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「Z世代のための台湾有事の歴史研究」②★『2023年台湾有事はあるのか、台湾海峡をめぐる中国対米日台の緊張関係はエスカレートしている』★『1894年(明治27)の日清戦争前夜の雰囲気に似てきた歴史の復習問題

   

前坂俊之(ジャーナリスト)

、徳川時代の鎖国政策で、小さな木造船さえ持つことを自ら禁じ、たったアメリカの4隻の黒船(鉄甲船)に腰を抜かした幕府のレベルだけに、維新のリーダーにとっても海軍の建設は容易な業ではなかった。

もともと、江戸時代約三百年の日本が安全で国際紛争の圏外におかれたのは、中国大陸に清帝国という強大国があり、朝鮮には李王朝が清朝に家臣の礼をとり、二国ともあえて外国征服を欲しなかったからである。
その東アジアの安定と平和が崩れていったのは西欧列強の武力侵略と、清朝、李王朝ともに弱体化したからである。

もともと朝鮮半島はヨーロッパの歴史的な紛争、混乱、戦火の地であるバルカン半島に類似している。李王朝末期の混乱と衰亡の原因を、田保橋潔著『近代日鮮関係の研究』(1940年)はこう指摘している。

  • 「李氏朝鮮が滅亡した三大原因は・・・・・

  • ① 外寇(がいこう=戦争、外圧)、

  • ② 朋党(ほうとう=前近代の中国やその周辺地域、李氏朝鮮において政治的な思想や利害を共通する官僚同士が結んだ党派集団、派閥のこと)

  • ➂戚族(せきぞく=親戚、身内)の三点がを挙げられる。

  • 特に、第三の戚族の専横(わがままに勝手なふるまい)は特にひどかった。須山幸雄『天皇と軍隊 (明治編) 』(芙蓉書房 昭和60年)は「国王の生父大院君の一派と、国王妃閔妃一派の激烈な抗争が朝鮮半島の動揺がその後の東洋の混乱を招き、清国の衰亡を早め、代わって日本の台頭をもたらした。」と指摘している。

日中韓の争いはここから発するが、明治政府にはこの問題を解決するための海軍力が全くなかった。日本の独立と安全を護るためには、何をおいても海軍力の整備と拡張が急務であることを政府に悟らせた。しかし、当時の貧乏な日本は科学技術が幼稚な上に軍艦の購入、建造に要する莫大な金などあるはずはなかった。

海軍力の増強を最初に建議したのは右大臣岩倉具視であった。明治十五年の壬午事変(じんごじへん)<1882年7月23日に、興宣大院君らの煽動を受けて、朝鮮の漢城(後のソウル)で大規模な兵士の反乱が起こり、閔妃一族の政府高官や、日本人軍事顧問、日本公使館員ら数十人が殺害された事件>によって、国家の狐立と安全を護るために、海軍の拡張とそのための増税を決断した。

翌16年2月、海軍卿川村純義は、今後8年間に毎年300万円ずつの建艦費をもって、大小艦艇40隻を建造する計画を立てたが、三年後の18年に建造、購入できた艦艇は12隻しかなかった。朝鮮情勢が緊迫した明治18年縫いはので、あらたに92隻の建造を計画したが、財政難を理由に21年までに着手されたのは22隻だけ、強大な清国海軍とは比較にならぬ弱体だった。

  • 清国は海軍強国

一八八五年末、朝鮮王朝内のクーデター甲申事変が発生し、さらに朝鮮情勢がますます緊迫してきた。。

陸軍参謀本部の川上操六次長はこの時、第二次伊藤内閣に国防の急務を訴え、明治天皇に奏上した結果、一八八七年三月、明治天皇は海防整備の勅語を発布し、御手許金三〇万円を建艦費として下賜した。当時の皇室費は年額二五〇万円なのでその約一割である。

一方、清国は翌一八八八年、かねてから進めていた近代海軍の艦隊整備が完了し、北洋艦隊を発足させて、国内外に大々的に発表した。この北洋艦隊は日本を仮想敵国として約一〇年をかけて完成し、母港は山東半島北岸の「威海衛」 に置いた。

創設者は北洋通商大臣兼直隷総督・李鴻章(りこうしょう)で司令官は丁汝昌(ていじょしよう)。世界最大級の巨艦の甲鉄砲塔艦「定遠」「鎮遠」(共に七二〇〇トン余)など、ドイツから購入した新鋭艦四隻、巡洋艦七隻、装甲砲艦一隻で主力艦隊を形成し、日本を威圧した。

壬午事変が勃発した際、李鴻章の命令で丁汝昌は北洋艦隊を率いて朝鮮に急行し、大院君を拉致して清国に幽閉した。この結果、朝鮮には親清政権が復活し、朝鮮への日本の進出は阻止された。

完成した北洋艦隊はこれより黄海、東シナ海を盛んにデモンストレーションし、日本、朝鮮各港に寄港して圧倒的な海軍力を誇示した。この結果、朝鮮を属国支配する清国と朝鮮の独立を支持する日本が正面衝突し、対立がエスカレートしていった。現在の尖閣諸島周辺、南シナ海での中国海軍の一大デモンストレーションと似たものであり、今回の台湾有事の緊迫と同じである。

帝国主義下の「砲艦外交」(Gunbaot Policy)

当時の世界は帝国主義戦争による弱肉強食、西欧列強によるアジア侵略の真っ最中であった。海軍力を背景にアジア各国に開国を迫り、ノーといえば力づくで鎖国の扉を吹き飛ばす、ペリーの黒船来航と同じ「砲艦外交」(Gunbaot Policy)が幅を利かせていた。

現在の平和な時代の軍事力、力の外交を否定したスピーチ・ディベート外交を前提に一五〇年前のアジア情勢を理解しようとすると誤る。

ァジア最大の軍事大国・清国は、新興国で丸腰同然の日本に対して西欧流の砲艦外交を仕掛けてきた。特に北洋艦隊は台風のための避難や給水等を口実にして、無通告で日本の港に入港するケースが多く、日本は手も足も出なかった。陸軍兵力でも、日本軍は五万四千にすぎなかったが、清国軍は一〇〇万を超えていた。

つづく

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

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