『オンライン/長寿歴史学講座』★『徳川家康・秀忠・家光の三代将軍に仕え、徳川幕府250年の基礎を築いた史上最高の戦略家・南光坊天海(108歳?)の長寿法は『長命には粗食、正直、湯、陀羅尼(だらに)、御下風(ごかふう)あそばさるべし』
知的巨人の百歳学(101)
家康・秀忠・家光の徳川三代に仕えた「陰の宰相」南光坊天海(108?)の長寿法
日本で徳川時代に百三十歳(?)までいきたといわれる日本最長寿は南光坊天海(てんかい)です。実際の年齢は不明ですが(天文(1536年)? – -寛永20年(1643)10月2日(百八歳)ともいわれています。
-
①養生法・長命には粗食、正直、湯、陀羅尼(だらに)、御下風(ごかふう)あそばさるべし。
南光坊天海は安土桃山・江戸初期の天台宗の僧侶で、徳川家康が六十二歳で天下取りに成功したのは、天海という知恵袋のおかげといわれる。七十五歳で没した家康よりもさらに三十三年も長生きし、百八歳で大往生した。一説には百三十歳まで生きたといわれる。
平均年齢が四十歳とされる当時にあっては驚異の長命である。この長寿によって家康・秀忠・家光の徳川三代に仕えて、「陰の宰相」として政務を動かした。いわば徳川幕府二百五十年の基礎を築いた陰の人物である。家康を久能山から日光に改葬した際、幕閣(ばっかく)の全員が「大明神」の神号を主張する中で、天海ひとり「権現」を譲らず、「東照宮大権現」となった。二代・秀忠のとき、上野に東叡寛永寺を開いた。
その長寿の秘訣を聞かれて、次の二つの歌を詠んだ。
② 養生訓「気は長く 勤めは固く 色うすく 食細うして 心ひろかれ」
③ 養生訓「粗食、正直、日湯(ひゆ)陀羅尼(だらに) 御下風あそばさるべし
つまり、「あせらず気を長く持って、仕事はしっかりこなして、色欲をおさえて、食事は腹八分に心はゆったり保て」ということである。
また、長生きには粗食であること、美食、飽食がいちばん悪い。自分の気持ちに正直に、ストレスをためない、日湯とは毎日風呂に入ること、「陀羅尼」とはお経を唱えること、毎日声を出してお経を唱える、腹式呼吸が健康によい。
別に「だらり」で、睾丸(こうがん)が悠然とだらりと垂れ下がった状態、ストレスがないことが健康の秘訣との説もある。「下風」とは「オナラ」のことで、人に遠慮せず「プリプリ」と放屁すべし。快便、快屁こそ天海流の長寿法なのである。この教えを守ってか、家康も七十五歳の長寿を保った。
④ 納豆などの健脳食を食べて、物事を大局的、健脳食で物事を対極的、長期的に判断する知恵袋となる
福島県会津生まれの天海は、地元の人が常食していた納豆が大好物。食事は僧侶となりゴマ、昆布、こんにゃく、豆腐、納豆汁、野菜を中心にした玄米食の精進料理だった。
家康が好んだ駿河湾のアマダイで食中毒になり寝込んだ際も、天海は納豆汁をすすめた。それに、クコ飯も好んで食べていたといわれる。クコはビタミン、ルチンなどを多く含み、疲労回復、強壮強精の効果がある漢方薬。天海の超人的な不老長寿の脳を活性化したのはこの「健脳食」ではないかと見られている。
⑤為政者は長期的な判断力を養成せよ
あるとき、三代将軍・家光の御前で柿をいただいた天海は、食べたあと、その種をフトコロに入れた。家光が「何にするのか」と問うと、「持ち帰って植す」と答えた。家光があきれた様子で「高齢の者には無益のことじゃ」と言うと、「天下国家を治める御方そのような性急なお考えではこまります。
いずれこの柿の生長するのをご覧に入れましよう」と答えた。そして数年後、天海がたくさんの柿を献上したところ、家光は「どこの産物か」と開いた。「これは御前から賜った柿の種が大きくなって実ったものです」と答えると、家光や同席していた者は感嘆しきりだったという。
また、あるとき、家光が、江戸城中に火事の危険があるというので、使者を立てて、天海に防火の祈痔を依頼した。この少し前にも将軍家から「若君御誕生」 のご祈祷の頼みがあって、その祈祷中であった。
天海は使者に「若宮御誕生、今度は火災の予防とあっては、一つの心を二通りには使われません。お城はもし焼失しても、建て直しができますが、若様がお生まれにならなければ、天下の安危にもかかわります。二つの軽重を考えますと、火災の祈藤はできませぬ」と断った。天海の見識に家光の信頼は一層増した。
日本人を長寿の秘訣は、古くから日本人がいろいろな形でたべてきた「大豆食品」にある。豆腐、納豆、お味噌汁など大豆をもとの食品を好んで食べる。
大豆食品にはイソフラボンといっう女性ホルモンのエストロゲンと構造がよく似ている物質が含まれている。乳がん、卵巣がん、子宮がん、前立腺がんなどの発生を抑え、乳がんの発生率は欧米の五分の一です。大豆イソフラボンは腸内細菌の働で、腸内で「エクオール」という物質に変化することがわかり、エクオールは強いがん予防効果を持っているのです。
また、大豆食品はたんばく質、食物繊維、ビタミンE、カルシウムやマグネシウムを多く含む本当の「健康食品」です。しかも、植物性たんぱくなのでコレステロールは含まれていないのです。
以下は勝海舟の『氷川清話』からの南光坊天海の人物像についての談話
非凡な奴であったらしい。あれが今暫く頭を円くせなかったなら、きっと家康公に向って弓をひいたであらう。あの男はもと、宗家の葦名家が滅亡した為に流浪落塊して、とうとう叡山の坊主になり、そこで非常に苦学したるものだが、一朝、家康公の知遇に感激してからは、赤心を捧げて徳川氏の為に画策経営の労を執ったのだ。
なかなか今時のぐうたら書生が、十分の学資がありながら、それで何事をも仕出来さないで、空しく一生を過ごしてしまふのとは、頭から較べものにならない。ところで家康公が天海をなぜ用いられたかといふことについては、おれに一説がある。それは外でもないが、家康公が幼少の時に今川家の人質となって、駿河の臨済寺で読み書きの稽古をせられたが、その寺の住職は、余程な高僧であったと見えて、始終、今川家の枢機に参与して、今川家の為には随分功労があったらしい。
家康公は、明け暮れそれをみて居られたから、出家といふものは、政治上、至極大切なものだといふお考が、深く脳髄にしみ込んで居たに相違ない。
そこで彼の天海の非凡な坊主であることを見ぬかれて、あの通り重く用いられたのだ。三代将軍が、沢庵和尚を座右に置かれて、始終民間の事情や何かを聞くいて居られたのも、つまり家康公が、天海におけるのと同じ筆法だ。
それはさて置き、天海はあれ程の人物であって、そしてあれ程重く家康公に用いられたとすれば、天海の事蹟というものが、それ相応には伝はって居なければならないのに、それが一向歴史にも載って居ないのは、なぜだろうう疑うものがあるかも知れない。
がしかし、その伝わっていないのが、即ち天海の天海たる所以なのだ。今日やった事を直ぐに明日、しかも針ほどな事を棒の様や吹聴するのが今時の風潮だが、天海などのはそれと違って、家康公の枢機に参与しても、どんな事を計画したのか、世間へは少しも吹聴しない。この吹聴しない、少しも分らない底に、叩くと何だか大きく響くものがあるのだ。そこが即ちえらいというものよ。
沢庵和尚はもとは一個の雲水僧で、六十余州を遍歴して、各地の民情風俗に通じておった。そこで三代将軍にも用いられたのだが。その凡人でなかったことは、和尚を推挙した人のえらかったので分る。その人は誰かというと、外でもない柳生但馬守だ。
関連記事
-
-
★5日本リーダーパワー史(776)ー 『アジア近現代史復習問題』 福沢諭吉の「日清戦争開戦論」を読む』(9)『金正男暗殺事件をみると、約120年前の日清戦争の原因がよくわかる」● 『(日本軍の出兵に対して)彼等の驚愕想ふ可し』は現在の日中韓北朝鮮外交 に通じる卓見、戦略分析である』★『近年、日本のアジア政略は勉めて平和を旨とし事を好まず、朝鮮は明治十七年の甲申事変以来、 殆んど放擲し、清国関係には最も注意して事の穏便を謀り、言ふべきことをいわず、万事円滑 を旨としたのは、東洋の平和のため』★『傲慢なる清国人らの眼を以て見れば、日本人は他の威力に畏縮して恐るに足らずと我を侮り、傍若無人の挙動を演じている』
★5日本リーダーパワー史(776)ー ★『アジア近現代史復習問題』 福沢 …
-
-
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』ー『トランプ米大統領とホワイトハウスの内情を暴く『Fire and Fury』は全米でベストセラー1位に』★『ほら吹き、ナルシズム、攻撃的性格のトランプ氏の「精神状態」を専門家70人から「認知症検査」を求める声』
『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 ドナルド・トランプ米大統領とホワイトハウ …
-
-
「2022年コロナ・デルタ株終息後のパクスなき世界へ(上)」(2021/9/15 )★『デルタ株が世界的に猛威を振るう』★『デルタ株感染の45%は20歳以下に集中』★『地球環境異変が世界中に猛威』★『菅首相辞任から自民党総裁選、政治の季節へ』
2022年コロナ・デルタ株終息後のパクスなき世界へ 前坂俊之(ジャーナリスト) …
-
-
日本リーダーパワー史(816)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、インテリジェンス㉛『日本史決定的瞬間の児玉源太郎の決断力➂』★『早期開戦論に反対した伊藤博文元老、山本権兵衛海相』★『伊藤は、世界に対して大義名分が必要、戦を好まない日本帝国が、万止むを得ずして自衛の手段に訴え、余儀なく戦争に立ち上がらされたことを示さなければならん』
日本リーダーパワー史(816)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した …
-
-
『Z世代への昭和史・国難突破力講座㉗』★『本田宗一郎の名語録10ヵ条』★『成功は失敗の回数に比例する』★『どんな発明発見も他人より一秒遅れれば、もう発明、発見でなくなる。』★『時間こそすべての生命』★『頭を使わないと常識的になってしまう、頭を使って〝不常識″に考えろ』などなど』
日本リーダーパワー史(733) 2016/0 …
-
-
『知的巨人の長寿学』の尾崎行雄(95)に学べ—<国事の心配さえなければ、いまが一番幸せだ>
『知的巨人の長寿学』の尾崎行雄(95)に学べ <国事の心配さえなければ、いまが一 …
-
-
(再録)世界が尊敬した日本人【3】日本・トルコ友好の父・山田寅次郎ートルコを世界で最も親日国にした男
(再録)世界が尊敬した日本人【3】 2006年8月 日本・トルコ友好の父・山田寅 …
-
-
日本リーダーパワー史(112)初代総理伊藤博文⑧伊藤の直話『下関戦争の真相はこうだ・・』
日本リーダーパワー史(112) 初代総 …
-
-
『リーダーシップの世界日本近現代史』(293)★『安倍・歴史外交への教訓(5)』「大東亜戦争中の沢本頼雄海軍次官の<敗戦の原因>」を読む―鳩山元首相の「従軍慰安婦」発言、国益、国民益無視、党利党略、 各省益のみ、市民、個人無視の思考、行動パターンは変わらず
2015/11/08   …
-
-
『オンライン講座/真珠湾攻撃から80年➂』★『 国難突破法の研究③』★『開戦1ヵ月前に山本五十六連合艦隊司令長官が勝算はないと断言した太平洋戦争に海軍はなぜ態度を一変し、突入したのか』★『ガラパゴス総無責任国家、日本の悲劇は今も続く』
2015/08/17 /終戦70年・日本敗戦史(142) <世田谷市民大学201 …
