前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

世界/日本リーダーパワー史(930)-『トランプ大統領が招く「米国孤立」と世界経済の混迷から世界恐慌への悪夢』(下)『EUでは移民排斥の極右勢力の台頭!』★『米中間選挙の結果がすべてを左右する』★『1930年代の世界大恐慌が再現するのか、平沼首相の「欧州情勢は複雑怪奇なり」』

      2018/08/29

  • 『トランプ大統領が招く「米国孤立」と世界経済の混迷から世界恐慌の悪夢』(下)

  •      前坂 俊之(静岡県立大学名誉教授)

  • EUでは移民排斥の極右勢力の台頭!

「EUでは移民排斥の極右政党がこの2年間で大躍進し、EUは分裂、崩壊の危機を迎えている。EUを主導するドイツのメルケル政権は末期道場症状に陥っている。シリアからの難民受け入れを人道主義的な立場で強力に進め、ドイツは100万人の受け入れを指導した。すでにドイツ国内に300万人ものトルコ系移民がおり、メルケル氏は国内、EU内から猛烈な反発をくった。

メルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)は昨年9月の総選挙で反移民を掲げる極右政党の躍進でかろうじて第1党を保ったものの、難民政策で真っ二つになりやっと半年後の18年3月に大連立政権が発足した。

難民受け入れは大幅に後退、ドイツ以外の加盟国からEU入りして登録された移民・難民が、その身分が確定する前にドイツに入国した場合、最初の登録国に送還される規則となった。そのためには送還先の国と2国間協定を結ばなければならないが、地中海に面し最も難民、移民がはいってくるイタリアはこの規則に合意しておらず、極右政党との連立政権を組むイタリア政府は「EUの移民政策に真っ向から反対。「人権尊重」「人とモノの自由な移動」という欧州統合の理念が大きく揺らいでいる」

「極右勢力が最初に伸びたのはポーランドで2015年秋の選挙で極右政党「法と正義」が圧勝した。フランスでは、ル・ペン国民戦線党党首が2017年のフランス大統領選挙で決戦でマクロンに破れた。イタリアではポピュリズム政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」が総選挙から3か月後の今年6月に、連立政権を組んだ。ハンガリーでは4月に欧州への移民流入に反対しているオルバン首相の極右政党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が勝利して、ドイツ批判の急先鋒に立っている。

スウェーデンの国政選挙は9月9日です。反移民を掲げる極右のスウェーデン民主党が第1党をうかがう勢いをみせている。欧州の国政選挙で極右政党が第1党になれば第2次大戦後で初めてのことで、今後のヨーロッパ、EUの動向を見る上でも注目の選挙です」

 

EUの崩壊を危惧するジョージ・ソロスの警告

「結局、最初にEU離脱を表明したイギリスの迷走がEUの分裂、混乱に拍車をかけているのです。メイ英首相が欧州連合(EU)離脱交渉に合意し、内部で意見が割れている与党・保守党に合意案支持を訴え、議会で承認を得るまでに残された期間はあと8カ月を切った。

来年3月のブレグジット(EU離脱)期限までに予定される重要日程は目白押しで国内のブレグジット前に移民問題から漁業政策まであらゆる関連法案を可決しなければならない。さらにEU首脳会議(9月20日)欧州理事会(10月18日)など短い期限内に高いハードルの会議が連続しており、期限内にまとまる可能性は少ないのではと思う」

「EUを揺さぶる移民排斥主義の台頭ドイツは反難民に傾斜、イタリアでは極右が台頭」(ウォール・ストリート・ジャーナル7月6日)によると、「メルケル首相は今週、連立政権の崩壊を防ぐために難民・移民の流入規制を強化し、難民寄りの姿勢をさらに後退させた。

イタリア内相で移民排斥主義の政党「同盟」党首サルビーニはメルケル首相に反対し「われわれはブリュッセルの壁を崩壊させる。欧州の古い政治エリートを一掃するナショナリスト運動の汎ヨーロッパ連合体「諸同盟の同盟」を構築すると宣言した。これにはハンガリーのオルバン首相も賛同しており、EUは内部分裂し、極右の台頭でリベラリズムが衰退していく歴史的な転換期を迎えている。

これにトランプ米大統領がEUを激しく攻撃し、北大西洋条約機構(NATO)や多国間の貿易に反対していることも極右政党を勢いずかせている。

「EU崩壊と次の金融危機が迫っているとして世界的投資家のジョージ・ソロスは『崩れゆくヨーロッパを救う』(ニューズウイーク8月7日)で処方箋を提言している。

それによると、EUの難民危機、経済発展を妨げる緊縮政策、ブレグジットの3つの問題点を指摘、その解決策としてー

➀難民解決のための緊縮財政をやめて借金してアフリカ版マーシャルプラン(年間352億㌦)を作成する。

②そのために自分も協力して資金調達のための型破りな提案を用意している。

③EU存亡の危機を乗り切るには荒療治が必要だ。EUは生まれ変わらねばならない。この再生には、有権者も参加するボトムアップ方式で行う。

④イギリスが離脱を撤回すれば、EUの予算の困難が解決する。多くのイギリス国民が離脱派に大差を付けて反離脱の意志を表明するように働きかけていく。

➄ 時代遅れな目標は捨て、速度は違えど同じ場所を目指す「マルチスピードな欧州」ではなく、加盟国に多様な道筋を認める「マルチトラックな欧州」を目指すべきだ。-という内容です」

  • 米中間選挙の結果がすべてを左右する

「とにかく、トランプ大統領の出現以来、世界では次々に独裁者や移民排斥を唱える極右政党が各国で政権を獲得し勢力を伸ばすファシズムの時代に一転した。9月から世界的に政治の季節が始まるが、中でも最も注目されるのは米国中間選挙です。

トランプ共和党が勝てばこの傾向に一層拍車がかかり、民主党が勝てば、独裁化、移民排斥には歯止めがかかるでしょう。その面で米国民の政治意識が今後の世界情勢の動向を左右する。」

「米中間選挙では435の下院全議席と上院33議席(総議席は100)が改選され、トランプ政権の政策の是非が国民に審判される。8月7日にオハイオ州で行われた下院補選では共和党が前回、大勝した選挙区だが、大接戦の末かろうじて、共和党が議席を確保した。選挙分析に定評があるプロのレポートによると「下院では民主党が過半数を制する」と予想している。

オンライン賭け市場でも下院での多数党交代を予測する割合が60%を上回り続けている、という。民主党の予備選挙の投票率は、前回2014年の実績を大きく上回り、民主候補者も、2014年の約1.5倍と共和党を2割もうわまわり、民主党の党勢を示している。一方、共和党支持者によるトランプ大統領の支持率は、2018年7月初めの時点で90%に近い。共和党支持者の5割強が、「中間選挙ではトランプ大統領を支持する」と答えている。あと3ヵ月後にせまった選挙にトランプは大車輪で応援に回っており、外交はしばらくお休みですね」

(「日経(8月10日付)によると、アーミテイジ元米国務副長官は、上院は共和党が多数を維持するが、下院は民主党が過半数を奪い返すと答えている。(ホワイトハウスが望む)予算法案を下院で通せなくなれば、トランプ大統領の政治力は大きく損なわれる。下院を失うと、モラー特別検察官による(大統領の弾劾という)法的な挑戦にもさらされる。野党の民主覚は政策で優位に立ちたいと思っているので、手続きを強めるかどうかはわからないが、トランプ大統領には試練となる、という」

 

1930年代の世界大恐慌が再現するのか、平沼首相の「欧州情勢は複雑怪奇なり」

「ソロスは再び金融恐慌が起こることを警告しているが、1930年の世界大恐慌の苦い教訓を考えなければと思います。

1929年(昭和4)10月の米ウオール街の株式大暴落に端を発した「世界大恐慌」によって、米国の株価は80%以上下落、工業生産は70%以上落ち込み、失業者数1200万人、失業率25%となった。米国は他国からの輸入を制限し自国の経済を守るためのブロック経済化を行った。世界各国はこの大不況の影響で、経済は落ち込む一方で一斉に「ブロック経済化」とファシズム(今でいう排外排斥運動)が勃興する。

ヨーロッパではヒットラーのナチズムが33年に政権を握った。日本でも31年(昭和6)に関東軍が謀略で満州事変を起こして満州全土を占領これを「ブロック経済地区」として翌年には『満州国』を建国した。国際連盟で『満州国』は認められなかったため、日本は国際連盟を脱退し「世界の虎児」と化した。その後、ドイツ、イタリアとファシズム同盟を結んで、その結果、1939年(昭和14)にドイツが第2次世界大戦を引き起こしたという、一連の歴史の流れをもう一度振り返る必要がある、要はトランプ流の保護貿易主義は「経済のブロック化」につながり、戦争の原因となるという苦い教訓です」

「そういえば、平沼棋一郎首相が1939年に「欧州情勢は複雑怪奇と嘆いて総退陣したが、現在のヨーロッパのガチャガチャ、トランプの迷走はまるで、複雑怪奇で先が読めないというのは平沼時代と同じですね?(笑)」

 

 - 人物研究, 健康長寿, 戦争報道, 現代史研究 ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong>

  関連記事

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(161)』『鈴木敏文の先 : N高等学校という教育革命 』●『ケリー長官の広島訪問、海外メディアはどう報じたか?』●『このままでは日本のコンテンツ産業もガラパゴス化してしまう』●『インターネットテレビ局「AbemaTV」が本開局…音楽やスポーツ、アニメなど全24チャンネルでオープン』

『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(161)』   & …

no image
速報(122)『日本のメルトダウン』<日中百年の難題?『放射能 福島原発は廃炉にできない』『中国は「乱世」突入の前兆か』

  速報(122)『日本のメルトダウン』   <日中百年の難 …

no image
日本リーダーパワー史(493)『長期化する日中韓の対立を 百年前の『アジア諸民族の解放の父』-『犬養木堂伝』を 読んで考える」

       日本リ …

no image
日本リーダーパワー史(573)「日中戦争リテラシー 「近衛外交」の失敗は なぜ起きたかー河辺虎四郎少将回想応答録(昭和15年

日本リーダーパワー史(573) 「日中戦争リテラシー」 支那事変(日中戦争)での …

no image
日本リーダーパワー史(526)明治維新の元勲・大久保利通の性格は典型的な武士気質の「寡黙不言・決断断固実行型」―

  日本リーダーパワー史(526)   西郷隆盛と竹馬の友で最後に雌雄を決するこ …

no image
梶原英之の政治一刀両断(8)『政治空白はなぜ続くかー電力業界が仕切り屋の座を下りたからだ』

梶原英之の政治一刀両断(8)   『政治空白はなぜ続くかー電力業界が仕 …

no image
日本リーダーパワー史(128) 空前絶後の名将・川上操六⑲ 日清戦争前哨戦のインテリジェンスとは・・

日本リーダーパワー史(128) 空前絶後の名将・川上操六⑲日清戦争前哨戦のインテ …

no image
日本リーダーパワー史(787)「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、インテリジェンス④』★『日本史の決定的瞬間』★『撤退期限を無視して満州からさらに北韓に侵攻した傍若無人のロシアに対し東大7博士が早期開戦論を主張(七博士建白書事件)』

日本リーダーパワー史(787) 「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利 …

no image
日本メルトダウン脱出法(888)『東京五輪招致にカネ疑惑、関係者の秘密口座に1億6000万円支払い? 英紙報道』●『五輪招致で億単位の送金か、菅義偉氏はクリーン強調』●『凋落日の丸家電が「甘えの構造」から 抜け出すための最終提言』●『英女王、中国訪問団は「とても失礼」だったと発言』

 日本メルトダウン脱出法(888)   東京五輪招致にカネ疑惑 関係者 …

no image
日本リーダーパワー史(484) (まとめ)日露戦争勝利の立役者「児玉源太郎伝」森山守次/ 倉辻明義著,太平洋通信社、明治41年

    日本リーダーパワー史(484) &nbsp …