『百歳学入門(202)』<100歳社会の手本―葛飾北斎に学ぶ -「創造力こそ長寿力」★『70歳以前に画いたものは取るに足らない。八十歳にしてますます精進し、九十才にして奥義を極め、百才にして神技となり、百才を超えて一点一画を生きているように描きたい』(画狂老人述)
100歳社会の手本―葛飾北斎に学ぶ
―「創造力こそ長寿力」
私は富士山マニアである。
昨年12月25日に故郷の岡山に新幹線で帰省した。この日は青空がクリーンに広がり雲一つない。雄大、壮麗な富士山の全景がくっきり見えるのではと胸おどった。
新幹線で三島駅を通過すると、富士山が徐々に姿をあらわす。富士駅付近では5合目までは雪化粧した富士山全景がパノラマ的にスピード変化して、富士川鉄橋をわたるまでのビデオを15分間ほど感動しながら撮影した。
東海道新幹線は東京オリンピック開催の1964年(昭和39)10月に開通した。
当時の富士市は日本を代表する製紙工場の町であり、その大気汚染、ヘドロの水質汚濁による健康被害がひどい「公害の町」であった。
1970年代(昭和40年代)には製紙工場相手に住民の『富士公害裁判』が起きた。そのころは富士市内に林立した製紙工場の多数の煙突から黒煙がもくもく上がり、富士山の姿もカスんで見えないほどで、高度経済成長を驀進中の「日本経済大国」「工業立国」と裏腹の「公害大国」日本の現実を象徴する風景であった。
私はこの富士市の変貌を新幹線の車窓から何百回も見てきた。
ところが、40年たった現在は煙突からの排気ガスは全くなく、美しい富士山だけが、クリーンに高画質で新幹線車窓から眺めることができる『環境大国』へと日本も180度変わったのである。
Youtuberの私は早速、この富士山動画を「外国人のための新幹線から富士山を撮影する方法」と題してアップしたが、アクセスは数多くあった。
明治以来の外国人による日本イメージの代表は「フジヤマ,芸者ガール」だが、富士山人気は今も変わらない。
富士山は日本の多様性に富む自然の代表であり、自然崇拝教の日本人の信仰の対象であり、日本人の美の心そのものであると思う。
富士山ほど芸術家に愛されたものはない。富士山は永遠の生命であり、、普遍的な美を見て、生涯描き続けた長寿芸術家も数多い。葛飾北斎(88歳)、横山大観(89歳)、片岡球子(103歳)、中川一政(97)らである。
中でも、葛飾北斎が最も注目される。
1999年に米雑誌「ライフ」は「過去1000年で最も偉大な功績をあげた世界の100人」の1人に、日本人では唯一、浮世絵師の葛飾北斎(1760-1849)を選んだ。
90歳の生涯に、「富嶽三十六景」などの浮世絵、版画、肉筆画、漫画など3万点以上を描いた北斎は西洋絵画を超えた表現技法を創造し、ゴッホらフランス印象派の画家たちに多大な影響を与えた。今、世界を席巻する「ジャパンアニメ」「ジャパンクール」の元祖なのである。
幕末にヨーロッパに輸出された『日本陶器』の梱包材に浮世絵が入っていたが、1856年(安政2)に、その「ホクサイスケッチ」が大評判となり、一躍、北斎の名を世界的にした。特に、フランス印象派には大きな影響を与えた。
北斎のすごさは絶えず進歩を目指して精進を続け、晩年にますますその本領を発揮した「晩年の達人」だったこと。
1831(天保2)年、72歳の北斎は『富嶽三十六景』の連作の第1作を発表した。遠近法、デフォルメ、ダイナミックな構図という『北斎マジック』を集大成したもので、その驚異の動体視力で迫力ある波頭を描ききって、「あか富士」を加えた「冨嶽百景」(続編を含めて46点)を76歳で完成した。
北斎は『富岳百景』のその奥付に「七十五齢 北斎を改め画狂老人」とわざわざ大書して、こう書いている。
「私は6歳より物の形をうつす癖があったが、70歳以前に書いたものは取るに足らない。73歳となった今やっと、動物昆虫魚類などの骨格、草木を書けるようになった。
今後とも八十歳にしてますます精進し、九十才にして奥義を極め、百才にして神技となり、百才を超えて一点一画を生きているように描きたい。
願くば長寿の君子たちよ、私の言葉が偽りでないことを見てほしい、画狂老人述」
70歳を前にした私はこの言に電撃的なショックを受けた。北斎の不屈の闘志と情熱と、日々の努力の継続に深く感動した。
生涯現役を貫き、生活も貧乏も世俗もすべてなげうってた「画狂人」の画業三昧は「超高齢社会」の素晴らしい手本ではないだろうか。
これ以来、私は北斎をまねてビデオ片手に鎌倉、逗子、葉山、湘南、神奈川各地をぶらり散歩しながら「現代版富嶽百景」を撮影しているが、1日に1万歩近く歩くのでいい運動になる。
今、ベストセラーの多くは「健康本、長寿本、医者本」であり、新聞もテレビも長寿、健康番組、記事があふれている。その多くは長生き食べ物、薬が健康によい、病気が治った、ビタミン、長寿遺伝子は何か、カロリー制限、老けない最強食、ダイエット食などのオンパレード。いわば「健康のためなら死んでも良い」という類である。医者の不養生という言葉がある。
長生き健康は「センテナリアン」(百歳人)からこそ聞けである。創造力こそ長寿力なのである。
関連記事
-
-
『鎌倉材木座ゴールドサーフィン(12月16日)ー小春日和の黄金の海でのサンセットサーフィンは超美しいよ☆5
『鎌倉サーフィンチャンネル』 ★<寒さを吹き飛ばせ、サーファーズパラダイス鎌倉> …
-
-
『Z世代への昭和史・国難突破力講座⑧』『吉田茂の国難突破力④』★『吉田は逮捕され40日間拘留された』★『日本人の国民性の欠点ついて「重臣たちも内心戦争に反対しながら主張せず、後になて弁解がましいことをいう』★『吉田はジョークの達人』★『「いまの代議士はポリティシャン(政治屋)で、ステーツマン(国士、本当の政治家)ではない」
「日本史決定的瞬間講座⑦」再録再編集 前坂俊之(ジャーナリスト)& …
-
-
速報(366)『日本のメルトダウン』総選挙前にー原発廃炉まで50年、迫る巨大地震を前に事故を忘れ去りたい無責任な政治家、企業
速報(366)『日本のメルトダウン』 総選挙を前にー原発廃炉まで5 …
-
-
『震度6、大阪北部地震発生、参考記事を掲げる』―★『2016年4月の熊本地震から2ゕ月』(上)『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『 巨大地震』の予知にことごとく失敗した。<ロバート・ゲラー東京大学理学系教授の正論>』
『大阪北部地震」大阪市内混乱 電車軒並みストップ、路上行き交う通勤 …
-
-
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑱日本帝国最後の日(1945年8月15日)をめぐる攻防―終戦和平か、徹底抗戦か➂』
『ガラパゴス国家・日本敗戦史』⑱ 『日本の最も長い日―日本帝国最後の日 …
-
-
記事再録/知的巨人たちの百歳学(120)ー戦国時代の医者で日本長寿学の先駆者・曲直瀬道三(86歳)の長寿養生俳句5訓」★『日本人の健康長寿の古典的な実践をおこない、貝原益軒よりも先駆的な業績であろう。』
2013年6月20日/百歳学入門(76) 日本長寿学の先駆者・曲直瀬 …
-
-
明日の台風7号の鎌倉稲村ケ崎ビッグサーフィンが楽しみだよ(23年8月9日)―この動画は台風2号通過後(6月3日)の稲村ケ崎サーフィンです。
明日の台風7号の鎌倉稲村ケ崎ビッグサーフィンが楽しみだよ(23年8月9日)―この …
-
-
日本リーダーパワー必読史(742)『歴史復習応用編』ー近代日本興亡史は『外交連続失敗の歴史』でもある。明治維新の国難で幕府側の外務大臣(実質首相兼任)役の勝海舟の外交突破力こそ見習え➊『各国の貧富強弱により判断せず、公平無私の眼でみよ』●『三国干渉くらい朝飯前だよ』』●『政治には学問や知識は二の次、八方美人主義はだめだよ』●『国難突破力NO1―勝海舟(75)の健康・長寿・ 修行・鍛錬10ヵ条」』
2016年10月28日/ 日本リーダーパワー必読史(742) 明治維新 …
-
-
知的巨人たちの百歳学(182)ー人気動画再録/-『鎌倉サーフィンを眺めるだけで、スカット、さわやか!健康長寿になるよ』★『『今はもう秋。今夏(2012)最大のビッグウエーブの押し寄せた七里ヶ浜の『カマクラ・サーフィン』は見るだけで寿命が延びるよ、夏の終わりの思い出!』
2012/09/04/ 記事再録『百歳学入門(241)』 …
-
-
百歳学入門(41) 『禅の達人の鈴木大拙(95歳)の語録ー『平常心是道』『無事於心、無心於事』(心に無事で、事に無心なり)
百歳学入門(41) 『禅の達人の鈴木大拙(95歳)の語録』 『平常 …
