『和製ジェームス・ディーンと言われた「赤木圭一郎」の激突死(1961/02/21)』★『不死鳥の“トニー”は嘘だった』★『鎌倉英勝寺に眠る』
赤木圭一郎が1961年(昭和36)2月14日昼休み、ゴーカートを運転中、スタジオの壁に衝突してこん嘩状態に入った。頭がい底骨折、同内出血で1週間後の21日に死去した。
赤木は裕次郎がスキーで足を骨折したので代役として『激流に生きる男』(野村孝監督)に出演中であった。当時、日活にはダイヤモンラインとよばれるグループがあった。和田浩治、宍戸錠、小林旭、それに石原裕次郎、赤木圭一郎の五人である。二人(石原、赤木)がこわれたので、これは「ガラス・ライン」の異名を取った。
19日、百十二時間ぶりで赤木は意識をとりもどした。この日の日活宣伝部は「奇跡の男!赤木はよみがえりました。意識回復と同時に少量のお茶をとりました」と発表した。
連日、宣伝部は容態を研究、いかにしてトニー(愛称)を”キセキの男″らしくみせるかについて討議していた。
江守常務は「もう大丈夫だ。役者は少々こっち(頭を指さし)がだめでも顔さえあれば異常ナシなんだ。次回作はなおった裕次郎と共演で……」と勇ましい。
しかし六日間死線上をさまよった末に、のみこんだ鼻血で右肺炎を併発し、悶死した。
裕次郎の骨折が二十四日、赤木事故十四日、赤木の生まれ昭和十四年、ゴーカートが、その時には日本に四台しかなかった。『激流に生きる男』は赤木の14本目出演作品。野村監督にとっては演出4本目であった。
彼が行って見たかった場所はポリネシア群島。イタリアの記録映画『最後の楽園』は四度も見たし、『アクアク』『愛の島々』を愛読するロマンチストだった。
慈恵大第二病棟入院中、毎日見舞いにくる和服姿の美女がいて、口もきかず、足音もさせず、ひっそり花を置いて帰って行くので、愛人か?と記者連が色めきたった。
たが「ファンが不安に思ってきてるんですよ」と宣伝部は駄ジャレをとばしていた。負けても勝ったと発表した「大本営発表」とならんで、日活宣伝部の流した〝不死鳥のトニー″”奇跡の赤木″ニュースは、のちにかなりの批判を浴びた。
一年後、赤木の命日が鎌倉長勝寺の山上で行なわれた時、「日活はツメたい」と赤木の母親喜久さん(55)が涙ながらに語っていた。
(参考文献内外タイムス文化部編「ゴシップ10年史」(三一新書、1964年)
伝説の青春スター・赤木圭一郎の墓ー鎌倉の長勝寺境内にある。
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