前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

池田龍夫のマスコミ時評(83)◎『改憲、歴史認識に国際的非難-安倍首相の独断専行の危うさ』

   

  

  池田龍夫のマスコミ時評(83)

 

◎『改憲、歴史認識に国際的非難安倍首相

の独断専行の危うさ

 

ジャーナリスト 池田龍夫

 

 日本国憲法には、「わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に有することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」(中略)と明確に記載されている。

 

 近代の世界史が幾多の困難を克服して獲得した「国民主権」「立憲主義」「平和主義」」が近代憲法の本質である。憲法99条には「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と記されているが、〝憲法の悪用、暴走〟を阻止する条文だ。主権者たる国民に、権力を監視する機能を付与したと考えられる。

「96条」…ケーディス大佐の英断

 

毎日新聞5月3日付コラム「余録」が注目すべき問題点を指摘し、警告を発していた。

敗戦後、日本国の憲法草案づくりの責任者が、ケーディス大佐だったことは知られているが、当時の緊迫した様子を描いた要旨を参考のために供したい。

「最初の草案に、『10年間の改憲禁止条項と、改正には国会の4分の3の承認を要する』という厳しい条項があった。これに対して責任者ケーディス大佐は『後世の国民の自由意志を奪ってはならない』と主張。激論の末『国会の3分の2の賛成条項を確定した」というエピソードである。3分の2条項は、米国憲法とも同じである。〝改憲に縛り〟をかけているが、これこそ憲法典の優位性を示した証拠である。平たく言えば、「多数決で簡単に改正してはならない」という、憲法の根幹を示した条項である。

次いで「余録」は、「さて時は流れ、67年後の中で憲法記念日を迎え、安倍首相は今、憲法改正発議条項96条(3分の2の賛成)を過半数とすることに熱意を燃やしている。7月の参院選挙を勝ち抜くための策略だ。現在、自民党に同調姿勢を見せているのは,日本維新の会とみんなの党で、3党の得票が『過半数を超す』との戦略と推察できる」(一部補足)と警告している。

しかし「改憲を政治の争点にするのなら、先ず具体的改正点を国民に訴え、もし必要ならば手続きの変更を提起するのが筋ではないか」とも指摘している。まさにその通りで、国民の多くが「右旋回」の政治状況を危惧している。

 

近代歴史が築いた「国民主権」

 

朝日新聞5月5日付社説は改憲の危うさを次のように指摘していた。

「憲法には決して変えてはならないことがある。近代の歴史が築いた国民主権や基本的人権の尊重、平和主義などがそうだ。改憲を主張している安倍首相は、まずは96条の改正手続きを改め、個々の条項を変えやすくする。それを、夏の参院選の争点にするという。

そもそも憲法とは何か。憲法学のイロハで言えば、権力に勝手なことをさせないよう縛りをかける最高法規だ。『立憲主義』こそ、近代憲法の本質である。立憲主義は、国王から市民が権利を勝ちとってきた近代の西欧社会が築いた原理だ。これを守るため、各国はさまざまなやり方で憲法改正に高いハードルを設けている。米国では、両院の3分の2以上の賛成と4分の3以上の州議会の承認がいる。デンマークでは国会の過半数だが、総選挙をはさんで2度の議決と国民投票がある。

日本と同様、敗戦後に新憲法をつくったドイツは、59回の改正を重ねた(3分の2条項)。一方で、触れてはならないと憲法に明記されている条文がある。『人間の尊厳の不可侵』や『すべての国家権力は国民に由来する』などの原則だ。ナチスが独裁権力を握り、侵略やユダヤ人虐殺につながったことへの反省からだ」。

 

   『集団的自衛権』行使の思惑

 

毎日新聞5月5日付社説も、次のような問題点を挙げて、改憲への危惧を指摘している。

「自民党は昨年4月、憲法改正草案を発表したが、草案は国民軍を設置して、海外での武力行使を認め、集団的自衛権行使に関する憲法上の制約を取り払う内容になっている。自衛隊の海外での武力行使は、9条によって禁じられているというのが政府の解釈である。そのような抑制された組織として、自衛隊は国連平和活動(pkО)に積極的に参加し、数々の任務を成功させ、高い国際的評価を得てきた。それを今、変える必要はない。また、自民党の草案では、現在9条2項を削除し、『自衛権の発動』を盛り込んだ。『Q&A』は、この自衛権には集団的自衛権も含まれるとし、この結果、政府が9条によって認められないとしている『集団的自衛権の行使』が可能になると説明する。安全保障をめぐる議論は大いに歓迎する。しかし、今、9条を改正する必要はない」という結論だ」

 

「非常識な発言」と、各国も批判

 

 第2次大戦中の日本の行為が「侵略」なのかをめぐって、安倍首相の常識はずれの『歴史認識』が物議を醸している。

 4月23日の参院予算委員会での非常識な発言に国内外から批判が高まっている。同予算委で首相は「『植民地支配と侵略』について反省とお詫びを表明した戦後50年の『村山富市談話』に関し、侵略の定義は、学界的にも国際的にも定まっていない」と答えた。しかし5月8日の同予算委では、「我が国がかつて多くの国々、とりわけアジアの人々に多大な損害と苦痛を与えたという認識において、過去の内閣と同じ認識を持っている」と付け加えた。世論の批判を封じるための発言と思える。それは、前段で「侵略の定義は様々な議論がある。政治家として立ち入ることはしない」と、最初の発言と同じ趣旨のことを繰り返し述べているからだ。

 歴史認識関する暴言に対する懸念は中国、韓国だけでなく、米国や西欧各国からも、非難が広がってきた。

 

   前向きな「未来志向」を

 

 朝日新聞が5月9日付夕刊で「米議会調査局が5月1日に公表した日米関係に関する報告書の中で安倍首相の歴史認識について、『侵略の歴史を否定する修正主義者的見方を持っている』などと表記。地域の安定を混乱させ、米国の国益を傷つける恐れがあるとの懸念を生じさせている。また、安倍内閣の一部の閣僚は極端に国家主義的な見方を持っており、閣僚の選択は安倍氏の考えを反映しているようだ」と報じている。

 毎日新聞4月29日付朝刊も対外問題につき米国務省日本部長を2回務めるなど『知日派』で知られるジョンズ・ホプキンス大学のラスト・デミング非常勤教授が毎日新聞のインタビューを掲載している。  

 

「デミング氏は、安倍首相の歴史認識をめぐる発言について『米国を含むアジアの国々の関心は前向きな未来の協力関係を築くことで、歴史に焦点をあてることはできない』と指摘し、不必要に緊張を高めないよう求めたい。1995年の『村山談話』は、日本と韓国、中国を含むアジアの国々との和解に向けた重要な一歩だった。現在や将来の関係悪化につながるような歴史認識問題を不必要に増加させないかどうかに注意深くなる必要がある」と警告している。

 

日本弁護士連合会は3月14日、96条改正に反対し次のような声明を出している。

 

「慎重な議論が尽くされないまま簡単に憲法が改正されるとすれば、基本的人権の保障が形骸化される恐れがある。……現在の選挙制度の下では、たとえある政党が過半数を得たとしても,小選挙区の弊害によって大量の死票が発生する。その得票率は5割に到底及ばない場合があり得る。現に昨年12月16日の総選挙では、多数の政党が乱立して票が分散したため、自民党は、約6割の294議席を占めたが、有権者全体から見た得票率は3割にも満たないものだった。従って、議員の過半数の賛成で憲法改正が発議できるとすれば、国民の多数の支持を得ていない憲法改正が発議される恐れが強い」――傾聴に値する具体的な分析である。

 

 在京6紙の「歴史問題」報道を調べたが、朝日、毎日、東京3紙は「安倍暴言」を強く批判。読売、産経2紙が擁護的姿勢、日経は中道と思える内容だった。

 

 

 (池田龍夫=ジャーナリスト)

 

 

 - IT・マスコミ論 , , , , , , , , , ,

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
<待望久しい日本最大の珍奇書一挙3冊復刻出版>ー福富織部著「屁」(おなら)「褌」(ふんどし)、「臍」(へそ)の珍三部作

地震・津波・原発放射能の『四重苦』の大襲来で世の中・不安・恐怖・意気消沈中だが、 …

no image
日中韓コミュニケーションギャップ・ニュースー『日中関係に関するメディアの報道は客観的?日本は「そう思う」が2割、中国は7割』●『韓国大混乱、密告ありの接待規制法で悪習は浄化されるか』●『「韓国・平昌」冬季五輪も大混乱!開催まで1年4か月なのに「競技施設の工事代金払え」』●『中国の“火薬庫”、新疆ウイグル自治区、平静保つも当局の監視、締め付け常態化』●『  中国とはこんなに違う!日本の学校の驚くべき8つの事実―中国メディア』●『  世界が感激!日本のトイレが世界一きれいな7つの理由―中国メディア』●『韓国企業、日本の技術供与薄れ存亡の危機に…鉄鋼大手ポスコも新日鉄の技術盗用で苦境突入 』

日中韓コミュニケーションギャップ・ニュース 日中関係に関するメディアの報道は客観 …

no image
73回目の終戦/敗戦の日に「新聞の戦争責任を考える③」再録増補版『太平洋戦争下の新聞メディア―60年目の検証③』★『記者は国家登録制に、国体観念を養うために練成実施』★『戦う新聞人、新聞は弾丸であり、新聞社は兵器工場へ』★『朝日社報の村山社長の訓示『新聞を武器に米英撃滅まで戦い抜け』(1943/1/10 )』

「新聞の戦争責任を考える③」再録増補版『太平洋戦争下の新聞メディア―60年目の検 …

no image
野口恒のインターネット江戸学講義③『第1章 ウェブ社会のモデルは江戸の町民社会にあり(上)』

日本再生への独創的視点<インターネット江戸学講義③>   『第1章 ウ …

★『百歳学入門』(165)『中曽根康弘元首相は来年(2018年)5月で100歳を迎え、歴代宰相の中では最長寿となる。★『中曽根流の百歳長寿10ヵ条とは』『未来は考えないね。今を充実させていくことで精いっぱいだ。未来は神様が与えてくれるものだ』』★『 いつまで生きるということが、人生だとは思っていない。「人生、みんな途中下車するけど、 俺は途中下車しない』★『(長寿の秘訣に対して)キミ、それは使命感だよ』

    2016/11/02 &nbsp …

no image
人気記事再録/『ニューヨーク・タイムズ』で読む日本近現代史①ー日本についての最初の総括的なレポート<「日本および日本人ー国土、習慣について>

    2012/09/10 の記事   …

no image
★『地球の未来/明日の世界どうなる』< 東アジア・メルトダウン(1077)>『米朝開戦すれば!ーEMP攻撃についてのまとめ』★『アメリカ軍の非核型電磁パルス(EMP)・高出力マイクロ波(HPM)兵器の種類と構造』★『北朝鮮の「電磁パルス攻撃」は脅威か?米専門家の懐疑論』

  EMP攻撃によって、日本の高度情報IT社会は メルトダウンする 北朝鮮は9月 …

『Z世代のための日本戦争報道論』★『 戦争も平和も「流行語」と共にくる』★『80年前の太平洋戦争下の決戦スローガン(流行語)』★『人々は「贅沢(ぜいたく)は敵だ」→「贅沢はステキだ」●「欲しがりません勝つまでは」→「欲しがります勝つまでは」●「足りん足りんは工夫が足りん」→「足りん足りんは夫が足りん」』とパロディー化して抵抗した』

2014/10/18 記事再録 月刊誌『公評』<2011年11月号掲載>決戦スロ …

no image
『オンライン/新型コロナパンデミックの研究』-『国産スーパーコンピューター「富岳」が8年ぶりに世界一へ』★『コロナ防止対策の世界的な競争力ランキング(23カ国・地域の指導者の比較評価)で、日本の指導力は最下位に』★『『ガラパゴスアナログジャパン』の安倍政権の実行力はガラパゴス諸島に唯一生息する絶滅種族のゾウガメのノロイ歩みと重なって見えた』(7月15日)

『国産スーパーコンピューター「富岳」が8年ぶりに世界一へ』    前坂 …

『 Z世代のためのス-ローライフの研究』★『元祖ス-ローライフの達人・仙人画家の熊谷守一(97歳)のゆっくり、ゆっくり、ゆっくり』★『小学校の時、先生はいつも「偉くなれ、偉くなれ」というので、「みんなが、偉くなったら、偉い人ばかりで困るのではないか」と内心思った』

 2023/11/12の「」百歳学入門」の記事再録 <写真は5月29日 …