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日本リーダーパワー史(580)『スーパーマン・『イチロー(42)』の去就に注目ー『打ってほめられるよりも、打てなくて騒がれるようになれ』●「「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道」(イチロー名言)

      2018/11/21

 

                                    日本リーダーパワー史(580)

『スーパーマン・『イチロー(42)』の前人未到の挑戦はどこまで続くかー

『打ってほめられるよりも、打てなくて騒がれるようになれ』

「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道」(イチロー名言)

『世界記録を作ることは超難しい。その記録を伸ばすことは超超難しい』

      前坂俊之【ジャーナリスト)


『勝ってほめられるよりも、負けて騒がれるようになれ』という有名な言葉がある。

相撲史上に残る双葉山の69連勝。―1939年(昭和14)1月15日。70連勝を目指して躍進する双葉山、出羽一門の新鋭・安藝ノ海が破ったのである。
「双葉敗る!双葉敗る!双葉敗る! 双葉、70連勝ならず!」と新聞の号外が乱れ飛び、全国を震撼させた。この時、大金星に意気揚々と引き揚げてきた安藝ノ海に出羽の海親方や、入門の時世話になった藤嶌からは、「勝って褒められるより、負けて騒がれるようになれ」と諭されたのである。
 

イチロ―の来季の去就が注目されている。まさしく『だめで騒がれる選手」の筆頭なのである。

【MLB】15年目自己ワーストのイチロー、通算3000安打へ来季契約が最大の障害に
http://news.livedoor.com/article/detail/10645694/


別の記事もある。

 

「天才・イチローの誕生秘話」

2010年9月、イチローは10年連続200本安打の大リーグ(MBA)新記録を作った。あの小さな体で、打撃眼、打撃技術、俊足をフルにいかした内安打という「イチローマジック」を量産し打撃王に輝いた点では、まさに「打撃の発明王」という名がふさわしい。

「天才とは一パーセントのひらめきと99パーセントの努力である」(エジソン)そのものなのだ。

イチロー(本名は鈴木一朗)は昭和48年(1973)10月、愛知県西春日井郡豊山町生まれ。小学三年生から、一年間全く休まず、360日少年野球に明け暮れ、夜は父と近所のバッティングセンターで時速140キロのボールを打っていた。中学でも200球以上の打ち込みを毎日欠かさなかった。愛工大名電高校で平成2年に甲子園に左翼手として出場し、同4年ドラフト4位でオリックスに入団した。

 

「音楽の英才教育に一万時間」という法則 がある。

物心ついた幼児から一日3時間、10年間休むことなく稽古すれば、約1万時間の練習になる。ピアノやバイオリンの世界コンクールに入選する人の多くが、この手の若き音楽家である。イチローはこのスポーツマンの部類で、ダントツの世界新記録を作ったのである。

日本の武道をさかのぼれば、宮本武蔵が『五輪書』で強調した「鍛錬」という言葉が思い浮かぶ。

『鍛とは千日(3年間)の稽古、錬とは1万日(30年間)の毎日欠かさずの練習』なのである。

「野球道―アメリカの舞台へ」

イチローの野球道は日本刀をバットにかえた剣豪・宮本武蔵の生まれかわりをと思う。オリックス入団3年目の平成6年(1994)からパリーグ首位打者を7年間続けて、タイトルを総なめにして念願の大リーグに挑戦する。

2001年に入団したマリナーズのキャンプでは「日本の野球は3Aクラス。イチロの振り子打法でヒットが打てるのか」と監督から疑問視されたが、いざフタを明けると、いきなりア・リーグ新人王、首位打者(3割5分)、盗塁王(56回)、新人最多安打記録(242本)の鮮烈なデビューを飾った。

それから10年。「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道」(イチローの名言)を証明し、次々に金字塔を打ち立てた。

2004年には、1920年にジョージ・シスラーが記録した年間最多安打記録257本を更新して262本安打という大リーグ記録を塗りかえる。2010年には連続10年の200本安打達成と記録づくめである。

もともと、MBAベースボールはベーブルース、タイ・カップ、ハンクアーロン、ボンズらの西欧や中南米出身者の肉体的に優れた選手たちのホームランを競うパワースポーツだったが、そこにイチローはスピード、テクニック、頭脳、ストレッチを加味して、日本の「武道」の進化系の「野球道」を吹き込んだ。

「天才バッターは努力・継続の人」

世界記録を作ることは超難しい。その記録を伸ばすことは超超難しい。至難の極致は10,20年と連続してトップを維持することで、肉体的には非力なイチローは宮本武蔵流の「努力の継続、継続、30年継続」で野球道の頂点に立った。彼の人生の不動の指針の武蔵流の「鍛錬」なのである。

 

バッターボックスに入る前に必ずおこなうヒザの屈伸、足腰の筋肉のストレッチ、バットを垂直に立てる一刀流の構え、という不変のイチロー流儀は、人間の生き方、仕事術にも応用できる方法論である。けがをしない身体の入念な管理と筋肉ストレッチを毎日欠かさない。超高齢化社会で『寝たきり』『認知症』のお年寄りの体力作りにも広く応用できるのである。

イチローの指針10ヵ条件は大いに参考になる教訓である。

  • シーズン休まず150試合に出場するように心がける。
  • ローブその他の道具の手入れを丁寧に毎日欠かさない。
  • 合前後の入念な筋肉トレーニング、バッティング練習も30年欠かさない。
  • カレーを常食にする。

⑤(打率でなく)ヒットを一本増やしたいとポジティブに考える。そうすれば打席に立つのがたのしみになる。

⑥何かを達成した後は気持ちが抜けてしまうことが多いので、打った塁上では『次の打席が大事だ』と思う。

⑦自分の持っている能力を活かすことができれば、可能性が広がる。

⑧打てない時期にこそ、勇気をもってなるべくバットから離れるべき。

⑨打線が苦しいときには、守備とか走塁で流れをつくるのが野球の基本。

⑩小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道。

あれから5年、マリナーズからヤンキース(2012-2014)、マイアミ・マリーンズ(2015-)に移籍したイチローはすでに42歳となった。42歳といえば多くの選手が現役を引退する年齢をとっくに過ぎている。ライバルのヤンキース・松井秀喜選手は2012年に、38歳で現役を引退した。しかし、マーリンズでのイチローの活躍は続いている。

イチローは、マリナーズの本拠地セーフコ・フィールドなどにも設置していた鳥取のトレーニング施設「ワールドウィング」開発の8つのトレーニングマシーンをマーリンズにも持ち込んでいる。関節などの柔軟性を高め、肩甲骨や骨盤部分に刺激を入れる『イチロ―流』のストレッチは毎試合前に欠かさず続けているのだ。

この『よき生活習慣』が全盛期の圧倒的なスピード、「レーザービーム」を生み出す強肩を、今なお維持している要因なのである。

「継続こそ力なり」「初心貫徹」「一心不乱」「鍛錬」によってイチローは前人未到のメジャー記録を更新し続けている。

8月15日には日米通算4193安打とし、メジャー歴代2位、タイ・カッブ(タイガースなど)の通算4191安打を日米通算で超えた。歴代トップのピート・ローズの持つ4256安打まで、あと63本と射程距離にとらえた。

来年には達成できる数字である。

8月25日にはMLB史上81人目となる通算1万打席に到達した。15年での1万打席は、MLB最多安打のピート・ローズ氏が達成したキャリア14年目に次ぐスピード記録である。

8月31日には日米通算2000得点を達成した。イチロー選手はオリックス時代に658得点、メジャーで1342得点をマークし、日米通算をメジャー記録に相当すれば歴代8位となる。

メジャーの記録を一体どこまで伸ばすか、『スーパーマン・『イチロー』の活躍が楽しみだ。

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