前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『オンライン講座・文明は死の行進を加速している』★『米先住民の警告ー最後の木が切り倒され、最後の川が汚染され、最後の魚が捕まえられてはじめて、人はお金は食べられないことを知るだろう』★『新型コロナ発生の原因は地球環境を破壊した現代文明、炭素社会、強欲資本主義の結果である』

   

『オンライン/新型コロナパンデミックの研究・再録

  

前坂俊之(ジャーナリスト)                     

「最後の木が切り倒され、最後の川が汚染され、最後の魚が捕まえられてはじめて、人はお金は食べられないことを知るだろう」ー米国の植民地主義者に対して、追われゆく先住民のクー族が最後に残した言葉だ。

1840年代のある日、米国ワシントン州内で先住民インディオの部落に白い肌の男たちが「土地を買いたい」とやってきた。先住民には「土地を買う」という意味が全く理解できなかった。土地は誰のものでもない、天のものだ。流れる川の水や空気を売買できないのと同じ。白い男たちは頭がおかしくなったのか、と思った。

しかし、白人の文化に親近感を持った酋長シアルスは何とかこの話をまとめ、両者の共生社会ができた。他の先住民地域では白人入植者との紛争、戦いがあちこちで勃発した。シアルス酋長は、他民族の憎悪から白人移民を守る努力を続けた。なぜなら、インディオが拒否すれば、白人は土地を力ずくでぶん捕るだけだとわかっていたからだ。

この異民族の平和的な共生社会は第14代フランクリン・ピアース大統領(任期1853年―1857年)の登場で幕を閉じた。

奴隷制度に賛成していた同大統領は1855年初めに先住民に対して、土地を政府に売って近くの島に移住せよとの大統領令を発したのだ。しぶしぶ承諾したシアル酋長は州政府との調印式で別れのスピーチを行ったが、巻頭の言葉はその一節。シアルス酋長に感謝した白人たちはその名前をシアトル市名につけた、という。(ヘルゲ・ヘッセ著「その一言が歴史を変えた」阪急コミュニケーションズ、2010年刊)

それから約150年が経過した現在、米国では新型コロナウイルスの第2波が発生し、警察官による黒人圧殺事件に対する人種差別反対デモが盛り上がり、植民地主義者の銅像破壊が連発し、正にこの「クー族の警告」がよみがえってきたのかと思わせる雰囲気だ。

新型コロナウイルス発生の原因は地球環境を破壊した現代文明、炭素社会、強欲資本主義の暴走ではないかと、私はおもう。地球温暖化は自然災害の巨大化を引き起こし次々に大災害が世界中で頻発している。

アマゾンの熱帯雨林は地球上の酸素の20%を排出しており、「地球の肺」とたとえられるが、そのアマゾンで2019年には観測史上最多の火災が発生した。破壊された原生林の面積は3万8000平方キロ(四国の面積の約2倍)で、サッカー場ほどの広さの原生樹林が毎6秒ごとに破壊された計算だ。元の熱帯雨林が回復するには数世紀も要するという。

トランプ2世といわれるボルソナーロ大統領はアマゾン開発を推進した結果、ブラジルでの新型コロナウイルスの感染者数は米国に次いで世界第2位の140万人(死者は約6万)=7月2日現在=を突破、アマゾンの先住民やリオデジャネイロの貧民街などで特に感染者が多いという。

一方、ロシア・シベリアのサハ共和国ベルホヤンスクでは6月20日、気温が摂氏38度に達し、北極圏での過去最高気温を記録、例年6月の平均最高気温より18度も高かった。このため永久凍土が融解して、北極圏にある化学工場の土台が沈下し、燃料油が流出し、河川を広範囲に汚染する事故が発生した。

数万~数千年前に形成された永久凍土は米アラスカ、カナダ、ロシアなど北半球の陸地の約4分の1の面積を占め、地球大気の約2倍の炭素(CO2やメタンガスがなど)保持されている。これが融解すると、閉じ込められていた炭素が二酸化炭素(CO2)やメタンガスが放出され、長年閉じ込められていたトナカイの死骸がなどからの感染症の細菌、ウイルスの炭疽(たんそ)菌、コレラなどが解き放たれ放牧されていうる動物や人々の健康を脅かす。新型コロナウイルスの再来の危機となる。

2019年9月に国連がまとめた報告書によると、CO2の排出が続くと、永久凍土の大部分が80年で融解する可能性がある、という。シベリアの天然ガスに頼っているロシア経済は足元でジリジリ発火している「時限爆弾」を抱えた格好だ。

かと思えば、世界覇権を目指して「戦狼外交」を展開する中国でも、洪水パニックが発生した。6月初めから熱帯低気圧が中国を南方エリアを襲い、重慶市(人口3020万人)、貴州省、湖南省、四川省などに大雨を降らせて一帯は「80年に一度の大洪水」に見舞われた。被災者は約1200万人、死者・行方不明者が78人、倒壊した家屋は8000棟以上にのぼった。

重慶を流れる長江の下流には2006年に完成し世界最大の水力発電ダム「三峡ダム」(湖北省宜昌市)がある。同ダムは軟弱な地盤に建設され、ダム本体のコンクリートに1万カ所以上のひび割れが見つかり、過去何度も同ダム崩壊の危険性についてのニュースが流れた。 今回の大雨で同ダムの警戒水位は145mだが、2mも突破して147mとなったため、大量の水を放水して二次災害を引き起こした。中国水利部が記者会見で「ブラックスワン」(めったに起こらないが、壊滅的被害をもたらす事象のこと)の可能性に触れたため、世界に衝撃が走った。

三峡ダムの下流(揚子江)地域には宣昌市(410万)、岳陽市(555万)と新型コロナは発生の武漢市(1100万)、最後が南京市(800万)と上海市(2400万)の大都市が続約6億人が住み、中国のGDPの40%が集中する中国経済の中心地だ。万が一にも、三峡ダムが決壊すれば、30億立方メートルの土砂が下流域を襲い、上海までが水浸しになり潰滅的な被害が出る。被災地は最悪の衛生状態になり、感染症が発生する、大量のがれきが日本海沿岸に到達するという。

世界はますます不透明な「アフター新型コロナ恐怖時代」に突入している。

 

 - 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
<新刊紹介・中国・辛亥革命百年の歴史ガイドブック>蘇るオールド上海の記憶・『上海時間旅行』(山川出版社 1800円)

<新刊紹介・中国・辛亥革命百年の旅の絶好の歴史ガイドブック> 蘇るオールド上海の …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(66)記事再録/ 日本の「戦略思想不在の歴史⑴」(記事再録)-日本で最初の対外戦争「元寇の役」はなぜ起きたか①

2017年11月13日 日本で最初の対外戦争「元寇の役」はなぜ起こったか 今から …

no image
日本メルトダウン脱出法(768)「世界で最も影響力のある日本人」トヨタ社長、安倍首相、孫正義氏ら」●「アメリカを怒らせ、自滅への道を歩み始めた中国 南シナ海問題は満州国建国と同じ構図」

    日本メルトダウン脱出法(768)   「世界で最も影響力のある …

Sayonara Sayonara, Shonan’s Best Seaside Restaurant” – Zushi Nagisabashi Coffee Shop will close on October 16th – it will reopen in the spring of 2023. Here are the 10 best views of Mt. Fuji taken from the same terrace

  「サヨナラ サヨナラ・湘南最高の海辺のレストラン」ー逗子なぎさ橋珈 …

no image
日本リーダーパワー史(180)<国難突破力ナンバーワン・出光佐三を見習う②>『石油メジャーに逆転勝利』

 日本リーダーパワー史(180)   <国難突破力ナンバーワン・出光佐 …

no image
昭和外交史④  日本の一番長い日  陸軍省・参謀本部の最期

1 昭和外交史④  日本の一番長い日  陸軍省・参謀本部の最期 <阿南陸相の徹底 …

日本リーダーパワー史(667) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(49) 「日本の『インテリジェンスの父』川上操六参謀次長が密命して、シベリアに送り込んだ『日本の007、満州馬賊隊長の花田仲之助」

日本リーダーパワー史(667) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(49)   …

no image
『インテリジェンス人物史』(13)記事再録/『真珠湾攻撃から70年―『山本五十六のリーダーシップ』ー 最もよく知る最後の海軍大将・井上成美が語るー

リーダーパワー史(869) 2011/09/27執筆<日本リーダーパワー史(19 …

no image
日本リーダーパワー史(741)『だまされるなよ!安倍ロシア外交の行方』(対ロシア外交は完敗の歴史、その復習問題)●『ロシャに対しては、日本式な同情、理解で 仕事をしたら完全に失敗する。 ロシャは一を得て二を望み、二を得て三を望む国であり、 その飽くところを知らず、このようなものに実力を示さずして 協調することは彼らの思うままにやれと彼らの侵略に 同意するのと同じことだ」 (ロシア駐在日本公使・西徳二郎)』

  日本リーダーパワー史(741)『だまされるなよ!安倍ロシア外交の行 …

『Z世代のためのトランプ米大統領講座㉔』★『ChatGPT対ディープシークのパラドックス』★『AIは今世紀における最も重要な地政学上の戦場』★『ディープシーク「ディスティレーション(蒸留)」の疑惑』

中国の人工知能(AI)スタートアップ「DeepSeek」(ディープシーク)が低コ …