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池田龍夫のマスコミ時評(97)◎『東京五輪より、原発被災地復興が最優先課題』(10/21)

   

   池田龍夫のマスコミ時評(97)

 

 

◎『東京五輪より、原発被災地復興が
最優先課題』(10/21)

 

 

池田龍夫(ジャーナリスト)

  

 「2020年の東京五輪が決まって喜ばしい半面、東日本大震災の被災者を気遣う人も多い。資材、人材、機材が不足し、入札が度々不調に終わるという報道に接すると復興作業の困難さを認識する。そんな状況で五輪だからと大規模工事を始めたら、たちまち被災地での作業に支障をきたすだろう。そこで優先順位を間違えないでほしい。

 

震災からの復興を掲げる五輪ならなおさらだ。少なくとも被災地の生活基盤を整えてから五輪関連の工事を始めるのが筋だ。特に福島県の被害を思うとしのびない。首都圏への電気を生み出していた福島原発の問題を置き去りにして、お祭り騒ぎでは納得できない人も多かろう」――毎日新聞1018日付朝刊「みんなの広場」欄に掲載された主婦の投書だが、震災復興こそ最優先課題であることを忘れてしまっては困る。

 

        NHK世論調査に見る支持率、自民党361

 

 NHK101214日に実施した世論調査によると、安倍内閣支持率は先月より1ポイント下げて58%、不支持が26%と3ポイント増えている。自民党支持率では361%と先月より43%下落、民主党支持率524%より遥かに高いものの、「支持政党ナシ」が28%も増えて41・8%に上昇している。

 

「取り組むべき課題」では、原発への対応22%が最も多く、景気対策21%、社会保障問題18%、東日本大震災復興15%、財政再建11%、外交・安全保障6%となっており、やはり世論の関心は原発対策が強いことを示している。

 

        抽象的言辞を弄した安倍首相の施政方針演説

 遅ればせながら1015日から始まった臨時国会、活発な論戦を期待していたが、首相の施政方針演説は抽象的言辞を弄するだけ、民主党の質問にも迫力は感じられなかった。

 

 東京新聞1016日付社説は「首相が今回の演説でちりばめたのは『チャレンジ』『頑張る』『意志の力』『実行』という言葉だ。しかし、『意志の言葉』ばかり強調されると、心配になってくる。頑張ろうとしても頑張れない、頑張ってもなかなか成果を出せない、社会的に弱い人は切り捨てられても構わないという風潮を生み出しはしないか、と。意欲や能力のある『強者』だけがますます栄え、弱い人たちが軽んじられる『弱肉強食』の競争社会は、たとえ経済が成長しても、暮らしにくいに違いない。

 

それは、われわれが目指すべき『支えあい社会』には程遠い」と指摘。朝日新聞同日付社説でも「成長戦略、福島原発の汚染水対策、TPP交渉への取り組みなど論議を尽くすべき課題が多いのに、所信表明演説は拍子抜けするほど素っ気なかった。汚染水漏れには『国が前面に立って、責任を果たす』。TPP交渉では『攻めるべきは攻め、守るべきは守る』というわけだ。知る権利が焦点となっている『特定秘密保護法案』には一言も触れなかった」と、具体策を示さない首相演説を批判している。

 

          原発汚染水漏れは〝風評被害〟と強弁

 

 安倍首相の政治手法は前宣伝ばかりで内容は空疎、〝逃げの姿勢〟が目立つ。毎日新聞同日付社説もまた「汚染水への危機感薄い」との見出しを掲げ、次のように糾弾している。

 「『汚染水の状況はコントロールされている』という国際オリンピック委員会(IOC)総会での発言に批判が集まっていることへの反論でもあったろう。

 

首相は演説で汚染水問題に伴う風評被害に触れ『食品や水への影響は基準値を大幅に下回っている。これが事実だ』と断言した。首相はさらに『東電任せにすることなく、国が前面に立って責任を果たす』と強調したが、国と東電が中長期的にどう役割分担していくのか、具体的には語らず、あいまいだった」――。

 

 東京新聞は17日社説で民主党代表質問の迫力の無さを指摘、「海江田万里民主党代表は汚染水問題を追及したものの、原発の存廃には触れなかった。選挙公約に掲げた2030年代原発ゼロは諦めたのか。原発稼働の継続を、もう規定の路線と考えているのだろうか。……小泉純一郎元首相は脱原発路線に転換するよう、安倍首相らに政治決断を促している。

 

事故の補償や廃炉・徐染費用を含めれば原発の発電コストがより高くなることや、核のごみ(放射性廃棄物)の最終処分の困難さがその理由だ。それらは原発・エネルギー政策の根幹にかかわる重要な論点でもある。首相経験者の小泉氏が脱原発路線に転換した今こそ、安倍首相にただす好機ではないのか。汚染水問題の追及は最低限の仕事をしたにすぎない。それで政権との対決姿勢を鮮明にしたと気取られては困る」との批判はもっともである。

 

        「イメージ政治」に翻弄される危険

 

 安倍首相の政治姿勢に危うさを感じることばかりだが、世論はどう読み違っているのだろうか。その点、朝日新聞18日付朝刊オピニオン面に掲載された、石田英敬東大教授の「『安倍さん』という気分」という分析に啓発された。記号学・メディア論の専門家としての指摘が興味深かったので、そのさわり部分を紹介しておきたい。

 

 「首相の演説が五輪招致の決め手になったと賞賛されているが、人々が驚いているのは、首相の言葉ではなく、イメージでしょう。言葉を武器に人々の理性に訴え、説得を試みるのが本来の政治ですが、安倍首相が展開しているのは、理性ではなく人々の感性に働きかけ、良いイメージを持ってもらうことで政治を動かすことを狙った『イメージの政治』です。

 

イメージの政治において、私たちは政治ショーを見ている観客と化します。五輪招致演説で、汚染水漏れについて『アンダーコントロール』と発言しましたね。これは書き言葉に落とすとつじまが合わないが、招致に利したし、いいパフォーマンスだったと多くの人が判断している。スポーツを観戦する人が『最高のパフォーマンスを見せてくれ』と言うでしょ。それと同じです」との分析は、みごと的を射ていると思う。

 

(いけだ・たつお)1953年毎日新聞入社、中部本社編集局長・紙面審査委員長など。

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