前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

『リーダーシップの日本近現代史』(338)-『昭和戦後宰相列伝の最大の怪物・田中角栄の功罪』ー「日本列島改造論』で日本を興し、金権政治で日本をつぶした』★『日本の政治風土の前近代性と政治報道の貧困が続き、日本政治の漂流から沈没が迫っている』

   

 

  2015/07/29 /日本リーダーパワー史(576)記事再録

                                                   前坂俊之(ジャーナリスト)

 

「角さんが吉田ワンマンを抜いた」―戦後五十年の1995年(平成七年)終戦記念日の読売新聞世論調査で「戦後日本の発展に功績があった人」はトップが田中角栄(23%)、2位吉田茂(22%)、3位佐藤栄作(10%)の順となった。

「今秀吉」と呼ばれ「日本列島改造論」で一世を風靡した田中角栄は戦後政治の象徴、光とヤミである。絶大な人気を誇り54歳の若さで首相になったが、「金権腐敗政治」を批判されロッキード事件で失脚。それでも自民党の最大派閥「田中軍団」(最盛期120人)を率いて、4人の首相を次々に指名するなど絶対的な権力を握り「世界の非常識・永田町政治」の「キングメーカー」として君臨した。刑事被告人のまま世を去ったが、いまだにその評価は定まっていない。

1918年(大正7年)新潟の雪深い田舎(現・柏崎市)の馬喰のセガレに生まれた。

家が倒産し、貧乏のどん底生活をし、小学校を出ただけで土建屋となった。二歳のときドモリになったが、節をつけ歌うようにしゃべり、浪曲の猛練習をつんで直し、政治家でもトップの雄弁家に生まれ変わった。そのダミ声はこの名残りである。昭和14年から2年間は陸軍上等兵として、中国の満州国で兵役に従事し、生死をくぐり、辛酸をなめ尽くした。

敗戦後の1947年(昭和22)、新潟3区から衆議院選挙に29歳で出馬して初当選。以後、持ち前の馬力で八面六臂の活躍ぶりで「コンピューター付きブルドーザー」の異名をとり、田中が手がけた議員立法の数はトップ。39歳で郵政大臣、44歳で高小卒の角栄が東大卒のエリート官僚の総本山・大蔵省の大臣にのし上がった。

1965年(昭和40)5月に証券不況から山一証券事件が起きた。山一には大勢の客が押しかけ取付け騒ぎの様相となった。一歩処理を間違えると経済恐慌に発展しかねない。

5月28日夜、東京・赤坂の日銀氷川寮で政府、金融界トップの極秘会談が開かれた田中蔵相、大蔵事務次官、日銀副総裁、中山素平興銀頭取、富士、三菱の三行頭取が出席した。大蔵省、日銀側は三行経由の日銀特融を主張したが、銀行側は拒否し議論が長引いた。

そのうち三菱頭取が「証券取引所を閉めて、今後の方策を考えたらどうか」というと、それまで黙っていた田中が「それでもオマエは頭取か」と大声で一喝し、日銀特融を決定し証券恐慌を未然に防いだ。

この政治パワーで首相となった角栄は「決断と実行」をスローガンに、ただちに北京に飛んで昭和47年9月、日中国交正常化を実現、国内的には『日本列島改造論』をぶち上げたが狂乱物価を招き、1974年、月刊「文芸春秋」で立花隆の「田中角栄研究」で追及され、わずか2年半で、総理の座から滑り落ちた。

確かに、金権腐敗政治の代表といわれた角栄だけあって、金の使い方はかゆいところに手の届く気配りがあった。料亭で会合をする場合にも女中さんから玄関番まで必ずチップを忘れなかった。冠婚葬祭にも必ず金をだし、関係者の葬儀には一番に駆けつけ涙を共にし最後まで見送った。人からの頼み事は必ず果たし相手を感激させるた。早坂茂三秘書による数多くの「角栄一代記」には自ら政治資金を派閥メンバーに配って回った手口をあっけらかんと書いている。

ある人が角栄に百万円の金策を頼んだ。すぐ包みが届けられ、中を開くと三百万円入っておりメモがあった。「まず百万円で借金を返せ。しばらくの間、家族や従業員にうまいものを食べさせてないだろうから、次の百万円でうまいものを食え。残りの百万円は貯金しておけ。三百万円は全額返さなくてよい」

この人が一生恩を着きたのはいうまでもない。

このように角栄流の強力なリーダーパワーは「目配り」(政治的な見識、政策)「気配り」(人心収攬術)「金配り」(金権政治)の3本だが、「金配り」ばかり追及された。

そこに日本の政治風土の前近代性と政治報道の貧困があり、いまだに日本政治の漂流が続いている。

 - 人物研究, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

『リーダーシップの日本近現代史』(319 )★『私の書いた『日本近代化の父・福沢諭吉に関する論考、雑文一覧 』検索結果 239 件(2020/3/20日現在)を一挙公開

 『地球の中の日本・世界史の中の日本人」(前坂俊之オフィシャルサイト) …

no image
日本リーダーパワー史(125) 辛亥革命百年(27) 内山完造の『日中コミュニケーションの突破力に学べ』

日本リーダーパワー史(125) 辛亥革命百年(27)内山完造の『日中コミュニケー …

no image
<クイズ『坂の上の雲』>明治陸軍の空前絶後の名将・川上操六論④とは・友人徳富蘇峰による・・

<クイズ『坂の上の雲』> 明治陸軍の空前絶後の名将・川上操六論④・ 前坂俊之(戦 …

no image
日本メルトダウン(904)『消費増税延期でアベノミクスは再起動するか』●『アベノミクスは大失敗」と言える4つの理由ー今すぐ総括を行い経済政策を修正すべきだ』●『今の経済政策を続けて何一ついいことはない』●『外国人投資家が安倍政権の「敵」になる時―』

   日本メルトダウン(904) 消費増税延期でアベノミクスは再起動するかー「円 …

no image
池田龍夫のマスコミ時評(69)●「夜間外出禁止令」をよそに、またも米兵が乱暴狼藉」●「厚木基地で、オスプレイ飛行訓練とは」

    池田龍夫のマスコミ時評(69) ●夜間外出禁止令」をよそに、ま …

『Z世代のための昭和史の謎解き①』『憲法第9条と昭和天皇』『吉田茂と憲法誕生秘話①ー『東西冷戦の産物 として生まれた現行憲法』『わずか1週間でGHQが作った憲法草案』①

  2016/02/28日本リーダーパワー史(675) 『日 …

no image
速報(242) 近藤駿介委員長の最悪のシナリオ「福島第1原子力発電所の不測事態シナリオの素描」全文』公開

速報(242)『日本のメルトダウン』   ★『内閣府原子力委員会の近藤 …

「Z世代のための、約120年前に生成AI(人工頭脳)などはるかに超えた『世界の知の極限値』ー『森こそ生命多様性の根源』エコロジーの世界の先駆者、南方熊楠の天才脳はこうして生まれた(2)』★『独学/独創力/創造力/観察力/絵画力/集中力の研究』

2009/10/02 日本リーダーパワー史 (23)記事再録 『ノーベル賞を超え …

no image
名リーダーの名言・金言・格言・苦言・千言集⑧『成功は失敗の回数に比例する』(本田宗一郎)●『苦労はすなわち努力』(鈴木三郎助)

<名リーダーの名言・金言・格言・苦言 ・千言集⑧>       前坂 俊之選 & …

no image
日本リーダーパワー史(974)ー『中国皇帝の謁見儀式と副島種臣(初代、外務大臣)の外交インテリジェンス➀『中国の近代化を遅らせた中華思想の「華夷序列・冊封体制」の弊害が今も続く』★『トランプのプロレス流、恫喝、ディール(取引)外交は対中国の旧弊行動形式に対しては有効な方法論である』

中国皇帝の謁見儀式と副島種臣の外交力➀                      …