して抜本的打開策を打ち出すべきである。
 
        (池田龍夫=ジャーナリスト)
 

 - IT・マスコミ論

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