前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

百歳学入門(62)「財界巨人たちの長寿・晩晴学①」渋沢栄一、岩崎久弥、大倉喜八郎、馬越恭平、松永安左衛門―

   

百歳学入門(62)
 
財界巨人たちの長寿・晩晴学」①  
―渋沢栄一、岩崎久弥、御木本幸吉、大倉喜八郎、
岡野喜太郎、馬越恭平、松永安左衛門―
 
前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
 
●明治時代の平均寿命は50歳ほどですから、90歳近くまで活躍したという長寿者は、寿命ののびた現在では100歳以上となりますね。数少ないですね。結局、時間的に長生きしたというよりも、晩年に何をしたか、人生の質が大切なのはいうまでもありません。晩年学よりも『晩晴学』こそ大切です。
 
『確かにそうですね、70代、80歳代になれば長寿と認められたころですから、そんな中では、ダントツは日本資本主義の父・渋沢栄一(天保11年1840 – 昭和6年1931)の91歳ですね。生涯500以上の会社を作り、日本の株式会社を最初につくり、その後の日本経済発展のレールを引いたドンであった彼が財閥を作らなかったのはりっぱですね。
 
三菱、三井のように作ろうと思えば、いつでも渋沢財閥は簡単に出来る立場にいたのにやらなかった。
 
「論語」と『ソロバン』を処世術にして「道徳経済合一主義」を唱えていた渋沢は、企業は公益のものとして、私利私欲を最後まで排しています。社会活動、慈善事業、ボランティア、国際親善に彼ほど熱心に取り組んだ実業家は現在もいないんじゃないですか。
 
80歳を過ぎて悪化する日米関係を立て直すための民間人の日米財界会議などに老体を鞭打って船、列車の長旅で出席するなど最長老、トップリーダーとして、最期まで活動したのは大変立派な態度ですね。

健康長寿の秘訣については「書をたしなむことと、国際交流である」とも語り、最期まで書をたしなみ、直筆による書簡や掛け軸も数多く揮毫しています』

 
『三菱財閥では創業者の岩崎弥太郎(50歳没)の長男・岩崎久弥(1865―1955)が90歳で長寿ですね。

敗戦での財閥解体で、三菱の全役職を辞任しますが、アジア研究のための東洋文庫を設立、六義園を寄付するなど社会貢献しています。

三井財閥では番頭といってよい益田 孝(1848- 1938、90歳)が鈍翁と称して茶人として高名でした』
 
『日本の元祖ベンチャーで真珠王・御木本幸吉(一八五八―一九五四)は年齢でも96歳と明治期では最長老ですね。
御木本翁は小食、薄着で生命保険が大嫌い。
 
90歳を過ぎても占領軍の米将校と一緒に抜き手を切って見事に泳いで、周囲の者は心臓マヒを起こさないかと、ハラハラさせたという元気者です。
 
長寿の秘訣はおかず以外は、朝晩は米飯1杯、昼はサツマイモとパンだけの小食主義、「食を選んで大食せず、うまいものなら二箸残す。胃腸と一緒に寝る」を死ぬまで続けた。いつも、薄着で、冬でもストーブや電熱器はいっさい使わず、息子が火鉢に手をかざすと叱ったというほど。「衛生を守り、健康に注意することが最も確実な生命保険だ」と死ぬまで入らなかった、合理主義者ですよ』
 
『財閥系では一代で「ホテルオークラ」に象徴される大倉財閥を築き上げた大倉喜八郎(1837-1928)も90歳と長寿。幕末の鉄砲屋から身を起こした成金男です。

身長150センチと小柄だが、タフネスで全身、エネルギーの固まり、84歳で子供が産まし、90歳で日本アルプスに登ったというからすごいヤツです。ウナギが大好物で、昼食はいつもウナギのカバヤキに刺身、それにビール1本を死ぬまで欠かきなかったとか』

 
『とにかく、明治の経済人を城山三郎は「野生児」「野生の人々」と名づけていますが、スケールがケタチガイだね。「東洋のビール王」といわれた馬越恭平(1844-1933)88歳などはその典型の元気人間です。
 
日本初めて銀座にビアホールを開くなど奇抜なアイデアと四時間睡眠法で働きまくった。大日本麦酒を設立、社長になり、全国のシェアの72%を占め、“ビール王”呼ばれた。
 
精力絶倫で生涯一六〇〇人斬りを達成、一〇〇人目に当たった芸者は落籍し、赤坂、新橋、神楽坂で家一軒をボンと与えたり料亭をもたせ、その数一六人というからスゴイ。スタミナの秘訣は、居眠の名人だったこと。
 
少し時間があるとすぐ休む、会議中でもつまらん報告ではこっくりこっくり居眠り、しかしツボはしっかりおさえていたといいます。

モットーは「心配すべし。心痛すべからず」。苦心配慮し、心を配ることは大切だが、自分の身体が痛むほど、心を痛むことは愚かなことだとし、『元気、勇気、長生き、腹のおちつき』の「四気」こそ大事と説いています』

 
 
『金融界ではスルガ銀行の創業者・岡野喜太郎は101歳、百歳の銀行家はもう1一人「みちのく銀行の」唐牛敏世99歳がそうだよ。かれも100歳まで頭取として仕事をしていて、話題となっているね。大物では日本興銀の財界の鞍馬天狗といわれた中山素平も99歳ですよ』
 
 
『渋沢亡き後の昭和戦後の財界ご意見番といえば「電力の鬼」・松永安左衛門((明治8年1875―昭和46年1971)95歳ですね。戦後の電力再編をその豪腕で1人で纏め上げた彼の明治、大正、昭和3代の放談録、回想録は無類におもしろいし、リーダー、政治家、ビジネスマンに必見です。人間修養のため、歴史を知る上でも大変役に立ちます。
 
戦争と災害など幾多の試練を乗り越えた百戦錬磨の松永は太平洋戦争中にはさっさと伊豆の大田舎の山荘にこもって時機を静かに待つ。松永はどうせ戦争では負けて、彼の出番が回ってくることをちゃんとわかっているんですね。
 
65歳から70歳にかけてです。晩年の死期の迫り来る音を聞きながら、国の滅亡とその先の敗戦の大混乱を端然として見守り、思索している。浪人し、隠居して時代が迎えに来るのをじっと耐えながら待つことは本当に難しい。
戦後の電力再編をやり遂げた後、最後に取り組んだのが日本人へ世界史的な感覚を持った歴史遺書を残すことでした。
 
80歳を過ぎてトインビーの『歴史の研究』を原書でよみ、この世界でもっと難解といわれたこの大冊全20巻の翻訳に取り組み、85歳で、自らイギリスまでわたりトインビーと交渉して翻訳権を取得して、翻訳していますよね。明治人の気迫と情熱を最後まで持ち続けた。この気概こそ見習う必要がありますね』
 
 
 

 - 健康長寿 , , , , , , , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
百歳学入門(40) 昭和の傑僧、山本玄峰(95歳)の一喝!『法に深切、人に親切、自身には辛節であれ』

百歳学入門(40)―『百歳長寿名言』     &n …

no image
★『生涯現役/百歳学入門』(163)「日本は高齢社会」のウソ。NHKが故意に作り出した幻想のカラクリ』●『貧乏生活を選んだ億万長者』●『  大半の財を寄付し、身なりを構わないハリウッドスターは誰』●『老人ホームと保育園が一緒になったら 奇跡が起こった(米・シアトル)』●『年間50万人の高齢者が失踪、1日あたり1370人・中国』●『裸で眠ると健康でリッチになる、その4つの理由とは』●『早ければ早いほどいい、40-50代から始はじめる『健康な老後への備え』』

★『生涯現役/百歳学入門』(163) 「日本は高齢社会」のウソ。NHKが故意に作 …

no image
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉛『開戦32日前の「英タイムズ」の報道―『日英同盟から英国は日本が抹殺されるのを座視しない』●『『極東の支配がロシアに奪われるなら、日英同盟から英国は 日本が抹殺されたり,永久に二流国の地位に下げられる のを座視しない』』

  『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉛ …

no image
『南シナ海問題 での中国の立場』を呉士存 中国南海研究院院長/于鉄軍 北京大学国際戦略 研究院副院長/張新軍 清華大学法学院副教授が 6月24日、日本記者クラブで講演し、 記者会見した。(動画2時間)

  呉士存 中国南海研究院院長/于鉄軍 北京大学国際戦略 研究院副院長 …

no image
『クイズ『坂の上の雲』>明治陸軍の空前絶後の名将とは・・参謀総長・川上操六の略歴③

  『クイズ『坂の上の雲』>明治陸軍の空前絶後の名将とは・・児玉源太郎ではない参 …

「オンライン・日本史決定的瞬間講座④」★「日本史最大の国難をわずか4ヵ月で解決した救国のスーパートップリーダー・鈴木貫太郎首相(78歳)を支援して、終戦を実現させた昭和傑僧、山本玄峰(95歳)とは一体何者か?(上)』 

  第2章―昭和傑僧、山本玄峰(95歳)とは何者か ★『力をもって立つ …

 『ジョーク日本史・禅語の笑いはお腹のジョギング』★ 『一休さんは頓知の名人で不老長寿『一笑一若・一怒一老』

 ジョーク日本史・禅語の笑いはお腹のジョギング  一休さんは頓知の名人で不老長寿 …

no image
人気リクエスト再録『百歳学入門』(235) 『日本歴史上の最長寿、118歳(?)の医聖・永田徳本の長寿の秘訣とは『豪邁不羈(ごうまいふき)の奇人で結構!』★『社名・製品名「トクホン」の名は室町後期から江戸初期にかけて活躍した永田徳本に由来する』★『107歳?天海大僧正の長寿エピソ-ド』

    2012/03/04 記事再録百歳学入門( …

長寿学入門(221)『96歳、平和でなければ走れない。人々に感謝し、走り歩くことが万病の薬となる』★『走る高齢者たちーオールドランナーズヒストリー』(福田玲三著、梨の木舎2020年6月刊)を読んで』★『『佐藤一斎(86歳)『少(しよう)にして学べば、則(すなわ)ち 壮にして為(な)すこと有り。 壮(そう)にして学べば、則ち老いて衰えず。 老(お)いて学べば、則ち死して朽ちず』★『作家・宇野千代(98歳)『生きて行く私』長寿10訓ー何歳になってもヨーイドン。ヨーイドン教の教祖なのよ』

『人々に感謝し、歩くことは万病の薬となる』 『走る高齢者たちーオールドランナーズ …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(203)/記事再録ー明治150年「戦略思想不在の歴史⒁」―『明治維新を点火した草莽の革命家・吉田松陰⑵』松下村塾で行われた教育実践は「暗記ではなく議論と行動」★『160年前に西欧によって軒並み植民地にされていたアジア、中東、アフリカの有色人種各国の中で、唯一、近代日本を切り開くことに成功した最初の革命家・吉田松陰の実践教育である』

  2017/11/22 /明治150年「戦略思想不在の歴史 …