前坂俊之オフィシャルウェブサイト

地球の中の日本、世界史の中の日本人を考える

*

百歳学入門(192)「生死一如」「生者必滅」の『遺偶』★『仙厓は「死にとうない、死にとうない」の横に「ほんとに」』★『一休禪師は「なるようにしかならん。心配するな」★『「禅のクスリ」を2服召し上がれ』

      2018/02/07

百歳学入門(192)

前坂俊之(退愚 散釣人)

 

古来、人間は死を恐れ長生き、長寿を望んできました。

中国秦の始皇帝(BC259-210)は長生不老(不老不死)の妙薬を探し求めて、徐福に命じてたくさんの金銀財宝と、男女三千人を乗せた大型船10隻を大海に船出させたといわれます。

その1隻が和歌山に来ています。しかし、不老不死の仙薬は手に入らず、五十歳で一説には狂い死んだといわれています。

「生死一如」「生者必滅」といわれます。生きることは死ぬことであり、生まれたものは必ず死ぬ。生まれたかぎり、死ぬことは、誰でもわかっているようで、元気なうちはなかなかピンときません。

元気とは性欲、食欲、物欲、金銭欲、名誉欲など欲望がふつふつとわいている状態、つまり煩悩がめらめらと燃え上がり死を覆い隠し、また、本能的な死への恐怖のために、死から目をそむけて、生きており、気がつかないだけ、考えないようにしているだけのこと。

仏教の究極は生死の解脱(げだつ)であり、その境地に達すれば「悟り」を開いたということです。仏教や禅を学ぶのはこの生死の超越であり、悟りを求めてきびしい修行を積むのです。

生死の超越こそ禅の大課題であり、禅師は臨終にのぞみ、いかに従容(しょうよう)として死んでいったかが問われます。

その臨終に当たっての遺言を「遺偶(ゆいげ)」

といいます。

博多に当代随一とうたわれた禅僧・仙厓和尚(1750-1837)がいました。禅一筋に生き、戯画を描いては大衆に禅を説いて大変親しまれていたお坊さんでした。臨終が迫り、弟子が遺偶をお願いしました。

固唾をのんで弟子たちが見守っていると、なんと、「死にとうない、死にとうない」と書いたのです。

「立派な遺偶が出てくるもの」と信じきっていた弟子たちはびっくり仰天、「もうちょっと、気の利いたことを書いていただけませんか」と恐る恐る申し出ました。

「ああ、そうか」と仙圧はあっさりにうなずいて、筆を持ち直して、

「死にとうない、死にとうない」の横に「ほんとに」と書き足した

といわれます。

いかに高名な悟りきった禅僧であっても、これが本音かもしれません。それを臨終の床で酒脱にあらわして、仙圧の人気を一挙に高まりした。

生きることは死ぬこと、よく生きることはよく死ぬことです。現在の日本は「人生100歳時代」「世界一の長寿大国」になったことは確かですが、それぞれの自己努力によって長寿になった面と同時に、「延命医療」『長寿介護』の進歩、クスリづけなどによって生かされている寝たきり長寿も多分にあると思います。

本当に必要なことは、単に長く生きたという時間的長寿ではなく、質の点で当人の自己実現、生きがいを全うした充実した人生を送ることではないでしょうか。

私の大好きな一休さんの「禅のクスリ」を一服

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E5%AE%97%E7%B4%94

応仁の乱(1467 -77)によって焼け落ちた京都・大徳寺の持住を一休宗純が命じられたのは81 歳のときです。一休さんは寺の再建を果たすと、さっさとやめ、一四八二年に亡くなる直前に遺言状をしたためました。

その開封については厳しい条件をつけました。

「この遺言状は決して開けてはならん。しかし将来、大徳寺が危機存亡の淵に立ったときは、その限りではない。ただし、開封する前に役僧が集まって2週間、真剣に検討し、しかも名案が浮かばない場合にのみ開けてもよろしい

一休さんが亡くなって約百年ほどが経ちました。

大徳寺の存立にかかわる重大事件が起こりました。役僧が集まり、鳩首会談を繰り返しましたが、何度話し合ってもよい知恵、解決策は浮かびません。

ギリギリの瀬戸際に追い込まれました。

さらに一週間、遺言を守って、会議を連日続けましたが、ついに名案は浮かばない。万策尽き果て、最後の手段は一休大師の教えにすがるしかない、と全員一致で決まりました」

震える手で遺言状を取り出し、全員緊張しながら開封しました。

そこには次のように書かれていました。

「なるようにしかならん。心配するな」

<出典、前坂俊之著「百寿者百語」(海竜社、2008年、

226-230P)>

 - 人物研究, 健康長寿

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

  関連記事

★5日本リーダーパワー史(782)『明治政治史の謎を解く』★『秋山定輔が仕掛けた日露戦争の引き金となった前代未聞の奉答文事件の真相」

★5日本リーダーパワー史(782)― 『明治政治史の謎を解く』 ★『秋山定輔が仕 …

no image
日本の最先端技術「見える化」チャンネル/「2015国際ロボット展」(12/2)ーロボット研究の世界的権威・石川正俊東大教授が世界最速の 「Dynamic Compensation」(動的補償)を語る。

日本の最先端技術「見える化」チャンネル ☆「2015国際ロボット展」(12/2ー …

no image
日露300年戦争(1)-『徳川時代の日露関係 /日露交渉の発端の真相』★『こうしてロシアは千島列島と樺太を侵攻した』

徳川時代の日露関係     日露交渉の発端(ロシアの千島進出と樺太) 以下は『日 …

no image
   日本メルトダウン( 979)『トランプ米大統領の波紋!?』ー『2017年に「トランプ大暴落」は起きるのかー 「トランプショック」の本番はこれからだ』●『米国自動車市場を襲うトランプリスクの暗雲 日系メーカーは「米国一本足」で大丈夫か』●『対トランプ外交。安倍政権が主導権を握るための交渉術を教えよう 実は、アベノミクスに興味津々!? 』●『日本経済、トランプの政策で「好循環が逆回転」のシナリオ』●『トランプ大統領誕生は、日本がアジアの主役になる絶好のチャンスだ 自分の手と足で、考えるべき時が来た』●『日銀の極秘レポート入手! 株価1万3000円割れも… 衝撃の試算結果 日本経済「12月ショック」に備えよ』

   日本メルトダウン( 979) —トランプ米大統領の波紋!? & …

★『明治維新から154年目、日本で最も独創的,戦闘的,国際的な経営者とは一体誰でしょうか(❓) <答え>『出光興産創業者・出光佐三』でしょうね。 かれのインテリジェンス、国難逆転突破力、晩年長寿力 に及ぶ大経営者は他には見当たらない』★『「海賊とよばれた男」出光佐三は石油メジャーと1人で戦った』

    2016/08/20  日本リー …

no image
『F国際ビジネスマンのワールド・カメラ・ウオッチ(103)』「70歳からのパリぶらぶら散歩はステキ!」③―街中を歩くと、 微笑はモナリザだけではないな、と感じました。妙齢のご婦人が微笑で返して来るのです>

 2015/05/12  『F国際ビジネスマンのワ …

知的巨人の百歳学(113)ー徳富蘇峰(94歳)ー『生涯現役500冊以上、日本一の思想家、歴史家、ジャーナリストの健康長寿、創作、ウオーキング!』

2018/11/30     2018/12/01 …

no image
日本リーダーパワー史(451)「明治の国父・伊藤博文が明治維新を語る③」 明治の奇跡「坂の上の雲」の主人公こそこの人

      日本リーダーパワー …

no image
百歳学入門⑲ <日本超高齢社会>百歳元気長寿者リスト②

       &nb …

百歳学入門(170)長崎でシーボルトに学び、西洋の植物分類学をわが国に紹介した伊藤圭介(98歳)ー「老いて学べば死しても朽ちず」●『植物学の方法論ー①忍耐を要す ②精密を要す ③草木の博覧を要す ④書籍の博覧を要す ⑤植学に関係する学科はみな学ぶを要す ⑥洋書を講ずる要す ⑦画図を引くを要す ⑧よろしく師を要すべし』

 百歳学入門(170) 長崎でシーボルトに学び、西洋の植物分類学を わが国に紹介 …