『中国紙『申報』などからみた『日中韓150年戦争史』㊹日清戦争勃発1ヵ月前の『ノ-ス・チャイナ・ヘラルド』『申報』の報道」
2017/07/05
『中国紙『申報』などからみた『日中韓150年戦争史』
日中韓のパーセプションギャップの研究』㊹
日清戦争勃発1ヵ月前の各紙の報道
1894(明治27)年6月29日 『ノ-ス・チャイナ・ヘラルド』
日本の朝鮮侵攻
もし日本が中国との戦争を故意に引き起こそうとしているのではないとすれば,日本の朝鮮侵攻は何を意味するのか,理解しがたいところではある。
日本は,朝鮮在留日本人を脅かしている者などいないにもかかわらず.彼らが保護を求めているという口実-われわれの知る限り,同国があげている理由はそれだけだ-の下に,朝鮮における日本の陸海軍力を急ピッチで増強しつつある。
最新のニュースによると,日本は中国にとって受け入れがたいようないくつかの条件の下でしか軍隊を撤退させるわけにはいかないと言っており.したがって.上海と同様に天津でも事態はきわめて危機的な状況にあると見られている。中国が日本に屈するようなことはよもやあるまいとは思われるが,万が一そのようなことになれば.それは李鴻章総督の破滅を意味すことになるだろう。
彼は長年にわたり自由裁量で万事を運んできた。現代的な艦隊の確立や要塞の建造.陸軍の組織化などに気前よく金を注ぎ込んできた。
故に,彼としては,日本という比較的取るにも足らない敵と戦う準備が中国には整っていないなどと今さら言う訳にはいかないのだ。
もし日本が中国を戦争へと躯りたてるようなことがあれば.日本のそのような行為にはわずかなりとも正当性があるとは認めがたい。
しかし,日本の政府は,国民の不満をそらすには何かをしなければならず.それには内戦よりも対外戦争の方が好ましいと考えているようで.そこから,朝鮮とその宗主国たる中国とに対する全くいわれのない攻撃を思いっいたわけだ。
われわれとしては,極東に特別の関心を抱く列強が一体となって.東洋の平和を踏みにじるべく日本が着々と準備を整えるのを押しとどめてもらいたいと思うのだが.それはかなわぬ願いだろうか。
さて,中国の北洋艦隊が済物浦に到着したが,同港には日本の大艦隊がすでに陣取っているし,日中の地上部隊も1
日の行軍で互いに顔を合わせ得るはどの距離にある。したがって,両軍が衝突したというニュースがいっなんどき伝わってさてもおかしくはない。
1894(明治27)年7月1日光緒20年申午5月28日『申報』
朝鮮に関する客の問いに答える
客人が私に次のような質問をした。「現在朝鮮の時局は.一触即発の状況です。東学党はすでに逼塞したとはいえ.日本軍は続々と到着し,陸では猛烈な勢いで町ももあまねく行き渡り.海には巨大な軍艦が林立して沿岸を巡航しています。
日本は何を意図しているのでしょう。またわが中国には,それに対する備えがあるのでしょうか」
そこで答えた。「日本人の意図は,私にはわかりませんが,かつてひそかにそれ
を推測したことがあります。日本人は功名を非常に喜ぶ民族です。明治の中興以来維新の政治が起とり,ことごとに西洋のやり方に倣ってきました。
そして日本人はただ西洋人に追従したというだけでなく.新聞でもやや褒めすぎの嫌いがあったのです。日本人はますますおごり高ぶること,世界に自分たちと相括抗する者はいないかのようです。
しかし第三者の立場から見ると,内容は大体備わっているが規模が小さく,まだ西洋と青を並べるほどの力はありません。日本は維新の政治を行うこと20数年を経たが,購入した軍艦や訓練してきた軍隊を少しも使ったことがありません。それで軍隊が放置したまま使われないために.しだいに衰退してしまうことを深く恐れ,使う機会を虎視耽々と狙い.常に友邦を見下げるようになりました。
今回の朝鮮で動乱が起こったのに際して,逆臣が内証を起こしました。そこでこの機会に乗じて軍隊を試してみたくてしょうがないだけなのです。しかしながら.ただ日本人が事を起こすのを喜ぶからだというばかりでなく.中国にもその機会を啓く原因がありました。
そもそも朝鮮はわが中国の属国であり.日本人とはなにも関係がないのです。したがって甲申事変が起こったとき.洪英植が斬首され、金玉均が逃亡したことで,事件は終結したようなものでした。
ところが日本人はなおも朝鮮と意見を衝突させたため,中国は呉清卿・続燕甫の2大臣を勅使に任命して調停に尽力させ,日本の公使井上馨と打ち合わせて4章の条約を締結しました。そして朝鮮に賠償金若干万円を支払わせることにしたので,日本人をさらに満足させ得意にさせたのです。
ところが思いがけなく天津でまた会議を行い専ら3条を締結したため,ついに今回の出兵の遠因を作ってしまったのです。その第1条
は「中国は朝鮮に駐留する軍隊を撤退し.日本国も朝鮮で公使館を護衛している兵を撤兵することを定める。調印の日から4か月を期限とし,期限内に全軍撤退して両国が衝突を起こすおそれを回避する。中国軍は馬山浦から撤退し,日本軍は仁川港より撤退する」。
第2条は「両国は,朝鮮国王に自力で治安を維持できるようにするため.兵士を教練することを共に勧告する。また朝鮮国王自身の意志で,他の外国人軍事教官を1人あるいは数人雇い,教練を任せる。今後中日両国は共に教官を派遣して朝鮮で教練しない」
第3条は「朝鮮国にもし反乱や書大事件が生じた場合.中日両国あるいは1国が出兵を要するときは,まず相互に通告すること。事件がおさまれば即時撤退し再び駐留しない」というものです。
今ここに日本人が大規模な軍隊を朝鮮に派遣したのは,つまりこの相互に通告して派兵する条約があるためなのです。朝鮮はわが清朝の属国で,侵さず背かない関係が200余年も続き.わが清朝の冊封を受け,わが清朝の正朔を奉じること,堂々と立派なものです。
世界各国は,朝鮮で反乱の兆があれば,わが朝が軍を派遣して鎮圧することも.朝鮮が軍が弱いことに苦しんでいるのなら,わが朝廷が教官を派遺して教練することも当然と思っています。日本人とはなにも関係がないのに,軽率にもこの条約を締結してしまいました。
朝鮮1国ごときを日本人と共同で統治する必要などないのです。それともわが中国には属国を保護する力がないので,日本人の力を借りて保護するというの
でしょうか。この条約はまた,いたずらに今日の事件を醸し出しただけでした」。
客人が言った。「では中日両国ははたしてこれにより戦場を開くでしょうか」。そこで答えた。
「私が推測するに,まだ必ずしもそうはならないでしょう。日本の軍事制度
は,近年西洋の制度にのっとっています。しかし20数年間実際の戦争に従事したことがありません。戦争の勝敗は,あらかじめ予測することはできないが.わが中国の南洋・北洋艦隊の軍艦は日本人より多く,大砲や設備も日本人に遜色ないのです。
昔ヴェトナムとフランスの戦争では.フランスと戦い,勝敗は5分5分でした。さらに葉・轟両提督の統率する陸軍は,去年遼陽で勝利し.向かうところ敵なしでした。
日本人と戦場で対峠させれば,勝利がどちらの手に帰するかわからないだけでなく,日本人が勝てば当然中国は周辺国に嘲笑され,中国が勝てば日本人もまた身の置き場がないでしょう。
故に私は,中日両国は共に軽々しく戦端を開こうとしないと思います。そしてここでもしも調停する者があれば,うまく治められるでしょう。かつ日本人は何かというと「興亜」と言います。かって榎本武揚は興亜会を創立し,後に亜細亜協会と改称しました。
去年市村濱次郎は中国を旅行して帰国して,また日中協会を創立し毎年数回会合を催し.両国の友好のきずなを強めています。いわんや亜細亜協会は中日両国人のみならず.日本に旅行してきた安南.シャム,朝鮮,インド,ペルシャ、トルコなどの諸国の人も,皆会費を払って入会することができるのです。
いったん海上で戦争が起こり両国が不和になったなら.「協」の字の意味はどこに行ってしまうのでしょうか。そして局外の傍観者に,行動と言動が一致していないと笑われてしまうでしょう」。
客人いわく,「ではどうすれば友好関係を立て,疑惑を解くことができるでしょうか」。いわく,「すでに天津の条約があるのだから,わが朝はただ東学党を平定した後,日本に通知して各自撤兵すればよいのです。もし日本人が先の条約を破れば.わが方はただ兵糧を備え士気を鼓舞してあらかじめ備えをしておくだけでよいのです。
そのときは相手が悪くてこちらは正しいのだから,局外にはおのずから公平な評価があります。そのときになって交渉折衝してもまだ遅くないのです。もしそうしなければ,属国を失って国の体面を失うこととなり,軍費を償わされて.
う。琉球・台湾のことは.皆前車の轍とすることができます。朝廷のお偉方はこのことをしかと考えるべきです」
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