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★ 日本リーダーパワー史(139) 国難リテラシ①ーを養う方法・第2次世界大戦敗戦とを比較する★

      2015/01/02

 日本リーダーパワー史(139)
国難リテラシー①を養う方法・第2次世界大戦敗戦と比較する
<大震災、福島原発危機を乗り越えるためにー真実は知らせた方がいいのか、知らせない方がいいのか、
ケーススタディーして考える
 
前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
今年は辛亥革命から100年(大正元年からも100年)、満州事変から80年、真珠湾攻撃から70年の節目の年であった。私は昨年から日米中の3国の興亡史の今年は節目の年になるとおもい、このブログで『辛亥革命100年』なる連載を30回ほどやってきた。
今回の東関東大震災、福島原発事故によって、それこそ『日米中の3国関係のバランスパワー』に大地殻変動が起きた。まさに、文明の大転換である。
日本にとっても、3国関係だけではなく、世界にとっても、今後の原発の推移によって、より『制御できない不確実の世界』に突入していくことは間違いない。
事態のより正確な情報と、リーダー、メディア、国民のリテラシー、見識と胆力、勇気が問われる。
 
 
問題①―――決定的事実は国民にどこまで知らせるべきか。
 
<ケーススタディー> ミッドウエ―海海の大敗北は厳重秘匿した
 
太平洋戦争での決定的な敗北は1941年12月8日、真珠湾攻撃の開戦わずか7ヵ月後にあったミッドウエー海戦である。真珠湾攻撃は不意打ちなので決定的な勝利でもなく、国力10倍以上の米国が本気に怒ってヘビー級のボクサーのごとく立ち上がってくれば、モスキート級の日本はひとたまりもない。まさしく、その通りになり、半年後にノックアウトされたのである。ミッドウェー海戦は、昭和十七年六月五日にあり、日本海軍は真珠湾攻撃の主力機動部隊の中核の主力空母4隻とその艦載機を一挙に失う決定的な敗北を喫した。
この戦争はいわば、太平洋という『リング』のうえで、ボクシング試合で、互いの戦闘機というアッパーカウンタ―が勝負を決める。特にゼロ戦とその熟練したパイロットである。これを一挙に失った日本は以後晩挽回することが出来なかった。
この決定的な事実を海軍はすべて隠すことに決めた。あまりにも重大なる損害だったので、国民の動揺を恐れた海軍最高首脳部は、きびしくこれを秘匿して、一切発表しないことを厳命した。そのうちに、形勢一変の逆転の戦果をあげて、それにのっとってミッドウェーの失点も公表しょうという腹だったのであろうが、そんな希望的な観測がかなうはずもない。責任逃れのほっかむりであった。
 
ミッドウエ―デで敗北した軍艦と乗組員は六月十四日の夕刻、広島県呉軍港に帰港した。ところが、『全員上陸を禁止する。通信禁止』との命令が出た。『上陸禁止、特別の公務を持つ者以外は、上陸はできないといわれた。艦長までも上陸できなかった。司令部の参謀だけが、忙しそうに内火艇で行ったり来たりしていた。」(牧島貞一「悲劇の海戦ミッドウエ―」(鱒書房、1956年)
 
「ミッドウェー海戦で沈んだ四隻の空母の乗組員の中、三千名は戦死してしまったが、生き残ったものも約三千名」、それを「各艇に分乗させて、一名も上陸させない」方針で、「部内秘」といふ特別命令で、「ミッドウェー海戦に関する一切のことは、浄軍部内の者にも、喋ってはいけない、自分が、この海戦に参加した、ということすら、喋ってはいけない。」(一九九頁)
 
真珠湾攻撃の英雄で「トラトラトラ」を打電して突撃した攻撃隊長・淵田美津雄海軍中佐(写真)はこのとき、病気で、海戦後、戦傷のため、病院船に収容せられ、横須賀海軍病院に移され、完全に外部との交通を遮断、監禁された。
 「ミッドゥェー海戦に関する資料は、すべて最高度の軍事機密として取扱われ、記録の作製は最小限に制限せられ、降伏とともに焼かれてしまったのである。こうしてこの海戦の日本側の記録は、戦時中はもとより世に出る機合がなかった。」
 
  「当時、日本の大本営は、この敗戦を糊塗するために、日米が同等の損害を受けたかのように発表した。しかしアメリカ側では、いち早く日本側の損害を正確な艦艇の名と共に、事実のありのままに全世界に放送しているので、日本側の措置は、対敵防諜というよりは、眞相を知ることにより国民の士気が挫折することを恐れたのであろう。」
(淵田美津雄、奥宮正武『ミッドウエ―』PHP研究所 (1999/07))
 
 秘匿の厳重なる命令は、解除されることなく終戦になり、大苦難、大混乱のうち占領時代を経過し、眞相は十数年の間、フタをされたままだった。
 
この情報の隠ぺいは海軍部内だけではなかった。驚くべきことだが、東條英機総理大臣(日本国最高指揮官)にも知らせなかった。ミッドウェーの敗戦を知らされたのは、一ケ月以上も後のことで、その詳細は遂に知らされなかったのである。(もちろん、昭和天皇にも知らされてはいない)
(この国家総ぐるみ秘密体質が1945年後の敗戦という国難を体験した以後も、現在まで連綿と続く。東電、政府、通産省、経団連、
学者、マスコミ総癒着隠ぺい体質、問題を直視しない三猿主義(見ざる、聞かざる、言わざる)が、今回の問題の根にもある)
 
 
問題②-総理大臣(日本国最高指揮官)にも知らせるなーそして、誰も誰も真実を知らなかった。
 
 
 「東條英機(開戦時の首相、陸相、陸軍参謀総長など兼務)は、A級戦犯として巣鴨に収容されたが、記者に対して、敗戦の原因を論じたことがあった。彼は、『根本は不統制(注・アウト・オブ・コントロール)が原因である。一国の運命を預るべき総理大臣が、軍の統帥に関与する権限のないやうな国柄で、戦争に勝つわけがない。
その統帥がまた、陸軍と海軍とに分れて、協力の困難な別々のものとなっていた。自分がミッドウェーの敗戦を知らされたのは、一ケ月以上後のことであって、その詳細に至っては遂に知らされなかった。かくの如くして、最後まで作戦上の完全な統一は実現されなかった』と述懐した。沈黙を厳守していた彼が、この最後的の述懐をしたのは、余程のことであったと思われる。東條大将は、最初に陸軍大臣であり、次いで首相兼陸相として戦争を指導し、最後には参謀総長をも自ら兼ねて、政治と統帥とを統制せんとして、その権力を一身に集めた人である。死を前にした彼の言説は、少なからず価値のあるものと思はれた。」(重光葵『昭和の動乱』下巻135頁)
 こうして内閣総理大臣兼陸軍大臣にさへ秘匿されたのだから、一般国民がミッドウェーで何事が起ったのかを知らずに、「勝った、勝った」の大本営発表を信じ、日本がまだまだ太平洋の制空権を握っていると信じ、陸軍もそれを前提に作戦計画をするのだから、こんなバカな国があろうか。
(今回、自民党が「菅首相には日本全体の力を災害に向けるリーダーシップがない。首相の退陣が条件」と大連立にクギさして、思考停止、サボタージュしているが、当時者能力の欠如と政治家失格ぶりには開いた口がふさがらぬ。政治家は国民の生命と財産を守り、国難には真っ先に立ち向かうべき職務であろう。日本がつぶれるかどうかの瀬戸際(原発放射能阻止戦争)の最中に、真っ先に駆けつけるべき政治家が後方の安全地帯で、作戦が悪い、指揮が悪い、情報が入らないと無知無能をさらしているのである。管首相を引きずりおろして、いたずらに永田町の政局に空白時間をつくって、救援、原発の事故解決の時間を先延ばしした結果がどんな取り返しのつかないことになるか、いまこそ即臨戦態勢のオールジャパン体制をつくり、自公民などの小さな枠をこえて、助けに一刻も早く駆けつけるときであろう)
 
問題③知識人・メディアはどう情報発信すべきかー大本営発表との比較

ミッドウエー海戦から約半年後に、その敗戦の一部の情報を知らされた東大文学部教授・平泉澄は知り合いの海軍大佐に質問した。すると、
「何分あまりに損害が大きいので、一切公表しない事になっています。」との返事がかえってきた。
平泉は「こちらでは発表されないでも、アメリカの方では、すべて分っているでしょうから、知らないで油断をしているのは日本国民だけとなり、それは最悪の事態ではありませんか。寧ろありのままに公表して全国民に必死の覚悟を求められる方が良いのではありますまいか。」
といったが、返事はなかった、という。(平泉著『『悲劇縦走』1980年)
開戦2週間後の昭和十六年十二月二十三日、現在も日本最高の学歴(実力ではない)の府と言われる東大法学部講堂で、大戦勝利の祝賀講演会があり、1千人の学生が集まった。最初に海軍報道部の平出大佐が「戦捷の蔭に」と題して、次に平泉が「大詔を拝して」として講演した。
 
平出大佐は、海軍を代表する立場で次のように述べた。
 
  「諸君よ、安心し給へ。眞珠湾において、アメリカ太平洋艦隊は全滅した。我海軍は今や米国の婦人に向って呼びかけている。汝の夫、又は汝の子が、日本に攻めて来るならば、それは忽ち海底に沈められるであらうと。それ故、米軍が海を越えて来る事はあるまい。諸君よ、安心し給へ。」
 
この後に、平泉は35年後のことだが、敗戦の後悔の弁として次のように書いている。
「(平出の話は)何と言う愚かなる言葉でありましょうか。いずれは米英の実力、その性格を、全然知らざる者の浮薄なる暴言であります。大佐はかかる放言の後に、用事があるからと云って、サッサと帰って了いました」と書いているが、これこそ後知恵であり、あとの後悔、先に立たずの典型である。
 
問題④メディアリテラシー大本営発表とは何かー福島原発事故の報道の問題点

 開戦の12月8日午前六時、大本営発表第一号があった。「帝国陸海軍は今八日未明、西太平洋において米英軍と戦闘状態に入れり」当初、大本営発表は「大本営陸軍部発表」と「大本営海軍部発表」と別々に発表していたが、昭和一七年一月一五日の発表からは「大本営発表」に一本化した。

 大本営発表は国民に戦況を伝えるものだったが、現在ではウソ八百のデタラメ発表と報道の代名詞となった。では大本営発表はどの程度、実際の戦況と違った発表だったのだろうか。
 大本営発表では「交通破壊戦による船舶の被害状況」と「潜水艦行動の内容」は発表しなかった。これは日本に限らず、米国、英国でも同様だった。各国とも自国の損害をありのまま発表することはなく、機密保持と国民の士気の低下を避けるためである。米国も真珠湾攻撃の被害については一年後に発表した。

 大本営発表も当初六ヵ月間はほぼ正確に発表していた。「デタラメな報道」が始まったのは、次の九ヵ月間(珊瑚海海戦からイサベル島沖海戦) であった。ただ、この頃はまだ戦果が誇張される程度にとどまっていた。ガダルカナル島の戦闘に関しては甚大な損害があったが発表はしておらず、戦果は誇張し、被害は隠蔽する発表が行われた。

 ガダルカナル島撤退後の九ヵ月間は戦況悪化で発表が少なくなった。また次の八ヵ月間は架空の勝利を発表するようになった。最もひどかったのは昭和一九年六月のマリアナ沖海戦以後で、ありもしない戦果に損害のひた隠しが加わって、ウソとデタラメが発表されるようになった。誇大な戦果が発表された中で、次の会戦はまったくのでたらめだった。

 沖縄島戦、ルソン島戦、台湾沖航空戦、比島沖海戦、マリアナ沖海戦、九州沖海戦、ギルバート航空戦、第三次ソロモン沖海戦、ブーゲンビル島沖海戦、レンネル島沖海戦など。
   以上まとめると、最初の半年間は戦果や被害の発表は正確に近いものであった。しかし珊瑚海海戦(四二年五月七日) からイサベル島沖海戦までの九ヵ月間は、ミッドウェー海戦での損害が発表されなかったのをはじめ戦果が誇張されはじめた。
次の九ヵ月間は発表そのものが少なくなり、その後の八ヵ月間は損害の頬被りが目立ち、ウソの勝利が誇示された。戦果は架空のものであり、被害は過小に発表され、これがピークに達したのはフィリピン沖海戦で、すでに日本海軍は壊滅していたにもかかわらず、ウソ八百の勝利を流し続けた。これは最後の沖縄戦まで続いた。国民を熟狂させた大本営発表はデタラメだったのである。

  戦争の全期間を通じ、戦果は戦艦、巡洋艦は一〇・三倍、空母六・五倍など、戦闘艦艇では五・三倍、補助艦艇では約六倍、飛行機約七倍、輸送船は約八倍もの水増し発表が行われたのである。
 
 
 

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