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速報(65)『日本のメルトダウン』★☆『日本の原発依存症を生む補助金中毒文化』①『ニューヨーク・タイムズ』5月30日)

   

速報(65)『日本のメルトダウン』
 

★☆『日本の原発依存症を生む補助金中毒文化』①
―『ニューヨーク・タイムズ』5月30日付)の解説記事―

              

                                                                
     前坂 俊之(ジャーナリスト)
 
<お勧め!、読み応え満点、見事な翻訳!>
 
以下は、私の最も畏敬するF・国際ビジネスマンから、送られてきた福島原発事故の『『ニューヨーク・タイムズ』(5/30付)NYTの記事、全訳です。福島原発事故を最初からウオッチして、世界中のニュースをもipadでチェックしておられるF氏だけに、今回の原因と今後の対応については的確な意見をもっていて、随時メールが送られてくる。
F氏が必ず目を通しているNYTは日本の新聞の報道以上に、鋭く本質に迫っており、事故原因、分析についてもいち早く詳細な記事を掲載してきたが、今回の記事は日本病『死にいたる病』を鋭くえぐり出すドキュメントになっている。2回に分けて紹介する。
 
F氏はこの記事を次のように要約している。

日本では、欧米と異なり、原子力発電所の建設が、地元の徹底的な反対で白紙になるケースが少ないのは何故か?それは、政府、霞ヶ関からの巨額の補助金と、地元優遇の財産税が原子力三法の元で、地元に還元されるからである。

現ナマの威力で、地元コミュニティの人々の安全への希求を麻痺させ、リスクの最大化に直結する原子炉増設に狂奔させるからである。一度、事故が起きれば、奈落に落ちるのは自治体地元民であることを、札ビラで忘れさせている。

日本は、この言わば国策であった原子力エネルギー供給体制の拡充を、再点検すべき時が来ている。国が地方自治体の原発建設の意思を、金で買う仕組みは、本当に国民の為、国の為になるのだろうか?原点に戻り、デモクラシーの良識が発揮される仕組みに戻さなければいけないのでは?と言っています。
 
今回の福島大災害は、原発の危険性について、草創期から地元自治体の心配、不安を無視、過小評価せず、中央からの上から目線でなく、地元目線を大幅に重視して計画、設計されていれば、被害は相当防げたはずである。
 
地元自治体の意思、良識を最大限尊重し、時間が掛かっても、主役は、国や電力会社では無く、原発のリスクを120%被る自治体であり、この良識から積み上げて行かなければいけないのでは?と言っています。地方自治体・地元不在の現状は絶対に是正しろ、と言っています。
 
この記事を読んで感じることは
「・日本の政官学の鉄のトライアングルに何のしがらみも無く、口籠る必要も無いNYTらしい指摘、傾聴に値する力作です。島根県ー鹿島町、青森県ー大間町、東通村と伝の無い中で、良く取材していますね、脱帽です。

過去40年の東京主導型の誤ったプロセスが、福一の大事故に直結したのですよ、これを変えるのは今ですよ、と言っています。
事故は直ぐに国際問題になる、日本国民の民意を集約した議論が必要。欧米と同様、国民投票も緊急事項と思われます」
 

●『" In Japan, a Culture That Promotes Nuclear Dependency. "
 
2011/5/30 NYT by MARTIN FACKLER N. ONISHI
 
 

 
" 日本では、原子力発電への依存(従属)を促す(助長する)文化がある "
 
 
日本の鹿島町(島根県)ー島根原発が、40年以上前に、この地に最初に計画された時、この田舎の港町は、プラントのオペレーターになる積りでいた中国電力がこのプロジェクトを殆んど反故にせざるを得ない様な手荒い抵抗を見せた。漁師達は、先祖代々、魚を取り、海藻を収穫して来た自分の地域を守り抜く誓いを立てた。
 
20年後、中国電力が、原子炉3号機の増設をやるかどうか、検討していた時、鹿島町は、再度直ちに行動に出た。今回は、賛成の為に、皆集まった。地元の漁協に強く促され、町民集会は3500億円の原子炉建設に向け、メンバーに訴え、15:2で賛成票を投じた。
 
反対から賛成へと、この鹿島町の「逆転」は、日本では普通のストーリーである。これは、今迄のこの国の原子力発電への確固たる変わらぬ追求が如何なるものであるか、を説明するのに役立つ。

この国の54の原子炉の周辺の共同体では、広範囲な草の根的な反対は欠如している。
この状態は、3/11の地震と津波が、福島第一原発の原子力危機を引き起こした後でさえ、変わるところが無い。福島原発は、この地震多発国が、そのプラントの安全性を適切に確保出来るかどうかに関する、重大な問題を提起した。今迄のところは、原発集落の町々では、原発の安全性について公けに質問する事はせず、沈黙に拍車が掛かっている。
 
カン・ナオト首相は、少なくとも一時的に、日本の原子力の活用を拡大する計画を、そしてこの国の強力な原子力指導層に促進された計画を棚上げした。各自治体、共同体は原子力発電の推進の為に、進んで荒々しく戦て行く様に思われる。安全についての関心を持つにも拘らず、多くの住民は公けに声を出して主張する事を慎んでいる。
 
鹿島町の「転向」を理解する為には、ふかだスポーツパークに焦点を合わせるのが良い。ここでは、7500人の年配の住民に、野球場、照明付きのテニスコート、サッカー場、そして屋内プールとオリンピックサイズのバレーボール会場付きの30億円の体育館がある。

この体育館は、現在建設中の3号炉の増設を受け容れる代わりに、この町が受け取っている数百億円の補償費で支払われたいくつかの公共工事プロジェクトの一つに過ぎない。
 
鹿島町のストーリーが示唆している様に、東京は、本質的に気前良く補助金、現金、仕事をバラまく事で、地元の原発推進の支持や、少なくとも無言の黙認を、金で買っている。
2009年だけで、東京は、経産省によれば、発電設備を抱える地元のコミュニティに対し、公共土木工事プロジェクトの為に11億5千万ドルを支出した。これらの金の大半は、原発プラントに近い地域に集中している、と専門家はいう。
 
更に専門家は云う、これは氷山の一角に過ぎないと。地元自治体は、多くの補助金、資産、税収、個人に対する補償金そして発電所から貰っていると広く信じられている地元自治体への匿名の寄付さえも受けている。
 
疑う余地は無いが、これらの援助は、都市に負けて急速に仕事と住民を失っている田舎のコミュニティを富ませてきた。石油、石炭など天然資源を持たない日本は、経済の仕組みを動かすのに必要なエネルギーでは、原子力への依存が高い。多額の贈り物は、地元が中央政府の支出に依存する様にさせていると批評家は主張している。こうして、原発に強固な安全手段を強く要求して周囲に波風を立てる事を、避ける様になると。
 
批評家が、麻薬中毒になぞらえているが、楽に金が入り、給料の高い仕事につけることが、地元の元々有った経済基盤、一般的には農業か漁業であるが、これらに置き換わっている。
 
計画当局は、原子力プラントの様な公共工事プロジェクトの代わりになるものを提案していなかった。浪費の蛇口を常に開けておくことが、新たな高い生活水準を維持する唯一の方法になった。
 
専門家や一部の住民が云う、広島や長崎の遺産そしてTMIやチェルノブイリの原発事故を経験しているにも拘らず、何故日本が、米国やヨーロッパに見られた、原発への一般大衆の反対と云う様なレベルには直面しなかったかを説明するのに、この依存症と云うものが役に立つと。ー米国が TMI の後、新しい原発プラントの建設を止めた様なことには、日本ではなりそうも無い。

町は、同じサークル、そこには政治家、役人、判事、そして原子力産業の代表が含まれるが、この網の目の中に絡め取られている、このサークルは無情にも、安全問題よりも原発の拡張を優先させた。
 
                                                                                                 ( つづく)
 
 
 
 

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