前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「Z世代のための日本最強リーダーパワーの勝海舟(75)の国難突破力の研究⑥』★『日本人はあまり日清戦争に勝ったなどといばっていると、あとで大変な目にあうよ。剣や鉄砲の戦争には勝っても、経済上の戦争に負けると、国は仕方がなくなるよ。』

   

日本リーダーパワー史(347)記事再録

『勝海舟の中国・韓国との付き合い方』

この経済戦争にかけては、日本人は、とても中国人には及ばないだろうと思う、
 
 
勝海舟は幕末・明治に活躍した稀代の戦略家であり、政治家・外交家であり、なんといっても明治維新のトビラを開いた偉人である。
坂本竜馬も「日本第一の人物・勝麟太郎の弟子なり」といっており、西郷隆盛も「勝海舟は初めて面会したところ実に驚き入った人物で、どれだけ知略これあるやら知れぬ」、「英雄肌で、佐久間象山よりもより一層、有能であり、ひどく惚れ申しそうろう」と書いているほどだ。
 
勝海舟は幕府とか、藩とか小さなことには全くこだわっていなかった。日本の行く末が第一であった。「オレは、(幕府)瓦解の際、日本国のことを思って徳川三百年の歴史も振り返らなかった」(勝海舟直話『氷川清話』)といている。
 
来月2012年12月に総選挙の投票が行われるが、野田、安倍、石原、橋下らの各政党党首の演説を聞いていて、そのあまりの小人物、小政治家の経綸の低さ、世界観のなさ、未来ビジョンのない,低レベルにうすら寒くなってきた。自党のPRに終始した話ばかりで、せめて30年、50年後の日本の国家ビジョンをこうするという、青年に明るい希望をもたらす政治家がいなのが「日本の悲劇」であり、「人材倒産」「借金倒産」「老害倒産」が始まっているのだ。
 
選挙の争点は
 
最悪に落ち込んだ中国外交をどう立て直していくのか。
日銀法の改正という禁じ手を使った場合、経済再生どころか、国家倒産を早めるだけではないのか。
少子化、人口減少をどう食い止め、増やしていく具体策をなぜだせないのかなど山済みである。
 
ー迫りくる国難に立ち向かい、解決する突破力のある政治家がいないことを、国民の方がよく知っており、また投票したい人物がおらず、数合わせだけの弱小新米政治家を選らばならない旧態依然たる形式的な投票制度に、飽き飽きしているのだ。
すべての政治制度を民主的に根本的に改革する以外に、日本の再生はないが、「じり貧」の後は「ドカ貧」がくるのだ。
ここで、もう一度、明治維新を起こした偉大な先人たちの政治力・外交力・交渉力を振り返ってみよう。勝海舟の『氷川清話』は政治家、外交官ばかりでなく、いま、国難にぶつかっている国民1人1人にとって歴史の参考になる本であるといえる。
 
 
『勝海舟の中国・韓国との付き合い方』
 
支那、朝鮮に接するの法も隣国なるが故にとて特別の会釈に及ばず、正に西洋人が之に接するの風に従て処分す可きのみ。悪友を親しむ者は共に悪名を免かる可からず。我れは心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり。(明治十八年三月十六日付「時事新報」、脱亜論)
 
これは福沢諭吉の『脱亜入欧論』の一節である。
 
勝海舟は明治維新後、海軍卿兼参議(同6年)、伯爵(20年)、枢密顧問官(21年)と陽の当たる道を歩んだため、福沢諭吉から、武士の意地を問う「痩我慢の説」の批判がでると、「行蔵は我に存す。毀誉は他人の主張」(出処進退は自分がきめ、批判は他人に任す)と返事したことは有名である。
福沢諭吉の『脱亜論』に対して、勝は全くその逆で中国、朝鮮との友好を説いている。
海舟は、朝鮮・中国の隣国を大切にする。それは歴史(伝承)を重んじ、先行判断を無視しないからである。
 
 
朝鮮について、勝はいろんな談話で触れている。
 
○朝鮮といえば、半亡国だとか、貧弱国だとか軽べつするけれども、朝鮮も既に蘇生の時がきていると思うのだ。
 
○およそ全く死んでしまうと、また蘇生するという、一国の運命に関する生理法が世の中にある。朝鮮もこれまでは、実に死に瀕していたのだから、これからきっと蘇生するだろうよ。これが朝鮮に対するおれの診断だ。
 
 しかし朝鮮をばかにするのも、ただ近来のことだよ。昔は、日本文明のタネはみな朝鮮から輸入したのだからのう。特に土木事業などは、ことごとく朝鮮人に教わったのだ。
 
いつか山梨県のある所から、「石橋の記」を作ってくれ、と頼まれたことがあったが、その由来記の中に「白衣神人きたりて云々」という句があった。
 
白衣で、そしてひげがあるなら、疑いもなく朝鮮人だろうよ。この橋ができたのが、既に数百年前だというから、数百年も前には、朝鮮人も日本人のお師匠様だったのさ。
 
また中国についても、
 
○シナ人は一体気分が大きい。日本では戦争に勝ったといって、大騒ぎをやったけれども、シナ人は、天子が代ろうが、戦争に負けようが、ほとんど馬耳東風で、はぁ天子が代わったのか、はぁ、日本が勝ったのか、などいって平気でいる。
 
それもそのはずさ。一つの帝室が滅んで、他の皇室に代わろうが、国が滅んで、他国の領分になろうが、一体の社会は依然として旧態を存しているのだからのう。社会というものは、国家の興亡には少しも関係しないよ。
 
○ともあれ、日本人はあまり戦争に勝ったなどといばっていると、あとで大変な目にあうよ。剣や鉄砲の戦争には勝っても、経済上の戦争に負けると、国は仕方がなくなるよ。
 
そして、この経済上の戦争にかけては、日本人は、とてもシナ人には及ばないだろうと思うと、おれはひそかに心配するよ。
 
○シナ人は、また一国の天子を、差配人同様に見ているよ。地主にさえ損害がなければ、差配人は幾ら代わっても、少しもかまわないのだ。それだから、開国以来、十何度も天子の系統が代わったのさ。
 
こんな国体だけによって、戦争をするにはきわめて不便な国だ。それだから日本人も、こないだの戦争(日清戦争)に大勝利を得たのよ。しかし戦争に負けたのは、ただ差配人ばかりで、地主は依然として少しも変わらない、ということを忘れてはいけないよ。
 
<以上は勝部真長「勝海舟(下)」PHP研究所 1992年 464-465P>

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
日本のメルトダウン(538)海外活躍選手の勝負脳に学ぶ>●「岡崎慎司独占インタビューVol.1:◎「早くも偉大な才能を見せつけた田中将大」

   日本のメルトダウン(538)   …

no image
速報(384)『日本のメルトダウン』 ◎『緊急動画座談会―中国ディ―プニュース・中国軍の『対日戦争準備命令』の本気度を読む』(120分)

    速報(384)『日本のメルトダウン』   …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(169)記事再録/『亀岡市レジ袋禁止条例ガンンバレ』★「30年間カヤック釣りバカ老人の鎌倉海定点観測」-『海を汚染、魚を死滅させる有毒マイクロプラスチックが食物連鎖で最終的に魚食民族・日本の食卓を直撃する』★『プラスチックを規制し、1人年40 枚にレジ袋を減らす規制をしたEU対1人が年300枚のレジ袋を使う日本はいまだ規制なし』

    2018/06/22 / 記事再 …

no image
トラン大統領は全く知らない/『世界の人になぜ日中韓/北朝鮮は150年前から戦争、対立の歴史を繰り返しているかがよくわかる連載⑶』ー(まとめ記事再録)日中韓異文化理解の歴史学(3)日中韓異文化理解の歴史学(3) 『日中韓150年戦争史の原因を読み解く』 (連載70回中、37-50回まで)

  日中韓異文化理解の歴史学(3) 『日中韓150年戦争史の原因を読み解く』 ( …

no image
  片野 勧の衝撃レポート③「戦争と平和」の戦後史(1945~1949)➁『占領下の言論弾圧ー① ■検閲されていた日本の新聞、放送、出版、広告』★『業務停止を命じられた同盟通信』

   片野 勧の衝撃レポート③ 「戦争と平和」の戦後史(1945~1946)③ …

『明治大発展の国家参謀・杉山茂丸の国難突破の交渉力」➃『『軍事、外交は、嘘(ウソ)と法螺(ほら)との吐きくらべで、吐き負けた方が大損をする。国家の命脈は1にかかって嘘と法螺にある。『 今こそ杉山の再来 が必要な時」』

  2014/08/09 /日本リーダーパワー史(520)「ほら丸を自 …

「オンライン動画講座」★再録〈速報(307)『日本のメルトダウン』★『福島原発事故の東京電力の責任』●『2012年6月8日、国会事故調での清水正孝前社長の2時間半の全証言動画中継』

2012/06/10  速報(307)『日本のメルトダウン』再録 &n …

no image
世界/日本リーダーパワー史(894 )ー『米朝会談前に米国大波乱、トランプの狂気、乱心で「お前はクビだ」を連発、国務省内の重要ポストは空っぽに、そしてベテラン外交官はだれもいなくなった。やばいよ!②」

 世界/日本リーダーパワー史(894) トランプ政権の北朝鮮専門家、広報部長、ス …

no image
日本リーダーパワー史(727)★(記事再録)『アジアが世界の中心となる今こそ120年前の 大アジア主義者・犬養毅(木堂)から学ぼう 』一挙、25本の記事全部公開する!

日本リーダーパワー史(727)   アジアが世界の中心となる今こそ12 …

no image
月刊誌『公評』7月号掲載 『異文化コミュニケーションの難しさ―『感情的』か、『論理的』かーが文明度の分かれ目➂

    月刊誌『公評』7月号―特集『実感』❸ 『異文化コミュ …