日本リーダーパワー史(823)『明治裏面史』 ★ 『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、 インテリジェンス㊳『日本史決定的瞬間の児玉源太郎の決断力と責任感➉』★『予は、全責任を自己一身に負担し、この責任を内閣にも、又参謀総長にも分たず、一身を国家に捧げる決心を以て熟慮考究の上、一策を案じ、着々これが実行を試みつつある。』
2017/06/15
日本リーダーパワー史(823)『明治裏面史』 ★
『「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、 リスク管理 、
インテリジェンス㊳『日本史決定的瞬間の児玉源太郎の決断力と責任感➉』★
『国難来る!』との情勢に、敢然と立ちあがった児玉源太郎の『日露開戦までの4ゕ月』の獅子奮迅の活躍と根回し、そのインテリジェンスについて、前回まで詳述した。そこで、触れていなかったのは戦費の調達、金融財政問題なので、今回はこれについて書くことにする。
この頃、日露開戦になった場合の財政問題について、心配する者は軍部でも少くなかった。明治36年10月16日、4日前に参謀次長についたばかりの児玉次長は、内相官邸へ参謀本部各部長を晩餐に招き、宴終ってから次のように談話をした。
ロシアの圧迫は日に日に激しくなっている。
帝国たるもの一大決心を以て起つ時がきた。ロシアの地位よりしてわが国をみれば、海軍力においてはわが国が劣る。
しかし、陸軍力においては、ほぼ同等なりと信じるが、ロシアはわが国より劣ると信じるかはとにかく、兵力においては、ロシアは充分の勝算を信ずることはできないと自覚するだろう。
唯一の頼みは、ロシアの財力が、われにまさっている一事であろう。
ロンドンにおける日本公債の下落の如き、主としてロシアの謀略によってである。その手腕や実に驚くべきである。われわれにはほとんどなし得ないところで、たとえなし得ても、その真似事たるに過ぎない。
わが外交がいたずらに警告、抗議をするだけで、一つも方策のとるべきものがないのに、比べれば、露国の術策たるや感心すべきである。
そもそもロシアの今日、国土侵略を敢えてするのは、遠く三百年来の国是に由来しており、わが国にして武力を以て起つも(戦争を開始するのも)、一朝にしてその国定を放棄するとは思えない。両国の戦争は遂に避けられないのである。
そして、帝国がこの戦争に費やすところ、これを一年間と見て8億円(当時の国家予算2億9000万円)と予定することが出来る。如何にしてこの軍費を調達すべきか。ロシアがのわが国を侮蔑するのは、つまりこの点にある。
我が国は弱点を凌ぐ工夫がなければならぬ。
予は、全責任を自己一身に負担し、この責任を内閣にも、又参謀総長にも分たず、一身を国家に捧げる決心を以て熟慮考究の上、一策を接じ、着々これが実行を試みつつある。
それは国内大会社、即ち郵船会社を始め、各汽船会社、鉄道会社等を説き勧め、各自進んで無償輸送をすること、これである。九州では石炭をロシアには売渡さない契約をしたと聞いた。
会社社長たちは、又大いに余の勧誘に賛同している。ただ株主の意向をどうするか気遣うのみである。固より政府は、輸送を無期限に無償で約束させようとするもものではない。一時支払いを延期するのみである。
戦争が止み、平和が回復するならば、少くとも通常配当以上の賠償をすることは政府の義務であろう。帝国にして万一敗戦すれば、各会社がたとえ、戦時に好配当ができても戦後の絶滅は免かれないであろう。
これを思えば、一時の支払延期の如きは忍ぶことが出来なくはない。このことを理解する者は、みな争って無償軍用に供するをことに甘んずるであろう。この方策が万一失敗すれば責任は余、一身にある。各部長はこのことを知らないことにしてもらいたい。
もって児玉次長の抱負と意気込みを見ることができよう。
(谷寿夫著「機密日露戦史」(原書房、1966年、76P)
関連記事
-
-
「Z世代のための日本リーダーパワー史研究』★『「電力の鬼」松永安左エ門(95歳)の75歳からの長寿逆転突破力①』★『昭和戦後の日本が敗戦によるどん底から奇跡の復活を遂げたのは松永安左エ門(95歳)が電力増産の基盤(水力発電ダム)と9電力体制を万難を排して実現したことで高度経済成長が実現した』①
2021/10/05「オンライン・日本史決定的瞬間講座 …
-
-
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』㉑「 日本か朝鮮を狙うのは有害無益なことを論ず」(申報)
『中国紙『申報』からみた『日中韓150年戦争史』 日中韓の …
-
-
「経済成長戦略には何が必要か」「武田薬品工業の長谷川閑史社長」「東レの日覺昭廣社長」の記者会見動画(3・14,19)
日本記者クラブ会見動画 「経済成長戦略には何が必要か …
-
-
『中国紙『申報』など外紙からみた『日中韓150年戦争史』㊺ 「日清戦争の勃発はロシアの脅威から」(英『タイムズ』)
『中国紙『申報』など外紙からみた『日中韓150年 戦争史』日中韓の …
-
-
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』ー『北清事変後の北京議定書(1901)で各国の軍隊は相次いで引き上げたが、ロシアは満州に居座わり、さらに朝鮮に侵攻し軍事基地を築いたため、日本は日露開戦に踏み切った』①『ロシアの満洲撤兵問題の推移』
『日本戦争外交史の研究』/『世界史の中の日露戦争』 『北清事変後の北京議定書( …
-
-
日本風狂人伝(25) 日本一のガンコ、カミナリオヤジ・内田百閒 のユーモア
日本風狂人伝(25) 日本一のガンコ、カミナリオヤジ・内田百閒 のユーモアじゃ …
-
-
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変④』★『連合国を救援するために日本が最大の部隊を派遣、参謀本部の福島安正情報部長が「各国指揮官会議」を仕切って勝利した』
明治150年歴史の再検証『世界史を変えた北清事変④』- 連合軍の足並みの乱 …
-
-
速報(114)『日本のメルトダウン』まとめ<世界はムチャクチャじゃ>『原発放射能』『先進国の借金財政』『中国情報隠ぺい』
速報(114)『日本のメルトダウン』 ★NAVERまとめ9本!<世界はムチャクチ …
-
-
★10「日本人の知の限界値」「博覧強記」「奇想天外」「抱腹絶倒」<南方熊楠先生書斎訪問記はめちゃ面白い②
「日本人の知の限界値」「博覧強記」「奇想天外」「抱腹絶倒」 ―南方熊楠先生の書斎 …
- PREV
- ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1053)> 『パリ協定を離脱した米国の孤立化』★ 『トランプの連続オウンゴールで中国が『漁夫の利』を占めた』●『PM2.5などの大気汚染、水質汚染、土壌汚染、汚染食物など史上最悪の 『超汚染環境破壊巨大国家」中国に明日はない。』
- NEXT
- ★『 地球の未来/世界の明日はどうなる』 < 米国メルトダウン(1054)>『ロシアゲート事件の議会調査で解任されたコミーFBI前長官が証言』★『落合信彦氏「トランプはFBIに追われ大統領職を放り出す」』●『 目の前に迫ったトランプ退任、ペンス大統領就任 予算教書で明らかになった"まさか"の無知無能ぶり』
