前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

「プラゴミ問題」(プラスチックスープの海)ー今すぐにでも取り組まなければ「海洋国家日本」「魚食民族日本人」の明日はないと危惧する 

      2019/06/29

 

「プラゴミ問題」(日本海はプラスチックスープの海)                 

 

G20エネルギー・環境関係閣僚会合は6月15、16日、軽井沢で開催され、プラスチックごみ削減のため、日本は来年4月にもレジ袋を有料化し、国際的に取り組むためインドネシアにある国際機関「東アジア・東南アジア諸国連合経済研究センター(ERIA)」に情報集約の拠点を設置することなどが決まった。G20サミットではこの海洋プラスチックごみ問題を最大のテーマにしている。

私が海洋プラスチックゴミに注目したのは30年ほど前からボート、カヤックによる海釣りをしていて、青い海で次々にプラスチック、ペットボトルなどのプラゴミたくさんが漂流していることに驚いたことからだ。その量は30年間でうなぎ上りに増えており、逆に釣れた魚の数は減る一方。昨年から今年などはサバ、キス、カワハギ、イワシなどほとんど釣れなくなりっており「死滅していく海」の異変を実感していた。

先週、テレビで見た熱海魚市場関係者の話では、今年のカタクチイワシの漁獲量はなんと例年の0・4%にまで激減、仕入れ値も10倍にハネ上がった。マイワシも激減したが、全国の魚獲高は例年より増えており、寒い北海道、東北などで多く取れているという。2017年の海水温は観測史上最高を記録しており、中でも大西洋と南極海の水温が最高でタイセイヨウサバが大西洋のアイスランドでたくさん獲れるという異変が続いている。

米国の研究者によると、世界中の海洋には毎年、800万トンものプラゴミが浮遊しており、これまでに1億5,000万トンが堆積、2050年にはプラゴミの量は海にいる魚と同じ量まで増えるというから恐ろしい話だ。

プラごみは、5mm以下の細かい粒子に分解され、有毒物質を含む『マイクロプラスチック』にかわり、世界の海を回遊し、最終的に海生物、それを食べた人間の体内にも蓄積する。

高田秀重東京農大教授によると「プランクトンよりも漂流プラスチックの方が多い海域もあり、こうした海域はプラスチックスープの海という。海の生物たちはこのプラスチックを餌と区別がつかず、誤飲・誤食する」(高田教授のWebサイト)。

これが食物連鎖で最終的に人間の体内に蓄積される。

海だけではなく、陸上でも世界文化遺産の奈良公園の鹿が観光客のあたえるエサの入ったプラ袋まで食べて9頭も変死したという。その鹿を解剖すると胃袋から何と4キロもの茶色に変色したプラゴミが出てきた映像をテレビで見て私はショックを受けた。

世界のプラゴミの37%排出する中国、2位のインドネシアなど東南アジア諸国から棄てられた海洋プラゴミは海流によって日本に流れ着く。いわば日本の周辺海域は「ホットスポット(プラゴミの集積海域)」となっており、世界平均の27倍のマイクロプラスチックが漂っているというショッキングな報告も出ている。この方面の研究はまだまだ進んでおらず、総合的にプラゴミ問題を明らかにするためにインドネシアに、情報集約の拠点を「ERIA」を設置し、日本からの技術移転、開発も行う方針だ。

地球温暖化の問題はCO2の排出量の増大によって気温、海水温の上昇、南極北極の氷が解けてさらに上昇を加速するという悪循環に陥っているが、プラゴミ問題がこれに1枚加わってきた。日本はプラスチック製造大国であり、この便利で軽量であらゆる面に応用できるプラスチック材がいろいろな製品となって多用されている。日本人1人当たりのプラごみの発生量は、米国に次いで世界第2位。国内で1年間に使用されるレジ袋使用枚数は約400億枚、1人当たり1日約1枚を消費しているという。

レジ袋やペットボトル、プラゴミの利用、過剰包装を削減、ゼロにすることが、国連の掲げる持続可能な開発目標(SDGs)となっており、EUをはじめ各国で取り組みは日本をはるかに先行している。

2018年の国連環境計画(UNEP)の調査によると、すでにプラ製のレジ袋の規制をしている国は127カ国に上り、そのうち83ヵ国がレジ袋の無料を禁止している。EU各国ではフランスが2020年からレジ袋を含む使い捨てプラスチック容器の使用禁止を決定、21年からEU市場全体で使い捨てプラ容器を禁止する方針を打ち出している。カナダも使い捨てプラの禁止を21年から実施すると発表した。

日本政府は具体的な対策では買い物袋の有料化と共に微生物の働きで自然分解する「海洋生分解性プラスチック」の素材開発に取り組んでいるが、まだまだ分解率などの点で技術開発の見通しは立っていない。

パリ会議でのEU対米国の対立は尾を引いており、各国のプラゴミ事情も大幅に異なるため、今回の仲介役の日本側がまとめた共同宣言では、米を含む合意を優先し、有料化よりもプラゴミ削減を優先する方針は打ち出せなかった。

 

高田秀重東京農大教授はWebサイトで➀使い捨てプラスチックを削減する。②過剰な包装から脱却し、持続的な流通システムを作る③紙や木などのバイオマスを上手に使う技術や代替技術の開発を行う―などを提言しているが、国民的運動としてすぐにでも取り組まなければ「海洋国家日本」「魚食民族日本人」の明日はないとの強い危機感を抱いた。

 

 - 健康長寿, 現代史研究, 湘南海山ぶらぶら日記

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

no image
高杉晋吾渾身レポート(23)ルポ ダム難民⑦ ダム災害にさいなまれる紀伊半島ー和歌山県新宮、田辺本宮・・・

高杉晋吾レポート(23)   ルポ ダム難民 ⑦ ダム災害にさいなまれ …

『オンライン/東京五輪講座』★『ロンドン五輪(2012)当時の日本のスポーツと政治を考える』★『日本失敗の原因はスポーツ人と政治家の違い。結果がすべて実力のみのスポーツ人に対して、結果責任を問われない政治家、官僚の“無責任天国”なのが大問題!』

  2012/10/10  日本リーダーパワー史(333)< …

no image
日本リーダーパワー史(211)<無責任国家・日本の死にいたる病>―<良心の政治家はいないのか>ー『福島原発事故』で

  日本リーダーパワー史(211)   <無責任国家・日本の …

no image
『震度6、大阪北部地震発生、参考記事を掲げる②』―★記事再録『2016年4月の熊本地震から2ゕ月』(下)『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の『 巨大地震』の予知にことごとく失敗した。<ロバート・ゲラー東京大学理学系教授の正論>』

『地震予知はできない』ー政府は約3千億円を つぎ込みながら熊本地震まで38年間の …

no image
速報(80)『日本のメルトダウン』『<お勧め動画18本>福島の明日を予測するにはチエルノブイリの惨状を見て、長期対策を立てよ』

     速報(80)『日本のメルトダウン』 『< …

no image
日本リーダーパワー史(655) 『戦略思考の欠落』(48)日清戦争敗北の原因「中国軍(清国軍)の驚くべき実態ーもらった「売命銭」分しか戦わない➡中国3千年の歴史は皇帝、支配者の巨額汚職、腐敗政治で「習近平政権」も続いている。

日本リーダーパワー史(655) 日本国難史にみる『戦略思考の欠落』(48)   …

no image
 日本リーダーパワー史(785)「国難日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝利」した明治人のリーダーパワー、リスク管理 、インテリジェンス②『最強の外交力で日英米の協力でロシアとの外交決戦を制する

   日本リーダーパワー史(785) 「日本史の復習問題」 「日清、日露戦争に勝 …

no image
『リーダーシップの世界日本近現代史』(292 )★『鈴木大拙は1945年『日本亡国の3つの『日本病』を上げた。そして、約70年後、大拙師のいう『日本病』を克服できなかったために、 3/11原発事故を引き起こし、日本は再び沈没中である。

  2012/06/19  日本リーダー …

『Z世代のための最強の日本リーダーシップ研究講座(51)』★『日本最強の外交官・金子堅太郎のインテジェンス⑦』★『ルーズベルトの和平講和工作―樺太を占領せよ』★『戦争で勝ち、外交戦で完敗した日本』

日露戦争は日本軍の連戦連勝のほぼ完勝に終わったが、その裏には、川上操六前参謀総長 …

鎌倉歴史ウオーキングー800年前の面影を唯一とどめる鎌倉古道の名越切通しをぶらり巡礼す』★『名越切通し、第一切通し、ウグイスの初鳴きを楽しむ、道案内してくれる。緑の間から鎌倉武士が出てくる雰囲気だね。』『まんだら堂やぐら群(百数十基の中世の墓群)に強者どもの夢の跡、諸行無常を感じる』

  鎌倉歴史ウオーキングー800年前の面影を唯一とどめる鎌倉古道の名越切通し➀ …