前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『知的巨人の長寿学』の尾崎行雄(95)に学べ—<国事の心配さえなければ、いまが一番幸せだ>

      2019/08/21

『知的巨人の長寿学』の尾崎行雄(95)に学べ
<国事の心配さえなければ、いまが一番幸せだ
 
前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
民主主義をはきちがえて、自分や少数の欲望を満たすために、多数の迷惑を顧みない心得
違いものが増えた。この連中に正邪善意を教え込むのが教育の使命だ。
 

一八九〇(明治二十三)年の第一回総選挙以来、連続二十五回当選、六十三年間というギネスブックの最長寿議員の記録を作った。七十代を過ぎた晩年の政治活動が一層輝いている。
戦時中の1942年(昭和17)四月の翼賛選挙で、「売り家と唐様でかく三代目」の川柳を引用した演説が、不敬罪に引っかかった。
八十五歳の身で投獄されたが、裁判で無罪を勝ち取った。八十歳を過ぎてもスキーに挑戦、体力、気力を保ち続けたことが、その不屈の闘志の原動力となった。このころの尾崎愕堂(尾崎の号。保安条例に驚愕の意。最初は学堂)は逗子の私邸「風雲閣」で暮らしていた。長女・佐々木清香は当時の養生法を回想している(『尾崎愕堂(全集』第十一巻)。
 

1太陽と共に起きるのが品で、朝食は七時(夏は六時)、芸は十二時、夕食は六時からと、一分も違わない。朝食は、ヨーグルト少々、みそ汁は海草が眼病によいので、毎朝、ワカメを大椀に、玄米か、麦飯を一杯に。食後は朝鮮人参の煮たもの一片。
朝食後は、新聞二紙を読み、庭掃除。廃物利用を徹底、目が覚めている問は片時もぼんやりしていることはない。昼食も夕食もお汁に魚一品、野菜一品、麦飯一碗」

それから七年後の一九四九(昭和二十四)年、「日本の議会政治の父」として、九十二歳となっていた愕堂の名声はますます上がり、米国からも高く評価された。その生活ぶりは太陽とともに起きるという習慣は十年前と変わりない。
七時ごろ朝食。八時過ぎに新聞(「朝日」「毎日」「読売」の三紙)を書生が読み上げる。昼食は十一時半、夕食は五時。果物はミカンやリンゴを皮まで食べ、汁を顔中にこすりつけ、これが目に非常に効果があったという。

<1858・12・24~1954・10・6政治家。文部大臣、東京市市長、司法大臣などを歴任。「憲政の神様」と呼ばれ、「尾崎記念館」が建てられた>

 
(昭和十六年1941)一月頃の父(八十四歳)
 
                     佐々木 清香(愕堂の長女)
 
近頃、耳がますます遠くなって不自由ですが、事毎に父を憂えしめる昨今の世情では余計な雑音が聞えない方が、父の健康のその頃の父と私ためにはよいかも知れない。 眼も白内障で、一昨年あたりは、物が二つに見えたりして困って居られたが、此頃は少しよくなった。
 
その頃は、耳は遠いし、この上娘が見えなくなったら、何をして遊ぼうかと考えている、などと、心細い事をいわれ運動好き・読書好きの父が、もしそんな事にでもなったら、どんなに困るだろうと心配したが、その後は病勢が進まないばかりか少しよくなったようなのでうれしい。然し勿論、父が望むだけの読書は許されない。平常は黒い眼鏡かけている。
先年までは上京の折には大てい新橋駅を出たところそば屋があったが近ごろ胃が丈夫になったったためか、いつも銀座の竹葉の鰻井に替えられた。ところが、悪は統制のため、以前のような壱円五十銭の鰻井になく、壱円ので我まんしなければならないとて御不清である。
 
父は中年までに、胃腸が特に弱く、三度三度の食事掌をとるのが苦痛であったと、よくいわれた。その後だんだんよくなったが・数年前までほ・胃痙攣に悩んだ。
近年はそんな事もなく食慾も旺盛なのは、規則正しい生活と、身体に適した食物のおかげであろう。
 
太陽と共に起きるのでるのを原則としているから、冬は六時から六時半ごろの間に起床し、洗顔すむと、父独特の半ズボンの運動服に身をかためて庭に出る。
 それは夜中の御用を足した便器を・ヤブにあけに行かれるのです。
愛犬レイを、
「ルイ、レイ」
と、いともやさしく呼びながら。
そして、その帰りには、門のところにある郵便箱から新聞を出し、それを持って食堂に入る。朝食は七時(夏は六時)昼食は十二時、夕食は六時、一分も違わない。一・二分後れても、台所の時計はよく合しておきたさいと注意される。
食事時の突然のお客は一番迷惑らしい。
 招かないのに、突然来るような礼儀知らずには、食事出ささない事に定めていると云われて、食事の終るまで御客様に待って頂く。
 
 このごろの朝食は、ヨーグルト少々、味噌汁大きなお椀に一杯はい、タマゴ1個、野菜少々・大根おろし少々、麦飯1杯、その他つけものや佃煮類である。
 海草が眼病によいというので、毎朝、味噌汁の実はわかめ、わかめの焼いたのも好んでたべる。
 食後はくだもの数種に、朝鮮人参の煮たもの1片、ビオフェルミン3錠、最後にキャンデー1つお口に入れて・新聞を読むという順序です。
 近頃は麦を沢山入れた麦飯ですが、こんなにお米不足にならぬ前は長い間玄米であった。
 朝食後は、新聞二種ほど読み、終ると、庭掃除が始まる。
 ヤブにつつまれた風雲閣の庭の十二月・十二月は掃いた後から落ち葉が落ちる。それを、午前も午後も、お天気さえよければ、あきもせずに掃除して居られる。何事にも根気がよい。
 
どこからさがして来られたか、草刈のばあさんが背負って居るよ籠に、あつめた枯葉を入れて・畑のすみまで背負って行かれる。
 龍に余り一はい入れすぎると、腰が立たなくなると笑っておられた。
 
 枯葉はそのまま堆肥にしたり、焼いて肥料にしたりしたが(落葉焼きも父の大好きな仕事です)先日落葉やゴミを焼いて、タドンを作る方法を新聞で見つけて、折よく信州から、冬の仕事を手伝いに来た青年に命じて、早速作らせたところが、千五百個も出来て、火鉢に、コタツに、サ日ソストーブに、七りんに用いて、大へん重宝している。
 
 父はなんでも廃物利用が好きで、毎日の手習いの紙も、決して新らしい半紙などはつかわない。古手紙、古ハガキ、新聞にはさまって来た広告の紙、包み紙のやぶれかかったの。それらのない時に、初めて、新聞を四つ切にして用いる。
 貧乏の家に生れ、今でも貧乏だから、よくよく倹約に出来ていると、よく云あれる。
 
 この頃平常着ている着物の下着は、
「四十年ほど前に、西園寺から貰ったのだ」
 と見せられた。
庭掃除に疲れると、あがって来て読書をする。
午前十時には朝鮮人参のお茶と、軽いお菓子をたべる。
読書にあきると庭掃除というよぅに、目が覚めている間は、少しもぼんやりしている事はない。
 
昼食も、夕食も、お汁に魚一品、野菜一品、麦飯一碗、ごくまれに、魚の代りに肉の時もある。
 お魚もぬきで、野菜が二、三種になったり、干うどんや干そばにする時もあります。
野菜は自国の物、父の健康に良いように、そして嗜好に合うように調理する。
 
 夕食前に入浴される。
晩酌は近頃は五勺と定め、上きげんになっていろいろのお話がはじまる。
 
 御維新前から、昭和の今日に至るまでの話であり・政治、文学、人物評、旅行談、食物の話、昔話、さては落語までがとび出す
のですから、その面白い事。
 度々後日の楽しみに書いておいたらと、父にも進められ、かきはじめては見るものの、到底、父の話の面白さを、充分にかきあ
らわす事はできない。
 
 夕食後は一、二時間手習いをして床に入る。
 一番頭が休まって、安眠出来るそうである。
    国難を憂ひ給へ は老父の
           御届けはし昨日も今日も
 

 - 健康長寿 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『テレワーク、SNS,Youtubeで快楽生活術』★『 鎌倉八幡宮の源氏池のハスの花の万華鏡(2020/7/11/am730)-世界で最も美しいこの花を見ずして死ねないよ、今が盛り、早朝のお参り散歩で長生きできるよね』

鎌倉八幡宮の源氏池のハスの花の万華鏡(2020/7/11/am730)-世界で最 …

「オンライン講座/宇野千代(98歳)の『可愛らしく生きぬいた私・長寿10訓』★『明治の女性ながら、何ものにもとらわれず、自主独立の精神で、いつまでも美しく自由奔放に恋愛に仕事に精一杯生きた華麗なる作家人生』

 2012/11/22  百歳学入門(55)記事再 …

世界最長寿120歳の泉重千代さんの養生訓ー★『①万事くよくよしない②腹八分か七分がいい③酒は適量ゆっくりと④目がさめたとき深呼吸⑤やること決めて、規則正しく⑥自分の足で散歩に出よう⑦自然が一番、さからわない⑧誰とでも話す、笑いあう⑨歳は忘れて、考えない⑩健康はお天とう様のおかげ』

<「晩年長寿の達人たち」「別冊歴史読本」2007年11月号掲載>   …

no image
日本メルトダウン脱出法(832)「日本は「構造改革」から逃げてはいけない」●「欧州諸国の関心は、日本より中国へ」●「起業家がデンマーク人の働き方に学ぶ4つのこと」●「コラム:マイナス金利でも円安進行は期待薄=山田修輔氏

 日本メルトダウン脱出法(832)   日本は「構造改革」から逃げては …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(179)記事再録/★ 『本田宗一郎(84歳)』ー画家シャガール(97歳)に会ったいい話「物事に熱中できる人間こそ、最高の価値がある」★『私は生きていく大きな自信をもったのは貧乏な家に生まれたからだ』★『貧乏はクスリ、人生も企業も、一度貧乏とか不況とか克服すると一層強くなる』

 2015/03/11 / 百歳学入門(105)の記事再録 …

『テレワーク、SNS,Youtubeで快楽生活術』★『鎌倉/稲村ケ崎サーフィン(2020/7 /12日曜日am900)-九州に大雨を降らせた梅雨前線が停滞し荒波に苦労するサーファー10人』★『どどど^波力!すげーぞ!◎ 台風24号接近中の怒涛の稲村ケ崎サーフィン10分間(2018 /9/29am720-8.30の圧縮版)-怒涛の大波とサーファーの決闘編!』

鎌倉/稲村ケ崎サーフィン(2020/7 /12日曜日am900)-九州に大雨を降 …

no image
★(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』★『ガラパゴス国家・日本敗戦史④』150回連載の41回~51回まで』●『『太平洋戦争の引き金を引いた山本五十六のインテリジェンス』★『東條英機自身も仰天した組閣の大命降下ー東條首相誕生の裏側』★『<軍人たちは『戦争責任』『敗戦責任』をどうとったのか、敗戦で自決した軍人は一体何人いたのか』★『無謀な大東亜戦争での日本兵残酷物語の「内務班」<兵士たちは召集令状「赤紙」1枚(1銭5厘の命―現在の値段で約100円)とただ同然で招集』

★(まとめ記事再録)『現代史の復習問題』 ★『ガラパゴス国家・日本敗戦史④』 & …

no image
『明治から150年― 日本の歴代大経営者(最初はみんな中小企業) の遺言、経営訓、名言のすべて』 ★『昭和経済大国』を築いた男・松下幸之助(94歳)の名言30選」★『松下の生涯は波乱万丈/『経済大国サクセスストーリー』● 『企業は社会の公器である』 ● 『こけたら立たなあかん』● 『ダム経営は経営の基本である』● 『経営は総合芸術である』●『無税国家」は実現できる』●『長生きの秘けつは心配すること』

  『明治から150年― 日本の歴代大経営者(最初はみんな中小企業) の遺言、経 …

『Z世代のための米大統領選挙連続講座①』★『バイデン大統領(81歳)対トランプ前大統領(78歳)の「老害・怨念デスマッチ」

材木座通信24/07/09pm600影絵の富士山とウインドウサーイン 2024/ …

no image
記事再録/巨人ベンチャー列伝ー石橋正二郎(ブリジストン創業者)の名言、至言、確言百選②-『新しき考えに対し、実行不能を唱えるのは卑怯者の慣用手段である』★『知と行は同じ。学と労とも同じ。人は何を成すによって偉いのではない。いかに成したかによって価値あるものなのだ』

 2016年7月13日 /巨人ベンチャー列伝ー石橋正二郎(ブリジストン …