高杉晋吾レポート②東北関東大震災で、ギネスブック世界一認証の釜石湾口防波堤、津波に役立たず無残な被害①
2011年3月22日
ギネスブック世界一認証の釜石湾口防波堤、津波に役立たず無残な被害<仮説河川・海に巨大構築物建設の危険性を問う>①
高杉晋吾(フリージャナリスト)
釜石湾の巨大津波
想像を絶する巨大地震と巨大津波、この被害の中で今、社会的注目は東京電力の福島原発に注がれている。もちろん、この問題は注目されてしかるべきだが、もう一つ、その陰に隠れているが、環境を考える我々にとっては注目すべき事件がある。
それは釜石港の湾口に作られて湾口防波堤事件である。
釜石港に建設された湾口防波堤は海中に隠れてその全容は見えないが、この防波堤は中央部に大型船の航路として300メートル幅を確保し、その両端に北堤990メートル、と南堤670メートルをハの字型に配置し、最大水深が63メートルに及ぶ世界一の水深を持った巨大構築物である。
その巨大さは2009年9月、ギネスブックに認定され記載されているほどである。
この世界一の巨大なる湾口防波堤の狙いは、釜石市が明治三陸地震津浪、昭和三陸地震津波、チリ地震津波という災害をまともに受けて多くの人命や建築物の被害を受けている経験から明治29年三陸大津波の規模の津波を防ぐことができるという狙いで規模を定めて最新の技術を駆使して建設され2009年3月に完成したばかりの最新鋭防波堤であった。
しかし今回の巨大津波はこの最新鋭の湾口防波堤を乗り越えて釜石市に巨大なる災害を与えた。この問題は地球環境時代の今日、何を物語っているのだろうか?
世界一の防波堤、無残、
市民がこの防波堤に期待するものは非常に大きかった。当時の期待を裏書きするものとして釜石港湾事務所の喜びと期待の『百年の守り』という文章と歌を紹介しよう。
「釜石港湾事務所では、平成18年7月26日、釜石港湾口地区防波堤建設における最終ケーソンを据え付け、これにより津波防災機能をほぼ発揮できるようになりました。
(注、ケーソン=防波堤などの水中構造物の基本体として使用され、地下構造物を構築する際に用いられるコンクリート製又は鋼製の大型の箱のこと)
(注、ケーソン=防波堤などの水中構造物の基本体として使用され、地下構造物を構築する際に用いられるコンクリート製又は鋼製の大型の箱のこと)
これまで釜石港は、幾度となく大きな津波災害に見舞われ、尊い人命、財産、そして、暮らしが一瞬のうちに奪われてきました。その都度、人々は懸命に立ち上がり、この釜石の町を支えてこられました。
東北地方整備局としても、少しでも地元の力になりたい一心から、昭和53年(1978年)より湾口防波堤の整備を着手してきました。以来、防波堤としては世界にも例を見ない大工事となり、大量な資材の供給先確保にはじまり、新たな設計思想の導入、港の機能を損なわない工事方法など、様々な工夫を積み重ねながら、地元の理解・協力の元、今日を迎えることができました。
釜石市は、我が国近代化の先駆けとなった鉄の町として貢献し続けるだけでなく、虎舞などの伝統と新たな文化(釜石よいさ、トライアスロン等)がほどよく溶け合い、今後とも益々の発展が期待されるところであります。
さて、今回の湾口防波堤を記念し、職員による記念歌「百年の守り」を製作しました。より安心した中で、これまで以上の釜石の歴史を刻む一員として、言葉と音を重ねたものです。この歌を通じて、より一層、釜石市の魅力が内外に伝われば本懐であります。
さて、今回の湾口防波堤を記念し、職員による記念歌「百年の守り」を製作しました。より安心した中で、これまで以上の釜石の歴史を刻む一員として、言葉と音を重ねたものです。この歌を通じて、より一層、釜石市の魅力が内外に伝われば本懐であります。
《百年の守り》
光放ち紺碧に浮かび上がる 沖を見据えてじっと静かに構える
幾多の悲しみを乗り越えて今 百年の安心が積み上がる
幾多の悲しみを乗り越えて今 百年の安心が積み上がる
(高杉コメント、私は、この歌の作者が「百年の安心」というとき、確かに三陸の人々の思いが込められていると感じる)
世界に誇る深さ見つめて 慈悲深い大観音が佇む
海の砦の懐の中で サカナたちが群れをなす
※鐵の釜石を守る 暮らしを守る 人びとの未来を守る
海の砦の懐の中で サカナたちが群れをなす
※鐵の釜石を守る 暮らしを守る 人びとの未来を守る
以下は略すが、私は、この歌の作者も釜石市民の心からの期待も当然の願いであろうと思う。そういう希望は持つべきだ。
しかし願望と現実はあまりにも違う。百年どころか完成してから、僅か二年で其の願望は吹き飛んでしまった。
それが厳然たる事実である。なぜだろうか?厳然たる事実に立って間違いのない視点で「なぜだろうか?」と総括する必要がある。
それが厳然たる事実である。なぜだろうか?厳然たる事実に立って間違いのない視点で「なぜだろうか?」と総括する必要がある。
湾口防波堤が役立たずだった事実、「無残」と表現した東京新聞
まず、東京新聞の報道からみてみよう。(東京新聞2011年3月14日朝刊)。
超巨大地震による超巨大津波はギネスに認定された世界一の防波堤も軽々と乗り越えた。
被災した岩手県釜石市にある釜石港湾口防波堤。港に設けた水深63メートルの防波堤を乗り越えた津波は、釜石市の市街地を襲った。研究者らは『今後の大地震に備えた検証が必要」と口をそろえる。
釜石湾は明治三陸地震津浪、昭和三陸地震津浪、チリ地震津波と三回の大津波に襲われ
そのたび犠牲者を出してきた。そのため、1977年に湾口防波堤計画が決まり、津波対策の数値シミュレーションや模型実験などの各種調査を重ねて82年に着工。2009年3月に完成した。
関西大の河田恵昭教授《防災、減災》は
「高さ60メートル超えるダムが水中にあると考えてもらえば良い」と説明する。防波堤は二か所あり、北側が990メートルの長さ、南側が670メートルの長さで、ハの字型に配置され、その間に300メートルの開口部分があって津波の流水量が調節されるようになっていた。
海洋開発研究機構地震津浪・防災プロジェクトの金田義行プロジェクトリーダーは、釜石市の沿岸部の家の間を縫うように進む津波の映像に衝撃を受けたという。
「M9と云う地震による津波が想定外と云うのがまず第一。しかし湾口防波堤がどこまで機能したのかの検証が必要だ。
情報を早急に集める必要がある。』と指摘する。海底の地滑りや、液状化などが威力を大きくした可能性があるという。
情報を早急に集める必要がある。』と指摘する。海底の地滑りや、液状化などが威力を大きくした可能性があるという。
「津波を大きくした要因も踏まえ今後の防潮堤の設計に生かしていかなくてはいけない」と話す。
京都大学の間瀬肇教授(沿岸災害)は、『湾口防波堤がどれほど効果があったかを調べるには、今回の津波がどこで何メートルだったかを知る必要がある』という。
通常、二メートルの津波では、家屋が損傷して船が動き、4―6メートルの津波であれば、家屋がつぶれて人命が喪失するといわれている。今回も二メートル以上の津波が防波堤を超えて行った可能性がある。
「ただ防波堤がなかったら大きな津波がそのまま押し寄せたはず。いずれにせよ、津波をどれだけ防げたかについては今後の研究対象になる」と間瀬教授は云う。
湾口防波堤について、国の宣伝は
東京新聞がこの湾口防波堤問題を取り上げている視点は優れている。しかし残念ながら現状のマスコミとして仕方がないが限界がある。どのような限界か?
津波、地震、噴火、洪水などは,地球が行う地球構造の安定化の活動であり、不安定要因を取り除く活動であろう。
この地球活動は、人間にとっては災害となる場合も多い。こういう場合、人間は災害対策を行うのであるが、巨大な地球活動に対して、巨大構築物によって地球活動を抑えられるかという問題が地球活動が鮮明に表れる渓流河川に現れ、巨大構築物(ダムなど)建設で問われている。
この地球活動は、人間にとっては災害となる場合も多い。こういう場合、人間は災害対策を行うのであるが、巨大な地球活動に対して、巨大構築物によって地球活動を抑えられるかという問題が地球活動が鮮明に表れる渓流河川に現れ、巨大構築物(ダムなど)建設で問われている。
地球活動に対する人間活動は、それらの地球活動に対抗するという哲学が巨大な企業の思想である。鉄やセメント、技術力などのマンモス的な動員《政治、官僚の動員も含めて》が巨大企業の利権を生み出すからである。これらの利権活動が巨大構築物の建設への欲望となり、哲学となって災害を契機にして現れる。
住民が願う安全と安心は蛇籠や、沈下橋、等々に見られる、自然に沿って逆らわず、場合によっては災害が人間活動を発展させる形でさえ行われることが必要なのではないか?最近にいたる前人の治水活動はそうしたものであった。
地球活動を抑え込もうという思想はどこから生まれたか?産業革命以来の欧米型近代化は巨大施設の構築による地球活動の抑え込みを目指してきた。こういう地球活動に伴って発生する災害と、それに抵抗する人間活動の問題点の評価が定まっていないので曖昧模糊としてくる。専門家の言い分がどういう視点から発言されているのかわからないのは残念である。
しかし、見出しの湾口防波堤無残という評価はわかりやすいし、正確である。ではここで国がどのように湾口防波堤をとらえているか規模概要等も含めて紹介しよう。
しかし、見出しの湾口防波堤無残という評価はわかりやすいし、正確である。ではここで国がどのように湾口防波堤をとらえているか規模概要等も含めて紹介しよう。
(つづく)
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