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池田龍夫のマスコミ時評(80) ◎「憲法改正」を目指す安倍政権の不穏な 動き集団的自衛権行使も目論む』

   

  

池田龍夫のマスコミ時評(80) 

 

◎「「憲法改正」を目指す安倍政権の不穏な
動き
集団的自衛権行使も目論む

ジャーナリスト 池田龍夫 

 安倍晋三首相は7月の参院選挙をにらんで、景気回復に戦略目標を定めているようだ。昨年末の新政権誕生以来、憲法改正をにおわす発言が出ており、「衣の下の鎧」が透けて見える。

     まず、96条の改正条項を見直し

 

 自民党の憲法改正推進本部(保利耕輔本部長)は2月15日、衆院選後初の会合を党本部で開いた。首相が、個別の政策課題を議論する党会合に出席するのは異例で、1年生議員を中心に約100人が出席。

 

安倍首相は「自民党結党の目標の一つは占領時代の仕組みの見直しだ。いま本格的な憲法改正草案を用意する可能性がある状況を迎えた。皆さんこそ憲法を変える原動力になっていただきたい」とあいさつ。その後は報道陣に公開されなかったが、出席者によると、首相は自衛隊の「国防軍」への見直しを改めて主張。そのうえで、「まず憲法96条からやっていこう」と語り、96条の改憲発議要件(衆参両院の3分の以上が賛成)の緩和を最優先する考えを示した。

次いで首相は「憲法に由来する問題点」として1977年にバングラデシュ・ダッカで日航機がハイジャックされ、政府が日本赤軍の要求に応じて服役囚を釈放した事件を紹介して「憲法に抵触するために警察や自衛隊による救出作戦ができず、テロリストに屈したと世界から非難された」と説明。また北朝鮮の横田めぐみさん拉致事件直前に「当局が捜査にたじろいだ」ため、事件を防げなかった可能性を指摘し、「日本の戦後体制、憲法は13歳の少女の人生を守れなかった」と、「戦後レジームからの脱却」の必要性を訴えたという。

 

改正案天皇は元首、自衛隊を国防軍に…」

 

 そもそも、「新憲法制定」を「経済復興」と共に結党の理念に掲げた自民党は、初代総裁・鳩山一郎氏が日本の独立確保という観点から改憲を公約。以降、今日に至るまでアピールの強弱はあるものの憲法改正を訴え続けている。

 

自民党が昨年4月に発表した「憲法改正草案」で国防軍や天皇の「元首」明記を掲げており、首相の発言はこれに沿った内容。その主要点は、「①天皇は元首であり、日本国と日本国民統合の象徴②自衛権を明記。『国防軍』の保持と領土・領海・領空の保全③在外国民の保護、犯罪被害者への配慮④財政の健全性の確保⑤地方選挙に国籍要件⑥首相の緊急事態宣言を規定⑦改憲の発議要件(衆参両院の3分の2以上)を過半数に緩和――などである。

 

 憲法9条で戦争放棄を掲げた日本政府は、個別的自衛権は「自衛のための最小限度の武力を行使することは認められている」と行使は可能というのが現在の見解だ。しかし、集団的自衛権の行使は「必要最小限の範囲」を超えるとして、「憲法上の権利はあるが、憲法9条の下で、その行使は許されない」との解釈がこれまでとられてきた。集団的自衛権行使には、9条改正が必要との意見もあるが、安倍首相はこれまでの政府解釈の変更で行使容認を目指しているようだ。

  「現憲法は、立憲主義に基づく憲法原理」と長谷部教授

憲法学者・長谷部恭男東大教授は、朝日新聞2月14日付オピニオン面に「憲法、アメリカ、集団的自衛権」と題する論考を寄稿した。改憲論議の問題点を明快に示しているので、要点を紹介して参考に供したい。 

長谷部氏は冒頭、「日本国憲法はアメリカの贈り物である。日本の憲法原理はアメリカのそれと等しい。個人を尊重し、多様で対立する世界観・価値観の存在を認め、その公平な共存を目指す立憲主義の憲法原理である。
アメリカとの関係を確固たるものにしたいとき、歴史の反省を踏まえて大切にしなければならないのは、まずこの憲法原理である。それは、南北戦争に敗れたアメリカ南部諸州が、奴隷を解放し人種の平等を求める憲法原理を、たとえ『押し付け憲法』であっても大切にしなければならないのと同様である」と、優れた日本国憲法原理を明快に評価している。

 さらに長谷部氏は「自民党の改憲草案を見ると、9条を改正して『国防軍』を置くとする一方、その出動について国会の事前の同意を憲法原則とはしておらず、具体の制度は法律に委ねることとされている。

 

憲法の条文のうわべを見る限りでは、アメリカ以上の好戦国家だということになりかねない。『そんなつもりはない』ということかもしれないが、周辺の諸国民は日本の政治家が善意の固まりだとは考えていない。憲法は見かけも大事である。政治が取り扱うのはしばしば生の現実より、そのイメージである。憲法による政府の権限抑制は、手続きではなく内容面でなされることもある。

 

日本国憲法の下では、国に自衛権はあるものの、それは個別的自衛権であり、集団的自衛権は認められないとされてきた。国際法上認められている権利を自国の憲法で否定するのは背理だと言われることもあるが、これは背理ではない。……9条に関する従来の政府の解釈、とくに集団的自衛権に関する解釈を変更すべきだという議論がある。

頼まれてもいないのにオッチョチョイで変えようというのではなく、本当に『解釈の変更』が必要なのか、9条の条文との関係を意識しながら良識に適った結論を具体の場面ごとに支えることではなく、『解釈の変更』が自己目的化してはいないだろうか。かりに日本の安全とは無関係に、国際社会の平和という一般公益のために自衛隊が戦闘行動するような厄介で危ないことまでは想定していないのであれば、実は『解釈の変更』は必要ないのではないか。

戦争権限の拘束をはずすことは日本の平和と安全のためになるだろうか。『面倒だからはずしてしまおう』で済む話ではない』――と理路整然たる論理

で、自民党改憲草案を厳しく批判している。

 

   米国は「国会議員の3分の2条項」を堅持

 

 毎日新聞2月25日付朝刊コラムに掲載されたローレンス・レペタ明大法学部特任教授の「改憲発議の緩和」に関する指摘も示唆に富む。レペタ教授は「議会の圧倒的多数の承認は、民主的な憲法下の国々では一般的要件だ。

 

例えば、米憲法は上下各院の3分の2、さらに州議会の4分の3の承認が要る。こうした厳格な賛同者は、言論や宗教の自由などの個人の権利が、自由な社会や民主的政府の基盤であるとして、多数決で改正されるべきでないとする。世論が激変し、その時々の多数派が基本的権利を脅かすのを恐れているのだ。

 

……日本の憲法制定は、孤立した出来事ではなく、世界に広がる人権運動の一つだった。施行(1947年)は、国連創設の2年後、国連総会での世界人権宣言採択の1年前だ。人権規約などに規定される個人の権利は『公の秩序』や恣意的な制限を受けることはない。今回の改正が実現すれば、日本は世界の立憲主義の民主主義国家の体勢と違った道を歩むことになる。改正前に徹底したオープンな議論が不可欠だ」と、「改憲」に動き出した安倍政権に警告を発している。

 

    日米軍事協力強化への布石

  東京新聞2月9日付社説は「集団的自衛権行使を認めるために置かれた有識者懇談会(座長、柳井俊二・元駐米大使)が、再始動した。憲法改正ではなく解釈変更で突破する手法だが、安倍首相は以前から解釈変更に意欲的だ。第一次内閣当時の2007年4月に『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』を設置したが、同懇談会が行使容認の報告書を提出する前に退陣したため、報告書がお蔵入りとなった経緯がある。もし報告書が認められたら、米国への攻撃に日本が反撃できる。懇談会再開は首相にはリベンジなのだろう。

 そもそも集団的自衛権を行使する事態が現実に想定されるのか。首相が検討を指示した、近くの米艦艇が攻撃された場合、自衛艦は自らの防御として反撃するだろうし、米国に向かう弾道ミサイルを現装備で迎撃するのは困難だ。

日本は基地提供という日米安保条約の重い義務を負い、すでに双務性を果たしていると考えるのが妥当だ。条約を効果的に運用したいのなら、沖縄県という一地域が負う過重な基地負担の軽減に、まず取り組むべきだろう」と指摘していたが、「有識者懇談会」の名なのもとに報告書を出させ、対米防衛協力強化を計ろうとしていると勘ぐれる。

 

アーミテージ、ナイ報告書の狙い

 

米国が集団的自衛権行使を求めたのは2000年代。アーミテージ元国防副長官とナイ・ハーバード教授らが00年にまとめた提言は、集団的自衛権の行使を日本が自ら禁止していることは同盟協力の制約となっている」と指摘。改憲しないとしても、内閣の憲法解釈を変えるべきだという考えを示していた。その後、両氏は昨年8月にも報告書を出し、東日本大震災時の自衛隊と米軍の協力を評価、「平時に加え、危機や戦時にも、米軍と自衛隊が全面的に協力して対処する許可を与えるべきだ」と述べていたが、集団的自衛権行使を求めたものであろう。

 

安倍首相は、7月参院選対策を意識してか、改憲論議を少しトーダウンしたように見受けられるが、その執念はあなどれない。時代の閉塞状況もあって、右ウイングの発言が目立つ。石原慎太郎・日本維新の会共同代表が2月12日の衆院予算委員会で1時間40分も熱弁をふるい、「憲法廃棄」の持論まで述べたことに驚かされた。もう1人の維新の会共同代表・橋下徹氏も「96条見直し」などに賛意を表している。〝ネット右翼〟が煽っている時代状況も心配でならない。憲法問題への無関心は、平和国家・日本の将来を危うくする。国民一人一人が「基本的人権、平和友好」の憲法原理に立ち返り、混迷の世を打開すべきだと考える。

池田龍夫=ジャーナリスト)

 

 

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