前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

日本リーダーパワー史(595)『安倍・歴史外交への教訓(3)ビスマルク直伝のメルケル『鉄血外交』を学ぶ–「1871年(明治4年)岩倉使節団へのドイツ・ビスマルクの忠告、大久保利通、伊藤博文はビスマルクに心酔し、明治国家を建設した

   

日本リーダーパワー史(595)

『安倍・歴史外交への教訓(3) ビスマルク直伝のメルケル『鉄血外交』を学ぶ–

「1871年(明治4年)岩倉使節団へのドイツ・ビスマルクの忠告、大久保利通、伊藤博文はビスマルクに心酔し、明治国家を建設した。

                                                            前坂 俊之(ジャーナリスト)

「1871年(明治4年)岩倉使節団の結論はなんであったのか、大久保利通、伊藤博文はビスマルクの忠告した「富国強兵政策」(そのための「鉄血外交」「インテリジェンス」をそのまま採用して、米英仏の憲法は日本にそぐわないとしてドイツ憲法を手本に明治憲法を作り、海軍建設は英米方式、陸軍建設をフランス方式からをドイツ流に切り替えたのである。

この時のビスマルクは大ドイツ国家統一をやり遂げた「ヨーロッパでの100年戦争と外交の複雑問題解決策」とその基本戦略を包み隠すことなく、国際社会に初デビューした東洋の小国日本にブリーフングしたのである。この内容をまず紹介したい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

  • そして日本外交の最新ニュースを見ると、 日本と中国、韓国は、来月1日の3カ国首脳会談開催、 日韓首脳会談を来月2日に開催する。

    日中韓首脳会談へ高官協議 共同文書文言で詰めの折衝http://www.sankei.com/world/news/151029/wor1510290029-n1.htm

⓶以下のニュースをみると国際外交、国際経済の主役は今や中国に移り、アメリカは脇役と化しつつある。主役の交代である。ヨーロッパだけではなく、日本もふくめて世界中から中華思想、世界の中心・北京、現代の中国皇帝・習近平へのあきれんばかりの朝貢外交が続いている。まさしく『会議は踊る、されど決せず』の1814-15年の「ウィーン会議」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E4%BC%9A%E8%AD%B0

の現代版である。

メルケル首相「カネ目当て」に冷たい視線 8度目訪中http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151029/frn1510291204004-n1.htm

 

中国がメルケル独首相を“爆買い”で歓待 エアバス130機購入

http://www.sankei.com/world/news/151029/wor1510290038-n1.html

 

フォルクスワーゲンCEOも訪中、メルケル独首相に説明へ-関係者

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NWT87U6TTDS301.html

欧州主要国の中国詣で続く=独首相、仏大統領が相次ぎ訪中へ―独メディア

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151026-00000007-rcdc-cn

では本題に入る。以下は相澤邦衛『明治日本の創造と選択』(叢文社、2004年)より

岩倉使節団一行は、アメリカ、イギリス、フランスについで1873年(明治6)3月、ヨーロッパ視察のなかで最も期待して、ドイツの首都ベルリンに到着した。

米英仏は文明の発達、科学技術の進歩には驚いたものの、議会中心主義、フランス民主革命には違和感を持ち、その点、ドイツはヨーロッパでは後進国であり、皇帝を中心とした立憲君主制の国家体制は、天皇主義の日本のモデルとなると考えた。

岩倉使節団一行は3月11日、ドイツ皇帝ウイルヘルムに謁見し、翌3日にはビスマルク首相、ドイツ陸軍参謀総長としてプロイセン陸軍をヨーロッパ最強の陸軍に育て上げたモルトケに会見した。モルトケこそ、明治陸軍参謀本部の首脳・川上操六、桂太郎、田村怡与造などがその教訓を受けて、その戦略の信奉者となり、日本陸軍をフランス式からドイツ式に転換させる原因をとなった人物である。

そして15日にはビスマルクから招宴された。ビスマルクは東洋の小国からやってきた日本の使節団を歓迎し好意を示し、懇切丁寧に一筋縄ではいかぬヨーロッパの現状とドイツがおかれている立場と外交戦の手の内を率直に話してくれた。その要点は

  • ①「世界の各国は表面上礼儀を持って交際を行っているが、内実は食うか食われるか、一時も油断のならぬ弱肉強食の世界である
  • ②秩序を守るために、一応ルールとしては万国公法が存在するが、それは自国に利があると認められるときにのみ守られるのであって、不利となれば平気で武力に打って出ることになる。
  • ③こうした国際社会にあって、小国が自らの国権、自主権を保持していくには軍事力を有していなくては生き残れない。英仏など強国は植民地を有し、武力を欲しいままにしており、諸国はその行動に苦慮している。
  • ④こうした英仏は信用できないのであって、日本にとって最も親睦な国が国権・自主権を重んずるドイツである。」

、熱意をもって語った。

小国プロイセンを類い希なる外交手腕と、名参謀総長モルトケの育成した軍事力とを巧みに使い分けて強国ドイツに育て上げたビスマルクは、万国公法のいいかげんさを指摘し、英仏など植民地帝国の恐ろしさを使節団に教え込んだのである。ビスマルクの「国際関係を維持していくには万国公法よりも力である」という言葉は岩倉使節団にとっては大きなショックであった。

後進国日本を欧米列強の中で、西欧の国際法である万国公法を遵守していくことが、生き残る道であると信じていた使節団には、西欧の国際関係の複雑系てきな現実を知らされ大きなショックをうけた。

明治政府首脳は国際紛争もルールにしたがって解決できると考えていた。

そこで国際公法こそ、弱小国の自立と独立を保証してくれると期待をかけていたから、ビスマルクの言葉は大きな衝撃であった。だが、それは現実に隣国の強大国・清国の食い荒らされて生き姿を見れば一目瞭然だった。

清国に対し、アへン戦争後、英仏露など列強は不法な要求を押しっけ、それを拒否すると今度は武力をもって要求を通そうとし、戦争に持ち込む、という悪辣な手段を使い分ける2枚舌、ダブルス、トリプルターンダードだった。

ビスマルクは結論的に忠告した。

「小国が自主権を守ろうとすれば、軍事面、経済面でその実力を培わなければならない。そして、強国の論理に対抗し、自国の経済、軍事力を増強し、対等に強国(イギリス、フランス、ロシア)と渡り合えるように臥薪嘗胆、自力つけること数十年、近年になってやっとわが国(プロイセン)はその望みを達成することができたのである。」

この大ドイツ統一の苦労話のビスマルクの演説を聞いて、一行はひどく感銘を受け、日本を強国にしなければならぬ、と心に誓ったのである。とりわけ大きな影響を受けたのが大蔵卿大久保利通と工部大輔伊藤博文であった。。

帰国後、大久保は日本のビスマルクを標榜し、のちに、伊藤博文も自らを東洋のビスマルク、となぞらえるほど彼に心酔し、「軍事力増強し、短時間で強国の仲間入りをさせたその「富国強兵」政策を日本も見習わねばならないーとその政策を踏襲したのである。

――――――――――――――――――――――――――――――

日本リーダーパワー史(592) 『安倍首相への提言(1)明治以来、最高の戦略家・児玉源太郎と後藤新平の黄金コンビの台湾統治のリーダーパワーに学べ

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/11225.html

 

日本リーダーパワー史(593)『安倍外交への提言(2)「 明治以来、最高の戦略家・児玉源太郎と後藤新平の黄金コンビの台湾統治の成功―そのしたたかな英国流の「植民地統治外交術」に学べ

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/11245.html

 

 - 人物研究, 現代史研究

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(10)記事再録/「日露戦争・戦略情報の開祖」福島安正中佐④副島種臣外務卿が李鴻章を籠絡し前代未聞の清国皇帝の使臣謁見の儀を成功させたその秘策!

日本リーダーパワー史(554)   2015/03/13&n …

no image
『リーダーシップの日本近現代史』(191)記事再録/百歳学入門(76)日本長寿学の先駆者・本邦医学中興の祖・曲直瀬道三(86歳)の長寿養生俳句5訓を実践せよ

    2013/06/20 / 百歳学 …

no image
速報(24)『日本のメルトダウン』37日目ー『EU,日本からの入港する船舶に放射線量検査を実施へ』

速報(24)『日本のメルトダウン』37日目 ◎『EU、日本から入港する船舶に放射 …

『Z世代のための日中韓外交史講座』⑲』★『中国革命の父・孫文を助けた岡山県人パワー』★『犬養毅(憲政の父)・秋山定輔(「二六新報」社主)坂本金弥(山陽新聞創業者)』★『坂本金弥邸宅(東京・赤坂)で『中国革命同盟会』が結成され、これが中国革命の発祥の地となった』

2011/02/04  日本リーダーパワー史(119)記事再編集    …

no image
日本メルトダウン脱出法(818)「視点:日本は「協調組合主義」と決別を=フェルプス氏」●「大企業に今なお根を張るー「学歴病おじさん社員」の量産システム」●「中国金融当局の無理解が世界の市場を混乱させる」●「中国がひた隠しにするPM2.5による死者の数 ー台湾の事例から推算されたその数は年間100万人」

    日本メルトダウン脱出法(818)   視点:日本は「協調組合主 …

no image
日本リーダーパワー史(351)12/16総選挙ー大正デモクラシー、大正政治のリーダーシップから学ぶ。日本の政治は百年前から進歩したか』

日本リーダーパワー史(351)   <12/16総選挙で選びたいリーダ …

no image
速報(334) ◎『暴落の予言に抗う日本国債―欧州の格下げ外国人投資家が殺到』◎『世界恐慌の危機―日本の教訓』ほか

速報(334) 『日本のメルトダウン』   ◎『暴落の予言に …

『オンライン憲法講座/<エピソード憲法史>④』★『現憲法はペニシリンから生まれた?>』★『毎日新聞スクープから始まった憲法草案!』★『天皇日蝕論』★『白洲次郎のジープ・ウェー・レター』★『『アトミック・シャンシャイン』★『憲法問題の核心解説動画【永久保存】 2013.02.12 衆議院予算委員会 石原慎太郎 日本維新の会』(100分動画)

   2006年8月15日「憲法第9条と昭和天皇」/記事再録 …

『「トランプ関税国難来る!ー『石破首相は伊藤博文の国難突破力を学べ⑤』★『トランプ・ウルトラマジック?・トランプサーカス?は成功するのか、失敗に終わるのか!?」

●ブルームバーグ、CNN,ロイター(4月10日付)などの報道によると、 トランプ …

no image
知的巨人たちの百歳学(183)/記事再録/『中国の沙漠を甦らせた奇跡の男・遠山正瑛(97歳)』★『やればできる、やらなきやできない。それだけのことですよ。世の中、口ばかりで行動に移さない人間が多すぎるんだねえ』

    2013/09/26 &nbsp …