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日本リーダーパワー史(253)川上操六(32)外伝・軍閥内反主流派―鳥尾・三浦・谷・曽我の4将軍―国際平和主義の主張

      2015/02/18

日本リーダーパワー史(253)
 空前絶後の参謀総長・川上操六(32)
外伝・軍閥内反主流派―鳥尾・三浦・谷・曽我の四将軍
の抵抗―
国際平和主義の卓越した主張
 
前坂俊之(ジャーナリスト)
北朝鮮の長距離ミサイル発射(?)は当然のごとく失敗した。もともと、おもちゃのミサイルで人工衛星を打ち上げるというバカ話を大々的に報道するメディアも大バカなら、それにのって防衛省、政府もプレゼンスをたかめるために脅威、危機を過大にPRしていく、いつもの架空な北朝鮮脅威説の大合唱とから騒ぎである。いつまでこの『妄想張り子のやせネズミ国家』と付き合っているヒマは日本にはないのだ。
差し迫っている大危機2つも3つも足元でジリジリと導火線が燃え進んでいる。超老齢、超少子化,旧衰退国家、国家大破綻の進行、福島原発の視えない廃炉までの道、いまも垂れ流しが続いている低線量被ばくの問題、もう一度大地震がくれば全国に山積みの使用済み燃料棒の存在、停止中であるといっても全国に散在している原発に再び事故があれば、北朝鮮からの有り得ない原発ミサイル攻撃以上に、大惨害をもたらすのである。
この民族生存をかけた国家的危機、国の安全保障にかかわる大問題を肝心の政府も、防衛省も、警察も官庁も、メディアも、国民もほったらかしで、事故原因の徹底した調査もしなければ、責任者の追及、処罰もせず『みんなで忘れればこわくない』と1年たった現在、原発の報道量はめっきり少なくなってきているのだ。トホホのバカ国家ではないか。
私が,再三、ブログやこの連載で書いている「自滅老人国家日本」の【宿痾】( 前々からかかっていて、治らない病気)である「死に至る病」の再発である。ジャーナリスト、知識人、政治家、エリートを含めて、自己の知識体験見識に基づいて、事態の推移を予見して見解を述べなければ責任を果たすことにはならない。それには結果責任が伴う。現在進行形をそのまま伝えるのがジャーナリストの仕事ではない。その結果を事前に予見するインリジェンス(叡智、予見能力)こそ求められる。
日本は最大の国家危機に遭遇していると私は一貫して書いているが、間違いなく国家財政破綻は今年か、数年以内に陥るとはっきりと断言しておく。
この足元の核自爆攻撃(原発事故)のほうこそ差し迫った国家存亡の危機なのに、北朝鮮の錆びたミサイルをもった『酔っ払いのならずもの国家』など、日本の持つ人工衛星技術(いつでも北朝鮮の核貯蔵施設を地下500mまでピンンポイントに貫通できる技術があるよ)と宣言して、事実を別の実験で見せてやればよいのである。
三位一体の構造からみて、日本再性など不可能なことは見るまでもなく明らかであろう。
『国難をこれまでの3猿主義(見ざる、いわざる、聞かざる)でやれば、1000兆円の大借金、みんなで踏み倒せばこわくない」でつきすすめば、その先に「日本再生」「日本復活」など、夢幻なことは誰の目にも明らかである。
さて、ここでリーダーにとって一番必要なものは何なのか、考えてみたい。
人間の知識活動には①「知識」、②「見識」、③「胆識」の三つがある。①は頭の機械的働きでいくらでも得られる。特別、頭が悪い者でない限り、いくらでも習得できる。いわば学校教育であり、日本人の大好きなお勉強による知識習得である。
これに対して②は価値判断力ないし、判別能力というべきものだ。理想を持ち、現実のいろいろな矛盾、抵抗を体験し、物理的、心理的、社会的に貴重な体験を経て、いわゆる社会人となって体験、苦労、それに勉強、研鑽した生きた学問によって得られるものである。
これに、さらに年齢と共に、研鑽、戦争、生死の病苦、大震災などの修羅場をくぐり現実のさまざまな矛盾や、悩みに屈することのない実行力、決断力を磨いていくとそれこそ③の域になる。
「あいつは肝っ玉がある』『度胸がある』「叡智、予見、決断力」があるという、真のリーダーシップである「胆識」の持ち主が出来上がる。
明治のリーダーはこの「胆識」をそなえていた人物が多かったのである。
いまの日本の国難、悲劇は「治にいて乱を忘れた」結果である。「太平の世にあっても、常に武を練って、戦乱の時の備えを忘れないこと。現在の平和、幸福に安心することなく、常に将来の万一の場合のために用意する」ことだが、平和ボケ、原発ボケ、安全ボケである。
平和憲法のどうするかの論議といい、原発をクリ―エネルギーとして、世界の巨大地震の70%が集中する狭小国家日本に乱立して、平気で
安全安全の大合唱で、そのリスクに目をつぶって、のほほんと暮らしていたのは、まさしく『平和ボケ』「原発ボケ」そのものである。まさに「超高齢化日本」の「全員、老衰、ご臨終前夜」であろう。
ここでは、以上のことをふまえて、この「胆識」を蔵した空前絶後の名将・川上操六の当時の陸軍内の今と変わらぬ政治の無為無策の派閥抗争を見て行く。
 
 
山県陸軍軍閥と反主流派との暗闘―鳥尾・三浦・谷・曽我
の四将軍の国際平和主義の主張
 
 
参考文献ー渡辺幾治郎著「人物近代日本軍事史」
http://book.maesaka-toshiyuki.com/book/detail?book_id=6明治軍閥 明治の陸軍軍閥は、これを一 言にしていえば、長閥の山県有朋、桂太郎。薩閥の主流大山巌、川上操六とのコンビを主流として、形成されていったといえる。もっとも、派閥精神という点からいえば、山県、桂らが、その権化と言っていいほどに、濃厚な派閥主義に固まった人物であったが、大山、川上は、むしろきわめて派閥心の稀薄な人物であり、まさに対照的な存在であった。だからこそ、このコンビが成り立ったともいえる。川上がいかに藩閥をこえて優秀な人材をあつめて、しかも一癖も二癖もあるかん馬を乗りこなし、日清、日露戦争の千里の道を疾走できる最強の陸軍をつくったかはこの連載でも何度か触れている。

明治の軍閥形成であまり研究されていないのが軍閥内反主流派の抵抗-三浦梧楼・曽我佑準・干城・鳥尾小弥太の四将軍の問題で、山県らの主流派に対し、終始一貫きわめて明確な反対主張をもち、対立抗争をつづけて屈しなかった。
島尾小弥太、三浦梧棲、谷干城、曾我祐準の四人がこれである。いずれも陸軍中将で軍を退いたのち、貴族院や枢密院により、薩長藩閥ならびに軍閥に対する忌憧なき批判者として、おのおの一大敵国を形成していた。
このうち、鳥尾と三浦は、長州藩の出身で、谷が土佐藩、曾我は筑後柳河藩の身であった。大臣になったのは、谷一人で、第一次伊藤内閣の農商務大臣になった。三浦は、朝鮮駐在の公使となったが、王妃殺害事件に連坐して広島に拘禁されたという、いわくつきの経歴の持主だが、『明治の大久保彦左衛門』を任じて、軍の派閥解消を先頭に立ってとなえて、山県と対立し、結局、軍を追われてしまう。三浦はその後も反骨を貫き、藩閥政治に反対し、自由民権運動に同調して、大正の憲政擁護運動にも黒幕として活躍した、民主主義的な思想の持ち主でもあった。
 大正十三年一月、山県直系の官僚、清浦奎吾が、山県ら元老の推薦により、超然内閣を組織したおり、早速これに反対して枢密院顧問官を辞したのは、この三浦梧楼であった。
 清浦内閣は、第二次護憲運動がおこって、あえなく倒れ、「鰻香内閣」の醜名をとどめて、退陣の余儀なくされた。この時、三浦は護憲三派の結束をあっせんし、倒閣の黒幕として活躍したのである。
 谷干城は、安積艮斎、安井息軒らに儒学をまなんだ。明治十年の西南戦争のさい、熊本鎮台司令長官として、重囲の下に守城五十三日、ついに西郷軍をして、鹿児島に退却させたことによって、その令名を一世にうたわれたことは有名で、昭和戦前生には、親からよく聞かされたものだ。 

反主流派の主義
 
この四人は、独立独行の剛毅、不羈の精神が旺盛で、しかも附和雷同を欲しない人物で、互に連絡をとり一致した行動には出なかった。山県一派の主流派を打破して、うちかてなかったのはそのためである。しかし、その主義、思想においては、期せずして相い通ずるとこがあった。
 これについて、『人物近代日本軍事史』(千倉書房、昭和12年版)の著者、渡辺幾治郎氏はこう指摘している。
    いずれも経済的軍備論者であった。軍事力よりも経済力を高めて、貿易をすることによって平和友好関係を築けという、山県ら当時の軍国主義者の大陸進出には反対し、軍備拡張にも当然反対し、民力休養、増税反対を唱えた。
    国際平和主義を堅持したこと。なかでも谷は、大陸発展は日本の国是ではありえないと、日清戦争を否定し、日露戦争にも反対で、当時の軍中央の、清国、ロシアを撃てという大合唱に対して、平和の主張をまげず、伊藤に警告の書を出している。
    藩閥専制に反対した。この点では四人が一致の行動をとり、連署して建議したこともある。
    4人は大村益次郎派に属していたといってよく、フランス陸軍を手本にしていた。その点で陸軍の桂太郎が中心となったドイツ化に反対であった。
    明治二十年七月、ヨーロッパから帰国後、谷干城が閣僚に提出した意見書の一節には、当時におけるドイツ化の満々たる風潮に警告を与えている。
その内容は有意義なので紹介する。
「それがし外国にありて、静かに(我が国の現情を)観察するに、政治の方針ドイツに傾き.学術専らドイツに傾き、軍事専らドイツに傾き、商業専らドイツに傾き、なはだしきに至っては、衣服の末にいたるまで、ドイツに傾くがごとし。その内実いかんはにわかに判し難しといえども、形にあらわれるところ、内外人のみな視聴するところなり。(中略)これを要するに、みな軽桃の弊よりきたる所にして、自信すること浅く、みだりに外人を信じ、外人を恐れ、ただ、その歓心を求めて、国家の独立を維持せんと欲するによる。一大失計というべし。」
以上の中で、特に注目に値すると思われるのは、四将軍が国際平和主義の堅持において、共通していた点である。
 四将軍とも熱烈な国権論者であった。それと一見相矛盾し相容れない主義、思想として、軍人として国際平和主義を主張していたのである。明治の軍人と言うだけで、すべてが好戦主義者、大陸主義者と見てはいけない。それは学者、ジャーナリストとして不勉強の何物でもない、わたしも、その1人ではあったが。
昭和の政治家、軍人たちや、今の政治家、防衛省の自衛官と比べても、この四人がそろいもそろって、真剣な国際平和主義の主張者で高遠の見識と勇気を兼ね備えていたことは驚くべきことである
 「勝てば官軍、負ければ賊軍」という諺が、明治維新のころには盛んに言われたが、歴史は勝者の歴史で、勝者のために、歪曲され、ねつ造され、偽造されるものである。この四将軍は反対派であり、藩閥軍閥の一大敵国であったがゆえに、歴史から抹殺されて、特に谷干城は、伊藤派からクレイジー扱いにされた。
 太平洋戦争前までの、日本の国史、近代史は国民は伊藤派、山県派らによって都合よく作りかえられて、流布され、叩きこまれて来た。戦後はマルクス歴史史観や最近の新自由主義的な自民党封建的歴史史観が続いて、あやまった先入観念で、冷静、合理的、科学的に歴史を再検討していく態度は失われてしまっている。
北朝鮮報道や対中国報道には色濃くそうした歴史観、現代史が続いており、冷静に、相手側から見て行く目が失われている。
これらの四将軍の主義・思想と、主流派にいどんだ不屈不接の抗争とを、新たに見直して、歴史から教訓を学びとる姿勢が必要である。
戦争も平和も対立概念ではない。人類は戦争と平和の歴史であり、平和を希求しながら戦争をして、戦争によってその後の平和がやって来る歴史の繰り返しである。今年は日中国交回復四〇年だが、毛沢東は北京の交渉に乗り込み周恩来との話し合いに臨んだ田中角栄に「もうケンカはおわりましたか」「もっとケンカしなければ仲良くなりません」との趣旨の話をしたと言われる。
【徹底したケンカのあとには、互いに打ち解けて仲良くなるものである。】日米戦争の後に日米同盟が出来て、長く続いたように。
「安全、安心」をお題目のように唱なえても、危険は身の回りからすべて排除できない。平和を百回唱えても、『治にいて乱をわすれれば、血を見ることになる』のである。
正史によって隠された真実をインテリジェンスを磨くことで見抜かねばならない。

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