前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など 外国紙は「日韓併合への道』をどう報道したか⑨ 「独フランクフルター・ツアイトゥング」(1907(明治40)年7月24日付>『韓国のハーグ事件と皇帝の退位』

      2015/09/02

「英タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」など

外国紙が報道した「日韓併合への道』の真実⑨

 「独フランクフルター・ツアイトゥング」

(1907(明治40)年7月24日付>

『韓国のハーグ事件と皇帝の退位』

 

たとえ,今ソウルで成立した皇帝の交代によって,朝鮮と日本の国内法的な関係においては何も変わらないとしても,この最新のできごとによって,その支配国の占領地における実際の立場が変化しないことはまずないだろう。

われわれの目には,極東の諸民族は表面的に不動の平和の中で変化しょうとしないように見えるが,彼らを覆っている幕が一瞬持ち上げられると,人々は総じて,朝鮮にも政治的意思というものが存在すること,この国民でも支配者に全く関心を持たずに,そこここで漠然と暮らしているわけではないことを見て驚くのだ。

日本という狼が朝鮮という兎を最終的に意のままにするだろうということは,驚くべきことではない。むしろ驚くべきことは,かくも根深い反日運動がそもそも出てくることがあり得たことだ。朝鮮の陸軍が弾薬を日本人に引き渡すのを拒否し,長谷川将軍は配下の2300の兵をもってしても,その要求を強行することができないのだ。さらに,平壌連隊のある部隊は公然たる反乱を起こしたようだ。

日本側は土曜日にそれが武装解除されたというニュースを広めたが,すでに日曜日にはソウルのロイター通信員が,その連隊は全く降伏しておらず.自分たちの武器を持っていると伝えた。月曜日には,事態が日本人にとりいくぶん好転したので.長谷川将軍は,朝鮮の宮殿を威嚇していた機関銃を引っ込めることができた。

だがなお,日本側が兵器庫を保持できない可能性も考えられる。なぜなら守備隊は,優勢な敵に攻撃された場合,事情にょっては爆破するようにという命令を受けているからだ。

動揺が全土を支配しており,首都ですら血が流され,ブリンクマイヤーという名のドイツ人も負傷した。群衆の暴行は,朝鮮の陸軍の将校によって指揮されている。

ソウルでは,日本側は朝鮮の部隊のいる兵舎を監視するために,さしあたりすべての兵を必要としている。そのため彼らは,市を十分に巡回し,群衆の集結を阻止することができない。監視員を置いてほしいという,郊外の外国人の要請も満たされないままだ。外国人は匿名の手紙で脅されており.郊外から都市の中に逃れてきている。

すでに,ソウルのヨーロッパ人の危険な状態に対する配慮のために,下関から増援部隊を送ろうとする日本人の意図は,正当なものに見えている。日本人がいつか朝鮮を支配することを望むなら,秩序と治安の面倒も見なければならないのだ。

この運動が単に最下層の人々をとらえているだけでなく,朝鮮国民の最も影響力のある階層に根づいていることは明らかだ。一連の一級の人物が日本人に逮捕された。日本に対する抵抗の頂点に,退位させられた皇帝の李熙その人が立っている

ことは明らかだ。彼は,いまだに諸事に「口を出し」,護衛に宮殿への突撃命令を出し,日本人警官を襲撃させようとしたという嫌疑を受けている。

そのため,日本人がこの老皇帝を日本に流刑にするだろうと想像されている。これに対し彼らは,彼らの必要とする申し分のない人物をその後継者に持っているようだ。というのは,この新しい皇帝はほとんど精神薄弱らしいのだ。ちなみにこれは,今日の状況下での朝鮮の皇帝としては,ほぼ最良の存在なのだ。彼らの信用するこのような人物を行政の長とし,またかなりの増援が近いうちに実現するかもしれないので,おそらく日本人は,さしあたり騒乱を抑えることができるだろう。

李熙の退位とそれに続く事件の直接の原因は,知られているように,ハーグに朝鮮の代表茂が姿を現したことにあった。彼らはそこで,保護統治下にある自分たちの国が独立国家の社会に仲間入りすることを求めたのだ。これは日本人には許せないことだった。

興味深いことに,本紙のハーグ通信員が昨日伝えたところによれば,会議に出席している使節たちの間では,朝鮮代表団は,李熙を玉座から追い出すことを可能にするための日本の策略に過ぎないという意見が広まっているという。確かに日本の政治は独特の補助手段を用いるにしても,これは事実ではなさそうに思える。

 

もし策略がたくらまれたにしては,演出があまりにまずいというのが,それに対する反論だ。なぜなら,世界が朝鮮における日本の立場の弱さと,現地の抵抗の強さを初めて知ったということは,きっと東京にいる支配者の関心には入っていないからだ。

さらに非常に奇妙なことは,ほぼソウルにおける日本総督の地位にある伊藤侯爵と,この事件に際してソウルに赴いた外相の林子爵との間に対立が存在するか,日本の外交がそのような対立が存在するように見えることがよいことと見なしていることだ。

伊藤は,ソウルに戒厳令が敷かれたことに満足していないことを表明している。そして林は,李熙皇帝の退位に全く驚いたこと,それを全く予想せず,むしろその逆だったことを明らかにしている。

その背後に策略として何が潜んでいるかは,日本の精神にもっと詳しい者なら,判断することができるだろう。朝鮮の占領は.日本にとっていつの時代でも政治的なあこがれの対象だった。日本の英雄時代は,朝鮮への出兵に満ちている。

この「朝の静けさの国」が中賃の文化を受け継いだように,おそらく日本は朝鮮によって文明化されたのだろう。

最も古い文化い伝統が,現実政治に対する配慮と同じくらいに.日本の目を朝鮮に向けさせるのだ。朝鮮は隣接する諸巨大国に対して自らの独立を守るには弱過ぎるので.日本はその国を手に入れたがっている。そうすれば,ロシアがこの橋頭壁を横取りし,それによって島国帝国が脅かされることはないからだ。

同じような配慮から,イギリス人も何世紀も北フランスの占領をめざして戦ってきたが,彼らは今日では,ドイツがいっの目かオランダに襲いかかり,グリシンゲンからイギリスの海岸を脅かすのではないかという考えに神経質になっている。

しかしヨーロッパでは,あまりに多くの大国が隣接し合っているので,個々の国々がただ自国に都合のよいように振る舞うことはできない。東アジアでは,さしあたり日本が最強であり.自分にとって最善と思えるように振る舞うだけの力と意翠を持っている。

したがって日本人は朝鮮を支配するだろうし,それを妨げることはだれにもできないだろう。だがソウルのできごとは,日本の拡張衝動も抵抗に遭ったことを認識させるものだ。この取るに足らない,軟弱で,不道徳性の故に東アジアにおいてすら評判の悪い朝鮮の国民が,すでに日本人をかくも困らせているとすれば,何億という力強い人々と,非常に古く堅固な基礎を持つ文明と,すべての外国人に対する根深い反感を持つ中国という巨人を,日本人が実際にそのように占領することができるだろうか。

 

 - 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『バガボンド』(放浪者、世捨て人)ー永井荷風の散歩人生と野垂れ死考 ② 『行動的なフランス知識人とまったくだめな日本のインテリ』

  『バガボンド』(放浪者、漂泊者、さすらい人)ー永井荷風の散歩人生と …

no image
速報「日本のメルトダウン」(508)「将来に自信が持てなくなってきた西側諸国(英FT紙)「もう見捨てておけない中国の報道抑圧」

  速報「日本のメルトダウン」(508)   ◎「 …

 日本リーダーパワー史(794)ー 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス』⑪『ロシアのクロパトキン陸相が敵前視察に来日した影響』●『 恐露病とクロパトキン来日疑惑が日本側に疑心暗鬼を生んで露探事件が起きた』

 日本リーダーパワー史(794)ー 「日清、日露戦争に勝利」 した明治人のリーダ …

no image
速報(362)『日本のメルトダウン』●「真紀子爆弾」が突きつけた大学倒産時代の現実』●「『日本版「財政の崖」に対する懸念は行き過ぎ』

速報(362)『日本のメルトダウン』     ●「真紀子爆弾 …

no image
記事再録/知的巨人たちの百歳学(133)ー「富岡鉄斎(87歳)ー『創造脳は長寿脳である』★『 万巻の書にかこまれて、悠々自適の晩年』★『万巻の書を読み万里の路を行くー鉄斎芸術の源泉とは』

『知的巨人の長寿学』・富岡鉄斎(87)に学ぶ   『創造脳は長寿脳であ …

no image
日本メルダウン脱出法(640)『アベノミクスに時間を稼いだ幸運」(英FT紙)「日本経済に「空前の好環境」、株価2万5000円へ」など7本

  日本メルダウン脱出法(640) 『アベノミクスに時間を稼いだ幸運」 …

no image
速報(110)『日本のメルトダウン』動画座談会ー『原発メルトスルー』5ヵ月後の日本の政治座談会(7月27日)

速報(110)『日本のメルトダウン』 <毎月動画座談会(3人ジャーナリストの会) …

no image
速報(116)『日本のメルトダウン』★<小出裕章情報> 『1,2,3号機あわせれば広島原爆4000発分相当の核分裂生成物』など

速報(116)『日本のメルトダウン』   ★<小出裕章情報> 『8月9 …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(99)「Shinzo Abe and Japan’s History 」「 安倍晋三と日本の歴史」(NYT, 4/20)

  『F国際ビジネスマンのワールド・ニュース・ウオッチ(99)』    …

no image
★『世界日本史/歴史メモ➀』-『西郷隆盛(南洲)のおもしろエピソード』★『お妾さんを囲うのではなく、猟犬2頭を飼っていた西郷どん』★『元勲となっても長屋に住む』

  藤田東湖と橋本左内を高くい評価した西郷隆盛   西郷隆盛 …