日本テレビ「視聴率操作」に関する調査報告書の概要 2003,11,18
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●1000万円を流用して、工作費875 万を使う
1 調査委員会は委員長=江幡修三(弁護士)委員長代行=川上和雄(弁護士)▽
委員=山川洋一郎(弁護士)、原章(日本テレビ取締役、業務監査委員会委員長)山
本時雄(同常勤監査役)▽事務局員=北澤和基(同業務監査委員会事務局長)石井
修平(同審査室長兼法務部長)ら14名。
2 調査期間・調査に要した時間
平成15年10 月27 日-11月17 日。調査従事者=19 名。延べ時聞=およそ4545
時間。
3 <調査の結果>
3-1(当該プロデューサーの身上経歴)
当該プロデューサーは昭和36 年12月生、満41歳。一橋大学社会学部を卒業し、昭
和59 年4 月、日本テレビへ。その後の平成3 年11月、制作局(当時、その後編成局
にに改組)に配属され、スポーツニュースなどのディレクターを担当した。
その後、編成局に改組)へ異動し、「世界まる見えーエアレビ特捜部」ディレクターなど
を担当し、平成8 年2 月からは編成局として「24 時間テレビ」ディレクター、「奇跡の生
還-芸能人特別版」プロデューサー・ディレクター、「芸能人凶悪犯罪被害!」プロデ
ューサー・ディレクター、「生でハッスル挑戦TV」チ-フディレクターなど単発のスペシ
ャル番組を多数担当して、現在にいたっている。
3-2 動機に関する供述
当該プロデューサーは視聴率操作の動機を、「視聴率を取れば優秀と言われ会社
から評価されるので、(視聴率さえ上げれば何をやってもいい)という感覚があった。
きれいごとを言わずに視聴率重視を唱える社長の姿勢にも感銘を受けていた。
制作現場では、同僚らと「モニター機械のある家に行ってお願いすれば視聴率は上
がるんじゃないか」などと、冗談めかして話したこともる」などと供述している。
2
3-3 協力者等の有無
本件視聴率工作に関与し協力してきた者として、視聴率調査対象世帯の割り出し、調
査を担当した調査会社の担当者、架空、水増し支払の受け皿となった制作会社など
の代表取締役又は担当者、交渉役として視聴率調査対象世帯への交渉を担当した。
3-4 日本テレビ役員・社員の関与の有無
当該プロデューサー以外の日本テレビ役員・社員が本件視聴率工作に関与したとは
認められない。
3-5 視聴率操作の対象となった世帯
当該プロデューサーが製作会社社長の妻らを介し10数世帯に対し指定する番組の
視聴を交渉し承諾を獲得した世帯は合計6 軒であったと認められ、当該プロデューサ
ーは、これら6 世帯に対し、番組を指定して視聴を依頼し、承諾が得られた番組1 本
ごとに商品券1万円を交付する方法により視聴率操作を行ってきた。
3-6 視聴率操作の対象番組
本件視聴率操作の対象となった番組名としては日本テレビ7番組のほか他局6番組、
合計13 番組が判明し特定されている。
3-7 法的問題点(1)視聴率操作について
本件視聴率操作に対する刑法的評価を検討すると、視聴率操作行為自体を直接的
に処罰する規定はなく、放送法その他関係法令においても、この種の行為そのもの
に対する罰則規定は存在しない。
3-8 架空支払・水増し支払について
本件において日本テレビの実損額に相当する本件架空及14 件合計1007 万6585
円である。
当該プロデューサーが本件視聴率操作に用いた工作資金の総合計は875 万2584
円である。
当該プロデューサーがとりあえず自費から支払った金額は合計320 万円、水増し制
作費等からキックバックを受けた金額の合計は4-5 万円であり、本件における当該
3
プロデューサー個人の収支としては95 万円のプラスとなる。
また、民事法上は、上記実損額につき、会社が当該プロデューサーに対して損害賠
償請求権を有することになる。
4 <調査の総括>
本件に対する刑事訴訟法的評価としては、本件視聴率操作が視聴率調査会社の業
務に対する犯罪を構成する可能性があり、番組制作費等の架空水増し支払について
も刑法246 条1項の詐欺罪を構成する可能性があると思料される。
5 日本テレビ放送網株式会社に対する提言
当該プロデューサーが本件に対しては、会社の就業規則、その他の規則、従来の不
正行為についての前例などを参考にして厳正な処分がなされるべきである。
会社は、今回の不正行為が基本的には、ビデオリサーチ社1社のみによる視聴率を
唯一の基準としているテレビ業界の極めて不完全な現実を当然のものとして受け入
れていた点に最大の原因が存在している。
この点について十分な検討と対策を考慮しないままに、人事管理を行っていたことが
当該プロデューサーの行為の引き金になっていること、一方、制作現場における資金
の使途についての管理が十分でなく、これを厳格にすることは困難であるというこの
業界の悪しき常識を安易に肯定していたことなどが原因である点に責任を痛感すべ
きだ。
こん後は、これらの点を是正すべく、業界に働きかけるはもとより自社内部においても
より客観的かつ不可侵的な視聴傾向把握のための制度を導入するようにすべきであ
り、さらに人事管理の一層の適正化を進めるとともに、経済界の常識に従ってコーポ
レートガバナンスの観点からコンプライアンス体制とりわけ厳格な内部統制システム
の確立に努めるべきである。
(2)これをさらに敷桁(ふえん)すれば、本件視聴率操作が重大な背信行為であり、
テレビ業界に身をおく者として本件のごとく視聴率に人為的な工作を加える行為が断
じて許されるものでない。
番組および制作担当者に対する評価基準として、視聴率のほかには客観的かつ有
4
効な評価手段が存在しないとの現実が、本件視聴率操作に付け入る余地を与えたと
いう側面があることは否定できない。
今後同種事案の再発を防止し、視聴者およびスポンサーの信頼を維持していくため
には、これらの点についても現し、視聴者およびスポンサーの信頼を維持していくた
めには、視聴率以外に客観的評価の手段が存在しないという現実を安易に肯定する
ことなく、視聴率を超える合理的な評価手段を構築することに不断の努力を傾注すべ
きであり、テレビ業界全体とも連携のうえ、客観的で合理的な新たな評価基準の確立
に努める必要がある。
また、視聴率が民間会社一社の調査データに過ぎず、視聴率調査の分野において自
由な競争が存在しないことが、本件視聴率操作を容易にさせた側面があることも否定
できないところだ。
従って、この点についても安易に現状を肯定せず、上記分野における自由な競争と
今後の発展を視野に入れた施策を業界全体に働きかけて検討すべきである。
本件における番組制作費などの架空・水増し支払いがなされた背景には、大まかな
支払い方法があり、これをやむを得ないとするテレビ業界の悪しき慣行がある。
端数のない大まかな金額が記載された請求書が制作会社より提出され、これに対
する特段の調査点検なくして請求額どおりの支払いが行われるという現実は、一般
の市民感覚からも経済界の常識からも乖離(かいり)したものといわなければならな
い。
架空水増し支払いを行えない経理手続と点検システムの構築に努める必要があると
ともに、コーポレートガバナンスの観点からコンプライアンス体制のさらなる充実・強
化を図るべきである。
かかる内部統制システムが確立されない限り、同様事案の再発を防止することは
不可能であり、日本テレビ経営陣としては、この事実を真剣に受け止め直ちに行動す
るべきである。
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