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『知的巨人の長寿学』ー『憲政の神様』尾崎行雄(95歳)の生涯現役・生涯勉強・、健康法とは・・②

   

 
『知的巨人の長寿学』の尾崎行雄(95)に学べ②
<憲政の神様は92歳でも知的活動は旺盛、憂国の念は益々深く
 
 
 佐々木 清香(愕堂長女)の昭和二十四年(1949)一月頃の父(九十二歳)
 
 太陽と共に起きるという習慣は、十年前も今も変りはない。冬は六時から六時半までの問に起床・七時頃朝食。此頃は焼餅の入った味噌汁1杯(お餅は白餅より粟餅の方が好きである)野菜二品、玉子二個、トースト一片、チーズ少々。果物がすむと、入歯を洗って、長寿のお薬を1粒のんで最後にキャンデー二つお口に入れて食事が終る。
 
戦争前はハッカの入ったキャンデーがお好きであったが、戦争中どんなアメも手に入らなくなった時、服部さんがお砂糖でアメを作ることをおぼえて、此頃はクルミをこまかくくだいたのを入れて、とてもおいしく作るのでアメリカ製のキャンデーより、服部製のキャンデーの方がお好きらしい。
 
朝食が終って、新聞が来るまでのー時間余りの間は、手紙を書いたり、何か手記したり黙想にふけって居られる事もある。
八時過ぎに新聞が来ると書生が読んであげる。朝日、毎日、読売の三種で二時間余りかかる。補聴器を用いて、聞く方もよむ人もなかなか骨の折れる仕事である。まず社説から雑報、社会面まで。そのうち不必要なものは「よろしい」と大きな声でいう。
時時なかなか聞きとれない事もあって、大きな声で、何度も、何度も聞き返すので、そばで聞いて居る者はハラハラする。
 
 新聞がすむと間もなく昼食になる。
 
 此頃は昼食は十一時半、夕食は五時である。午前九時頃と午後二時すぎに、コーヒーか紅茶と、チーコレートを入れた牛乳一合をあげる。昼も夕も野菜二品(或は野菜汁、ソバガキ、ウドン、スイトン等のお腕に野菜二品)魚か肉一品、漬物と麦飯ごく少し。此頃は御飯が一番まずいと云われるので、服部さんが時々イナリズシや、焼いたオ人スビを作ってあげると「これはおいしい、おいしいと喜ばれる。
両方とも昔からの好物であるが、銃猟の時のお弁当がいつもそういうものであったから、その楽しかった思い出もあってお好きなのかと思って居たら、その頃の父と私いたオムスビは、新潟時代からの好物だったという事を、今度初めて聞いた。
 
お客様にもよく出したと云われるところを見ると、貧乏世帯のありに来客が多く、私の母が生きて居た頃は、食事時になると、どなたにでも、あり合わせで食事を申出しして居たから、どうせごちそうは出来るはずはないし、そういう物で間に合わせて居たものであろう。果物はみかんでも、りんごでも皮のまま洗ってあげる。みかんの上皮は大かたたべるし、たべ終った袋からは汁をしぼり出して、まず目の上から顔、手という順序でお化粧をする。眼のためには目薬よりよさそうだという。但し眼の中に入れるのではない、眼の上につけてこするのである。顔や手はツルツルしてクリームの代用になる。残った上皮は布袋に入れて風呂に入れる。りんごの皮ではジャムを作る。少しも無駄にしない。

 昭和二十年頃までは、庭掃除か読書か散歩か、少しも時を空しくはして居なかった父も、白内障がだんだんなって、二十一年の秋頃からは、大きい字の漢詩の本位はたまに見ておられるが、その他の読書は殆んど出来ないから、お客のない時は、牛後も晩も大かた習字をしておられる。

 庭掃除は今でも暖い間は時々する。庭掃除はほんとに好きで、自分の庭はかりでなく、知人の別荘を借りて住んで居る時でもするし、海岸でも山の中でも、人の行く所にゴミがあると、何処でも掃除したものである。

 それ故庭掃除の歌は沢山あって、いずれも世の中を清めたいという意を歌ってあるが、中でも得意なのは左の一首である。

    世の ちりを清めがてらに庭はけば  あきつ(蜻蛉)来てよる箒とる手に

 ァキッには、あきつしまの意をふくめたつもりで、日本国中が清めてほしいと自分にたよって来るという意味を、云いあらわそとしたもので、今から考えると思いあがった心であった、自分には先日作った「ヘチマヤPウの歌」の方がふさわしいと笑っておられる。

      ヘチマヤロウの歌

   人はみなそしりはすれど世のけがれ  洗い清めて うむ色もなし
 
ヘチマで洗うとよくおちるのに感心して、こんなによい物の事を、なぜヘチマヤロウなどというのだろうという所から、これはとかく評判の悪い私の運命によく似て居るとて作られた歌である。

国事に関しての心配さえなければ、今が一番幸せと思う。‥もはや何の慾望もないし、一生貧乏で苦しんだが、この頃は借金もないし、食物なども方々からいろいろの物をもらうから、少しも不自由しない、ぜいたくすぎる位だと云われる。

 ほんとに私達が聞くと、もっともだと思われる父の説を、世間の人は、雲の上の話の様にしか思わぬらしい。戦争前に父が云ったり書いたりしたものを、今読んで見ると、父が心配した通りの結果になってしまったので、今更ながら残念に思われる。

 終戦直後はその事に気がついた人も大分あったと見えて、新聞などでも大さわざして父の説をのせたものだが、ノドもと過ぎれば熱さを忘れるタトエにもれず、もはや此頃は又父の説を皆が取りあげぬようになったらしい。

 先日は余り皆が解らぬので、ひょっとしたら、自分が気ちがいになって間違った事を云っているのではないかと心配になりだし三晩も眠れたかった。然しいくら考えても自分の云って居る方が正しいという結論に達して、やはり世間の者が皆馬鹿になったのだと嘆いておられる。

解放の詔書を衆議員の公報で読んだ時も、これでいよいよ民主政治の破滅だと云って居られたから、ア、又今夜もお眠れにならないのではないかと心配しておったら、果して、「昨晩も余り残念で眠れなかった」と翌朝云われた。

何とかもう少し、世界人類のためとまでは行かなくともせめて日本国民のためを、ほんとに考える様な代議士が出て来ないものかと、側近の女達は、ひたすら祈ってやまない。

 
 

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