百歳学入門⑬ <日本超高齢社会>の過去とは③・・・ <創造力は年齢に関係なし、世界の天才の年齢調べは>
百歳学入門(13)
<日本超高齢社会>の過去とは③・・・
<創造力は年齢に関係なし、世界の天才の年齢調べは>
<創造力は年齢に関係なし、世界の天才の年齢調べは>
前坂 俊之
(静岡県立大学名誉教授)
ダビンチから音楽家、カントまで
『まだまだあるよ。ミケランジェロがサン・ピエトロ大聖堂を設計したのは八〇代になってからだが、88歳で死ぬ前日まで彫刻をしていといわれる。91歳でなくなったピカソも絵画から、陶芸、彫刻、その融合とジャンルを広げて、一段と高い境地から3万点以上という驚くべき多作を、特にその晩年から死ぬまで多数の作品を残したことは知られているよね。
イタリア・ルネサンス期の巨人・万能の天才 レオナルド・ダ・ヴィンチが「モナ・リザ」を書いたのは五十四歳、ミケランジェロの最大の構想はレンブラントの傑作も五十歳以後のものである。日本でも広重、雪舟、鉄斎など、高齢において名作を残し、横山大観(1868―1958、79歳)の大作「生々流転」も55歳の時の作品ですよ。
音楽家はモーツアルトのような確かに、夭折の天才も多いですが、高齢でも名曲を作った作曲家も少なくない。ヘンデルは名曲「メサイア」を56歳で作り、ハイドンの傑作「創造」は六十四歳の時、トランンペット狂想曲も六十九歳の時。
ベートーヴェンの代表的な交響曲は、四十五歳から亡くなる五十七歳の12年間に、耳が全く聞こえなくなる中で連続的に創造力が泉のようにあふれ作曲しています。ヴェルディ(イタリアオペラ作曲家 88歳没)の「アイーダ」は六十歳すぎ、ワグナー(69歳没)の「パージファル」は68歳の時の作です。決して若いときに名曲が出来るものではなく、人生の円熟期にこそできるのです。
世界文学でも同じで、ゲーテが『ファウスト』の第二部を完成したのは、晩年で亡くなった82歳の翌年に発表している。セルヴァンテスが「ドン・キホーテ」を完成したのは57歳、イプセンも最高の戯曲を書いたのは60歳をすぎてからで、ユーゴー、ゲーテ、トルストイ、ヴォルテールらの文豪も晩年になるほど名作、代表作を書いています』
『ドイツの哲学者イマニエル・カント(1724-1804)は80歳で亡くなっていますが、日本の哲学にも一番影響を与えた人物ですよね。彼は毎日夕方、一定の時間に、一定のコースで町を散歩して、その道は「哲学の道」と呼ばれました。カントの散歩は時計の時間に合わせたように正確で1分もの狂いもないといわれたほど。森や、戸外に出て散歩して、気分転換すると頭もスカッと爽快になって、新しいアイディアや思索が次々に沸いてくる。
彼はもともと虚弱な身体で散歩は健康を保つために規則正しく継続されて、夜は午後十時の十五分前に仕事を止めて、必ず十時に就床して、睡眠もたっぷりとる生活を習慣化していたといわれています。彼の健康長寿の秘訣はこの散歩とその間の思索、熟睡だったのです。歩いて、散歩する。足と頭は連動して血液の循環が活発となって頭に刺激を与え、脳の働きを向上させるんですね。
そうした晩学、晩成によって、四十六歳でケーニヒスベルク大学の教授となり、五十七歳で『純粋理性批判』、六十四歳『実践理性批判』、六十六歳『判断力批判』の哲学三部作の名著はライフワークを著作しているんですね。
映画王・「喜劇の天才」とうたわれたチャーリー・チャップリン(1889-1977)も88歳と長寿ですが、晩年まで、元気で旺盛な制作欲を示して、63歳で名作『ライムライト』では音楽まで作曲し、68歳で『ニューヨークの王様』最後の作品は監督だけですが『伯爵夫人』〔カラー作品〕を78歳で完成させていますよね』
ラッセルは97歳まで活躍したぞ
『19世紀英国の数学者・思想家で世界最高の知性といわれたバートランド・ラッセル(1872-1970)は97歳で世界の思想家では最長寿でしょう。彼は貴族の家に生まれた若き天才で、ケンブリッジ大を最優秀の成績で卒業、すぐ同大の数学の教授になり、38歳から41歳にかけて数学での画期的な業績である『数学原理』(ホワイトヘッドとの共著)を発表します。第一次世界大戦後、ソ連を訪問、社会主義に幻滅してその未来を『ボルシェヴィズムの実際と理論』(1920)で予言、73歳で記念碑的な大著『西洋哲学史』(1945年)をまとめます。
七十八歳でノーベル文学賞受賞。ラッセルは年をとるほどに学問もより深く、円熟していきますが、70,80,90代とになるに従って、社会的な活動に傾斜し、核廃絶に体を張って抵抗します。私生活では八十歳で四回目の結婚を果たしたとおもうと83歳で、世界的に著名な科学者30人による核兵器廃絶のアピール「ラッセル・アインシュタイン声明」を発表。
88歳の時には、ロンドン・ハイドパークで核兵器を廃絶しない国家への市民的不服従運動を唱えて警察に逮捕され、一週間の豚箱にぶち込まれたが、一向にひるまなかった。
九十才を過ぎても、反戦平和運動に情熱を傾けて米国のベトナム戦争介入に反対し、告発キャンペーンを行っています。一九六八年八月、チェコ紛争へのソ連介入に抗議運動を展開した時、なんと九十六歳という驚異のエネルギーですね』
危機の宰相・チャーチルは「晩年の鉄人」
『ウィンストン・チャーチル(1874-1965、90歳)も同じです。まさしく、『ジョン・ブル』だな、食いついたら話さない闘志はスゴイよ。
彼は第2次世界大戦の勃発で、イギリスが危機に見舞われた際、70歳で国防相・首相にカムバックします。戦時内閣を率いて、戦争に勝利し、戦後は「鉄のカーテン」と冷戦でソ連と対決して80歳まで自由主義陣営を守った鋼鉄の意志とリーダシップーを持ち続けた、「晩年の鉄人」そのものです。彼はわれわれを鼓舞する名言を数多く残していますね。
「成功とは、意欲を失わずに失敗に次ぐ失敗を繰り返すことである。」
「成功は決定的ではなく、失敗は致命的ではない。大切なのは勇気を持ち続けることだ。」
「お金を失うことは小さく失うことだ。名誉を失うことは大きく失うことだ。しかし、勇気を失うことは全てを失うことだ。」
「悲観主義者はすべての好機の中に困難をみつけるが、楽観主義者はすべての困難の中に好機を見いだす。」
(以上、ウイキペディア引用)
関連記事
-
-
日本メルトダウン脱出法(813)「相場大荒れでまたも大損失!? 公的年金の「運用責任」は誰にあるか」●「2016年のテクノロジートレンドを展望する―人間とモノ、仮想とリアルのボーダレス化が加速する」●「個人の孤独感を助長する、ソーシャルメディアが持つ「矛盾」」
日本メルトダウン脱出法(813) 相場大荒れでまたも大損失!?公的年金の「運 …
-
-
『オンライン講座/平櫛田中(107歳)、鈴木大拙(96歳)の教え」★「六十、七十 はなたれ小僧、はなたれ娘、人間盛りは百から、百から」 平櫛田中』★『人間は過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる。老人は過去から、未来に生きるスイッチに切り換えなさい」(鈴木大拙)』
2017/11/28 百歳学入 …
-
-
『オンライン/明治史外交軍事史/読書講座』★『森部真由美・同顕彰会著「威風凛々(りんりん)烈士鐘崎三郎」(花乱社』 を読む➂』★『『日清戦争の引き金の1つとなった『明治19年の長崎清国水兵事件とは何か』』
2021/06/02 日本リーダ―パワー史( …
-
-
『オンライン/70歳からの晩年長寿研究講座』★「昆虫記(全10巻)を完成したファーブル(92歳)は遅咲きの晩年長寿の達人』★『晴遊雨学で庭の植物や昆虫を観察し、海でのサーフィンと魚クンと遊び学び、山をぶらぶら散歩して森林浴をすれば楽しさいっぱい、生涯健康/研究できるよ』
百歳学入門(79) ▼「昆虫記(全10巻)を完成したファ …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(265 )★『60,70、洟垂れ小僧、生涯現役、カヤック人生』★『定年なし、年齢差別なしの米国では65~74歳はベビーオールド(赤ちゃん老人)、75~84歳まではリトルオールド(小さい老人)、84~94歳はヤングオールド(若い年寄り)、95歳以上がリアルオールド(真の高齢者)』だよ。』★『シニアを襲う燃え尽き症候群 “仕事ロス”など吹き飛ばせ!』
2014/09/15 /百歳学入門(99)『百歳挑戦・鎌倉バカ仙人の …
-
-
『リーダーシップの日本近現代史』(90)記事再録/★『地球環境破壊、公害と戦った父・田中正造②ー 「辛酸入佳境」、孤立無援の中で、キリスト教に入信 『谷中村滅亡史』(1907年)の最後の日まで戦った。
2016年1月25日/世界が尊敬した日本人(54)記事再録 月刊「歴史読本」(2 …
-
-
『オンライン講座/独学/独創力/創造力の研究②』★『『日本の知の極限値』と柳田国男が評したー地球環境問題、エコロジー研究の先駆者・「知の巨人」南方熊楠のノーベル賞をこえた天才脳はこうして生まれた(中)』
2009/10/02 日本リーダーパワー史 (23)記事再録 『ノ …
-
-
『オンライン講座/日本歴代最高の戦略家は誰か>「日清・日露戦争の勝利の方程式を解いた川上操六(陸軍参謀総長、日本インテリジェンスの父)ですよ(1回→46回一挙大公開①
★日本リーダーパワー史(579)◎(再録)<日本歴代最高の戦略家>「日清・ …
-
-
『 Z世代にためのス-ローライフの研究』★『元祖ス-ローライフの達人・仙人画家の熊谷守一(97歳)のゆっくり、ゆっくり、ゆっくり』★『小学校の時、先生はいつも「偉くなれ、偉くなれ」というので、「みんなが、偉くなったら、偉い人ばかりで困るのではないか」と内心思った』
仙人、超俗の画家として生前も人気の高かった熊谷は没後,評価はますますうなぎのぼり …