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池田龍夫のマスコミ時評(85) 『12年度版「エネルギー白書」の欺瞞 (6・21)』『「憲法96条改正」の危険な動き(6・19)』

   

 池田龍夫のマスコミ時評(84)

 

12年度版「エネルギー白書」の欺瞞 (621

○『「憲法96条改正」の危険な動き(619

●『沖縄海兵隊グアム移転は、早くても5年後に617

 

ジャーナリスト 池田龍夫

 

12年度版「エネルギー白書」の欺瞞 (621

 

 政府は614日、2012年度版「エネルギー白書」を発表したが、民主党政権が昨年進めようとした「30年代に原発ゼロ」の方針には触れないばかりか、昨年8月に同政府が実施した「討論型世論調査」で原発ゼロ派が多数を占めた結果も記載していない。

 12年度版は昨年8月~今年3月を対象にしたものなのに、「脱原発」の世論を無視した白書には同意できない。朝日新聞616日付社説は、「福島の事故は、国民の間に政治や行政への深刻な不信を招いた。どうしたら政策への理解が得られるか。模索の中から生まれたのが、審議会の全面公開による検証、そして討論型世論調査などを含む国民的議論だった。『原発ゼロ』はこうして導かれた結果であり、エネルギー行政の軌跡を記録するうえで不可欠だ。ここに目を向けない白書には、失望するしかない」と批判している。

 経産省エネルギー庁が、安倍政権の顔色をうかがって、〝原発問題〟の中身を変えてしまった「12年度版白書」は公正を欠く。国民は、この欺瞞に騙まされてはならない。

(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。

 

 

◎「憲法96条改正」の危険な動き(619

 

 国際的にも〝右寄り〟と見られている安倍晋三政権は、「自民党改憲草案」(昨年4月発表)を基に憲法改正を企図している。7月の参院選で改憲勢力が伸びれば、戦後60余年守り続けてきた「平和主義」「国民主権」「基本的人権」を大きく歪める改正案が持ち出される公算が強い。

 

      国会発議要件「3分の2」を、「2分の1」にする狙い

 憲法第9章(改正)第96条には「この憲法の改正には、各議員の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを議決し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」と規定されている。自民党政権は先ず、改正発議要件の「総議員の3分の2以上の賛成」を「2分の1」に変えようとしている。

 

         背景に、「9条改正」「国防軍創設」など

96条問題」と呼ばれる所以だが、その背景に、重大な意図が隠されている。「9条改正」「国防軍創設」「集団的自衛権容認」などで、既に明らかにされている。平和国家の核心条項を、2分の1の賛成で決めてしまおうとする意図を危惧する声が強まってきたのは当然だ。

 東京新聞が「検証・自民党改憲――その先に見えるもの」と題する企画を、65日付朝刊から6回、第1面に展開した。①海外派兵消えた歯止め②個人の権利より国家③増えた国民の義務④地方と国は対等が後退⑤国旗国歌を義務化⑥権力縛る機能後退――伊藤真弁護士のコメントと現行憲法と自民党案を例示して、問題点を指摘。大胆な紙面展開に、同社の強烈な問題意識を感じ、敬服した。広く国民に読んでもらいたい企画である。

 

         憲法学者・樋口陽一氏らが問題点を指摘

 朝日新聞611日付夕刊は、「96条の会」の代表、樋口陽一東大・東北大名誉教授にインタビューし「憲法学者の長老を駆り立てたものは何か」を報じた。「憲法96条が国会に厳しい発議要件を課すのは、様々な意見をぶつけ合い、論点が煮詰まる経過を国民に示したうえで、国民投票で誤りない判断をしてもらうためです」と指摘。「個人を尊重せぬ自民草案に危機感を持つ」「『公共の福祉』理念も捨てるのか」「国民は沈黙してはいけない。専門知を持つ市民としての義務感です」と警鐘を鳴らしていた。

 この「96条の会」には長谷部崇男,小森陽一、山口二郎、杉田敦氏ら学者が参加しており、14日夜上智大学で「熟議なき憲法改正に抗して」をテーマに講演会が行われた。学者それぞれの指摘は全くその通りで、国民一人一人が関心を持たなければならない。

 

 

◎沖縄海兵隊グアム移転は、早くても5年後に617

 

 在沖米海兵隊約9000人のグアムなどへの移転に関し、米国防総省が具体的な費用や工程の見積もりを示す「基本計画」の策定時期を「2018年かそれ以降」と想定していることが分かった。

 

          普天間飛行場移設の遅れが響く

 琉球新報613日付朝刊(ワシントン特派員電)が報じたもので、米国政府監査院(GAO)は、移転に関する日米間の費用負担を定めた2012年の日米合意に関する積算額は「現実的でない」として、さらに増えると指摘した。国防総省は基本計画について「環境影響評価(アセスメント)と米軍受け入れ国との交渉が終わるまで作成できない」と説明し、関係国との交渉は「数年を要する」としている。
 また、GAOは「老朽化が進んでいる」との理由で、再編後の在沖米軍基地の維持費に関する具体的な見積もりを示すことも国防総省に求めたという。

 また、米上院軍事委員会は13日、2014会計年度(1310月~149月)の大枠を定める国防権限法案を可決した。グアム移転事業関連予算の扱いについて、同委員会のレビン委員長(民主党)は、日本政府が米側に拠出した資金の執行凍結の継続を明言。移転事業の完了は当初14年度をメドに指定ていたが、先行きはさらに不透明である。日米両政府が4月に発表した嘉手納より南の基地の返還・統合計画への影響は避けられない。

 

普天間老朽化対策の費用も要求

 上院軍事委員会は、14会計年度に米政府が要求したグアム移転費約8600万㌦(約82億円)の計上についても、厳しい判断をしたもようだ。下院軍事委は既に米政府による8600万㌦の支出を認め、日本政府が拠出した資金の凍結も全面解除する法案を可決している。

 これより先、朝日新聞419日朝刊も米上院の予算凍結問題について、「昨年の日米合意による普天間飛行場の名護市辺野古移設が進展せず、辺野古沖埋め立て工事が頓挫していることが尾を引いている。その間に進む普天間の老朽化対策を米側が要求してきており、全く見通しが立たない状況だ」と伝えていた。

米国務省で対日政策に携わったカーネギー国際平和財団のジム・ショフ上級研究員は、朝日新聞の取材に対し「普天間移設問題が解決しない限り、グアム移転の詳細な計画は進まない。このままでは、議会がより詳しい情報を求めて米政府と対決する構図が続く」と指摘していた。

手詰まり状態の普天間移設がカギを握っていることは明らかで、このままでは〝普天間飛行場恒久化〟の恐れが濃厚。どう打開するか、日米とも苦境に立たされている。

 

(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。

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