前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

人気記事再録/「日本興亡150年史―外国人が日本を救う』★『明治の大発展から昭和の戦争敗北が第一の敗戦』★『戦後(1946年)廃墟から立ち上がり独立、奇跡の高度成長で世界第2の経済大国にのし上がるが、一転、バブルがはじけて第2の敗戦へ』★『「少子超高齢人口急減国家」「ゾンビ社会」に明日はない』

      2019/05/24

2018年6月20日/日本興亡150年史―外国人が日本を救う。

日本はついに移民政策を変え始めた。

政府は全産業分野の人手不足解消に向けて外国人労働者に新たな10年間の在留資格を創設し、2025年ごろまでに50万人を受け入れる骨太?(小粒)の成長戦略を打ち出した。

今年は明治維新から150年に当たる。この間の日本興亡150年史を振り返ると、日本を成長発展させたのは実は『日本人』だけではなく「外国人」の力が大きかったことがわかる。

このことを『移民受け入れ拒否』の多くの現代人はすっかり忘れ去っている。

明治維新を起こした坂本竜馬、吉田松陰、西郷隆盛、大久保利通らの『薩長土肥』(鹿児島、山口、高知、佐賀など)は「外人扱い」だったのである。

ここでの外人の語源は中国漢民族の中華思想に由来する。

秦の始皇帝がつくつた万里の長城を関(所)として、内を「関内」、外を「関外」といい、農耕の漢民族の「内人」と、関外の遊牧民の異民族(外人)を区別して、漢字文化を世界一優れた文化と誇り、その他の外人を野蛮人と見下げる「エスノセントリズム」(自民族優越主義)である。

この『中華思想』を尊重していた江戸幕府は豊臣方や関ケ原以降に服属した大名を九州、四国の遠隔地に追いやり「外様大名」として監視し、参勤交代、治水工事の莫大な負担を強いた。江戸城での席次でも、親藩、譜代とは差別され、幕府の役職にはつけず、発言権もなかった。同じ日本人ながら完全な『外人』扱いだった。

明治維新はこの『薩長土肥』の外人部隊のクーデターといえる。

こうして開国した明治の薩長藩閥(外人)政府は西欧諸国の近代的諸制度を導入するため英、米、仏、独などから「お雇い外国人」約3千人を大臣級の高給を払って日本に招き「富国強兵」「殖産振興」のスローガンを掲げて「坂の上の雲」を目指して必死に頑張った。

東大各学部、陸軍大学校、高等学校などでは外人教師がネイティブな授業を行った。夏目漱石も南方熊楠もそこで国際感覚を養い、陸軍大学校はドイツのメッケル少佐を教官として招きドイツ兵制と参謀教育を行った。日清、日露戦争に勝利できたのはメッケル少佐のおかげである。

三等国日本は明治の大発展により、1920年(大正8)は発足した国際連盟の4大常任理事国となり、新渡戸稲造が事務次長(現在の事務総長役)に就任して活躍し、開国約50年でアジアで唯一の先進国の仲間入りを果たした。

ところが、昭和に入り歴史の歯車は逆回転した。日本は下降線をたどり、明治維新から77年後の1945年(昭和20)年8月、ついに太平洋戦争に敗れて亡国する、国連を脱退した軍国主義のうねりと狂信的な日本主義の暴走の末の自滅であった。

「国破れて山河あり」-

マッカーサー司令官の「GHQ」(連合国軍総司令部)による明治憲法のリセットが始まり、のは翌昭和21年には主権在民、象徴天皇制、戦争放棄、男女平等などの理念を盛り込んだ新憲法がGHQの指導で制定された。

同時に婦人解放、労働組合の結成、学校教育の自由化、経済の民主化、農地改革、財閥解体などの「戦後改革」の大手術が行われた。日本人だけでは到底できなかった戦後改革、革命でもあった。

この結果、日本は「廃墟」から立ち上がり1952年に独立、55年から73年の18年間にわたり実質経済成長率10%以上という奇跡の経済成長を遂げて、68年には米国に次ぐ世界第2の経済大国にスピードアップできた。

新幹線も東名高速道路も世界銀行から融資によってできたのである。

結局、この奇跡的な復興、発展は日本人の努力と共には日米安保で守られて日本の防衛費はGDP1%以下(戦前は40%以上)におさえられていたこと。ベルリンの壁の崩壊(1989年)までは東西冷戦、米ソ対立の国際的な環境の下で日本は経済発展に専念できたことが大きい。

1990年、日本経済はピークアウトし、トランプ大統領が「ニューヨークの不動産をジャパンマネーが買い占めた」と恨んだ「平成バブル」(1991年)がはじけて、一転の下降カーブを描いた。

政府は景気回復のために禁じ手の赤字国債の発行に踏み切り、1998年(平成10年)には赤字国債の無制限発行体制へ突入する。

この経済失政で『失われた20年』を招き、今や事態はさらに深刻化し重症の「少子超高齢人口減少国家」に衰退しつつある。2018年の政府総債務残高は1310兆円にふくれ上がり対GDP比(263%)で世界一の借金大国となり果てた。

「少子超高齢人口急減国家」「ゾンビ社会」に明日はない

さらに急速な高齢化で、人口は2060年までに4000万人が減少する。2050年には現役世代1.3人で1人の高齢者を担ぐ「肩車型」社会になる。こんな社会は成り立つはずがなく、社会機能は完全にマヒする。

2025年度には認知症患者数が700万人となり約38万人の介護職員が不足するという数字も出ており今回の50万人の外国人労働者の受け入れでは足りるはずもない。

優秀なベトナムの若年労働者の受け入れはなどは台湾、韓国、中国、ヨーロッパ各国でも引っ張りだこの移民獲得競争に発展しており、日本の希望者は以前より大幅に減っているといわれる。

「座して死を待つ」より、外国人観光客の増加によって、全国各地が活性化しているように、日本語が十分話せなくても外国人介護職員の「笑顔」や「ボデイランゲージ」、「心の交流」によって孤独な高齢者が元気になることは間違いないと思う。

  

『2018年「日本の死」を避ける道はあるのかー 日本興亡150年史』(1)
http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/29398.html

  

 - 人物研究, 戦争報道, 現代史研究, IT・マスコミ論

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
速報(124)<座談会・フクシマの教訓①>『事故原因、原子力村、事故処理、低線量被爆など徹底討論する』(上)

速報(124)『日本のメルトダウン』   <徹底座談会・フクシマの教訓 …

no image
天才経営者列伝①本田宗一郎の名言、烈言、金言ピカイチ『成功は失敗の回数に比例する』★『得手に帆を上けよ』

               2009、08,15 天才経営者列伝①本田宗一郎の …

no image
『Z世代のための日中韓外交史講座⑧』★『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉓ 西欧列強下の『中国,日本,朝鮮の対立と戦争』(上)(英タイムズ)」★『朝鮮争奪戦の内幕、西欧列強の砲艦外交、策略と陰謀と暗躍の外交裏面史」をえぐっており、「日中韓戦争史」を知る上では必読の記事』

  2015/01/01『日中韓150年戦争史』㉓記事再録編集 日中1 …

「Z世代のためのウクライナ戦争講座」★「ウクライナ戦争は120年前の日露戦争と全く同じというニュース]⑥」『開戦37日前の『米ニューヨーク・タイムズ』の報道』-『「賢明で慎重な恐怖」が「安全の母」であり,それこそが実は日本の指導者を支配している動機なのだ。彼らは自分の国が独立国として地図から抹殺されるのを見ようなどとは夢にも思っておらず,中国が外部から助力を得られるにもかかわらず,抹殺の道を進んでいるのとは異なっている』

『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争カウントダウン』㉚   …

no image
日本リーダーパワー史(495)<日米首脳会議の結果はどうなるのかー成功か、失敗か、引き分けか、外交力の採点!>

        日本 …

no image
国際ジャーナリスト・前田康博氏の動画ニュース解説➂「2015年、終戦・抗日戦争勝利70周年の日韓関係はどうなる」(12/17)

                      日本リーダーパワ …

no image
世界の最先端テクノロジー・一覧②『ジェフ・ベゾスが世界4位の富豪に、アマゾン株が最高値を更新』●『超音速列車「 ハイパーループ」欧州でも始動』●『9次元の世界へようこそ、「超弦理論」が映像に』●『TRONの坂村氏が主導するIoTの新たなプロジェクトが始動』●『米国防総省、グーグルで活躍した大物研究者が今度はフェイスブックへ電撃移籍』

 世界の最先端テクノロジー・一覧② ジェフ・ベゾスが世界4位の富豪に、アマゾン株 …

no image
エピソードにみる明治のリーダーの面影

1 03,8月 前 坂 俊 之 (静岡県立大学国際関係学部教授) 1・福沢諭吉  …

日本リーダーパワー史(712) 陸軍軍人で最高の『良心の将軍』今村均の 『大東亜戦争敗戦の大原因』を反省する②「陸海軍の対立、分裂」「作戦可能の限度を超える」 「精神主義の偏重」「慈悲心の欠如」 「日清日露戦争と日中戦争の違い」「戦陣訓の反省」

  日本リーダーパワー史(712)  『良心の将軍』今村均(陸軍大将) …

『Z世代のための日中関係/復習講座』★『日中関係が緊張している今だからこそ、もう1度 振り返りたい』★『中國革命/孫文を熱血支援した 日本人革命家たち①(1回→15回連載)犬養毅、宮崎滔天、平山周、頭山満、梅屋庄吉、秋山定輔ら』

  2022/08/22『オンライン・日中国交正常化50周年 …