日本リーダーパワー史(539)『ゾンビ日本』への警告➁「FOREIGN AFFAIRS REPORT」(2015年1月号)
2015/01/18

By: Kentaro Ohno
日本リーダーパワー史(539)
「FOREIGN AFFAIRS REPORT」(2015年1月号)からの『ゾンビ日本』への警告➁
「『ゾンビ化した日本の国家システム(死すてむ』「ガラパゴスジャパンの「死に至る病」
「FOREIGN AFFAIRS REPORT」(2015年1月号)に2つの注目すべき論考がのっている。「嵐の前の静けさー 次にブラックスワン化する国は」(ナシーム・ニコラス・タレブ、グレゴリー・F・トレバートン)と「<アベノミクスー第3の矢はどこへいった>ゾンビ化したアベノミクス」(リチャード・カッツ)である。
「嵐の前の静けさー 次にブラックスワン化する国は」から内容と論点を概括する。同論文のアメリカの哲学者でニューヨーク大学・ナシーム・ニコラス・タレブ教授と米国家情報会議議長・グレゴリー・F・トレバートン氏の共著である。
同論文の要点は国家の脆弱性の5つの基準についてである。
- 中央集権型の統治システム、(地方分権ではない中央集権官僚国家)
「脆弱な国家の第1の特徴は、意思決定が特定のプレイヤーに集中し
ていることだ。傍目には、中央集権的型の政府はより大きな効率をも
ち、安定しているように思えるかもしれない。だがそのような安定は幻想だ。中央への権限と権力の集中は脆弱性を高める。中央集権構造であれば規範からの逸脱は起きにくく、すべてはスムーズに運営されるかに思えるが、規範からの逸脱の衝撃を非常に大きくしてしまう。自治権をもつ地域で構成される国家が近代においてうまくやってきた。」つまり、内部の柔軟構造があるということである。
➁ 画一的で硬直的な経済体制、(古臭いケインズ政策の繰り返し景気対策)
第2のソフトスポットは経済的多様性に欠けることだ。経済の集中は、政治の集中以上に質が悪い。デビッド・リカード以降のエコノミストは、比較優位をもつ産業に特化すれば、国内の労働生産性が高まり、利益を最大化できると主張してきた。だが、特定の産業に特化するのは危険が伴う。日本の自動車産業のように、特定産業に輸出の多くを依存する国も脆弱性を抱えている。
大きな債務を抱え、レバレッジ率が高ければ、危機が伴う衝撃が大きくなる。特に大きな債務は脆弱性を高める。債務を抱えていれば、歳入減に翻弄され、減少の規模が大きくなるにつれて脆弱性は大きくなる。…日本は「穏やかな脆弱性」を抱える国に分類できる。
➂ 過大な債務とレバレッジ、(1000兆円の突破した国家債務)
「もう一つの脆弱性のルーツは国の財務体質だ。大きな債務を抱え、レバレッジ率が高ければ、危機が伴う衝撃が大きくなる。特に大きな債務は脆弱性を高める。債務を抱えていれば、歳入減に翻弄され、減少の規模が大きくなるにつれて脆弱性は大きくなる。2008年に倒産したリーマンブラザーズが経験したように、投資家の信頼が揺らぐにつれて、直ちに支払いを求める声が大きくなり、損失は急激に肥大化していく。国債発行による債務は、債務の株式化もできないために、もっとも厄介なタイプの債務で、永遠になくならない重荷と化すこともある。」
政治的硬直性(短期の民主党の失政以外は戦後70年ほぼ一貫して自民党一党独裁的な長期政権続く)
「政治領域での変化や変動に乏しいことも脆弱性を高める。一般に考えられるのとは逆に、本当に安定した国では市民は政権を頻繁に取り替え、政治志向さえも見直すことが多く、穏やかな政治的変化を経験している。
政府が圧力に対処することで生じる変化は、その衝撃が極端なものでない限り、安定化を促す。穏やかな政治変化でも、特定の指導者が長期にわたって権力を掌握し続ける可能性を低下させ、排他的政治サークル内で情実主義が横行するリスクを低下させる。さらに国家構造が分権化されていれば、意思決定の権限が分散され、政治的多元化がすでに存在するために、変化はスムーズに進行する。」
近い過去に衝撃から立ち直った経験をもっていないこと
「第5の脆弱性のルーツは、「ボラティリティなき安定はない」変動なき安定など存在しないことだ。大きなショックに耐えた経験をもっていなければ、脆弱性は大きくなる。例えば、過去20年間という最近の歴史なかで最悪の事態を経験し、それから立ち直った経験をもつ国は、そうでない国に比べてより安定している。
混乱に直面しても、国が分裂することなく、危機を乗り切った国は、そうでなければ培えなかった強さを身に付ける。これはある意味ではたんなる情報に過ぎないが、混乱を経験することで国は「打たれ強さ」という特性を身に付ける。直面する衝撃から教訓を学び、打たれ強くなれば、国はトラウマを克服して成長する。」
[amazonjs asin=”B00NBJ9CU6″ locale=”JP” title=”トマ・ピケティ『21世紀の資本論』を30分で理解する!―週刊東洋経済eビジネス新書No.76″]
関連記事
-
-
★10 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(169』『オーストリア・ウイーンぶらり散歩③』国立歌劇場見学ツアーに参加した』
★10 『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ (169)』 『 ウイ …
-
-
『オープン講座/金子堅太郎の人物評』★『山口愛川著「 波蘭立志-大臣」(内外出版協会 1928 年)より。
『山口愛川著「 波蘭立志-大臣」(内外出版協会 1928 年)より。金子堅 太郎 …
-
-
2014年世界経済トレンド・ウオッチ②』「エリートの失敗が未来を脅かす」(英FT紙)「2014年市場は「退屈への反乱」に警戒せよ
2014年ー世界経済トレンド・ウオッチ②』 …
-
-
「今、日本が最も必要とする人物史研究➂」★『日本の007は一体だれか』★『日露戦争での戦略情報の開祖」福島安正中佐➂』★明石元二郎の「明石謀略」は裏で英国諜報局が指導しており、福島安正、宇都宮太郎(英国駐在武官)がバックアップした。
日本リーダーパワー史(553)記事再録 前坂 俊之 …
-
-
『Z世代のための米大統領選挙連続講座⑤』★『トランプ氏暗殺未遂事件の衝撃(7月13日)★『トーマス・クルックス容疑者(20歳)犯行のプロセス』★『1インチの奇跡が歴史を変えた。助かったトランプ氏』
前坂俊之(ジャーナリスト) トランプ前大統領の暗殺未遂事件を見た瞬間、私は60年 …
-
-
日中北朝鮮150年戦争史(35)★歴史の復習問題ー日清戦争『三国干渉』後に、 ロシアは『露清密約』(李鴻章の巨額ワイロ事件)を結び遼東半島を入手、シベリア鉄道を 建設して居座り、日露戦争の原因となった。
日中北朝鮮150年戦争史(35) 歴史の復習問題ー日清戦争『三国干渉』後に、 …
-
-
速報(134)『日本のメルトダウン』 『保安院、文科省官僚の不作為を告発せよ!★原発・震災当日「溶融予測」も解析使われず』
速報(134)『日本のメルトダウン』 『保安院、文科省官僚の不作為を告発せよ! …
-
-
『国難の研究』日露戦争開戦の外交交渉の経過と政府の対応②日露切迫 と田村卒去と児玉源太郎の参謀本部次長補職
―国難の研究― 日露戦争開戦の外交交渉の経過と政府の対応② &nb …
-
-
片野勧の衝撃レポート(79)★『 原発と国家―封印された核の真実⑫(1985~88) 』 チェルノブイリ原発事故30年(下)
片野勧の衝撃レポート(79)★ 原発と国家―封印された核の真実⑫(1985~8 …
-
-
<裁判員研修ノート④>『明日はわが身か、冤罪事件』ー取調べの可視化(取調べの全過程録画)はなぜ必要か
<裁判員研修ノート④>『明日はわが身か、冤罪事件』 取調べの可視化(取調べの全過 …