前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『Z世代のための日本興亡史研究②』★『海軍はなぜ戦争反対をおし通すことができなかったのか!?』★『日本を滅ぼした東郷平八郎元帥の「トラウマ・面罵事件」の真相』

   

前坂俊之(ジャーナリスト)

●東郷元帥の暴言

1931年(昭和6)、洲州事変がひきおこされた当時のある日のこと。霞ヶ関の海軍省に、東郷平八郎元帥が出かけてきて、大臣室で谷口尚真軍令部長(大将)を面罵する大事件が起きた。
谷口は、「満州事変をひきおこしてはならない」と、事変に反対していた。それに対して東郷元帥が海軍省に出むいていって、どなりつけたのだ。
谷口大将は「満州事変は結局″対米英戦争″となる恐れがある。それにそなえるためには軍備に35億円(当時)も要する。日本の国力,でこれは全く不可能なことである。」と説明した
。東郷元帥は烈火のごとく怒った。
「そんなことをいうなら、軍令部は毎年、作戦計画を陛下に奉っているではないか。いまさら対米戦争ができぬというならば、陛下に嘘を申し上げていたことになる。また、自分も毎年この計画に対して、よろしい、と奏上しているので、自分もウソをついていたことになる!」

参謀本部が毎年作戦計画を立てて御裁可を受けるのは、万一にそなえるための平時の計画であって、戦争計画ではないーこの点を東郷元帥は誤解していた。激高した東郷元帥の暴論に、谷口は二の句が告げず黙ってしまった。

●「海軍内の1大タブー」

東郷元帥の怒りは、前年のロンドン軍縮会議のいきさつから出ていた。東郷元帥は艦隊派(強硬派)で、谷口大将は条約派(平和派)であった。強硬派の軍令部長加藤寛治(大将)が帷幄上奏(いあくじょうそう)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B7%E5%B9%84%E4%B8%8A%E5%A5%8F
まで決行して、辞職したあとを谷口がついで部内をおさえ、外部の策動にも動かなかった。以来、谷口と加藤の対立はエスカレートした。加藤はたえず東郷元帥に谷口の悪口を言い続けた。東郷元帥は加藤びいきとなり、「谷口は何事にも軟弱だ」と怒りを募らせた。
海軍内の東郷元帥の偉功をきる加藤らの艦隊派と谷口ら条約派(鈴木貫太郎ら)とに分裂、真っ二つとなった。東郷元帥は谷口らの海軍の平和主義を「米国と戦争ができぬというのか。毎年ウソいつわりの作戦計画をつくり、それを奏上していた責任をとって、大臣も部長も腹を切れ、自分も腹を切ろう!」という「面罵事件」となったのである。・

日本海軍で「神様」のような存在の東郷元帥に反対することはできなかった。東郷平バ郎は絶対であった。
元帥のこの事件が満州事変、支那事変(日中戦争)、日独伊三国同盟、太平洋戦争へと続く「昭和の戦争」で「海軍のトラウマ」となり、「海軍は戦争はできぬ」ということがいえなかった原因となった。

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
<世界大乱!『EU、中国はどうなるのか』―竹森俊平 慶応大学教授、與那覇潤・愛知県大准教授の記者会見

<世界大乱!―『EU、中国はどうなるのか』― 日本記者クラブで専門家が語る> & …

no image
日本リーダーパワー史(587)「 中国の沙漠をよみがえらせた奇跡の男・遠山正瑛」不毛の砂漠は約300万本のポプラの植栽並木と緑の農地によみがえった。

日本リーダーパワー史(587)  世界が尊敬した日本人(51)  中国の沙漠をよ …

no image
『リーダーシップの世界日本近現代史』(276)★『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(151)』★『わがメモアールーイスラエルとの出会い、Wailing Wall , Western Wall 』(嘆きの壁)レポート(1)

     2016/02/16『F国際ビ …

no image
日中韓異文化理解の歴史学(3)<まとめ記事再録>『日中韓150年戦争史の原因を読み解く』(連載70回中、37-50回まで)★『甲午農民戦争、閔妃と大院君の朝鮮王宮の腐敗と内部抗争、金玉均の暗殺、李鴻章の陰謀、日本の圧力、 ロシアの侵攻の三つどもえの対立が日清戦争へと爆発』●『英タイムズの警告(日清戦争2週間前)「朝鮮を占領したら、面倒を背負い込むだけ(アイルランドと同じ)』★『「日清戦争開戦10日前『中国が朝鮮問題のため日本と一戦交えざるを得ないことを諭ず(申報)』●『<日本はちっぽけな島国で鉱山資源には限度があり,倉庫の貯蔵も 空っぽで,戦争になれば紙幣も流通しなくなり,商店は寂れて.たちどころに困窮してしまう。 中国は日本に必ず勝利するのだ』

    『日中韓150年戦争史』㊲ ロシア皇太子暗殺未遂事件(大津事件 …

no image
 世界、日本の最先端技術『読める化』チャンネル- ー『 インターネットの次に来る「不可避」な12の変化とは何か? ~『インターネットの次に来るもの』(ケビン・ケリー著)を読む』●『もんじゅ「死刑宣告」で核燃料サイクルはどうなる 原子力の未来をビジネスライクに考える』●『100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日 ISの自爆ドローン戦術に自衛隊が学ぶべきこと』●『「GDP」は残念なほど時代遅れな経済指標だ デジタル化やグローバル化で陳腐化』

 世界、日本の最先端技術『読める化』チャンネル   インターネットの次に来る「不 …

日中韓150年戦争史(81)ー終戦/戦後70年、『辛亥革命から104年」の歴史原点を再検証する

日中韓150年戦争史(81)  (記事再録)「終戦/戦後70年、『辛亥革命から1 …

no image
日本リーダーパワー史(736) 明治維新150年『明治極秘史』②『日露戦争の勝因は!―空前絶後の名将・川上操六参謀総長 のインテリェンスー田中義一(後の首相)をロシアに 派遣,徹底調査を命じ、田中は名前を変えてダンスを習い、隊付となって上流貴族と親友となって秘密情報を入手、ロシア革命のレーニンにも接触した。②

  日本リーダーパワー史(736) 明治維新から150年、『明治極秘史 …

no image
日本の〝怪物″実業家・金子直吉

1 日本の〝怪物″実業家・金子直吉 ―鈴木商店を日本一の商社にした「 …

no image
村田久芳の文芸評論『安岡章太郎論」②「海辺の光景へ、海辺の光景から』

  2009,10,10      文芸評論  『安岡章太郎論』 村田 …

no image
速報(100)『日本のメルトダウン』『女子サッカーの優勝が日本を勇気づけた』『放出放射線量、4か月で200万分の1に減少』

速報(100)『日本のメルトダウン』   『女子サッカーの優勝が日本を …