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世界/日本リーダーパワー史(954)ー米中間選挙(11/6)の結果、上下院議会の“ねじれ現象”はトランプの国内、対外政策にどう響くか、暴走は一層エスカレートするのか(上)

      2018/11/30

世界/日本リーダーパワー史(954)

米中間選挙後のトランプの暴走はブレーキがかかるのか、一層激しくなるのか。

 

米中間選挙は11月6日に行なわれ、事前の予想通り、下院は民主党が勝利し、上院はトランプ大統領の共和党が死守した。

今後の米政局はこのねじれ現象で下院からトランプ氏のの弾劾訴迫が提議され、その公約は民主党の反対で、頓挫して混迷の度合いを一層増すであろう。

今後の米中貿易戦争の発展とその行方、サウジのジャーナリスト殺害事件の影響、イランの石油輸出を止める経済制裁が中東の新たな紛争の発火点となるのか、恒例の座談会を開いた。

 

「トランプ大統領率いる共和党が上院の多数を維持する一方、下院では野党・民主党が8年ぶりに多数党に返り咲いた。トランプ氏は後半に追い上げて上院を死守する戦略をとり、今後の政権運営のカギを握る上院をからくも守ったことで両院敗北を免れた。それを、大勝利とれいによってツイートしてい自画自賛しているね(笑)

 

トランプ大統領は選挙直前2週間ほど前から下院の敗北を認めて、大統領の専権事項である外交、通商問題などでの最後の砦の上院の勝利に全力を挙げた、激戦区をこれまでの大統領がやらなかったほど、精力的に遊説して回った。

「民主党になればこの好景気も失速し、移民問題が再演して、米国は再び混乱する」と激しく攻撃してまわった。中米ホンジュラスから米国を目指して北上する「移民キヤラパン」を「侵略」と繰り返すなど、違法移民問題を脅威として強調し、民主党になればこうした不法移民が増えるというキャンペーンを張って共和党の危機感をあおりフロリダ州、テキサス州などの激戦区で辛くも勝利をもぎ取って1勝1敗に持ち込んだ」。

 

「民主党が下院で多数派になったことで、トランプ政権が推進する政策や法案、予算措置を阻止できるようになり、メキシコ国境での壁建設などは実現が難しくなった。さらに弾劾に向けて民主党は大統領の納税申告書や、公務と事業との利益相反問題などに関する書類など、トランプ政権が公表しない様々な資料の開示も、これまでより強力に請求してくるでしょうね。トランプ氏が約束した追加の個人所得税引き下げ構想は吹き飛び、移民を巡る全米の論争は激しさを増すとみられる」

「(CNN(11/6)によると、全米規模の出口調査で有権者の約40%がトランプ大統領の弾劾を望んでいた。その割合は民主党支持の有権者では77%。共和党では5%、無党派層では33%だった。弾劾支持率約40%というのは、歴代大統領と比べてはるかに高い。不倫問題で弾劾裁判に直面したクリントン元大統領より高率となっている。

その弾劾問題について下院の敗北が明らかになった瞬間、トランプ大統領はセッションズ司法長官を即座にクビして反撃に出た。モラ-特別検事の訴追が迫っており、下院を握った民主党は手ぐすね引いて待っており今後、激しいバトルが展開されるでしょう。

しかし、ある意味ではトランプ氏は大変、正直な露悪家といえる、ロシアゲート事件の捜査妨害の圧力をこれまで何度も公言しており、1ゕ月前にホワイトハウスでのトランプ大統領との会話を極秘に録音することを司法省の同僚に提案しとして「ニューヨークタイムズに」にスクープされたローゼンスタイン司法副長官の解任は選挙前にはストップしていたが、これも解任するのかね。

この次は民主党寄りの思想の持ち主だと非難していたマティス国防長官のクビも危ないね、そして「誰もいなくなった政権」でさらに素人人事をくり替えして、イエスマンばかりで周りを固めて暴走を続けることは一層の米国の孤立と衰退を招くだけだ」

 

「今回の選挙の特徴は投票率が過去50年で最高になったことでしょう。米ABCニュースの出口調査によると、18~29歳の期日前投票は2014年の前回選挙から188%上昇したといいます。投票前日までに約4000万人が投票を終えた。

これも2014年の中間選挙の期日前投票数は2750万人だったので約1・5倍に増えた。若者や女性が多く投票に行ったためで、CNNなどの出口調査では、投票した女性有権者のうち59%が「民主党に投票」、「共和党」の40%を大きく上回った。男性では「民主」が47%、「共和」が51%と5分5分。若い世代の民主支持の傾向が目立った。

 

「2つ目は女性の躍進が目立ったこと。約240人と記録的な人数の女性候補が立候補して、ニューヨークでは、下院で民主党の29歳の史上最年少の連邦下院議員が誕生した。下院ではまた、ミネソタ州とミシガン州の民主党のイスラム教徒の女性候補2人が当選し、さらに、民主党からカンザス州とニューメキシコ州から立候補した米先住民女性2人も初の下院入りを果たした。このうち、カンザス連出の女性は同性愛者だと公表している。トランプに反発する女性たちを大量に立候補させた民主党の作戦成功ということですね。

 

「一方、下院で敗北したトランプ氏は上院の勝利を歴史的な快挙と自慢している。共和党系政治評論家のツイートを引用して、「中間選挙で現職大統領が上院の議席を増やしたのは、過去105年の問に5回しかなかった。トランプ氏は魔法の持ち主だ。耳から魔法が出てくる、信じられないほど幸運だ」とこれまた自画自賛のPRを連発している(笑)」

「この結果、トランプ共和党と民主党の争いは一層激化することは間違いない。民主は下院であらゆる議会調査権を活用してトランプ政権を追及する構え。トランプ氏は下院で多数派を失って公約は一層実現しにくくなる。

下院を握った民主党が協力しなければ実現しないのは、オバマケア―の完全廃止問題や追加減税、メキシコとの国境の壁建設、インフラ投資など歳出法案の可決や、弾劾発議は下院の権限なので民主党が協力しなければ実現しない」

 

(「一方、共和党が確保した多数の上院の権限は大統領の閣僚・最高裁判事などの人事承認 、外交、通商、関税(対中国など)の動議などで、下院から上がってきた弾劾裁判の判決権限は上院が握っており、上院を死守したことでトランプ氏がは弾劾裁判が可決される心配はなくなった、。トランプ氏の最後の2週間は上院1本に絞った遊説戦術が功を奏したといえるでしょう。両党の1勝1敗、痛み分けというところです」

トランプの対中政策は強硬論には民主も同調

「一方、トランプの対中強硬姿勢は民主党が下院で多数を占めても変わらない。逆に一層強くなるでしょう。米国との覇権争いを仕掛けている中国への警戒論は、民主党も共通しているためだ。

「トランプ大統領の対中政策は正しい」と民主党上院トップのシューマー院内総務はのべており、民主内には制裁関税に賛同者が多い。米中経済戦争では2017年の時点で米国のGDPの63.2%まで中国は追いついてきており、このペースだと2023-2025年の間に米国をぬいて世界一になるとみられる。

先端技術分野でも国際特許出願件数(2017年度)の1位米国5万6624件、2位中国4万8882件と肉薄している。習近平が昨年ぶち上げた強国の夢「中国製造2025」では、航空や産業用ロボット、半導体、ハイテク分野の自給率を「20年に40%、25年に70%」に引き上げて、中華人民共和国誕生10年目の2049年に「世界一の製造強国」をめざし、米国を凌駕することを習近平は明言した。このアメリカの覇権奪取を掲げてしゃにむに突進する中国を米国はロシアにかわって「第一敵国」に格上げし、米中新冷戦に突入したわけです」

 

 

 

(C)「それが前号(12月号)紹介したペンス副大統領は10月4日にワシントンで行った、「米中冷戦の対中戦略見直し論」です。

それによると、これまでの歴代米国政府の対中国政策は間違っていた。米国は中国の世界貿易機関(WTO)加盟を認めて、経済的に発展していけば、国民の政治的自由、人権尊重を拡大することを期待してきた。ところが、中国はこの外圧外から変化することはなく、むしろ中国は独自の秩序(昔ながらの中華思想による華夷序列)、権威主義的な統治モデルを輸出しようとし、独善的で覇権主義的な傾向を一層強めて、西欧側の期待は完全に裏切られた。

また中国は「中国製造2025」のように知的財産の盗用などで産業基盤を築き、米国の貿易赤字が拡大した。

 

「一帯一路」(中国貿易構想)の犠牲になって借金地獄に陥った国はジブチ、キルギス、ラオス、モルディブ、モンゴル、モンテネグロ、タジキスタン、パキスタンの8カ国以上に上りにのぼり、その過剰な貸し付けと高金利の融資は帝国主義的、植民地主義とあまり変わりない。

また、日本の施政下にある尖閣諸島周辺で中国海軍がの巡回を定例化し、南シナ海の軍事拠点化のために岩礁を埋め立て、対艦・対空ミサイルを配備した軍事拡張するなど秘密裏に軍備増強に強めている。中国は米軍の陸海空、宇宙での米国の軍事的優位性を奪うことを目指している、と全面的な対決姿勢を示し、徹底批判したのです。いわば宣戦布告といってもよい」 

 

「このペンス発言には伏線があるのです。9月30日に米ミサイル駆逐艦ディケーターが南シナ海のスプラトリー(南沙諸島)付近を「航行の自由作戦」を展開して航行中に、中国人民解放軍の駆逐艦が、周辺海域から出て行けと攻撃的な態度で、なんと41mまで急接近してぶつかりそうになった。そのため、米艦は急きょ進行方向をかえて、危機一髪で衝突を回避したという。海軍の常識では、非友好国の軍艦が2㌔以内に接近すれば、それはもう戦闘行為と考える。41㍍などという距離は常軌を逸している(海上自衛隊海将の話)」という」(ニューズウイーク日本版11月13日号)。

習近平は南シナ海は自由な海にすると米側に約束しながら、周辺離島や人工島を建設して軍事基地化しているのに、それを追及されると中国の領域内なので航行の自由作戦はやめろという。中国と何度対話してもこの二枚舌を変えることはできない、中国人の民族性といってもよい。「話せばわかる米国と話してもわからない中国の衝突は最終的に戦争に発展する可能性が高い」

 

「その点についてはこの座談会でもこの日中コミュニケーションギャップが戦争に発展したことを指摘している。日清戦争は日本の侵略などと、日本の歴史学者も誤った認識している人が少なくない。

李鴻章下の中国海軍(北洋艦隊)は日本を第一敵国として旅順に大軍港を建設し、ドイツから購入した世界一の鉄製軍艦「鎮遠」「定遠」などを日本にデモンストレーションして威嚇し、長崎清国水兵乱闘事件を起こす。高陞号事件(こうしょうごう)では、東郷平八郎の国際法にのっとった拿捕命令に、清国兵は従わず撃沈したのが事実上の日清戦争の発端になっているのです。

つまり、中国側には一貫して国際法に対する認識不足、無知が現在まで続いており、それが国際的トラブルに発展し、偶発的な衝突が戦争につながった」

 

つづく

 

 

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