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『屁ナチョコ、無茶苦茶、おもしろ・デンデンムシ伝伝』――わが愛する天才・奇人・変人・凡人よ!?、集まれー

   

 

屁ナチョコ、無茶苦茶、おもしろ・デンデンムシ伝伝』
――わが愛する天才・奇人・変人・凡人よ!?、集まれー
 
前坂俊之
日本超人、天才・巨人、大物、秀才、賢人、名人、奇人、変人、金才、達人、怪物、魔人、不思議人、誇大妄想、怪人、鬼才、異才、偉才、曲者、普通人、平均人、凡人、鈍才、無才、愚人、愚者、バカ、阿呆、小心者伝、伝,伝、伝、金も伝、メシも伝、酒も伝、水も伝、電話も出ん、メールにも返事も出ん、舌も伝、口も伝、屁も伝、糞も出ん、ポケットからは1円も出ん、何も伝伝、本当に日本人にはおらんのじゃ,出ん出ん「デンデンムシ」じゃ。Japanese伝じゃ。
 
 人間にもいろいろ種類、タイプがあり、人はワンフレーズでさまざまなレッテルを他人に張りがちじゃ。たとえば天才だとか、超人、巨人、大物、秀才、賢人、名人、奇人、変人、金才、達人、怪物、魔人、不思議人、誇大妄想、怪人、鬼才、異才、偉才、曲者、普通人、平均人、凡人、鈍才、無才、愚人、愚者、バカ、阿呆、小心者……などいかめしい、金バッヂや看板、レッテルを張ってはみても、しょせん大半の人間は「沈香(じんこう)も焚かず、屈もひらず」=沈香とは熱帯の伽羅(きゃら)などのお香のことで、沈香を焚いて良い香りを放たなければ、臭い屁をひることもしない人。つまり、極めて平凡な人、平々凡々、普通人、目立ったり、特徴のない、いてもいなくてもよい無害な人、フツー人ばかりなんじゃ。
 
 だから、われわれは奇人が大好きで、尊敬のまなざしで見がちである。自分はとてもじゃないが、奇人のようなマネはできないからじゃ。
 
 奇人は誰からも注目され、愛されると同時に、凡人たちのアンビバレントな心情から白眼視され、仲間はずれにされ、抹殺されるケースもしばしばあるということじゃ。
 
 人の見かけは第一印象で九〇パーセントで決まるとか何とかの本がベストセラーとなっていたが、凡人九十八パーセント以上の中で、もともと少数派の奇人、変人がますます貴重品、骨董品、貴重動物化して、今や日本では特に絶滅種族と化しつつあるのじゃろうね。
 
 辞書を引くと奇人とは「性格や言行が普通とは異なってる人、変人」「世間一般に定着している行動様式から逸脱し、その他の人びとと異なっている者」とか、奇行は「通常の秩序や慣習を逸脱し、道理や常識から外れること」などと定義されている。
 
 通常、常識への反発、逸脱、非凡人への脱出というものは、強い意志の現れで、これは人間誰の心にもある気持ちだが、実際行動に移すかどうかが、凡人と奇人の違いなんじゃ。
 英語の「エキセントリック」とは変わり者、奇行、奇人の意味だが、既存の枠をはみだした『破格』の存在、という意味も込められている。フランス語の奇行(ビザール)は、イタリア語(ビザロ)の熱狂から来ているので、奇人は情熱の人、自由の意思の熱中、熱中する人、オタク、没入、没頭者を含む概念でもある。
 
 それゆえ奇行は人間の自由の根源にかかわるものであり、人間的である証であり、人間の本質を一番よく表す行為でもあるといえる。
 
 つまり、奇人とは奇行を行う人であり、奇妙な人、無茶をする愛すべき人、トホホの人、フニャ、フニャフニャラ、フニャラ、フナフナ人間……コリャなんじゃい、もっとマジメに考えろ、ハイ、すいません。
 
 では、えーと……奇人は凡人とは違ってエネルギーの人であり、自由な人であり、創造の人であり、既成の概念や秩序を否定して、常識に挑んでそれを逸脱しようとする奇想天外で非常識な破壊者(デストロイヤー)にも変身する人、トリックスター(道化師)でもあるといいましょうか。だから芸術家、創造人間、思想人間、革命家、アウトサイダー、科学者には奇人、変人が多いのも道理なんじゃ。
 
 もう少しやわらかく……もうちょっと説得力ある論旨の展開をすると、奇行の核心はその創造性、革新性にあるんじゃないかのう。
 
 奇人が既成の秩序に反逆して、バカの壁を飛び越えようとしている姿は何とも吹き出すようにおもしろい、発明王エジソンの、九十九パーセントの失敗が一パーセントの成功、発見、発明を生むに至る過程とそのハチャメチャ人生を見ていると、まさしく天才と奇人、バカ、奇行は紙一重を痛感するのじゃ。
 
 わしの大好きなモーツアルト(1756―1791)の生誕二五〇年が年前にあったが、モーツアルトは知る人ぞ知る糞尿愛好者(スカトロジスト)の典型的な奇人であったな。

その数々の名曲で現代人の癒しの音楽として最も愛されているこの天才の創造力が、スカトロジーの上に花開いた糞男だったとは、何とも愉快ではないかね。あの美しく軽快で夢想的な曲の創作意欲、天才性とは、頭の中では恋人のウンコやオシッコの姿を妄想して、ラブレターで必死にそれを願望するへンタイ心理と直結していたとは……トホホである。いや、これこそ正常なのよ。異常も正常もありはしない、どちらも人間に含まれている、大井か少ないかだけ、その成分比率が分裂、反応を起こして生のエネルギーへと転化する。

 
では、ここでクイズじゃ。
現代・屁学用語の基礎知識―へは世界共通の擬音語なのよ。
日本語の屁に相当するコトバを、文化先進国から拾ってみると、たいてい「ハヒフへホ」の五行音の中におさまっているんじゃ。
 
英語―ファート(FART)
ドイツ語―フルツ(FURZ)
フランス語―ぺ(PET)(略)
スペイン語―ぺド(PEDO)
ギリシャ語―ポルディ
中 国 語―ピィ(屁)
 
なんのことはない。いずれもおならの発射音から生まれた言葉なのよ。屁は肛門からのラッパ音、音楽、言葉はつまり「擬音語」なのじゃ。
 
「フェラチオ」 が、吹奏ポーズの連想から、ニッポンでは「尺八」、中国では「しゃお」、ヨーロッパでは「フルート」と俗称されていな。こと生理にかんすることは陽の東西の垣根は越えて、グローバル、ボーダレスが常識、言葉がその壁を築いているのよ。
 
 
ここで、新たな奇人の定義が生まれる。
 
    人はヘンテコだが異常ではない。
    人は趣味に没頭している。
    奇人は常に大マジメである。
    奇人は決して人をだまそうとはしない。
    奇人はユーモアのセンスをもっている。
    奇人は偶然の一致を大切にする。
    奇人は年齢より若々しく見える。
    奇人は普通の人より健康で長生きする。
    奇人は普通の人より幸福である。
    奇人は常に自由で理想に燃えている」と、

『変わった人たちの気になる日常』(D・ウイークス、J・ジェイムズ、草思社、一九九八年刊)にもあるな。

 
そして、わしは強調したいね。
 
『奇人は間違いなく偉人であり、この逆ではない。偉人は必ずしも奇人ではない。奇人のほうがエライ人なのである。また、奇人は毒にも薬にもなり、それゆえに「奇人は社会の解毒剤」「奇人は社会の清涼剤」なのであり、「奇人は癒しの人間」であり、「奇人が世界を制する」ことになるのだと定義したいのじゃ。
 
 ところで、日本の奇人パワーを追求した名著『日本番外地の群像-リバータリアンと解放幻想』(玉川信明編著、社会評論社、一九八九年刊)を忘れてはいけない。玉川は奇人をリバータリアン(自由人)と定義し、ダダイスト、ニヒリスト、無頼派、新戯作派、アウトサイダー、からノマド(遊牧民)までを含めて、明治、大正、昭和を代表する奇人約一〇〇人の略伝エピソードをつらねており、これは無類のおもしろさである。
 
 わしの考えもこれに近い。リバータリアンとは、徹底した自由を希求する自由人であると同時に、アナーキーな情熱と精神によって、通俗的な秩序への反抗者、反逆者となり、必然的に共同体に対する周縁人、境界人(マージナル・マン)、アウトサイダーにならざるを得ない。
 
 これにつけ加えて「奇人とは、稀人であり、貴人でなければならない」ということ。〝稀人″=まれびとであり、文字通り類例がなく、独創性がその精神、行動、生き方にも表れている。貴人は俗人に対するものであり、通俗性への嫌悪であり、精神的な貴族性でもある。
 
 この〝稀″と〝貴″は共同体におけると同時に、そのよって立つ思想性、行動性の両面においての位置関係でもある。決して群れず、孤独を恐れず、行動、思想において稀なるものがなければ、とうてい奇人とはいえないのじゃ。
 
 もともと、個人が確立していないわが国は奇人が生まれにくい環境であり、こうしたきびしい条件をつけてみると、奇人といえる稀人はいっそう少なくなってしまうんじゃ。
 
 同一性、均一性が高く、共同体の制約が強固で、異端が排除されるわが国の精神風土の中で、それこそ稀有の存在の奇人を取り上げたのが、本書の、そネライじゃ。
 
 本書では、有名人、著名人の奇行、奇癖、エピソードを抽出して紹介している。また、一人ひとりをその奇人たるゆえんを、完結した形で紹介していないことをお断りしておく。
つまり彼らの典型的な奇行や傑作なエピソードをそのまま抜きだしているん
じゃ。
本書でアトランダムに取り上げた奇人の中で、わし流の「ニッポン奇人ベストテン」をあげてみょう。奇人であると同時に、おもしろいエピソードが満載という条件である。
 
1.南方 熊楠
    2.出口王仁三郎
    3.山崎今朝弥
    4.稲垣 足穂
    5.内田 百聞
    6.永井 荷風
    7.岡 潔
    8.古今孝志ん生
    9.阿部 定
10.吉田 茂
 
本書で紹介するいろいろな人物のエピソードを読めばわかるが、明治、大正へとさかのぼるほど、奇人のスケールも大きく、行動もより壮大に、自由奔放になってくる。昭和という時代でとらえても、戦前に活躍した人物の場合は、そうした骨太さ、奇想天外のおもしろさを秘めているが、これが現代に近づくにつれ、スケールが小さく画花し、奇人は品薄になってきている。
 
 経済的な富裕化、世の中の安定と奇人の輩出は反比例する、といえよう。本書のエピソードに借金や貧乏の話が数多く出てくるが、貧しさこそ行動力に強靭なバネを与え、奇行と創造力の源泉になるのである。貧しさを駆逐した豊かな社会は、個性豊かな人間=奇人をも同様に駆逐し、画一化されたロボット人間を大量生産しているのである。
 
 かつて、作家、小説家といわれた人々はダダイスト、アウトサイダー、無頼派のレッテルをはられ、奇人たる要素に満ちていた。
 
ところが、今やある若手のベストセラー作家はせっせと多額の印税をマンション投資の財テクにつぎ込み、抜け目のないリッチな資産家の顔を合わせ持っているように、作家は作家でも今や「家を作る人」に転落しているのである。
 
 本書に登場するニセ札作家の三上於菟吉の放蕩無頼の酒色生活のほうが、まだましにみえる。

 

 戦後保守政治のドン、吉田茂がなぜ奇人なのか、ベストテンなのか、と思われる方もあろうが、ジョークの天才、その尊大さと隣り合わせの潔癖さ、精神の高貴さは、今流の腰の座っていない三流政治屋とは比べものにならない。まさしく〝稀人″であり〝貴人″そのものといえる。
 
 本書に御登場願った奇人、変人は、ある面では日本人の独創性、アイデンティティそのものであり、近年こうした人物が少なくなっていることは、逆に日本人の創造性が危機にひんしつつあるとみることもできる。
 
奇人とは「時代から外れた変人」に見えるかもしれないが、彼らこそ天に選ばれた人々なのである。
本書は絶版となった教養文庫版の中で、復刻の希望が多かった『ニッポン寄人伝』(社会思想社二九九六年版)を大幅に加筆、修正した新版『ニッポン偉人奇行録』(ぶんか社)です。
 
理屈はともかく、「奇人へなちょこ入門」といこうぜよ。

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